やぎさんゆうびん
黒山羊さんとの手紙のやり取りを始めてから、はや3か月。
一向に手紙の内容がわからない。
なぜならば、いつも私のもとについた黒山羊さんの手紙を読まずに食べてしまうからだ。
内容がわからない。
そして、いつも『さっきの手紙のご用事何?』と返信するのだ。
ダメだとわかっていながらもやめられないのだ。
普段ならそんなことはない。
現にシマリスさんからの手紙は口にすることはなかったのだ。
これは一つの予測なのだが、どうやら紙の質が違うのではないかと予想される。
現代の紙は純粋な植物成分でできてはいない。
それ故、口にすると腹を壊すのだ。
しかし、我が家にある紙は誤飲を防ぐため昔ながらの紙の成分でできている。
黒山羊さんも私と同じ山羊である。
同じように紙を扱っているのではないだろうか?
そのようなことをお昼についた黒山羊さんからの手紙を反芻しながら、考えていた。
あれから1か月。
手紙のやり取りは続き、らちが明かない。
もう仕方がないので黒山羊さん宅を訪れることにした。
突然の訪問に黒山羊さんは驚いたようだった。
家の中に勧める黒山羊さんに対し、まず謝罪した。
しかし、黒山羊さんから同じように謝罪されてしまった。
どうやら、黒山羊さんも同じようについた手紙を食べていたようだ。
「ところで手紙の内容とはどのようなものだったのだい?」
「あー、そのことかい?大したことではないのだけど。もうあきらめかけているし」
「ふむ。しかし、ここまで足を運んだのだ。無駄だとしても聞いておきたいのだがよいだろうか?」
「ああ、いいとも。僕は小説家になろうと思い、自作の小説を投稿しようとしたのだが・・・」
「おー、それはすごいじゃないか」
「だが、食べてしまうのだ。投稿する前の原稿を」
「あー」と納得したような声を漏らし、それから黒山羊さんを励ました。
とりあえずネットの海の中に投稿サイトなるものがあるという情報を教えておいた。