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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-7 <絶氷。だがそれはチート>


 伏線を付箋のようにはります。

 激しい雷光によってその場全体を照らすなり、空間は揺れ、肌に弱い電撃がビリリと刺激する。何がどうなっているか全くといっていい程にラファには未知の領域だった。前回の結界竜戦では自分でもすることがないことがわかっていたので後方支援に専念していた。そのときも彼等が何をしていたのか大体理解していたつもりだったがクオリアの行動は彼女の理解の許容を超えていた。
 外部サイト、【ドラスレwiki】にすら彼女が所有する【魔道師の心得】なるスキル説明は『ユニークスキル』としか記されていない。だからラファが所有する記憶には彼女のスキルは本当に未知なものだった。
 しかし大体のことは理解したつもりだ。他属性魔法を"合成して新しい属性を作るスキル"。それが魔道師なんだろう。現に彼女が見た三角の受け皿二つを合成したとき水属性の魔法が発動した。ここからは彼女の予想だが、火と氷の合成で先の水属性が発生したのではないだろうか?そうと考えると本来の六属性にさらに十五の属性を所有していることとなる。下手をしたらそこからさらに合成してその数の倍以上の属性を持っているのではないだろうか………。想像するだけでも未知の領域だ。
 ゆっくりとスケートリンクに足をつけてこちらに歩み寄ってくるクオリアの姿を見て依然まで抱いていた彼女への物が一変したような感覚に戸惑いすら感じるラファであった。

「立てますか?」

 目の前まで歩み寄ってきたクオリアがラファに手を差し伸べる。
 ペタンとその場に座り込んでいたことを思い出したラファは「ありがと………」と小さく言ってその手を取った。

「逃げられたのでさっきの竜を探します」
「うん。わかった」

 今後の方針を端的に伝えたクオリアに短く了解すると、クオリアは動こうとはせずただ彼女を見つめた。

「………どうかした?」

 小首をかしげ、ラファは見つめ続けるクオリアに声をかけた。力強い視線に気味の悪さすら感じる。

「貴方の目的はなんですかラファさん。いえ、来栖(くるす)さん。とでも呼びましょうか?」
「―――アンタ………何者?」

 直感した気味の悪さが気色悪さに変わった。
 なぜコイツはアタシの本名を知っている?となる………自分の最終目的まで知っているのではないか?
 すかさずラファは彼女から一歩引いた。

「単純に彼に近づく人を調べているだけです。その中で特に気になった貴方と二人っきりになれる時間を作った。ただそれだけです」

 つまりは行為的にクオリアという少女は自分とペアを組ませた。それは大きな力を持っているともとれる。雰囲気からとれたお嬢様気質はどうやら本物のようだったかとラファは結論づける。

「………なら。どうするの?」
「ラファさん、質問に答えてください。貴方の目的はなんですか?」
「答えると思ってんの?」
「はい。なぜなら私は"トッププレイヤー"ですから」

 なるほど。答えなければこの予選は戦えないという訳か。
 それだけはまずい。ラファは変わらぬ表情とは裏腹に内心相当焦っていた。
 変に思考を巡らせるも嘘を言っても信じるたまだとは思えない。さて、どうしたものか。
 深く目蓋を閉じ、数秒してからゆっくり目蓋を開けるとラファは自分の目的を言った。

「―――いいわ。答えてあげる。だけど彼には、他のみんなには秘密よ」
「えぇ。それはお約束いたします」

 クオリアは口元を吊り上げて笑顔で答えた。
 どちらにせよ。クオリアは彼との約束がある。ここでラファが答えなかったとしても自分はあの竜を倒すつもりだったのだから。これは運がいいと言える。

「アタシは――――」



 * * *



「く―――っ!!」

 モトグニルの頭上を斬りつけるも、攻撃は浅く至近距離からブレス攻撃を喰らった。
 どうやらこのモンスターは溶岩の海から出てこないようだ。ユキはかまえた大剣の剣先をモトグニルの視線に向けるも、打開策はみつからない。近距離戦ができない以上遠距離からの魔法攻撃が主体となってしまう。

「どいて!!」

 後ろから聞こえた彼女の声に反応するようにユキはその場から右へと翔けた。
 彼女、テルプの武器は弓だ。ドラゴンスレイヤーズ内にある数ある武器の中で一番の射程を誇る武器だ。彼女自身のレベルは九〇。カンスト九九であるこのゲームにおいて折り返し地点にあたるレベルだ。折り返し地点というのは九〇レベルまでに必要な経験値量がそこから九九まで必要だという意味だ。そこからが一番きついところだったと思いだしならユキは彼女が引く弓を見つめていた。
 無属性の最高性能一歩手前のエピック武器【覇竜の弓】。弓自体の攻撃力はそこまで高くはないが立ち位置が魔法よりも後ろになるので安定して攻撃できる武器でそこそこ需要はある。
 彼女の攻撃を頼りにチクチクとダメージを重ねてもいいが、この予選はタイムアタックだ。二人に焦りを感じせざるおえなかった。
 なんとかして打開策を考えなければ"トッププレイヤー"として参戦した自分の面子も丸つぶれだ。

「早くなんとかしないさいよ!!汗流すしか能がないわけ!?」
「わかってる!!けどこんな溶岩から出てこないんじゃ近接の俺には分が悪すぎる」

 ギリギリの射程から魔法を詠唱しようにも、上位のモンスターによくある詠唱反応によって射程外へと逃げられてしまう。
 周りは溶岩しかなく、時折高く存在する岩場がある程度で近接型のプレイヤーには分が悪すぎる地形だった。
 何か策はないのだろうか―――。
 そのとき音をたてて脳内に響くものがあった。予選開始時に言っていた司会の言葉だ。

『新規参加者も多いようですので新規参加者が不利なルールなものは百も承知です。ですが皆様には"歌があります"。どうかそれを忘れずに』

 歌―――。

「おい!!ちょっと歌スキル見てみろ!!」
「はぁ?歌?そんなのが何の役に立つって言うのよ」
「いいからぁ!!"熱に強くなる"とかそんな感じのスキルないか!?」

 一種の賭けだった。状態異常を付与させる効果がある歌ならば逆の"味方支援効果"があってもおかしくはない。

「あった!!【耐熱の舞曲(フレイム・ボレロ)】。行くよ!!」

 先ほどまで軽快なベースを響かせた聞きなれた戦闘BGMから一変して、三拍子のカスタネットとアコースティックギターが演奏するBGMが流れた。
 視界左下にあるログに【 ユキ は 耐熱 状態になりました 】が表示されていた。

 【耐熱】

 長いことこのゲームをやっているがそんな効果はエンチャントでも見たことがなかった。たぶん今回のアップデートで追加された新しい効果なんだろう。それが自分の予想通りならば―――。
 溶岩に足をつける。うん。ダメージがない。熱さも先ほどより和らいだ気がした。

「効果時間わからないから全力でいく!!」

 上半身まで溶岩風呂に浸かるもダメージも無ければ熱くもない。液状に入っているので移動速度が減少している程度でそんなのお構いなしに翔けた。
 さきほどの一撃によりモトグニルは【氷属性無効】がついてないは知っている。無効以外なら俺の独壇場だと言わんばかりに自慢の大剣を強く握り締め、左手を詠唱準備に備える。

 彼女、テルプにとって彼は本当にトッププレイヤーなのか怪しかった。
 装備はどうみても氷属性特化の防具。武器に関してはよくわからないが氷属性だということくらいわかった。
 それがどうだろう。だいたい五〇~六〇レベルのプレイヤーがレベル上げに使うこのサウラ火山で熟知しているはずだ。
 ここでは氷属性耐性のモンスターが主だということが。
 氷属性は耐性で効きにくく、凍結効果も耐性持ちということで効かない。それでも尚、彼はその装備をつけてかの竜目掛けて走った。
 大剣を片手で構え、まるで片手剣のように氷魔法剣士のスキルを放つ。
 するとどうだろうか。自分の目を疑うような光景だった。
 煌びやかな氷嵐がモトグニルに多段ヒットする魔法を放つと同時に、連続で氷剣技も発動させる。一ヒットする度に仰け反るように怯み、凍りつくように凍結する。自分が知る人物ですらここまでモブを虐めれただろうか?まるで低レベルのモンスターを相手してるかのように動きを封じるように怯ませている。
 これがトッププレイヤー言われる由縁なのかもしれない。そういえば聞いたことがあった。常に氷属性の武器を扱い、さらに凍結耐性持ちでも凍結させる氷属性特化の氷魔法剣士―――。

「【絶氷】………」

 彼が噂に聞く【絶氷】なのかどうかはわからない。だかそれに近いことを行っていることは理解しているつもりだった。
 光り輝く氷嵐が舞い終え、それと同時にモトグニルは溶岩深くに潜りその姿をくらました。

「逃げられたか………」

 ユキは自慢の剣を背にしまい、溶岩の海をゆっくりと上がった。
 彼を向かえた彼女は何か先ほどまで見せた気だるい表情ではなく、何か自信めいた表情になっていた。少し気味が悪かった。


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