挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
冒険家になろう! ~スキルボードでダンジョン攻略~ 作者:萩鵜アキ

3章 最凶の魔物を倒しても、影の薄さは治らない

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

69/72

ライバルを倒して強くなろう!

 ――ッタァァァン!!

 コンマ1秒にも満たない空白。
 それに、晴輝は合せた。

 かつて戦ったワーウルフの動きと、
 動画で見た剣術家達の動きと、
 そして、目の前のワーウルフの動きを、

 想起、集約。
 体が、理想をなぞる。

 すると瞼の裏に光が灯った。

 ――弱点看破。

 その光は道筋となり、
 晴輝の攻撃を誘導する。

 美しい流れ。
 流れる刃。
 刃が接触。

 刹那。
 ワーウルフの左腕が大きく宙に舞い上がった。

 ワーウルフが僅かにバランスを崩す。
 そこを、
 回転、
 追撃。

 ワーウルフの反撃を、レアが食い止める。
 再び晴輝の刃が接触。
 腹部を深々と切り裂いた。

 吹き上がる血液に、火蓮の雷撃が滑り込む。

 ――ッタァァァンン!!

 血と肉が焦げた。
 沸騰した血液が、白い蒸気となって舞い上がった。
 一瞬にして視界に広がる赤と白と、鉄の臭い。

 大きくスタンしたワーウルフに、晴輝は止めの一撃を見舞った。

 ワーウルフがゆっくりと、前に倒れ込む。
 一度大きく痙攣して、停止。

 途端に、晴輝の体を強いレベルアップ酔いが襲った。
 それは以前のように、意識を刈り取るほどの強さではなかったが……。

 やっぱりまだまだ足りてないのか。
 己の矮小さを認識し、晴輝は笑う。

 中級になっても、まだ冒険家の頂は遠い。
 それが悔しいのに、晴輝は嬉しくて仕方が無かった。

 晴輝のレベルアップ酔いは強い目眩のみで収まった。
 だがレアと火蓮のレベルアップ酔いが深刻だ。

 レアは茎をくたっとして晴輝の背中に体を預けている。
 火蓮はこめかみに指を当てて、その場に座り込んだ。

「大丈夫か?」
「…………はい」

 全然大丈夫そうじゃないな。
 晴輝は苦笑しつつ、火蓮に近づいて探知を拡大する。

 幸い、火蓮とレアが復帰するまでワーウルフに狙われることはなかった。
 だが次も同じとは限らない。

「なるべくゲート近くで戦おう」

 もしレベルアップ酔いの最中に襲われても、気を失いさえしなければゲートに逃げ込める。
 歩き回れないことで多少効率が悪くなるが、レベルアップ酔いが軽くなるまでは安全に戦った方が良い。

 ゲート前を起点に、晴輝は単独でワーウルフを探す。
 見つけ次第後ろに引っ張り、火蓮とレアと共にワーウルフを撃退する。

 はじめはレベルアップ酔いで座り込んでしまった火蓮だったが、5回10回と倒すうちに次第に座り込むことはなくなった。

 それでも、レベルアップの直後は大きな隙が生まれる。

 晴輝も同じだ。
 倒す毎に、レベルアップ酔いは小さくなる。
 だが無くならない。

 まだまだこの階に対して、基礎レベルが大きく下回っている。
 素材取得の効率も悪い。

 しかし経験の効率はダントツだ。
 イナゴをどれほど倒しても、チャチャをどれほど倒しても、ワーウルフ1体の経験値には届かない。

 おまけに得られる戦闘経験も違う。

 ワーウルフはそれぞれ個体毎に得意な戦い方が違う。
 爪が得意なもの。
 牙が得意なもの。
 拳や蹴りが得意なものも居る。

 そして気性も違う。
 怒り狂ってどんどん動きが乱れていくものもいれば、逆に冷静になって動きが洗練されていくものもいる。

 個体ごとに、様々な戦い方を経験出来る。
 1戦ごとに、戦闘経験が蓄積されていくのを、晴輝は如実に実感する。

「素晴らしいな」

 同じ魔物を倒しているというのに、晴輝は全く種類の違う魔物と戦闘している気分だった。

 戦い方が違えば、対処も違う。
 そんなワーウルフと戦う度に、晴輝に足りない戦闘経験が確実に積み重なっていく。

 現在の晴輝らにとって、これ以上の階はどこにも存在しないだろう。
 数度の戦闘で、晴輝はこの場を腰をすえたレベリングの場と決めた。



【気づかれる存在感への道】

『15階で懐かしい魔物に』

 どうも空気です(^o^)

 本日、15階に到達いたしました!

 15階に出たのはなんとワーウルフ。
 あの、スタンピードの時に戦った魔物です。(^ ^)

 久しぶりの戦闘で、少し怖かった。(;>_<)

 結構レベルアップしてきたと思ったんだけど、それでもワーウルフは強かったです。
 まだまだレベル、足りてないなあと痛感。(= =;

 もっともっと、強くならないと……。
 あの強かったワーウルフに、恥じない今にするために!(>_<)

 今日も一日、レベリング超頑張った!
 これでまた一歩、存在感が得られる未来は近づいたかな? かな?



【試される】ちかほについて語るスレ 98【俺たち】

607 名前:試される名無し
 そいやこの前ちかほでモンパレ発生したんだって?

608 名前:試される名無し
 おう
 カゲミツと愉快な仲間達が駆逐したけどな

609 名前:試される名無し
 正しくはカゲミツと愉快な仲間たちプラス触手仮面だ

610 名前:試される名無し
 なにそれ・・・
 愉快通り超して不穏だぞ?

611 名前:試される名無し
 実際愉快だぞ?
 宙に浮かぶ仮面
 背中にはジャガイモ
 首には羽が生えていて
 体は鱗←NEW

612 名前:試される名無し
 オーケイ魔物だな?
 そいつ魔物なんだな!?

613 名前:試される名無し
 魔物じゃないんだなーこれが

 事実かどうかは知らんがカゲミツがすげえ褒めてた
 あいつがいなかったらきっと死んでたって

614 名前:試される名無し
 え、うそ
 カゲミツって死ぬの?

615 名前:試される名無し
 30階のMOBが出てきたって

616 名前:試される名無し
 雑魚の強さって大体4・5階上のボスくらいだろ?
 で、あいつら24階が最高到達階層か?
 カゲミツよく死ななかったなwww

617 名前:試される名無し
 実際やばかったらしい
 勇者の酒場で管を巻いてたから間違いない

618 名前:試される名無し
 それをどうやって倒したんだよ?

619 名前:試される名無し
 なんでも仮面男が大ダメージを与えたらしい
 短剣でな!

 その隙にカゲミツが一撃与えて倒したって話だった

620 名前:試される名無し
 >>短剣でな!
 いやいや無理だろ!
 カゲミツが札幌で一番強い冒険家だろ?
 大剣装備のカゲミツですら勝てない相手に
 最弱ドマイナー武器で斬りかかって大ダメージを与えるとか・・・

 それがマジならもう
 化け物でいんじゃねーかそいつ

          *

 ヌメヌメウナギの人形を朱音に鑑定してもらったところ、やはり晴輝の想像通り魔物除け成分が多量に含まれているとのことだった。

 通常時の魔物避け効果はかなり薄い。
 しかし人形に水を含ませると効果が強まる。
 持続時間は水が乾くまでだ。
 ただし、人形なので生よりも効果が落ちる。

 2本ドロップしたので、分配は1本ずつだ。
 しかし火蓮は『私は要らないです!』と拒絶の意を示した。

 火蓮に拒絶されたウナギ人形が可愛そうである。
 晴輝の瞳には、ウナギの8つの目がどこかしょんぼりしているようにも見える。
 少々不憫なので、2本とも晴輝が大切に使うことにした。

 当然ながら晴輝は、ウナギを手にしながら戦うわけではない。

 現在晴輝の鞄は一菱の“一”シリーズ。
 通常の鞄よりもかなり頑丈な作りになっているが、攻撃を受けても防げるわけではない。

 晴輝はいまのところバックアタックを受けた経験はない。
 だがいつまでも受けないとは限らない。

 背後から攻撃を受ければ、おそらくレアのプランターはあっさり砕けてしまうだろう。
 レア本体だってタダではすまない。

 であれば、ウナギを鞄にくくりつけて、バックアタックの可能性を軽減させようと晴輝は考えた。

 ウナギをくくりつけるだけで、攻撃されないわけではない。
 だが、ウナギがあることで一瞬でも攻撃を遅れさせられれば、晴輝かレアのいずれかの対処が間に合う。

 これも全てレアの身を守るためなんだ!
 そう晴輝は嫌がるレアを必至に説得し、鞄にウナギをくくりつけることを了承してもらった。


 15階で狩りをして、地上に戻り素材を販売する。
 夜になるとゲジゲジを追い回して、眠る。

 朝になると再び15階に向かって、レベリングを行う。

 はじめは1体でレベルアップ酔いを感じていたが、次第に10匹、20匹と倒さないと感じなくなっていく。
 それと同時に、みるみる晴輝の基礎身体能力も向上していった。

 晴輝が全力を出しても僅かに押された戦闘も、次第に8割ほどで押し返せるまでになった。
 また火蓮の雷撃も、スタン時間が長くなってきた。

 レベルアップの成果は、着実に現われている。

 レベルアップのおかげか、晴輝は目が良くなってきた。
 視力ではなく、いままで見えなかった細かい動作が見えるようになった。

 レベルアップによって動体視力が向上したのだ。
 ワーウルフの筋肉の細かい予備動作が、よりはっきりと視認出来るようになった。

 そうして晴輝は、理解した。
 かつてスタンピードで戦った、あのワーウルフほど強い魔物が、15階にはいないことに。

 記憶は思い起こしすぎてすり減っている。
 それでもなお鮮明に残っている。
 かのワーウルフの、美しい予備動作が……。

 それは現在の晴輝でも、全力を尽くしてもギリギリ手が届かない動きの極地。

 過去の晴輝がワーウルフを捕らえられたのは、命を賭けていたから。
 あの時の晴輝は極限状態で、集中力が通常時より大きく飛躍していた。
 だがそれでも、かのワーウルフにはまだ足りない。

 レベルアップすればするほど、見えてくる。
 見えてくればくるほど、疑問が生まれる。

 何故あのとき、自分は生き残ったのだろう? と。

 考えていても、仕方がない。
 あの戦闘はもう終わっていて、晴輝が勝利した。
 偶然だろうと奇跡だろうと、晴輝は勝ったのだ。

 教訓は考えるべきだが、勝利の理由を考えても意味が無い。
 所詮、後から考える理由など、結果論でしかないのだから。

 ただ強くなる。
 いまはそれが重要だ。

 1日目は20体。
 2日目は24体。

 着々と、ワーウルフの討伐数を増やしていく。
 レベルアップ酔いがいよいよ小さくなると、晴輝らはゲートから離れて草原を散策する。

 ワーウルフの討伐数が一気に伸びた。
 連戦することもあるが、戦闘は常に安定している。

 1週間分集めた素材で、朱音を殴りつけもした。

「『冒険家になろう』を見ましたぁぁぁ!!」
「アハーハハァーン!」

 貴重なワーウルフの素材販売に、朱音はとても喜んでいた。

 そうして自らの肉体をいじめ、
 朱音をいじめ抜いた1週間が終わる頃……。

 突如、15階で狩りをしていた晴輝らの視界が明滅した。

「……え?」

 それは、ボスを始めて討伐したときの証。
 ダンジョン発光現象だ。

 しかしこのダンジョンを拠点にし、中層まで潜っているのは晴輝たちだけ。
 他にも自衛団のメンバーが狩りに来ることがあるが、彼らに中層まで出てこられるほどの能力はない。

「いまのは、初回ボス討伐の現象、ですよね?」
「そのはずだが……」

 発光する理由が、晴輝はまるで思い浮かばない。

 もしかしたら、ボスが勝手に死んだ?
 種族内抗争のように、ボスが一般モンスターに倒されたか。

 ……いや、そんなことが起こりえるか。
 それでボスが倒されて、ダンジョンが発光するのか?

 考えてみるが、さっぱりわからない。

 一体何が起っているんだ?
 イレギュラーな事態に、晴輝の緊張感が高まっていく。

 晴輝の視線の先。
 フィールドの中央部からゆっくりと、晴輝らに近づいてくる影が現われた。

 希少種か!?
 晴輝は益々警戒感を強めた。

 次第にその影が、露わになる。

「あれは――ッ!」
背中から触手←NEW

残念なお知らせ。
リアルで事件(?)発生により、以後の更新頻度がガクっと下がります。

更新は毎週金曜日に1度となります。
誠に申し訳ありませんm(_ _)m
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ