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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-2 <一次予選。だがそれはチート>

 続々と会場に増える人数。その入場を一望できる一室に二人の男性アバターが存在していた。
 その一人が口元を隠し笑いを浮かべていた。これは予想外と。

「予想以上にあつまりましたね、チーフ」

 チーフと呼ばれたスーツを来た男性アバターが顔をあげた。彼はガラス越しに会場を見る男性に目を向ける。眼鏡をかけ、オールバックスーツを着たその姿はリアルの彼と同じものであり、少しリアルよりも男前に作ったものだ。

「え、えぇ………今週に入ってからID取得者も続出してますし、なにより神城(かみしろ)社長のバックアップあってこその成果ですよ」
「そんな、私はただ企画と出資しただけですよ。なによりいいものを作ったのはアナタ方ですし」

 と上辺だけの称し合いにチーフと呼ばれた男が眉を細めた。事実彼とて長年オンラインゲームというものをしてきた身であり、ワンダーランド取締り役の神城社長にその話をもらったときは馬鹿げていると思わずにはいられなかった。
 いくら『バーチャルアイドル』というものが世に出回ろうとしていてもそれは成功するかわからない代物だ。意味不明な宣伝費をかけてアイドルを募集したところで原石がくれば上出来、石ころがくるのが関の山だろうと思っている。正直、最初にこの話をもらったときは断ろうとすら思っていた。だが、神城社長が「宣伝費等は全てこちらが持つ。むしろそっちらにはゲームの名前と版権物の無料提供、あとはゲーム内で会場とシステムを作ってくれればいい。それも予算がかかるなら受け持とう」と言ったのだ。つまりはお前らはタダで場所と名前を貸してくれと言ってるようなものだ。しかし、こちらがいいと思っても上の許可を貰わなければならないのが社会だ。現にワンダーランドは大手というよりも中小とも言える微妙なラインだ。チーフが知っている有名なアイドルと限定されると最近流行っている「ミーシャ・ソーエン」くらいしか思いつかない。
 そんな会社の存亡をかけてまでする企画なのだろうかと逆に疑ってしまう。そのときは一応上に話を通すと言って終わったのだが、後日上から急にその企画が回ってきたときは驚きを隠せなかった。その話をする前だったのでなお更彼は驚いた。どうやらすでに企画も手も上に回っていて、彼に話がきたのは最終確認といったところだったようだ。
 企画がスタートしたとき、某ネット掲示板の方でも「ワンダーランドとコラボ!!ワンダーランドってどんな不思議世界?」「なんだ。他のネトゲとコラボか」「あれだろ。ミーシャの事務所。他のタレントは知らん」「企画失敗のお知らせ」「なんだゴミイベか」などと書き込まれていて不安を隠しきれずにいた彼だったが、箱を開けてみたら売り上げも認知度もあがり、テレビを見れば『ドラゴンスレイヤーズ』、街を歩けば『ドラゴンスレイヤーズ』、ニュースにも取り上げられ、今やネットゲームといえば『ドラゴンスレイヤーズ』とも言えるような声も聞こえてくるほどだった。
 彼はガラス越しに会場を見る神城社長に目を向ける。全体的におとなし目な髪型にニヒルな表情を浮かべる彼の顔からは何も読み取れない。
 本当は一番驚いてるのは彼のはずだ。神城社長はそこまで年をいってるわけではなく、業界でもどちらかというと変わり者と称されている変人だ。その変人説も今回のことでさらに拍車がかかったようで、失敗してたら一体どうしたのだろうか。それを思うだけで自分も犠牲を葬ることとなると心底成功してよかったと思える。

「そろそろですか」
「そうですね。我らの姫が見つかればいいんですが………」
「既に見つかってるのかもしれませんがね」
「それは………?」

 神城社長の視線が動かずに何か念的なものを込めるようにずっと一人の少女アバターを見ていた。




 * * *



 ようやく人足も途絶え、二方向にあった入り口の扉を閉めた。始まるようだと誰もが思うと、上空からなにやらスクリーンが下りてきた。

「どうやら始まるみたいね」

 会場がざわめきだし、スクリーンに何やらマイクを持った男性アバターが表示された。

『えー。皆さんお集まり頂いてありがとうございます。私、司会を勤めさせていただきますGMのマツ×三と申します。お気軽にマツマツマツちゃんとお呼びください』

「「………」」
「ギャグ?」
「どうなんでしょぉ?」

『まずは当イベントとしては別に窮屈な面接などするつもりではなく、一イベントとしてユーザーさまに楽しんで頂く事が第一の目標であり、歌姫を決めるのは第二であるということを頭に入れてください。時間に関しましては途中休憩を挟んで二十二時終了を予定しております。もしご都合等ありましたら最寄のスタッフにお願いします』

 その辺は告知やらイベント内容で書かれていたので大丈夫だとアリスは一つ頷いた。回りも出て行く人がおらず、そのまま話が注意事項等を話すと一次予選がはじまった。

『それでは一次予選を開始します』

 その言葉と同時にアリス達の視界は徐々に色を変えた。
 どうやらワープしたようだ。さっきよりは狭いが百人を超えている大人数でも少し広いと思える何もない密室だ。ラファやクオリア、シャルナの姿はなく周りは他のアイドル衣装を着た参加者で埋め尽くされていた。

『まずはアイテムストレージにあります『歌』スキルの装備をお願いします』

 アリスの後ろ側から声がすると、どうやら壁際に距離を置いて小さなスクリーンが設置されておりさきほど同様にGM、マツ×三の姿が写っていた。

『一次予選の内容は歌バトルです』
「へぇ?」

 なにその歌バトルって?カラオケ大会でもやるのか?
 他の参加者から色々な声が漏れる。アリスも空けてあったスキルスロットに歌スキルを入れるなり、唖然とした顔でそこに立っていた。

『ルールは、歌スキル以外での攻撃禁止。歌スキル以外のスキル、または攻撃と判断しましたら即失格となりますのでご注意ください』

 すぐさまアリスは歌スキルモーションのデモ動画を開くが、反応はなくスキルの説明欄に黒い点が三つあるだけだった。

『各会場には参加者五百人ずつランダムで配置しておりまして予選通過者はその五百人中一人とさせていただきます』

 五百分の一。つまりはここにいるプレイヤー全員倒さないといけない。全員が同じ考えになると、他の参加者の目つきが鋭くなった。そりゃそうか………ここにいるの全員敵なんだから。

『あとアイテムの仕様も禁止しておりますのでスキル同様即失格になりますので悪しからず』

 つまりは歌スキルだけでここにいる全員倒せってことだということだ。変な緊張感で息苦しさが重くのしかかるのを感じる。

『それでは一次予選―――――開始しますッ!!』

 開始と同時に一斉に皆何かを叫びだした。周り全体で叫ぶものなのでアリスは耳を塞いで退避し部屋の隅で他の参加者の様子を見ることにした。どうやらスキルの発動を感じられない。ただみんな声を枯らしながら歌っているように見える。それだけ見るとすごくシュールなのだが、皆必死であった。中にはお遊び感覚で参加したプレイヤーも多く、スキルが手に入ったからあと頑張ってといったプレイヤーも多かった。
 とりあえずはスキルの発動条件を確認しなくては話が始まらない。アリスはスキルの説明にある黒い三つの点に注目した。横に三つ置いてあるのではなく、『へ』の字のように三点が置かれている。二番目の点が一番高く、一番の点の方が三番目よりも配置が高い。何か意味があるのだろうか………?
 他のみんなにも聞いて相談してみようと思ったのだが、フレンドリストや、コマンドの『念話』という文字が使用不可能だと謳っているように×印が表示されていた。なるほど、ラファ達から念話が来ないのはこの性かと納得するアリスであった。
 ならこの三点に注目しないとこの予選が打破できないと言うことだろう。アリスはその場に座りこみ、胡坐をかこうとしようとしたが、昨日ラファに注意されたことを思い出し膝を横に曲げて女の子らしく座った。

 暫く考えていると、スキル成功者が現れたらしく雑音がざわめきへと変わっていた。どうやったら成功するのか成功者に群がるプレイヤー達だったがライバルに教える者などいるはずもなく、すぐさまにスキル効果を喰らわないために離れる人の方が多かった。
 アリスはその様子を一瞥するなりスキル効果を確認しにいった。どうやら近くにいた一人が喰らったらしく、エフェクトを出しながら寝ていた。
 ここがバーチャルゲームだというのもあり、バッドステータスにかかるとかかったプレイヤーは何のバッドステータスになったのか他のプレイヤーにも理解できるようにエフェクトが表示される。今回は『睡眠』のバッドステータスがかかったらしく、かかった参加者は『ZZzz……』といったエフェクトを出しながら寝ていた。HPの減少はない。
 つまりは歌スキルとは対象にバッドステータスを与えるスキルなのだとアリスは理解した。

 なるほど、だから歌スキルのみなのかと納得した。このイベントにはレベル制限がなかった。つまりは低レベルから高レベルのキャラクターが参加することとなる。つまりはステータス計算等を率いてのダメージ計算が発生しないバトル。状態異常付与対決だ。
 薄々感づいてたアリスは、だからか……と自分の装備するマイクに目をやった。青いワイヤレスマイクに透明な羽がついているファンシーなマイク。ついこの間にシュウに作ってもらったユニーク級武器『カリダ・ニンブス』だ。手から離すとそのマイクはアリスの前を浮遊し、口元へと移動する。ある種両手に自由を利かせた魔道具に似ていると直感する。魔道具は杖と同様に魔法攻撃を上昇させる武器で、プレイヤーの傍をクルクルと浮遊する武器だ。要求ステータスが高いため、ステータスに余裕のある上位陣か、詠唱速度や防御力とかを気にしない中層プレイヤーしか付けない装備とされている。
 話はアリスの武器に戻る。等級が高い装備ほどエンチャントする際にレアな効果がつきやすいものなのである。ユキの持つレジェンド級装備『氷覇王竜・逆震』の【氷耐性貫通】、【凍結耐性貫通】もレア効果だ。状態異常や属性攻撃の耐性というものは多いが、それを貫通するというものは極めてレアだった。それはどんな強運を持った彼ですら他の装備についたことはない。つまりはそのレア効果はその装備限定に存在し、さらにそれが付与されることがレアだとプレイヤー間で言われていることだった。だからアリスがエンチャントしたマイクにもレア効果が付与されている。

 【広域化】、【全状態異常発動率上昇】

 最初はエンチャントしたときはなんだこの効果は?と思ってしまった彼だったが、他二つは普段よく見る【全ステータス上昇】と【氷属性ダメージ倍】だったため、前二つがレア効果とアリスは判断した。それでもよく見るといっても後ろ二つも一般的にはレア効果に入る部類なのだが彼の感性は若干壊れてると思える。
 それからアリスは更に推測する。歌スキルは『状態異常耐性貫通』なのでは………と。それではゲームバランスの部分で壊れてしまう気がしたが、高レベルプレイヤーがいる現状。予見して【石化耐性】などの効果を付与させているプレイヤーも中にはいるはずだ。それも無視させてスキルを発動させるには『状態異常耐性貫通』が必須になってしまう。彼が推測した通り現時点では高レベルプレイヤーと低レベルプレイヤーとの差をなくすためにスキル効果的に『状態異常耐性貫通』がついており、イベント終了時にその効果を外したと公表された。
 ならとアリスは一つの推測を頼りにスキル発動条件を試してみるのであった。

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