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冒険家になろう! ~スキルボードでダンジョン攻略~ 作者:萩鵜アキ

1章 スキルツリーを駆使しても、影の薄さは治らない

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希少種を倒そう!

グロテスクな表現があります。
 黒咲火蓮(18) 性別:女
 スキルポイント:6
 評価:槌人

-生命力
 スタミナ0
 自然回復0

-筋力
 筋力0

-魔力
 魔力0
 魔術適正0
 魔力操作0

-敏捷力
 瞬発力0
 器用さ0

-技術
 武具習熟
  鈍器0
  軽装0

-直感
 探知0

-特殊
 運0


 魔力なんて項目があるのか!!
 途端に晴輝の体が甘い熱を帯びる。

 冒険家たちが待ち焦がれた能力がいま目の前に……。

 どういう力なのか、確かめたい!
 晴輝の知識欲が疼く。

 だがしかし、どうやって彼女に尋ねれば良い?

 魔法は現時点で情報が皆無だ。
 ということは、彼女はそれを公にしていないということ。

 きっと情報を公開した途端に冒険家に群がられるだろう。

 間違いなく利用される。
 良いチームに当たれば大切にしてくれるだろう。
 悪いチームに当たれば利用されるだけされて、捨てられる。

 晴輝のスキルボードと同じだ。

 初心者冒険家には、悪意をはね除ける力がない。
 未知の情報を公開するデメリットは、メリットを容易く凌駕する。

 晴輝は何気ないふうを装って口を開いた。

「火蓮ってもしかして魔法が使えるのか?」
「――ッ!」

 背中の向こうにいる火蓮が過剰に反応した。
 使える認識は、どうやらあるらしい。

「なんでそんな質問を?」

 さすがに直球すぎたか。
 火蓮が警戒感をあらわにして尋ねてきた。

「棍棒なんて珍しい装備だったからな。防具もローブだったし。まるで魔法少女みたいだなあって思って」
「魔法少女はドレスですよ」
「あれそうだっけ?」

 晴輝の小ボケで火蓮の警戒感が多少緩んだのだろう。
 彼女はクスクスと笑った。

「ダンジョンが出来てから魔法については、『なろう』で散々議論されてただろ? 魔導具があるんだから、魔法も使えるはずだって。だから、魔法が使えるって情報がそろそろ出てきても良い頃合いだと思うんだ」
「使えても、きっと上級冒険家以外は公にしないんじゃないですか?」
「どうして?」
「だって、危ないじゃないですか」

 やはり彼女は、潰される可能性を危惧しているようだ。
 他の冒険家にレベリングを手伝ってもらったのは、この力をバレずに使える、人の少ない狩り場に早くソロで出たかったからか。

 人が沢山いる階層で、魔法なんて使えば一発で存在がバレるしな。

 いつまでもゲジゲジとよろしくやっていては不審に思われる。
 晴輝は手早く解体を終えた。

 その間に、彼女のスキルを4ポイント振り分けた。

 スキルポイント:6→2

-魔力
 魔力0→1
 魔術適正0→1
 魔力操作0→1


 さすがに、いきなり性能の変るステータスにポイントを振るのはためらわれた。
 であればあまり使わない魔力の項目が良い。

 万が一、魔法を使う状況まで追い詰められたら、この1ポイントが仕事をしてくれるだろうことを予想して。

 魔力項目に振ると、スキルボードの評価が変化した。

 評価:槌人→精人

「意外とあっさり変るもんなんだな」

 やはり評価はスキルの増加で変化するらしい。

 前が得意なもの、後ろが強さを表しているのか?

 晴輝が剣。竹中老人が槌。

 マサツグの『長剣盾聖武勇帝級<シールドスラッシャー>』も、前が得意なもので、後ろが強さ……のように見えないこともない。

「しかし魔法は精か……」

 てっきり魔かと思ったが、それだと『魔人』になるからか?
 スキルボードがその辺りを配慮しているとは思えないが。

 残る1ポイントは運に振った。
 そうしたのは半分が趣味と、半分が賭けだ。

 おそらく彼女は、とても運が良い。

 モンパレに放置されても晴輝がいたことで助かった。
 さらに盾の男に襲撃されても、まさかのマサツグ登場で難を逃れた。

 あるいはそれは、悪運と呼んでも良いかもしれないが。
 この項目が出ている以上、彼女に幸運の素養があるのは間違いない。

-特殊
 運0→1(運を上げる) MAX5

 実力だけでは切り開けない場面で、このスキルはきっと役に立つだろう。

 心配ごとをひとつ挙げるなら、スキルの名前が『運』であることだろう。
 何故幸運でも悪運でもなく、『運』なのか?

 説明にも、どういう運なのかが書かれていない。
 実に怪しい。

 もしかしたら状況によって、悪にも幸にもなり得る要素なのかもしれない。

 少なくとも不運ではないだろう。
 スキルにデメリットが載るとは思えない。

 でなければ、筋力に1振ったのに筋肉が萎むなんてことが普通に起きてしまう。
 さすがにそれは嫌だ。

 残る2ポイントは、もしもの時のために取っておく。
 ダンジョンにおいて万が一に備えても、備えすぎるということはないのだ。



「ん?」

 休憩をしていると、ダンジョン内に僅かな振動が感じられた。

「地震?」

 どうやら火蓮も気づいたらしい。
 二人はいぶかしげに辺りを見回す。

 嫌な感覚が背筋を這いずり回る。
 それは共に無言になったからか。

「出よう。嫌な予感がする」

 いよいよ寒気が強くなってきた晴輝がそう提案する。
 火蓮は一も二も無く同調した。

 揺れはいまだに続いている。
 おまけに、堅いものを砕くような音も聞こえてきた。

 もしかしたらゲジゲジのモンパレだろうか?

 いくら殺傷力のない魔物とはいえ、大量に現われたらまずい。
 巻き込まれれば轢死もあり得る。

 ゲジゲジに踏み潰される様子を想像し、晴輝の走る速度が上がっていく。

 地上の明かりが見えてきた。

 そのとき、
 晴輝らの進攻を妨げるように、一匹の魔物が姿を現した。

 長い体に百本はあろうかという長い足。
 人の胴体を真っ二つに出来るだろう、発達した顎。

「くそっ、ムカデか!」

 晴輝は即座に短剣を抜いた。

 ムカデはゲジゲジとは違う。殺傷力の高い魔物だ。
 おまけに毒も持っている。

 ムカデが現われるのはずっと下の階だ。
 なのに、何故ここに……。

 体長は1メートルはあるか。
 黒い体に付いた赤い頭が、こちらに向いた。

 ムカデは視覚ではなく嗅覚が発達している。
 だからおそらく、晴輝らの存在を匂いで嗅ぎ分けたのだろう。

 足を動かして、ムカデがこちら近づいてくる。

「早い!」

 動きは俊敏で、ゲジゲジやキルラビットよりも素早い。

 先制攻撃しようと前に出た晴輝だったが、ムカデは晴輝に反応しなかった。

「っち! 火蓮、下がれ!」

 ムカデが反応しているのは匂い。
 火蓮の汗だ!

「くそっ、上級者かよ!」

 冗談を飛ばして緊張感を和らげる。

 全力で前に出て、晴輝は触角を切りつける。
 だが、浅い。
 おまけに手応えも堅い。

 刃は通らなかったが、晴輝は一切動揺しなかった。
 ゲジゲジと戦ったときに経験したことだ。
 だから想定内。

 本来ムカデは中層前後で出没する魔物である。
 3階や4階で狩りをしている冒険家が、まともにダメージを与えられる相手ではない。

 じゃあ何故こんな場所に?
 考えなくても晴輝はすぐに答えに思い至った。

 これが希少種か!

「火蓮、背後からの襲撃に気をつけながら出来るだけ下がれ!」
「でも――」
「こいつは希少種だ。お前を狙ってる。下がれ!」

 希少種という言葉で、火蓮は息を飲んだ。
 顔を青くしてゆっくり後ずさる。

 希少種はその名の通り、希に現われる魔物だ。
 大抵はその階層の魔物に似た別種――犬であれば狐や狼、猫であればヒョウなどに変る。

 おそらく癌やアルビノのように、魔物をポップさせる過程で突然変異が起こってしまうのだろう。

 それにしたって、冒険家からすれば良い迷惑である。
 現われる種類によってはボスより強いのだから。

 三度ほど短剣で切りつけるが、まともにダメージが与えられない。

 くそっ! ポイントがあれば腕力や技術に振るのに。
 そう思うが、ないものは仕方が無い。

 であればどうやって切り抜ける?

「っく!?」

 考え事に気を囚われたせいで、ムカデの攻撃が僅かに体をかすめた。

 いけない。
 集中しろ。
 観察しろ。
 分析しろ。
 解明しろ!

 思考を戦闘に引き戻し、集中力を高めていく。

 ムカデの僅かな動きを観察し、解析し、解明し、予測する。
 そして己の攻撃を分析し、比較し、試行し、改善する。

 連続攻撃により、横を通り抜けようとしていたムカデの憎悪が晴輝に向いた。
 途端に、攻撃回避の難易度が上がる。

 顎の攻撃を躱し、
 足を短剣で切りつける。

 先ほどは通らなかった刃が、足をするりと切り落とした。
 度重なる自己分析と試行により、刃の入れ方が改善されたのだろう。

「よしっ」

 これならムカデを倒せる!

 しかしいままで如何に力任せに攻撃していたか……。
 前の短剣があっさり折れてしまったのも頷ける。

 そんな考え事をしていたのが、いけなかった。
 晴輝の死角から迫った尾が、晴輝の体に接触。

「かはっ――!」

 晴輝は蹴鞠のように地面を転がる。

 体は、無事だ。
 骨は折れていない。
 即座に立ち上がる。

 だが、

「――?!」

 既にムカデは晴輝の頭上で、顎を大きく広げていた。

 早い。
 避けられない。
 逃げられない。

 体を僅かに反らせ短剣を突き出す。
 それも、僅かな抵抗。

 一気に腕が飲まれ、食いちぎられる。
 その未来を予測する。

「――ッ!」

 甲高い叫び声が聞こえると同時に、晴輝の頬に風がぶつかった。

 次の瞬間、
 僅かな衝撃、
 破砕音。

 ムカデの頭が、ぐらり横に揺らいだ。

「っけぇぇぇ!!」

 気合いの声と共に、晴輝は装甲が薄いムカデの裏に短剣を突き立てた。

 丁度喉の位置を切り裂き、足蹴りしてひっくり返す。
 ムカデの足が藻掻き、体をねじる。
 拘束する晴輝を、ムカデが何度も蹴りつける。

 だがその攻撃に構わず、晴輝は何度も何度もムカデに短剣を突き立てた。

 早く殺さないと、逆転される。
 そうなれば今度こそ死ぬ!!

 突いて刺して切って斬って裂いて割いて。
 突く突く突く突く突く突く突く突く突く。

 何度も短剣を打ち付けるが、堅い頭が割れない。
 足の裏を振り下ろす。

 蹴って蹴って蹴って蹴って、
 漬く漬く漬く漬く漬く漬く!!

 己の喉の痛みに、晴輝はふと我に返る。
 荒い呼吸が喉の水分を奪い、カラカラになっている。

 ムカデは……ピクリとも動かない。
 当然だ。
 ムカデの頭は、晴輝の足の下で完璧に潰れてしまっていたのだから。

「は……はは……」

 笑うように、息が漏れた。
 ……いや、晴輝は笑っていた。

 楽しかったからではない。
 ギリギリで、生き残ったから。

 そんな状況で笑ってしまうなんて……。
(俺は頭のネジがぶっ飛んでいるのか?)

 さすがに今回ばかりは危なかった。
 間一髪、生き残れた。

 ふう、と自らを落ち着けるように深く息を吐き出した。
 そのとき、体の中が猛烈に熱くなる。
 レベルアップ酔いだ。

 立っているのが辛く、晴輝はふらふらした足取りで通路の隅に腰を下ろした。
 離れた場所では火蓮も、どうやらレベルアップ酔いに罹ったらしい。
 頭を抑えて蹲っていた。

 レベルアップ酔いが治まると、晴輝はムカデの解体を行った。
 甲殻はゲジゲジより小さいが、堅くて重い。

 ゲジゲジで慣れたと思っていたのだが、これがなかなか上手くいかない。
 肉が固すぎて、ナイフの刃が思うように入らないのだ。
 それでも無理矢理甲殻を剥ぎ取る。

 肉はピンク色。見た目は鳥の胸肉のようだ。
 だがムカデは毒をもっている。さすがに味見をする勇気はない。

 他に剥ぎ取れる部位がないか確かめていると、ムカデの腹になにかしこりのようなものを感じた。

 晴輝は手早く腹を割いて中を覗く。
 すると――、

「おお?!」

 ムカデの腹の中に、小型のポーチのようなものが詰め込まれていた。
 もしかしてこれは、マジックバッグというものではないだろうか!?

『なろう』のブログで、魔物を倒したら魔導具が手に入った、という記事を見かけたことがある。
 だがまさか、こういうドロップの仕方だったとは……。

 手でつまみ上げると、楕円型のポーチがぬちゃーと糸を引いた。

「マジックバッグっぽいけど、どうする?」
「……うっぷ」

 火蓮は口を押さえて嘔吐いた。

「洗えば使えそうだけど」
「うぇ……っぷ」
「匂いは……うん、ないみたい――」
「~~~ッ!」

 顔を青くして涙目になった火蓮に、晴輝はきつく睨まれた。

 ……うん。
 ポシェットの話は、後にしよう。
ぬちゃぁ……
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