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パパの心中 〜運動会〜
作:保科 郁



 ぱぁん!!

軽い発砲音が鳴り響くと、いっせいに幼い子供たちが走りだした。
その中で先頭に飛び出したのはもちろん我が息子、智也ともやだ!!

 よし、さすが智也!
そのままゴールまで走りぬけ!!

だがそくざに別の影が 智也の横に割り込んできた。
あれは にっくき八百屋の息子、秋良あきら君ではないか。
隣を見れば、にやり…と口元をゆるめる八百屋。

 くそっ! 秋良君に負けるな智也!! 頑張れ!!

そんな俺の応援も虚しく、徐々に追い抜かれていく智也。
隣の八百屋はもう満面の笑みだ。
悔しさで歯噛みしたい気分になるが、今はそれよりも応援だ!
再びグラウンドに視線を戻すと、智也の行く先に石が……

 危な…っ!?

俺が言葉を発するよりも早く、智也は派手に転んでしまった。

 ぐっ……なんで あんな所に石が! この学校は、グラウンドの整備もしていないのか!! これで智也の勝利は…
 いや、そんな事を考えている場合じゃない。智也は無事なのか!?

息子は泣くこともせず、自力で立ち上がろうとしていた。
どうやら ひどい怪我とかはしていないようだ…。

胸を撫で下ろした俺の耳に、ふっ…と鼻で笑う八百屋の声が聞こえた。
それはいかにも智也を馬鹿にした、とろくさい息子だな…とでも言いたげな笑い方だった。

そくざに頭に血が上った俺は、八百屋の胸ぐらを掴もうとした所でグラウンドの異変に気付いた。
そのまま走り続ければ一位 確実だった秋良君が、戻ってきて智也に手を差し出していたのだ。
智也はその手を借りて立ち上がると、そのままゆっくり走りだした。
そして皆が見守るなか、二人は一緒にゴールした。

グラウンドは割れんばかりの拍手に包まれた。
ふと隣を見れば、八百屋はバツが悪そうに顔をゆがめていた。
こいつに似ず、秋良君はなんていい子に育ったのだろう。
………仕方ない。さっきの事は秋良君に免じて許してやるか。

怒りを収めた俺は、皆と同じように拍手をしながら息子達を迎え入れたのだった。














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