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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-5 <二次予選。だがそれは罠>


 どうしてこうなった!!

 今の時刻は十九時と三十分を過ぎたあたりだ。
 彼、ユキは手にぶら下げた買い物袋を二階の自室に置くなりピカピカと光る携帯端末に手を伸ばした。
 誰からだろうか?タッチ操作で画面を動かしているとつい昨夜、登録したアスキラからの伝言のようだ。ついでにクオリアという名前が四十件ほどあったが履歴を消した。

 『ちょっとした用事を頼みたい。都合が付いたら連絡を頼む』

 どうしたのだろうか?個人的には前回の結界竜事件での借りがある。彼の頼みなら断る理由はないし、むしろ受けたいくらいであった。
 すぐさまユキは『どうしましたか?』とメッセージを送ると数秒して彼からコールがかかった。

「こんばんは。アスキラさん」
『忙しい中すまないな』
「いえいえ、そんなに忙しくないですから」

 むしろ二次予選の二十時まで暇だったので都合がよかった。
 ユキは端末をベッドに置き、買ってきたオニギリとペットボトルのお茶を持ってベッドに腰掛けた。

『まず先に二次予選通過おめでとう』
「ぇッ!?あ、ありがとぅ………ございます?」
『すまない。シュウから聞いてたんだ』

 あいつ後で殴る。

『不躾がましいんだが次の二次予選のことなんだ』
「二次予選の?なんでまた」
『知り合いにLC社に就いてる奴がいるんだけどそこから依頼なんだよ』
「依頼………ですか?」
『そ。腕の立つプレイヤー四〇〇人ほど見繕ってほしいと………これ言っちゃだめなんだが。どうやら二次予選の内容がオーディション参加者とその四〇〇人でペアを組ませて新モンスターを狩るとか』
「は、はぁ………?」
『それで色々と動いてるわけなんだが今日になってその四〇〇人のうち十人ほど連絡取れなくてさ。急遽こうして色々な奴に話しかけてるってわけさ』
「つまり、俺にその四〇〇人に入って欲しいと?………アスキラさんの頼みなら断りたくないですが………」

 ユキもこのオーディションに懸けているつもりだ。それを易々棒に振るのは―――。

『あぁ。その点は大丈夫だ。向こうとしてもこちらとしてもお願いしてる立場だと理解している。どうやら二回に別けるらしくてな、君みたいな参加者は二回目に回されるようだ』

 なるほど。だがそれだと色々知った上での参加となってあまり公平ではないと思ったユキであったが、アスキラの話は続いた。

『それに新モンスター自体二匹追加されているから、一回目が炎王竜、二回目が海王竜とかになるはずだ』
「なるほど。結局のところ一回目と二回目の差はないと」
『上位人とペアで倒せってことだからな』
「そういうことならお受けします」

 安請合いな気もするがこちらに断る理由はない。それにアスキラという有名人に頼られるのは悪い気がおきなかった。

『ふふ―――。なら貸しだと思ってくれ。いずれこの借りは返すさ。スタッフには話を通しておく。細かなことは向こうでメールを送っておくので早いINを頼む』
「わかりました。それでは後ほど」

 封を開けたオニギリをかじり、流し込むようにしてペットボトルのお茶を飲み込んだ。
 四〇分には向こうにいる必要がある。急がないと。
 すぐさまに晩御飯を終了して冠状のイクスフィアを頭にかぶる。
 忙しい忙しいと思いながら、なぜか口元は笑みがこぼれていた。



 * * *



 ユキは自分のプレイヤーズホームで、アスキラからのメールを見ていた。
 書かれていたことは以下の三つだった。

 1、アイテムの持込は禁止。
 2、装備のスペアは一セットのみ。
 3、五〇分に会場のスタッフルームに集合。

 ユキはアイテム欄のアイテムを空にし、現在も使用している防具一式の耐久値を回復させていた。 実際のところ、未知の敵との戦闘になった場合、そのモンスターの弱点や特性を理解するために複数の防具と武器を持ち込まないといけない。
 防具の場合だと敵のしてくる攻撃の属性、または状態異常に耐える防具を持ち込み、武器の場合は敵の弱点を知るために六属性それぞれの武器の持ち込むのが常だ。
 だがそのどちらも問題なかった。なぜなら彼は生まれもっての強運というチートを所持している。防具には【全属性耐性】と【氷属性強化】、【全状態異常耐性】のエンチャントが付与されている。武器に関しては、かの結界竜のような【六属性無効】の効果を持つ敵以外には通常以上の効果を発揮するレアエンチャント【氷属性耐性貫通】を持つ【氷覇王竜・逆震】があった。【氷属性無効】の効果を持つものには無属性である【覇王竜・森羅】に持てばいいだけの話だ。
 いつも着ているユニーク級【覇王のバトラースーツ】一式の上から【蒼竜王のロングコート】をバサりと羽織り、立てかけた大剣を背中にしまう。システムメニューのアイテム欄には【覇王竜・森羅】があるのも確認した。
 時間は―――――――十九時四十五分。
 今から行けば会場には余裕で間に合うだろう。

「行くか」




 * * *




「ねぇシュウ。アリス知らない?」

 時刻は二十時をまわり一時間前に一次予選が行われた会場には二次予選を控えた人と観客に溢れていた。その中でシュウとシャルナの二人を見つけることができたラファであったが、肝心のユキを見つけていないことに不安を感じる。フレンドリストで見る彼の名前はログインしていない灰色を記しているので更に不安が募る。

「部屋に明かりはあったし、端末に通話してみたけど反応はなかったからINしてると思うんだけど………あれ?ユキでINしてやがる」

 ユキでINしている?それを聞いたときは内心彼本人を馬鹿にする自分と同時にホッとしている自分がいたラファであった。表面上だと良き友であり、異性としても好―――好きな部類に入る方だ。だからこんなところでいなくなるのではなく一緒に頑張りたいと思っているのに半分。もう半分は自分の目的のため。復讐するため、仇を討つため、全てのためにラファはアイドルにならないといけないのだ。いつか彼と戦うこととなるのなら視界に入らない位置で消えて欲しいし、なにぶん彼の強運はチートだ。たぶん普通にしていてもいずれスカウトなどされてアイドルや歌手になれるはずだ。なら戦わずして勝てるのは願ったり叶ったりだ。

「ラファ。始まったみたい」

 気づいていないラファにシャルナは始まりを教える。ラファ自身、シャルナは眼中になかった。そもそもこの人は血のにじむような努力というものを知らない。空腹や睡魔、時間と理不尽な教育、それに耐えたり乗り越えながら努力したことを彼女は絶対にしていない。そんな奴にあたしが負けるはずがないのだと強い意思でその自信を額縁にはめて心に飾った。
 これでもし落ちるような場合があった運がなかったということで他にいけばいいのだ。大丈夫。今日の天秤座の運勢はよかったはず。と根拠もないことで自信をつけようと心を落ち着かせる。
 緊張している?もうだいぶ離れしてきたはずだったのだが………大丈夫だろ。実技に入ったらこんな緊張すっ飛んでいつものあたしになれる。
 そう心で満たし、目を開ける。

「あれ?アリス?」

 壇上前にて百人を超えるであろう人の中にユキらしき人を見つけたのだがすぐ見失ってしまった。しかしそのラファの反応と同時に他二人からも同じ声が聞こえてきた。

「おぉ。マジだ!!なんか青いのいる!!」
「それに―――あれは魔道姫?」

 十列ほどになって彼等は並んでいた。その列の一番後ろにクオリアと一緒に並んでいるユキを発見した。
 む、人がせっかく心配してたのにイチャイチャしてるのはむかつく。
 しかしどういうことだろうか?イベント主催側へ行っても参加者であることは変わりないわけで―――もしかして主催側に手を貸したら予選通過?
 それはいくらなんでもないだろうと首を振り、とりあえずは二次予選の内容を聞かないとはじまらない。

『お待たせいたしました!!一時間前と同じ顔。GMのマツ×四です。一つ増えてるっつーの!!』
『―――』
『えぇ―――それでは二次予選の内容をお話いたします。まず今回の内容は―――トッププレイヤーと一緒にチキチキ新モンスター討伐大会!!』

 トッププレイヤー。なるほどと納得するラファがいた。確かにあのチート装備だけなら彼はトッププレイヤーを語れるレベルだと思う。うん、装備だけなら。

『事前情報もない新モンスターを討伐していただく今回の内容ですが、まず歌姫の前にこのゲーム、【ドラゴンスレイヤーズ】のイメージキャラクターとして最低限、ゲームのことも知っておいて欲しいことと、アイドルたるもの運も必要。ここにおられますのは四〇〇名のトッププレイヤーと一〇〇名の我等がGM。正直いってGMのプレイヤースキルはお察しだと思ってください』

 つまりはGMを当てたら予選落ちってことである。

『予選通過するためにはモンスターを倒すことが絶対条件ですが、クリアタイムも重要になってきます。今回の通過人数は五人に一人!!一〇〇名のみが本選に進むことができます』

 一〇〇名のみ。その言葉を聴いた瞬間会場内でブーイングが鳴り響く。それもそのはずだ。いくらトッププレイヤーを引き当てたとしてもそこから勝ち上がるためには自分自身トッププレイヤーと同様に動けたほうがタイムは伸びる。彼女の隣にいるシャルナのようにカンストキャラで参加しているプレイヤーも一〇〇人以上いるだろう。だからニュービーとした自分の不利さは半端ないってことになる。

『新規参加者も多いようですので新規参加者が不利なルールなものは百も承知です。ですが皆様には"歌があります"。どうかそれを忘れずに。それでは最初に配られましたバッチをお出しください』

 歌が何を意味するのかわからないが、ラファはその辺りは開始してから考えればいいかと考えないようにした。雑念が入ると意識が揺らぐと誰かが言ってた気がする。予選開始から胸につけていたバッチを外した。

『バッチをタッチしていただければ映像が再生され、数字が表示されます。その表示された数字と同じ数字をつけたプレイヤーと組んでもらうことになります』

 なるほど。ユキの胸についている数字を確認する。【七】だった。ラッキーセブン。どんだけ運がいいだとため息を漏らし、ラファはバッチをタッチした。
 グルグルと数字が勢いよく動いて数字を動かす。お願い!!【七】!!【七】なら勝てる!!

 ……
 ………
 …………
 ……………

 【八】!?あと一つ下!!

「なんだよラファ。おしかったけどよかったじゃん」
「………なにが?」

 シュウに言われ指差す方へと視線が動くユキの隣だ。ユキの隣は…………クオリアッ!?

「魔道姫………正直行ってあれもチート」
「まじで?あのストーカーが?」

 信じられなかった。正直言ってラファが抱くクオリアの印象はただのストーカーでしかなかった。それがこの二人が評価に値するほどの人間なのか………?

「前回もあったんだよ。こんな新モンスターのタイムアタック。クオリアはそのときの三位」
「………うそ」
「ホント。未知のモンスターと戦うときに必要なものって知ってる?各属性武器と防具」
「えっと………何が弱点かわからないから―――だっけ?」
「そ。でもあいつ(クオリア)の場合はまず武器はいらないんだ。六属性、いや無属性追加して七属性か。実際の数はわからないがあいつが使える属性魔法の数はそれだ」
「さらに彼女、状況に応じたスキルの使い方が上手いって評判。アタシも前回の見てたけどあの動きは異常。右手と左手が別の生き物みたい」
「まさに名前通り|クオリア(感じがいい)なんだから驚きだよ」

 さすが通り名をつけられているだけあるなと感心してしまう自分がいた。

『それでは二五一番以降の方は二回目になりますのでその場で待機をお願いします。二五〇番までの参加者は壇上前のプレイヤー達の横にお並びください』

 チラリとシャルナの数字を見ると三六六。と次回の数字なので手を振ってラファはその場を離れた。なるほど、二回に別けるから彼はそこにいるのかと感じついたラファである。




 * * *



「ユキ様。私はわざと負けるつもりでいます」
「はぁ?なんのつもりだ?」

 真っ直ぐ前をむいた状態でクオリアは彼に話かけた。

「私自信、貴方様には勝っていただきたい。ですが私も自分の勝負運には自信があるほうなので」

 と、意識の強い視線をこちらに向けた。勝負運と意味の解らないことを言っているなとめんどくさい奴だなとユキは頬をかいた。

「私に本気でやれと言うのでしたら貴方には【一つ、私の言うことを何でも聞いていただきます】」
「はぁ?」

 コイツ本気だ。目が本気だと言っている。だが彼女の言い分を聞いたらいった何されるのかわかったもんじゃない。もしかしたら一回も一回。一生地下で監禁とかだった………おぞましい。

「まぁ。私のペアを見てから決めてください」

 何を言ってるのかわからない。こんなランダム要素のあるクジで身内を引くようなほど運が………。

「アリスゥ―――ッ!!」

 遠くの方から翔けて来る少女がいた。ラファだ。
 なんだろ―――胸についてるバッチが一桁の数字が見える。なんだろ気分が悪い。
 横でクオリアがいやらしく笑ってらっしゃる。もう嫌だこいつ、仕組んでいやがった。

「どうしまう?―――ユ・キ・さ・ま?」
「お前………」

 ラファが彼の前で止まった。なにやら表情が変だ。決断を迫われているような顔だ。

「アリス?」
「………おいクオリア。聞いてやるよ約束」
「フフフ………。なら後ほど」
「どうしたの?」

 最悪だ。こんなストーカー気質の奴に捕まったのが運の尽きだったのか………。そのうち『ユキ様どいて、そいつ殺せない』とか言われるんだろうか………。怖いわ。
 もう気分が滅入っている最中、心配かけまいと「なんでもないよ」とラファに微笑みかけるのだが余計気にかけられてちょっと大変だった。
 そして………。

「アンタが【七】番?」
「ッ!?―――あ、あぁ」
「あああああああ――――ッ!!!!!!」

 ユキは驚き、横にいたラファは驚きを隠しきれずに絶叫した。
 ウェーブのかかった長い黒髪をふわりとなびかせ、黒と白で統一されたイメージ色でゴスロリチックになっている彼女等と同じ【大鳳の卵】装備。切れ長の目に黒い瞳、白い肌に薄桃色の唇。それはどう見てもアニメや漫画、空想上に出てくるような東洋美人の彼女。

「ヘルプッ!!」
「だから【テ・ル・プ】だって言ってるでしょうがぁッ!!」

 さすがは同じ激運持ちだとクオリアは感じずにはいられなかった。

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