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冒険家になろう! ~スキルボードでダンジョン攻略~ 作者:萩鵜アキ

1章 スキルツリーを駆使しても、影の薄さは治らない

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逆恨みには注意しよう!

 翌日にブログをチェックすると……なんということでしょう!
 なんとPVが5回転し、おまけにブックマークが3つも増えていた。

「ひゃっほおぉぉぅ!!」

 ブログを始めて2ヶ月で、初めてついたブックマークだ。
 これほど素晴らしいことが、いだまかつてあっただろうか!

 おまけにPVも過去最高の5回転と来ている。

 昨日といい今日といい、良いことが続くなあ。
 これはやはり、火蓮を助けたからだろうか?
 神様が「正解!」って言ってるってことだろうか!?

 あまりにはしゃぎすぎて、壁がドン!って鳴った。

「おっと失礼」

 魔物を大量に倒してレベルアップしたからか、体は絶好調。
 先日の疲れはほとんど残っていない。

 印刷会社で働いていたころは、高級ユンケルを飲んでもゆっくりお風呂に浸かっても、翌日に疲れが残っていたというのに……。
 まるで子供の頃に戻ったようだ。

 気分が落ち着くと、晴輝は今日の行動について思考を巡らせる。

 昨日は店員に防具のお礼を告げるのを忘れてしまっていた。
 ひとまず武具販売店を覗いていくか?

 お礼ついでに、いまだに雑な靴や手袋を購入するのも良いかもしれない。

「あとは家に帰るだけか……」

 何故か、晴輝はどこかに収まりの悪さを感じた。
 本当にそれでいいのか? と。

 思い浮かんだのは、まだ幼さの残る火蓮の顔だ。

 昨日出会った少女、火蓮は行きずりの関係だ。
 ――決して爛れたものではない。

 晴輝は彼女が女性だから、少女だからモンパレの襲撃から救ったわけではない。

 人が襲われそうになっていたから、助けただけ。
 それは冒険家として当然のこと。

 下心など一切ないと断言できる。

 だから彼女ともう一度会いたいとか、そういう気持ちは一切ないはずなのだが……。

「……いや、違う!」

 それに気づくと、晴輝は素早く装備を身につけて客室を飛び出した。

 火蓮に会いたいとか会わないとか、そんなことを言ってる場合じゃない。
 晴輝は火蓮に、絶対に会わなければいけない。

 このままじゃ彼女は――死んでしまう!

          *

 早朝だというのに、ダンジョンは早くも冒険家でごった返している。

 ゲートの先。
 ダンジョンの入り口に並ぶ冒険家の列を、晴輝は片っ端からチェックしていく。

 だが人が多すぎて火蓮を見つけられるとはとても思えない。

「くそっ! ブログがあるんだから、ダイレクトメッセージを飛ばせばよかった」

 そんなことにも気づかないなんて、どうかしてる。

 そも、昨日のようなことがあったばかりだ。
 火蓮は今日もダンジョンに来るとは限らない。

 にもかかわらず、何故か晴輝は火蓮が来ると思い込んでいた。
 きっと、慌てすぎていたのだろう。

「はあ……」

 一度落ち着こう。
 深呼吸をして、晴輝は自らを強く諫める。

 そのとき、

「お、おはようございます!」

 晴輝に声をかける、火蓮が現われた。
 存在が空気だというのに、火蓮は晴輝を、見つけてくれた。

「よく……すぐに俺を見つけたね。これでも存在感が薄い方なんだけど」
「いえその……ええと、空星さんのお面は目立つので」

 あ、これのせいか。
 晴輝は自らのお面の縁を指でなぞった。

 見つかりやすくなる効果でも付いているのだろうか?

 考えると確かに、昨日からなにやら身の回りの雰囲気の違いを感じる。
 これは――なるほど、お面を付けたことで視線が集まっていたからか。

「もしかしてこのお面……神アイテム!?」

 仮面を付けると存在感が増す!
 まさかの魔導具の効果に、晴輝の全身が震えた。

「くそっ! なんてことだ!!」

 そんな神アイテムが、たったの500円で購入出来たなんて!
 あの店員は神か!

「どうしました?」
「い、いやなんでもない」

 火蓮の怪訝な表情に、晴輝は慌てて冷静さを取り繕う。

「火蓮さん」
「はい火蓮です!」

 声をかけると、火蓮がちょこちょこと小股で近寄った。
 まるで飼い主を見つけた小型犬のようだ。

「実は昨日のチームについて聞きたい事が――」

 どこかから、「あ」という僅かな音が聞こえた。
 それはあまりに細やかで、あっという間に冒険家達の雑踏に紛れてしまった。

 だが晴輝は聞き逃さなかった。
 レベルアップして、多少鋭敏になった彼の聴覚が、それをがっちりとつかみ取った。

 即座に背中に火蓮を隠し、声の主に目を向ける。

「…………」

 ぱくぱくと、盾を装備した男が口を開閉する。
 音が聞こえなくても、彼がなにを言ったのかがはっきりと判った。

『生きていたのか』

 その後ろには大剣と、弓を装備した男が控えている。

 やはり、彼らは気になっていたのだろう。
 自分達が見捨てた少女が、本当に死んでしまったのかが……。

 犯人は、必ず犯行現場に戻ってくる。
 例に漏れず、彼らも戻ってきた。
 火蓮が確実に死んだことを、確かめるために。

 もし火蓮が生きていれば、彼らの悪行が世に広められる可能性が生じる。

 もちろん、ダンジョンに潜って人を見殺しにすることは、決して悪いことではない。
 トロッコ問題のように、見殺しにしなければいけない状況は必ず発生する。

 だが彼らは火蓮の育成に名乗りを上げたのだ。
 状況が状況だけに、グレーゾーン行為だ。

 強い冒険家が弱い冒険家を――身を挺して守らなければいけない人を、自らが生き残るために生け贄に差し出したとあってはもう、マトモな冒険家業は続けられないだろう。

 危険行為と見なされれば、『なろう』の運営がアカウントをBANする可能性もある。

 だからこそ彼らは確認に来た。
 ――生きていれば、再び彼女を魔物の餌にするために。

 たしか火蓮は、彼らが9階で活動をしていると言っていた。
 であれば彼らには晴輝さえも、赤子の手を捻るように葬る力があるはずだ。

 一体、どう出るつもりだ?
 緊張感が増していく。

 まさかここで暴れるつもりか?

 ……さすがにそれはないだろう。
 人通りが多いし、なにより冒険家対策専用の特殊警察が黙っていない。

 あるいは晴輝は、少し考えすぎていたかもしれない。

 彼らだって冒険家だ。
 罪悪感に耐えきれず、火蓮を捜索しに来た可能性だってあるじゃないか!

 しかし、そんな晴輝の予想を裏切り、彼らが殺気を放ちながら陣形を整えた。

「嘘だろっ!」
「――っ」

 完全に殺る気だ。
 あまりの出来事に晴輝は動揺するが、すぐ後ろで聞こえた息を飲む声に、冷静さを取り戻す。

 彼らがどこまでやるつもりなのか。
 考えるまでもなく、すぐに判明した。

 前衛の男がその盾を前に掲げて突っ込んできた。
 背後では既に矢が弓にセットされている。

 左へ避ければ盾男に攻撃され、右へ避ければ矢が放たれる。
 さらにそれらの攻撃をかいくぐっても、後ろに控えた大剣が見逃さないだろう。

 どうする……。

 無理に避ければ、火蓮が真っ先にやられる。
 かといって、彼らの攻撃を防ぐ手立てがあるか……。

 どうする!?

 とにかく観察だ。
 観察して、彼らの隙を突いて逃げ出さなくては!

 しかし晴輝の観察眼では、彼らの隙が見つからない。
 じりじりと間合いが詰められる。

 武器はまだ、抜かれていない。
 抜けばすぐさま警察に気づかれる。
 だからギリギリまで抜かないはずだ。

 なのに、彼らの武器がどこにあるか。どこを攻撃するつもりかが、晴輝には手に取るように理解出来た。

 これがおそらく、殺気。
 ぞわりと晴輝の背筋が震える。

 じり、と足を動かす。
 その分だけ盾男も動く。

「……ん?」

 またじり、と晴輝は足を動かした。
 盾男も同じ分だけ移動する。

 ……これはもしかして。

 光明が、髪の毛よりも細い希望の筋が、見えた気がした。

 次の瞬間。
 盾男が一気に間合いを詰めた。

 行けるか!?

 晴輝は光明に向かって足を動かす。

 この陣形は、盾男を頂点として敵へ直角に向かうことで成立している。
 だからその角度を変えれば、陣形に若干の歪みが生じる。

 その歪みから、危機的状況を抜け出す隙が生まれる!
 そう信じて晴輝は全力で地面を踏む。

 だが、

(くそ、速いっ!)

 晴輝の速度では盾男の突進を上回ることが出来ない。

 圧倒的な力量。
 見えた光明をかき消すほどの地力の差。

 周りの冒険家が異変に気づき、「あっ」と声を上げ始めたそのとき、

「――ッ!」

 盾男が長剣を抜いた。

 既に状況は分水嶺を越えた。
 晴輝が全力で動いても間に合わない。

 それが判るのだろう。盾の男も、獲ったというような笑みを浮かべた。
 実に……嫌らしい笑みだ、くそ食らえ。

 盾が構えた剣が腹に突き刺さる――。

 その前に、

「ぶごあ!!」

 何者かがこの騒動に乱入した。

 乱入し、盾男を一瞬で彼方に付き飛ばした。
+注意+
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