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第五十三話

 夕食は様々な野菜と肉を煮込んだ物だった。名前は分からん。

 ダンジョンでも野菜が採れればこんな物を作れるようになるんだろうな。


「それでノブツナさん、手紙の件だが」


 ああ、そうだ。飯はついでだった。アリスの話を聞くのがメインだった。


「確か手違いとか大成功とか言っていたな。詳細を聞こう」


 こいつの事だ。何か面倒なことを起こしたのかもしれない。その場合、どうしよう。


「ギルドの公文書として処理した、いやされたから大丈夫と言うことだ。分かった?」


 ごめん、全然良く分からない。公文書として処理? 大丈夫って何が? 詳細を話せ、詳細を。


「一から話すのか、面倒だな。そうだな、初心者用の依頼として物品の配達がある。利用しようとしたのがこれだ、辺境伯宛てでも届けてくれる。ちなみにギルド自身もこれを出すことがある。公文書の配達とかな。それで受付のばあさんだが、私の手紙を見てギルドの依頼を受けた冒険者と勘違いしてな、ファーラ辺境伯宛てだと言っても、配達先を間違えた新米扱いされた。しかも良い人そうな顔して明日の便に混ぜておくからと勝手に引き取られた。何を言っても聞かなくて困った。でも後になってむしろ大成功だと気づいたんだ」


 最初の方は嫌々話していたが最後には饒舌になり最後にはドヤ顔で報告された。

 どう反応すればいいんだ。

 配達の依頼については分かった。ギルドの冒険者に仕事を出しているのも理解できた。ばあさんについては……仕方ない、諦めよう。思い込みが激しいの上強引、でも良い人とか手の打ちようがない。だが、最後の大成功って何だ。しかも後になって気づいちゃ駄目だろ。


「いいか、ノブツナさん。個人的に出した手紙とギルドが出した手紙では大きく違う物があって――」


「あ、分かった」


 個人と組織では手紙の価値その物が違う。しかも魔王名義ではいたずらと判断されてしまうかもしれん。しかしギルド経由なら魔王の名に信憑性が……出るか? 不気味ではあるだろう、それが逆に魔王らしさを出すかもしれん。

 なにやらドヤ顔のまま更に偉そうに説明しようとしたアリスだが、俺がすぐに理解したため面白くなさそうな顔をしている。最初面倒と言っていたのは誰だったか。


「となると明日の便で出るから辺境伯のいるムスタングまでは……何日だ? 辺境伯のいる街は調べたが日数までは調べてなかった。え? 三日? ありがとおばちゃん。三日後には辺境伯の下に、その後返事を書いて依頼するのに一日。で、ここまで戻るのに三日。更にオワの大森林にあるダンジョンまで二日。誤差も考慮して返答には半月待てばいいか?」


「そもそも返って来ない可能性もあるぞ。相手が相手だからな」


 それもあるし魔王の下まで手紙を届けてくれる奴がいるかも怪しい。とはいえ受け取り場所を指定して今の姿を知られるのはなあ。今はこの身体が魔王と関係あると人族と思われたくないし。


 ま、良いか。その時はその時で。あくまで今回の一件は出来れば良いな程度の話だ。アリスの話を聞く限りこちらに攻め込んでくるとは思えないし、国家群が困っても無償で助ける真似はしないだろうし。


「出来なくても良し。あくまで本命は動き出そうとしている国家群。今回はその手伝いみたいなものだ。出来たら楽になるし、出来なくても少し不安要素が残るだけで出来なくなる訳じゃない」


 情報収集している限りまだ食料を買い集め物価が上がっているだけ。まだ遊びをする程度の時間はある。


「では明日の朝には帰るとするか。半月ほど反応を見て無ければ本命に移る」


「えっ?」


 さて食事を、と思った矢先アリスが声を上げる。見るとアリスが何か気まずそうな顔をしている。しかもいつ間に食っていたのか食器には何も残っていない。


「その、剣を鍛冶屋に預けてきた。貰った時から状態悪かったしいい機会だと思って。それで受け取りが明日の昼頃なんだな」


「別に一日二日かかるわけではないのだろう、それなら構わん。なら明日は少し街を見て回ろう。情報だけではなく見て回ることも重要だろう。それに魔王の存在を冒険者しか知らないと言う謎も残ったままだ。何故か分かるかアリス」


「知らん。そもそも魔王の存在云々は主神教の領分だ。冒険者の仕事は主神教が国に知らせた後だ。知りたければ主神教の肉袋か帝国に聞け」


 随分と嫌そうな顔で答えてくれた、肉袋扱いか。なんとなく想像が付く言い方だ。しかしそうか、主神教については探っていなかったな。そもそもそいつらが俺の引き籠り生活を邪魔した原点だった。

 後でその辺りを中心に探ってみるか。




 夕食を食べ終え部屋に戻った俺とアリス。

 外はすでに日は沈み夜になっているが人はまだいる。暗闇でこちらを認識できる人などほとんどいない今こそ情報収集の絶好の機会。

 窓をいつもより開け外の様子を探っていると、きらりと光る頭を発見。

 スキンヘッドに大柄! 斧は持っていないがギルドで見たあの冒険者だ。

 彼なら色々と知っていそうだ。変身!


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