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RPGっぽい異世界でだらだら冒険者生活する  作者: いかぽん
第二章 巨大蟻退治、あるいは少女たちのメイドさんご奉仕を賭けた戦い
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ボス戦ですよ

 炭鉱の最奥に到着する。

 そこは、少し広い部屋状になった、採掘の終着点だった。


 その広間の一番奥に──女王蟻は鎮座ましましていた。

 そしてその周囲を、通常種より少しだけ大柄で強そうなジャイアントアント五体が、護衛よろしく取り囲んでいる。


 女王蟻ジャイアントアントクイーンは、その体だけで言えば、護衛のジャイアントアントをさらに一回り大きくした程度の図体だった。


 が、その腹の部分に、ぶくぶくと膨れ上がった、どでかい白子のような物体がくっついている。

 それがどのぐらいどでかいかと言うと、その部分だけで本体の何倍もの大きさがある、というぐらいの大きさだ。


 で、そのどでかい白子は、よく見ると、ジャイアントアントの卵がたくさん連なったもののようだった。

 卵は半透明の白い楕円だえん形で、大きいものでは全長二メートル近く、小さいものでも一メートルに届きそうな大きさがある。


 で、その卵が何十個と集合体になって、その全体が粘膜に包まれたものが、どでかい白子のように見えるという塩梅だった。

 ……あれだと、あの女王蟻はまともに動けそうにない気がするんだが、そうでもないんだろうか。


「うへぇ……」


「あはは……ちょっ、ちょっと、気持ち悪いですね……」


 俺の後ろに隠れたパメラとティトが、それぞれに言葉を漏らす。

 ちなみに俺たちが今いるのは、広間の入り口に入る直前の坑道だ。


 女王蟻や、その周囲の護衛蟻たちは、俺から見て十メートルそこそこの距離にいる。

 巨大蟻たちはその位置から、その合計十二個の赤い目で、俺たちのほうを凝視していた。


 ──さて。

 それじゃそろそろ、巨大蟻の生態鑑賞にも飽きたし、始めるとしようか。


 俺は腰から剣を一応抜いて──しかし、ここは一手、ここまでと違うことをしてみようと画策していた。


 俺は自分の脳内選択肢の中から、一つの魔法の使用を意識する。


 すると、俺の体の内側から、何か力のようなものが湧き出てくる感覚があった。

 俺は剣を持っていない左手を前に──ジャイアントアントたちの方へと向け、その開いた手の平へと、湧き出てきた力の集中を意識する。


「──キシャアアアアアッ!」


 女王蟻が、叫びを発した。

 それが号令であったかのように、護衛のジャイアントアントたちが、一斉に俺たちに向かって突撃してくる。

 それはまるで統率の取れた軍隊、あるいは機械のような、精緻せいちな動きだ。


 しかし──遅い。

 俺の感覚的には、その巨大蟻たちの動きは、スローモーションのように映る。

 一般のジャイアントアントよりは多少速いんだろうが、俺にはそれが、有意な差には見えない。


 そんなわけで、護衛蟻たちが俺との距離を五分の一も詰めるより前に、俺の魔法が発動した。


「──インフェルノ!」


 俺が使ったのは、炎魔法5レベルで使えるようになる、上級範囲攻撃魔法だ。

 俺の左手の直前の空間に、バスケットボール大の朱色の魔力の光球が生まれ、それが、俺が狙った地面の一点に吸い込まれるように飛んでゆく。

 もちろん、狙った一点というのは、合計六体の巨大蟻たちがいる、その中心点だ。


 ──ドッゴォォォオオオオンッ!


 光球が地面に着弾すると同時に、激しい爆音が鳴り響いて──俺の視界を、地面から立ち上る赤と黄色と青の炎が支配した。

 紅蓮の炎が、目前の広間のおおよそ全域を包み込んで、激しく燃え盛る。


「──わぷっ!」


「──きゃあっ!」


 ワンテンポ遅れて熱風が吹き付けてきて、後ろから二人の少女の悲鳴が聞こえる。

 ……うん、ごめん、ちょっと考えなしすぎたかも。


 そしてわずかの後、業火が止んだ。

 その後には、六体のジャイアントアントの、焼け融けて動かなくなったむくろが──




 ──いや、違う。

 さすがに残ったか。


「──キシャアアアアアッ!」


 五体の護衛を失いつつ、女王蟻だけが、わずかに生命力を残していた。

 お腹についていた白子はほぼ燃え尽き、甲殻の大部分が融けてドロドロになりながらも、女王はまだ活動力を残していた。


 女王蟻は、後肢二本だけで、直立に立ち上がっていた。

 なかなか器用なことをする蟻である。

 そうして見ると、全長三メートル近くある女王蟻は見上げるほどの大きさになり、なかなかに迫力があった。


 そして女王蟻は、その口を開き、そこから白い粘性の液体状のものを吐きつけてきた。


 その粘液的なモノが俺のところに到達するまでに、半秒ほどか。

 俺はその間に広間へと踏み込み、横っ飛びにその粘液をかわす。


 ──っと、いけね。


「──はいぃっ!?」


「──きゃっ! な、何これぇっ!?」


 後ろに二人がいたのを忘れていた。

 ……まあいいか、命に関わるようなものじゃなさそうだし。


 粘液をかわした俺を、女王蟻の赤い複眼がぐりっと動いて照準する。

 俺はすぐさま地面を蹴り、女王蟻へと突っ込む。


 女王蟻の複眼が、再びぐりっと動いて、俺の動きを捕捉する。

 やるな、と思う。

 十分の一秒単位の速度で動いているはずだが、よくついてくる。


 女王蟻の鎌のようになった前肢が、俺に向かって振り下ろされた。

 俺は右手のショートソードで、その前肢を切り落とす。


 鎌状の肢が落下、その先端が、硬い地面にかなり深々と突き刺さった。

 めちゃくちゃな鋭さだった。

 腕の部分を切ったからよかったが、刃の部分を受けたら、こっちの剣なんか軽く真っ二つになるんじゃないだろうか。


 まあでも、当たらなければどうと言うこともないか。


 さらに俺は、女王蟻の周囲を、縦横にぴゅんぴゅんと跳び回る。

 そしてその流れで剣を振るい、女王蟻の前肢残り一本、中肢二本をすべて切り落とした。


 それから、どうにか俺の動きを捕捉して襲い来る女王蟻の顎を、軽く身を沈めてかわし、同時に剣でその首(?)をね飛ばした。

 女王蟻の頭部は宙を舞い、ぼてっと地面に落下した。


 そして、頭部を失った女王蟻の体は、その首的な部分から体液をまき散らしながら地面に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。


「──ふぅ」


 戦いを終えた俺は、一つ息をする。


 別に強くはなかったが、なんかちょっと、バトルっぽいことをした気がするな。

 お兄さん、ちょっと満足。


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