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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-6 <魔道姫。だがそれはチート>


 ご好評につき、当分の間これ一本に絞ることにしました。

「アリ―――」
『それでは二次予選を開始します』

 ラファに呼ばれたような気がしたが、彼が振り返った先には溶岩が渦巻く火山地帯だった。

『モニターを見ていただけたらわかると思いますがフィールドは溶岩地帯。サウラ火山にてお送りします』

 吹くは熱風。息を吸えば肺までも燃え尽きてしまいそうな炎が辺りに燃え盛る。
 火山灰が積もり黒く固めた通路は走っても問題はないようだ。
 しかし柵はない。通路を踏み外せばそこは溶岩風呂に浸かってしまうので注意が必要だろう。隣を見るとテルプと呼ばれる少女が手で扇いでいるが無意味なほどに生ぬるい風が頬にあたる。少女のように開放的な服装ではない彼の服装はスーツにロングコートという真夏の砂浜に冬服という忍耐力が必要な服装だった。むしろ脱ぎたい。すでに中がグチョグチョでシャツは体に張り付き気持ち悪くて仕方が無い。
 ゲームなんだからその辺のことも考慮して気温や服装を考えて欲しいものだと額に流れる汗を拭いてユキは近くにあったアイテムボックスをあけた。

「支給品?飲み物ないの?」

 ユキが支給品が入ったアイテムボックスを見つけたことに気づきテルプは彼の後ろから少し屈んで覗かせた。

「普通の回復剤だけだよ。あとは火傷の―――ッ!?」

 後ろを振り返ると胸元を大きく開け、そして屈んで色々と二つの山の谷が―――えっと。
 色々と混乱してるユキの反応に理解したらしく、めんどくさそうにテルプはミドルキックの高さでユキの頭を蹴っ飛ばした。
 ただでさえ狭い通路だ。それが一メートルでも飛ばされてみろ、そこは―――。

「し、死ぬってえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――ッ!!!!!」

 軽快に水しぶきならぬ溶岩しぶきを上げてユキは溶岩の中へと沈んでいった。
 さすがにやりすぎかなとテルプは頬をかいた。死にはしないことは熟知してるつもりでもやはり溶岩の海という光景を見せられては精神衛生上よろしくない。まぁ。入ってみればかなり熱めな風呂みたいなものだったりする。それでも熱い通りこして痛いからなおさら性質が悪い。

「ほら。DoTダメージ続くんだから早く出なさいよ」
「お前が突き飛ばしたんだろッ!!」
「エッチな目で見てたの自分じゃん」
「―――ッ」

 何も言い返せない辺りユキは頬を染め、唇を尖らせテルプが伸ばす手を掴んだ。HPゲージを見るとすでに四分の一も減っていてびっくりした。

「回復剤は?いる?」
「いや、十個しかないからもったいない。七、三で入ってるアイテムを分けようか」
「んじゃワタシが七でアンタが三でいいわけね」
「いや俺が戦うわけで七は俺―――」
「そ・れ・で、いいんでしょ?」

 すでに分けられているポーションをユキに投げ渡し、テルプは不敵な笑みでその場を制した。
 こんなんで大丈夫なんだろうか―――?




 * * *




 炎王竜と呼ばれる新ドラゴンの形状はどちらかというと海蛇と例えた方がピンとくるだろうか。海蛇ならぬ溶岩蛇。それが新しく追加された【炎王竜-モトグニル-】だった。
 溶岩という溶岩をまるで水のように自由に泳ぎ、その長い胴体を動かして彼女達の目の前に現れた。
 ラファの率直の感想は蛇は蛇でも分厚い皮膚に覆われたワニの顔にも見えて要するに爬虫類だ。気持ち悪い。少し引いた。
 そんなことなどお構いなしにラファの横からクオリアがモトグニルめがけて走り出した。
 数時間前に見せたピンク色のサーキュラースカートなどではなく、昨日まで着用していたデクライニングスカートの露出度の高いローブがヒラヒラと淫靡に揺れる。青白いその長い髪は溶岩の光に照らされて少しオレンジに見えた。

「貴方はそこで見ててください」

 彼女が知るおっとりと緩い喋りではなくハキハキとしたクオリアの声が聞こえ、一瞬驚いたラファであったがやはり被っていやがったかと目を細めた。
 何かクオリアの両手が動いたようだったが早すぎて見えなかった。時間にして約二秒やそこらの速度で精巧な紋章のような模様が彼女の胸元に二つ存在していた。なんとか覚えていた受け皿の存在を思い出し、それだけでも見ようと心がけた。
 左右どちらとも三角。火か氷といったところなんだろうか。
 完成させた同時にクオリアはわけのわからないことをし始めた。
 そこから二つ同時に敵を指先指定することで魔法は発動することができる。しかし彼女がやった行動は合掌。手を合わせたのだ。
 手を合わせたことにより魔方陣は綺麗な粒子を舞わせ消滅した。
 意味がわからない。詠唱キャンセル?合掌の綺麗なパーンという音のみがその場に木霊する。
 手を合わせたまま動かないクオリアに痺れを切らせたラファは一歩前に出た。

「ちょ、ちょっとクオリア!!」
「下がってなさい!!」

 するとどうだろうか、地面が揺れている。足元がおぼつかないほどに揺れは大きく、ラファは立っていることもできず、その場に座り込んでしまった。

「――――タイダルウェイブ」

 何か呪文めいたものが聞こえた気がする。それと同時にクオリアは右手を高らかに天を指す。
 綺麗な白い肌と指を露出させる。それと同時にして些か場違いな物が浮かびあがる。
 それはとても綺麗で涼しく、今一番ラファが望んでいたものであった。
 水だ。それも大量な水。水柱ともいえるものが列をなし、それは列は群となって横に連なる。
 いうなれば波。津波だ。
 これはもしかしてクオリアの、魔道師のスキル。水属性の魔法ではないのだろうかと直感した。
 津波は高らかと波をあげて溶岩もろとも炎王竜を飲み込んだ。強く、遠くに運ばれていくモトグニルの姿が遠のいていくのを見送るとあたり一面が黒ずんでいることに気がついた。
 溶岩地帯一帯が固まっているかのように見えたがドロのように動いてるのを見る限り固まってはいないようだ。足をつけたらそのまま沈んでしまいそうだった。

 モトグニルは頭を振ってその大きな口をあけて何かを吐き出そうとしている。ブレス攻撃だ。
 チラリとクオリアは後ろを振り返ると自分の後ろにラファがいることを思い出してもう一度モトグニルを見定める。
 避けることはできない。避けると後ろにいるラファが攻撃を喰らって死んでしまうかもしれない。そうなると避けるに避けきれないだろう。内心彼女などどうでもいいのだが彼との約束なので丁重にもてなす必要がある。面倒このうえなかった。
 ブレス攻撃が発動される。真紅を通りこして太陽のような白い弾だ。相当な灼熱なのだと理解する。すぐさまクオリアは左手で四角の受け皿に多彩な装飾を施した魔方陣を描く、土属性防御魔法【大地の壁(ガイア・ウォール)】をものの数秒で発動させてそれを防ぐ。
 ちょうど背になっていたのでラファには見えていた。昨日見せられたユキが書いた上位魔法陣を。【大地の壁(ガイア・ウォール)】の魔法発動と同時に右手で描きはじめていたそれはユキが得意とする氷属性最上級魔法【光り輝く氷嵐(ダイヤモンド・テンペスト)】だった。
 書き上げると同時に辺り一面の地面に指先指定すると、ドロドロとした溶岩を真っ平らなスケートリンクへと早変わりさせていた。
 よし、と【光り輝く氷嵐(ダイヤモンド・テンペスト)】と同時に書いていた左手に四角の風属性魔法【加速する風(アクセル)】を自身に選択し、速度を上昇させ瞬時にそのリンクを翔けた。

 まったく何が起きたかわからないでいるラファ。それもそのはずだ。モトグニルのブレス攻撃がくると目を背けた一瞬のうちに当たりは氷の世界に、肝心なクオリアの存在は彼女の目の前から消えていたのだから。

「―――ックチュン」

 一気に肌寒くなったものだとラファが着る大鳳装備を見る。さっきまでの熱い空間ではそこそこよかったのだがこう寒くなるとこの装備も問題だなと頭を抱えた。

 どうやらモトグニルは氷属性の攻撃が効いたようだ。大抵炎属性のモンスターは【氷属性無効】がついてるものなのだがこのモンスターは【氷属性耐性】がついている程度なのだろう。
 クオリアはクスリと口を動かす。【氷属性耐性】なら彼は大丈夫であろうと、他のどこかで戦うユキのことを思った。【氷属性耐性貫通】、さらに【氷属性ダメージ二倍】、それに氷に特化した属性強化の装備品のおかげで【氷属性無効】以外では通常の四倍もダメージが跳ね上がる。弱点属性をつくことでダメージ倍率をあげることができるのだが、その倍率は約二倍。特化して三倍といったところだろう。それを考えると【氷属性無効】以外に四倍も与える彼はチートを通り越して化け物ともいえる。
 彼女が考えた彼の通り名【絶氷】には二つの意味があった。
 一つのは"絶対に敵を氷らせる"という絶氷。これは彼が持っている激運で確立を跳ね上がっている凍結率を意味している。本来ならあんな確立はありえないのだが。
 二つ目は"絶えず氷属性で戦える"という意味だ。ほぼどんな状態でも氷属性だけで戦える。
 彼女が彼をそう呼ぶように広めた意味合いは後者のが強い。レベルがカンストしてからというもの、彼が装備する装備は変わったことがなかった。ついこの間レジェンド級の大剣に変えたくらいであとは前から氷属性特化の防具をしていた印象だった。
 などと、しなくてもいい彼の心配をしてる間にすでにモトグニルの目の前まで翔けていたことに気がつく。
 モトグニルは凍った溶岩を砕いて尻尾を出して叩きつけるようにクオリア目掛けて放った。
 一時的にしろ【加速する風(アクセル)】によって上昇しているAgiのおかげでスローモーションのように見えるかの竜の尻尾。軌道を読んで先に体を軌道から逸らす。さらに手を動かす。
 右手には三角、左手には四角。さきほどのタイダルウェイブのように右左で違う魔法陣を描く。
 完成と同時に合掌。
 モトグニルの尻尾がリンクを破砕し、キラキラと氷の粒が舞う。足場が危ういと直感したクオリアはその場から飛び上がり、完成させた魔法を右手へと移動させる。
 バチバチと何か電撃じみたものがその場で形成されていく。雷属性【神の一撃(デウス・ストライク)】。右手を引いていくと同時に長く、まるで弓のような一矢。雷槍とで呼ぶべきものが形成されていく。
 息を止めて力強くそれをかの竜目掛けて投げた。氷の粒によってどうなったかまではわからないが確かな手ごたえを感じた。
 先に出した水属性、それに今の雷属性の攻撃で少しは削れたとは思う。
 モトグニルの正確な弱点が分からない以上全ての属性攻撃を試してみないとわからない。それにこれはタイムアタック。あまり流暢なことを言っていると約束したことが果せないで終わってしまう。それだけはだめだ。それでは自分と彼とのあんなことや、こんなことが妄想で終わってしまう。それだけは絶対にやってはいけない!!

 視界が晴れ、残っていた足場に着地したクオリアはモトグニルを探すが姿がなくなっている。
 逃げられたか?
 逃がしてはならない。これは自分の妄想を現実にするためなのだから―――。

 意を込めて後ろに振り返ると、呆けるようにして空を仰ぐラファの姿が目に入った。
 一段落ついて思考が冷静になったのだろう。そういえば彼女に聞きたいことがあったのだと、思い出すクオリアであった。

 自分で考えてなんだけどクオリアもチートですね。
 感想等お待ちしてます。
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