家とお風呂と猫化
「家を建てる」といっても、そうカンタンなわけもなく、苦戦していた。
「建築」というスキルがあるが、家を建てるためにはレベルが足らないらしい。
「どうしようかな~。」
ちょっと、あきてきた。
ふと、手伝ってくれないキョーちゃんの方を見ると、何やら地面に書いていた。
そう、うんうん唸りながら。
何を書いてるのか覗いてみると、どうやら設計図?のようなもの。
まぁ、もうしばらく見ていよう。私も休めるしw.
しばらくして、徐ろに立ち上がったキョーちゃんは、切断した材木を並べていく。
手伝おうと思ったが、私が見えていないようだ。
ふぅ、熱中するといつもこうなんだよね、キョーちゃんって。
私のほうが子どもなはずなのに、なんだか小さい子が必死に頑張ってる姿に見えなくもない。
やっと、私に気付いたらしく「えへへっ、手伝ってぇ?」といってきた。
ふぅ、ほんとにコレ元男かぁ、仕草が完全に萌え系女の子なんですけど。
そうこうしているうちに、あらかた配置が終わったようなので、組み上げるのを手伝っていくと、「金属加工で、釘と金槌つくってぇ~」っと要望がきた。
まぁ、生産職人系スキル持ってるのは私なので、インベントリから簡易溶鉱炉とかのいつも使ってるやつを取り出して、安全・頑丈・強化の付加のついた特性スクリュー釘を2000本と、パワー調整機能付きハンマーを作り上げ、「キョーちゃんできるの?」って疑問をいいながら渡すと、トントン、トントン、・・・・と、心地よいリズムを刻みながら、材木を組み上げていった。
まず、基礎や支柱を開けたところに6畳間7つ分くらいに打ち込んでいく。
そして、支柱と支柱を横木でつなぎあわせながら全体の大きさを整えていく。
んで、部屋ごとに床材を打ち付けていく。床ができたところで、柱を立てていった。
ちょっと離れたところに巨木があったので、大黒柱にしようと切りだすと、枝からたくさんの果実が落ちてきた。とりあえず、当面の食料は何とかなりそうだね。
柱を幾つか建てて、つなぎあわせたあと、屋根を作った。
で、その屋根の上に最初に切り落としたいろんな樹の枝を打ち付けて、さらに強化を図ってみた。
キョーちゃんが屋根の細工をしているうちに、私は中の仕切りを組み付けていく。
細工技工のスキル使って、大工さんみたいにはできないけど、なんとか内壁が完成。
最後に二人で外壁を作った頃には夕方だった。最低限の寝床と食料は確保できた。
作り上げた家の中に入ると、「疲れたァ、お風呂入りたいよ~」とキョーちゃんが駄々こねはじめたではないか。まったくこの人は、それでも元教師か、男なのかと呆れてしまったが、思考が幼女化してきてるようだし、しょうがないか。
諦めながらも、風呂でイチャイチャできるなと考えを切り替えて、残ってる材木で浴槽とかを作ってみた。
「でもお湯がないよねぇ」とは思わない。だって魔法があるじゃん。
すぐに「ウォーターボール」で水を張る、「スモールファイヤーボール」をちょっとずつ落として温度を確認。
うん、ちょうどいい。さっそくキョーちゃんを剥がしに行きますか…。
・・・? あれ? あれれ?
おかしい、キョーちゃんがいない。なんで?
「キョーちゃんどこ~?」返事がない。
「ね、キョーちゃんってばぁ!」反応がない。
ほんとに、キョーちゃんがいない。なんで?
おかしいなぁ、さっきまでゴロゴロと床を転がりながら、木の実を食べて・・・
木の実?
噛ったあとのある木の実が、足元に転がっていた。
あれ?なんかおかしい?何がおかしいんだろう?
ふと疑問に思ったその時、「にゃ~」とアメリカン・ショートヘアーみたいな猫が擦り寄ってきた。
なんで猫?てか、この猫もしかして酔っぱらってる?
そう思って抱き上げてみた。もふもふ可愛い。
って、今は猫よりキョーちゃんの安否だよ。
で、落ちてる木の実を気配察知で調べてみると、効果がまたたびと同じらしい。
あれ?またたび?猫?
もしかしてと思い、猫に向かって「キョーちゃん?」と声をかけると「にゃ~」という返事が返ってくる。
おいおい、まさかとは思ったけど、猫になってるとは。
まぁ、たしかにキョーちゃんの種族設定は「ハイブリット・ハーフ」猫と言うよりも虎系獣人の血が混じってるので、猫化しなくもないのか。
食べなくてよかった。もし食べてたら、私まで猫化するとこだったよ。
別に猫になるのがイヤな訳じゃないけどね、今の状況的に考えると、どうやって戻るかさえわからないうちは……、うん、気をつけるべきよね。
とりあえず、お風呂に入って落ち着こうと思い、服を脱いで猫を抱いたままお風呂に入った。
猫も気持ちよさそうにしている。ふぅ、とりあえずは温まろう。
すると、猫がさっきよりも大きくなってる気がした。
「あれ、猫ちゃん大きくなった?」
「にゃ~」
会話ができない。どーしようか。
しょうがない、念話やってみるか。
『キョーちゃん、聞こえる?』
『にゃ、あ、え、もしかして、ね、念話なのか?』
念話は通じるようである。
『なんで、猫化してるか分かるかなぁ?お姉さんホント心配したんだよぉ、猫ちゃん!』
ちょっと脅し気味に、顔をひきつらせながら念話をかけると、猫は湯船から飛び出して土下座した。
『ごめんにゃさい。ごめんにゃさい。つい、美味しそうだったから食べてしまって、それでそれで・・・・・』
猫の土下座なんて初めて見た。てか、普通はありえないわけで。
とりあえず、洗い場に逃げた猫の首をひょいっとつかみ湯船に戻す。
そして抱きかかえるようにして、猫の背に胸を押し付けながら風呂に入り直した。
『ごめんにゃ~後生にゃ~逃がしてにゃ~勘弁にゃ~』と嘆きながらも猫はだんだんと大きくなっていく。
もしかすると、お風呂であたたまることで戻るのかもしれないと思い、もとに戻るまで抱きかかえながら風呂に入り続けた。
やがて予想通り、キョーちゃんは元に戻ったのだけどノボセてしまいグロッキー。
私は、ハイブリット・キメラという特殊な種族のお陰で、暑いのも冷たいのも問題ない。ただの感覚として温かいのが好きなだけだったりする。
お風呂から出たあと、インベントリから布団を出して、寝ることにした。
そうそう、戸締りを忘れずにね。
あと、インベントリにまだまだいろいろはいってるから、明日じっくり調べることにする。
ちなみに、キョーちゃんはノボセてバテたままである。
お風呂以外の解決法が見つかるまでは、あの木の実は見つからないようにしまっておくとしようかな。
食べてみたいけど、どうなるかわからないしね。
ともかく、今日はいろいろ有りました。
明日も晴れるといいな。おやすみなさい。