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第十七話  魔族の処遇

「さて、集まったのはこれで全員か?」

 俺が聞くと群犬(コボルト)は頷く。

 俺は彼らにダンジョン一層の森に散らばっていた魔族を集落に集めてもらった。

 これからの方針を決めるために。


「さて、諸君。先程の冒険者は私の方で解決させてもらった。安心して良い。それでこれからだが、君たちはどうする?」


 多種多様の魔族が俺の話を真剣に聞いている。命が係わっているのだから当然だろう。


「一つは、このダンジョンを出て今まで通り暮らすことだ。どんな暮らしでも好きにするがいい。ただし、頼みがある。それはこの森に侵入者が来たら私に教えに来てほしい。異変でも構わない、おかしいと思ったら来ると良い。しかし、それ以外でここに近づくのは禁止する。これらを守ってくれれば私はいつでも君たちを保護する準備をしておく」


 魔族たちにざわめきが広がる。何せ助けた報酬を要求してこないのだ。出た後の頼みなど最初に挨拶をしたときとほぼ変わらない。それに危険が迫った際の生命の保証も変わっていない。

 その予想通りの同様に俺は微笑む。


「もう一つは私の配下となりここで暮らすこと。この集落を自由に使えば良い。この耕されかけているここを畑にしても良いぞ。狩りとして外に行くことも許す。ああ、種も用意してあるから安心してくれ。それに配下なら保護するのも当然だな。まあ、代わりに私の言うことには聞いてもらったり、収穫物の一部を貰うがね」


 交換条件としては悪いとは思わない。魔王の保護に安全に生きられるのだ。どちらかと言えば得だろう。

 

「好きに選んでくれ。私は少し席を外す。配下にならない者は外に出てってくれ。配下になる物はここにいてくれ。それではよく考えてくれ」


 俺がその場から移動するとすぐに魔族は同種同士で話し合いが始まった。

 それを遠目で見てつい笑みが浮かんでしまう。

 配下にするなら自分に好意的な奴だけで十分だ。無理やり力で支配何て叛意を抱かれいつか裏切りで殺されるだけだ。裏切らない、ある程度利口な判断が出来る奴だけ残れば十分。

 それに騎士団が来ることも教えていない。外に出る奴には騎士団の来襲を教えて貰わないといけない。偵察で配下を失いたくもないしな。配下の優遇は当然だ。


 玉座の間に戻るとアリスがぽかんとした様子で立っていた。


「何をしているんだ?」


「か、各部屋を見回ったんだが。ここは神域なのか」


 魔王が神域にいるか! と言いそうになるが、この異界の価値観ではそうなるのか、と納得しておく。


「感想は?」


「今まで高級宿にも泊まったこともあったが、勝るとも劣らず、いや完全に上回っていた」


「そうか、だがな。ここを使うのは俺だけだ。お前は一層で寝泊まりしてくれ」


 え? と絶望的な表情をアリスは浮かべる。


「ま、待て魔王。たまには使用もありだろう。あの大浴場やトイレなど。そうだ、あのテカテカと明るいあの部屋のソファで私は寝よう。それでも良いんじゃないか?」


 本当に全部の部屋を見て回ったんだな。テカテカした部屋とは私室か? 大浴場は見れば分かるだろうが、トイレの使いやすさを知っているということは使ったのか? そういえばいつの間に血を洗い流した?

 疑いの眼差しを向けるとアリスはスッと目を逸らした。


「……そうだな、手柄を上げたら使用などにすれば向上心を刺激できるから良いかもな」


「そうだろう! 良し、ちょっと狩りにいて手柄を立ててくるから――ふべっ!」


 勝手に出て行こうとするアリスに『重力』三倍を与える。なんとなく『重力』は口にしなくても使用できるということが分かった。


「待て、お前には聞いておきたいことがある」


「何だ? ああ、私は処女だぞ。どうだ、もう良いだろ」


「良いわけあるか。そんなことを聞きたいんじゃない」


 このアホは俺を何だと思っているんだ。俺と戦っていたあの時の気高さはどこに行った。これではただのアホ娘ではないか。


「……ここに来ると言う騎士団の構成だ。どこから、どの程度、どんな武装をしてなどだ」


「なんだそんなことか。ここに来るのはハウスター辺境伯の兵だろうな。騎兵として有名でな、練度は中々らしいぞ。私から見ればそうでもなかったが」


「いやいや、ここは森だ。騎兵で来るわけが」


「何故来ないのだ? 騎兵は強力なのだから使うだろう?」


「そんな訳あるか。わざわざ機動力を……まさか。この世界ではどんな方法で戦争している?」


 思い浮かんだ可能性に冷や汗を流しながら聞く。


「ん? そんなもの指定場所と日時を決めて」


「いや、もう良い。分かった充分だ」


 どうやら騎士団との戦いは思っていたよりもずっと楽になりそうだ。


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