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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

第四章

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神代魔法の使い手

 何の前触れもなく、突如、天より放たれた白き極光。

 その光は、今まさに最後のマグマ蛇に止めを刺そうとしていたハジメに絶妙なタイミングで襲い掛かり、凄絶な熱量と衝撃を以てハジメを破壊の嵐の中へと呑み込んだ。

「ハ、ハジメぇ!!!」

 ユエの絶叫が響き渡る。ハジメが極光に飲み込まれる光景を、少し離れた場所から呆然と見ていることしか出来なかったシアとティオだったが、出会ってこの方一度も聞いたことのないユエの悲痛な叫び声に、ハッと我を取り戻した。

 轟音と共にハジメの真上から降り注いだ極光は、そのまま最後のマグマ蛇をも呑み込んで灼熱の海に着弾し、盛大に周囲を吹き飛ばしながら一時的に海の底をさらけ出す。極光は、しばらくマグマの海を穿ち続けたが、次第に細くなっていき、遂にはスっと虚空の中へと溶け込むように消えていった。

 必死にハジメのもとへ飛んでいくユエの目に、消えた光の中から、ボロボロになりながらも、なお空中に留まっているハジメの姿が飛び込んできた。しかし、胸と顔を守るように両腕をクロスする形で構えていたハジメは、直ぐにバランスを崩すと、そのまま極光の衝撃で荒れるマグマの海に落下し始める。

「ッ! “来翔”!」

 ユエは、意識を失っているのか、ぐったりしたまま背中から倒れこむように落下するハジメを飛翔の魔法で待ち上げ、その隙に一気に接近し、両腕でハジメを抱き抱えると近くの足場に着地した。

「ッ! ハジメ! ハジメ!」

 顔にこれ以上ないほどの焦燥感を滲ませて、取り出した神水をハジメに飲ませる。ハジメの状態は、かなり酷いものだった。右腕は焼き爛れて骨まで見えており、左腕の義手も半ば融解している。眼帯はちぎれ飛んで頬から首筋にかけて深い傷が入っており血が止めどなく流れ出していた。更に、腹部全体が黒く炭化してしまっている。それでも、内臓まで損傷していないのは成長の証か。

 あの時、極光がハジメに向かって降り注いだ瞬間、ハジメは間一髪、身体を捻ることで極光に対して正面を向き、“金剛”の派生“集中強化”と“付与強化”を行った。そのおかげで、頭部は付与強化された義手で守られ、心臓や肺は右手とドンナーで守ることが出来た。腹の部分も特殊な魔物の革を使った衣服を着ていたため、それに“付与強化”することで防御力を上げた。ハジメ自身の魔耐の値が並外れていることもあり、命に別状はないようだが……

「んっ……治りが遅い!」

 ユエの苛立ちの混じった呟きの通り、神水を使った治癒が一向に進まなかった。ユエは歯噛みする。

 かつて【オルクス大迷宮】で最後の試練であるヒュドラと戦ったときに、ユエを庇って極光に焼かれ倒れ伏したハジメ。もう二度と見たくない、二度とハジメをこんな目に会わせてなるものかとそう誓ったというのに、ハジメが極光に呑み込まれる光景も重傷を負い力なく倒れ伏す光景も、まるであの時の再現だ。ユエは、悔しさで普段は無表情の顔を盛大に歪めた。

 と、その時、

「馬鹿者! 上じゃ!!」

 ティオの警告と同時に無数の閃光が豪雨の如く降り注いだ。それは、縮小版の極光だ。先程の一撃に比べれば十分の一程度の威力と規模、されど一発一発が確実にその身を滅ぼす死の光だ。

 ユエは、二本目の神水をハジメに飲ませることに気を取られすぎて上空から降り注ぐ数多の閃光に気が付いておらず、警告によって天を仰いだ時には魔法の発動がユエを以てして間に合わない状況だった。あと三秒、いや、一秒あれば……引き伸ばされた時間の中で、ユエは必死に防御魔法を頭の中で構築する。

「させんのじゃ! “嵐空”!」

 その数秒を、駆けつけたティオが稼ぐ。発動させたのは風系統の中級防御魔法“嵐空”。圧縮された空気の壁が死の雨を受け止める。直撃を受けた瞬間、大きくたわむ風の結界は、本来ならそのまま攻撃を跳ね返すことも出来るはずだったが、そのような余裕など微塵もなく、次々と着弾する小極光に早くも悲鳴を上げている。防げた時間は、やはりほんの数秒だった。

 しかし、それで十分。

「“聖絶”!」

 ユエの防御魔法が発動する。本来なら“絶禍”を展開したかったが、いくら熟練度が上がり発動時間を短く出来るようになってきたとは言え、重力魔法の構築・発動は、他の属性魔法の比ではない。咄嗟に発動出来る上級レベルの防御魔法としては“聖絶”が適当だった。

 ユエが、掲げた手の先に燦然と輝く光の障壁が出現し、半球状にユエと傍らで倒れているハジメを覆う。直後、ティオの展開していた“嵐空”が、遂に小極光の嵐に耐え切れず空気が破裂するような音と共に消滅し、同時に、その衰えぬ破壊の奔流が、その下に展開されていた光の障壁に殺到した。

ドドドドドドドドドドッ!!!

 大瀑布の如き圧力がハジメ達を消滅させんと間断なく襲い掛かり、ユエの“聖絶”を軋ませる。ユエは、想像以上の威力にこのままでは押し切られると判断し、展開中の“聖絶”を、全体を覆うバリア状から頭上のみを守るシールド状に変形させた。守護する範囲が狭くなった分、頑丈さが増す。

 周囲は、小極光の余波で荒れ狂い破壊し尽くされ、既にユエとハジメのいる場所以外の足場は粉微塵にされてマグマの海へと沈んでいった。

 この小極光は、どうやら集中的にハジメを狙っているらしく、少し離れたところの足場にいるシアとティオには足止め程度にしか降り注いでいないようだ。それでも、シアとティオの二人が足止めされる程度には、威力も密度もある弾幕であり、尋常な攻撃でないことは確かである。

「ハジメさん! ハジメさぁん!」
「落ち着くのじゃ、シア! 今、妾の守りから出てはお主でも死ぬぞ!」
「でもぉ! ハジメさんが!」

 泣きそうな表情で小極光の豪雨の中に飛び出そうとするシアを、渦巻く風のシールドでその軌道を逸らしながら、ティオが必死に諌める。

 ティオとて、ハジメが心配でならない。シアの気持ちは痛いほどわかる。しかし、縮小版とはいえ、ハジメに重傷を負わせた挙句、神水による治癒効果すら薄れさせるという恐るべき攻撃の最中を無防備に飛び出させるわけには行かない。片手でシアの首根っこを掴みながら、必死に光の暴威を逸らし続ける。

 十秒か、それとも一分か……永遠に続くかと思われた極光の嵐は最後に一際激しく降り注いだあと、ようやく一時の終わりを見せた。周囲は、見るも無残な状態になっており、あちこちから白煙が上がっている。

 ユエもティオも魔力を使いきり、肩で息をしながら魔晶石にストックしてあった魔力を取り出して充填した。

 と、同時に、上空から感嘆半分呆れ半分の男の声が降ってきた。

「……看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達は危険過ぎる。特に、その男は……」

 ユエ達は、その声がした天井付近に視線を向ける。そして驚愕に目を見開いた。なぜなら、いつの間にか、そこにはおびただしい数の竜とそれらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜が飛んでおり、その白竜の背に赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男がいたからだ。

「まさか、私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは……おまけに報告にあった強力にして未知の武器……女共もだ。まさか総数五十体の灰竜の掃射を耐えきるなど有り得んことだ。貴様等、一体何者だ? いくつの神代魔法を修得している?」

 ティオに似た黄金色の眼を剣呑に細め、上空より睥睨する魔人族の男は、警戒心をあらわにしつつ睨み返すユエ達に、そんな質問をした。ユエ達の力が、何処かの大迷宮をクリアして手に入れた神代魔法のおかげだと考えたようだ。

「質問する前に、まず名乗ったらどうだ? 魔人族は礼儀ってもんを知らないのか?」

 そんな魔人族の男に答えたのは、さっきまで倒れていたハジメだった。魔人族の男が眉をひそめる。だが、彼が口を開く前に、ユエ達の声が響き渡った。

「ハジメ!」
「ハジメさん!」
「無事か! ご主人様よ!」

 ハジメは、何とか上体を起こすものの、やはりダメージが深いのか再び倒れそうになる。それを、すかさずユエが支え、残り僅かな足場にシアとティオも飛び移ってハジメを気遣うように寄り添った。

 ハジメは、心配そうな眼差しで自分を見つめるユエ達に大丈夫だと笑みを見せ、自らの足で立ち上がった。しかし、すぐさま戦闘が出来るような状態ではないだろうし、額に浮かぶ脂汗が激痛を感じていることを示している。それでも、ハジメは、ユエ達から視線を上空の魔人族に転じると、不敵な笑みを見せた。

「……これから死にゆく者に名乗りが必要とは思えんな」
「全く同感だな。テンプレだから聞いてみただけだ。俺も興味ないし気にするな。ところで、お友達の腕の調子はどうだ?」

 ハジメは、回復のための時間稼ぎがてらに、そんな事を揶揄するように尋ねた。魔人族の男の“報告”やら“待ち伏せていた”というセリフから、以前、ウルの町で暗躍し、最後にハジメによって腕を吹き飛ばされながらも命からがら逃げ切った魔人族を思い出したのだ。おそらくそいつから情報を得たのだろうと。

 魔人族の男は、それに眉を一瞬ピクリと動かし、先程より幾分低くなった声音で答えた。

「気が変わった。貴様は、私の名を骨身に刻め。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」
「神の使徒……ね。大仰だな。神代魔法を手に入れて、そう名乗ることが許されたってところか? 魔物を使役する魔法じゃねぇよな? ……極光を放てるような魔物が、うじゃうじゃいて堪るかってんだ。おそらく、魔物を作る類の魔法じゃないか? 強力無比な軍隊を作れるなら、そりゃあ神の使徒くらい名乗れるだろうよ」
「その通りだ。神代の力を手に入れた私に、“アルヴ様”は直接語りかけて下さった。“我が使徒”と。故に、私は、己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定する」

 どこか聖教教会教皇イシュタルを彷彿とさせるフリード・バグアーと名乗った魔人族は、真っ向からハジメ達の存在そのものを否定した。その苛烈な物言いに、しかし、ハジメは不敵に笑うのみ。回復は遅いが、“魔力変換”の派生“治癒力”で魔力を治癒力に変えているので、止血だけは出来ている。左腕は使えないが、右手は骨が見えていても折れてはいないから使えないこともない。「俺は、まだ戦える!」ハジメは、そう気合を入れ直す。

「それは、俺のセリフだ。俺の前に立ちはだかったお前は敵だ。敵は……皆殺す!」

 ハジメは、そう雄叫びを上げながら、激痛を堪えてドンナーをフリードに向け引き金を引いた。激発の反動に右腕と体が悲鳴を上げるが全て敵への殺意で捩じ伏せる。更に、“瞬光”を発動してクロスビットも取り出し突撃させた。それと同時に、ユエが“雷龍”を、ティオがブレスを、シアが炸裂スラッグ弾を放つ。

 しかし、灰龍と呼ばれた体長三、四メートル程の龍が数頭ひらりと射線上に入ると、直後、正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁が出現し、ハジメ達の攻撃を全て受け止めてしまった。

 その障壁は、ハジメ達の攻撃力が絶大であるために数秒程で直ぐに亀裂が入って砕けそうになるのだが、後から更に他の灰竜が射線上に入ると同じように障壁が何重にも展開されていき、思ったように突破が出来ない。よく見れば、竜の背中には亀型の魔物が張り付いているようだ。甲羅が赤黒く発光しているので、おそらく、障壁は亀型の魔物の固有魔法なのだろう。

「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」

 そう言うと、フリードは極度の集中状態に入り、微動だにせずにブツブツと詠唱を唱え始めた。手には、何やら大きな布が持たれており、複雑怪奇な魔法陣が描かれているようだ。新たに手に入れた神代の力と言っていた事から、おそらく、この【グリューエン大火山】で手に入れた神代魔法なのだろう。神代魔法の絶大な効果を知っているハジメ達は、詠唱などさせるものかと、更に苛烈に攻撃を加え始めた。

 しかし、灰竜達は障壁を突破されて消し飛んでも、直ぐに後続が詰めて新たな障壁を展開し、ハジメ達の攻撃をフリードに届かせない。本来なら、ユエ達に援護を任せて、“空力”で直接叩きに行くのだが、今はまだ回復しきっておらず、灰竜の群れに叩き落とされるのが関の山だと思いハジメは歯噛みした。

 ドンナーをしまい、反動の少ないオルカンを取り出し全弾ぶっ放すが、数頭の灰竜を障壁ごと吹き飛ばして終わりだった。フリードには届いていない。クロスビットも、威力が足りず障壁を破壊しきるには至らない。

 と、その時点でタイムアップだったようだ。フリードの詠唱が完成する。

「“界穿”!」
「ッ! 後ろです! ハジメさん!」

 最後の魔法名が唱えられると同時に――フリードと白竜の姿が消えた。正確には、光り輝く膜のようなものが出現し、それに飛び込んだのだ。ハジメ達は、フリードが魔法名を唱えると同時に叫んだシアの警告に従い、驚愕に目を見開く暇もなく背後へ振り返る。

 そこには……ハジメの眼前で大口を開けた白竜とその背に乗ってハジメを睨むフリードがいた。白竜の口内には、既に膨大な熱量と魔力が臨界状態まで集束・圧縮されている。ハジメが、咄嗟にオルカンを盾にするのと、ゼロ距離で極光が放たれるのは同時だった。

ドォゴォオオオオ!!!

「ぐぅう!! あぁああ!!」

 轟音と共に、かざしたオルカンに極光が直撃しハジメを水平に吹き飛ばした。凄絶な衝撃に、ただでさえダメージを受けていた肉体が悲鳴を上げ、ハジメの食いしばった口から苦悶の呻き声が上がる。

「ハジメ!」

 極光に押され吹き飛ぶハジメを助けようと、ユエ達が咄嗟に、白竜に向かって攻撃を放とうとするが、それを読んでいたように灰竜からの掃射が彼女達に襲いかかり、その場に釘付けにされてしまった。

 吹き飛ぶハジメは、直撃こそ受けていないものの極光の衝撃に傷口が開いてしまい盛大に血飛沫を撒き散らす。そして、必死に傷ついた右腕のみでオルカンを支え、“空力”で踏ん張りつつも、このままでは煮え滾る海に叩き落とされると悟ったハジメは、“限界突破”を発動した。

 傷ついた体で“限界突破”を使うのは非常に危険な賭けだ。普段なら、“限界突破”を使っても、ひどい倦怠感に襲われるだけで済むが、今の状態で使えば、おそらく使用後に身動きがとれなくなるだろう。それでも、状況の打開に必要だと判断した。

 ハジメの体を紅い光の奔流が包み込み、力が爆発的に膨れ上がる。

「らぁあああ!!」

 雄叫びを上げながらオルカンを跳ね上げ極光を強引に上方へと逸らす。それでも、完全に逸らす事は出来ず、極光の余波を喰らい更に血を噴き出しながら吹き飛んだ。

 白竜が、追撃に光弾を無数に放つ。そんなところまでヒュドラにそっくりだ。だが、かのヒュドラよりも極光の威力が上である以上、光弾の威力も侮ることは全く出来ない。神代魔法の使い手とのコンビネーションも相まって厄介さは格段に上だ。

「クロスビットぉ!」

 ハジメは、襲い来る光弾を極限の集中によりスローになった世界で、木の葉のように揺れながらかわしていく。そして、極光により融解して使い物にならなくなったオルカンをしまうと、ドンナーを連射しながら、同時にクロスビットを飛ばしてフリードを強襲した。

「何というしぶとさだ! 紙一重で決定打を打てないとはっ!」

 フリードは、再び、亀型の魔物が張る障壁の中に包まれながら、重傷を負っているはずのハジメのしぶとさに歯噛みすると同時に驚嘆の眼差しを送った。そして、白竜を高速で飛ばしながら、再び、詠唱を唱え始めた。

“そうはさせんよ!”

 クロスビットの猛攻に耐え、光弾を掻い潜りながら距離を詰めてくるハジメから後退して時間を稼ごうとするフリードと白竜に、突如、空間全体に響くような不可思議な声が届く。と、同時に、横合いから凄まじい衝撃が襲いかかった。

 吹き飛ばされ、白竜にしがみつきながら思わず詠唱を中断してしまったフリードが、体長十メートルの白竜を吹き飛ばした原因に目を向けた。直後、驚愕にその目を見開く。

「黒竜だと!?」

“紛い物の分際で随分と調子に乗るのぉ! もう、ご主人様は傷つけさせんぞ!”

 フリードと白竜を吹き飛ばしたのは、フリードの言葉通り“竜化”したティオだ。竜人族であることを魔人族に知られることによるリスクを承知の上で、その姿をあらわにしたのだ。白竜より一回り小さいサイズではあるが、纏う威圧感は白竜を遥かに凌ぐ。

 ティオが、ハジメ達の旅に同行する決断をしたのは、ハジメを気に入ったからというのもあるが、異世界からやって来た者達の確認、そして行く末を確かめるためという理由もあった。その前提として、自分が竜人族であることは、極力隠したいと思っていた。それは掟なのだから当然のことだ。いくら強力な種族であっても、数の暴力には敵わない。その事は、五百年前の迫害で身に染みているのである。

 しかし、無敵だと、傷つくはずがないと思い込んでいたハジメが重傷を負った。天より降り注ぐ極光に焼かれ力なく倒れ伏すハジメを見たとき、ティオの胸中は激しい動揺に襲われた。

 自分は何を勘違いしていたのか。ハジメとて人。傷つくこともあれば、一瞬の油断であっさり死ぬことも有り得るのだ。そんな当たり前のことを漸く思い出したティオは、長く生きておきながら常識を忘れるほどハジメに傾倒していた事を、今この時にこそ明確に自覚した。単なる興味の対象でも、ご主人様でもない。ハジメは、一人の女として失いたくない“男”なのだと自覚したのだ。

 それ故に、人前での“竜化”の決断をした。仲間の危機に出し惜しみをするのであれば、もう胸を張って仲間を名乗れない。なにより、竜人族ティオ・クラルスの誇りにかけて、掟と大切な者の命を天秤にかけるような真似は出来なかったし、するつもりもなかった。

“若いのぉ! 覚えておくのじゃな! これが“竜”のブレスよぉ!”

ゴォガァアアアア!!

 轟音と共に黒色の閃光が白竜もろともフリードを呑み込もうと急迫する。白竜は身をひねり迫るブレスに向けて同じように極光のブレスを放った。黒と白の閃光が両者の間で激突し、凄絶な衝撃波を撒き散らす。直下にあるマグマの海は衝突地点を中心に盛大に荒れ狂いマグマの津波を発生させた。

 最初は拮抗していたティオと白竜のブレスだが、次第に、ティオのブレスが押し始める。

「くっ、まさか、このような場所で竜人族の生き残りに会うとは……仕方あるまい。未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと……」
「させねぇよ」
「ッ!?」

 竜人族については報告がされていなかったのか、フリードは本気で驚いているようで、まさかの事態に歯噛みしながら懐から新たな布を取り出し、再び正体不明の神代魔法を詠唱しようとした。

 しかし、それは、背後から響いた声と共に撃ち放たれた衝撃により中断される。

 傷口から血を噴き出しながら、いつの間にかフリードの背後に回っていたハジメがドンナーを連射したのだ。一発の銃声と共に放たれた弾丸は六発。その全てが、ほぼ同時に、一ミリのズレもなく同じ場所へピンポイントに着弾した。

 フリードの傍にいた亀型の魔物が、フリードが反応するより早く障壁を展開していたのだが、赤黒く輝く障壁はほぼゼロ距離から放たれた閃光と衝撃により、あっさり喰い破られた。焦燥感をあらわにしたフリードの懐へハジメが潜り込む。

 そして、ドンナーに纏わせた“風爪”を発動させながら、一気に振り抜いた。

「ぐぁあ!?」

 間一髪、後ろに下がることで両断されることは免れたが、フリードの胸に横一文字の切創が刻まれる。ハジメは攻撃の手を緩めず、フリードを切り裂いた勢いそのままに、くるりと回転すると“魔力変換”による“魔衝波”を発動させながら後ろ回し蹴りを放った。

ドォガ!!

「がぁああ!!」

 辛うじて左腕でガードしたようだが、勢いを殺すことなど出来るはずもなく、左腕を粉砕されて内臓にもダメージを受けながら、フリードは白竜の上から水平に吹き飛んでいく。

 主がいなくなったことに気がついたのか、気を逸らした白竜に黒きブレスが一気に迫る。そして、ハジメが白竜の上から飛び退いた直後、ティオのブレスが白竜を極光ごと盛大に吹き飛ばした。

「ルァアアアアン!!」

 悲鳴を上げて吹き飛んだ白竜は、ティオのブレスの直撃を受けた腹を大きく損傷しながらも空中で何とか体勢を立て直し、天井付近へと一気に飛翔する。そこには、いつの間にか灰竜に乗ったフリードがいた。上空で合流すると、フリードは再び白竜に乗り込んだ。

 ハジメは、“空力”で追撃を仕掛けようとする。しかし……

「ぐっ!? ガハッ!!」

 ハジメを包んでいた紅色の光が急速に消えて行き、傷口からだけでなく、口からも盛大に血を吐き出した。“限界突破”のタイムリミットだ。傷を負った状態で、更に限界越えなどしたものだからダメージは深まり、リミットも早かったらしい。“空力”が解除されて、マグマの海に落ちそうになるハジメ。

“ご主人様よ! しっかりするのじゃ!”

「ぐっ、ティ、ティオ……」

 落下しかけたハジメを、飛翔してきたティオが自分の背に乗せる。ハジメは、“限界突破”の副作用と深刻になったダメージに倒れそうになるが、何とか片膝立ちで堪え、ギラギラと光る眼光で上空のフリードを睨みつけた。

 見れば、フリードの周囲に、ユエ達を襲っていた灰竜達も集まっている。

「ハジメ!」
「ハジメさん!」

 ユエとシアが、ハジメの名を叫びながら駆けつけてきた。ティオは、近くにあった足場に着地する。今のハジメでは、攻撃を受けたときのティオの戦闘機動に耐えられず落下するおそれが高いからだ。同じ足場に飛び移ってきたユエとシアは、直ぐにハジメの傍に寄り添いその体を支えた。

「……恐るべき戦闘力だ。侍らしている女共も尋常ではないな。絶滅したと思われていた竜人族に、無詠唱無陣の魔法の使い手、未来予知らしき力と人外の膂力をもつ兎人族……よもや、神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められるとは……最初の一撃を当てられていなければ、蹴散らされていたのは私の方か……」

 何かを押し殺したような声音で語りながら、ハジメと火花散る視線を交わすフリード。肩で息をしながら、無事な右手で刻まれた胸の傷口を押さえている。

「なに既に勝ったこと前提で話してんだ? 俺は、まだまだ戦えるぞ」

 ハジメは、フリードの言葉に不快げに表情を歪めると、ボロボロの体で、それでも殺意で眼をギラギラと光らせながら戦闘続行を宣言する。

「……だろうな。貴様から溢れ出る殺意の奔流は、どれだけ体が傷つこうと些かの衰えもない。真に恐るべきはその戦闘力ではなく、敵に喰らいつく殺意……いや、生き残ろうとする執念か……」

 フリードは、一度目を伏せると決然とした表情で再びハジメを睨みつける。

「この手は使いたくはなかったのだがな……貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」
「なにを言ってる?」

 フリードは、ハジメの質問には応えず、いつの間にか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えた。

 その直後、

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!! ズドォン!!

 空間全体、いや、【グリューエン大火山】全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。

「うおっ!?」
「んぁ!?」
「きゃあ!?」
“ぬおっ!?”

 突如、下から突き上げるような衝撃に見舞われ、四者四様の悲鳴を上げて必死にバランスをとるハジメ達。激震は刻一刻と激しさを増し、既に震度で言えば確実に七はあるだろう。マグマの海からは無数の火柱、いや、マグマ柱が噴き上がり始めている。

「ハジメさん! 水位が!」

 シアの言葉に、ハジメ達が足場の淵を見れば、確かにマグマの海がせり上がってきていた。

「何をした?」

 ハジメが、明らかにこの異常事態を引き起こした犯人であるフリードに押し殺したような声音で聞いた。フリードは、中央の島の直上にある天井に移動しながら、その質問に応える。

「要石を破壊しただけだ」
「要石……だと?」
「そうだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか? 【グリューエン大火山】は明らかに活火山だ。にもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということ」
「それが“要石”か……まさかっ!?」
「そうだ。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」

 フリードは、冷たくハジメ達を見下ろすと、首に下げたペンダントを天井に掲げた。すると、天井に亀裂が走り、左右に開き始める。円形に開かれた天井の穴は、そのまま頂上までいくつかの扉を開いて直通した。

 どうやら、【グリューエン大火山】の攻略の証で地上までのショートカットを開いたようだ。フリードは最後にもう一度、ハジメ達を睥睨すると、踵を返して白竜と共に天井の通路へと消えていった。

 周囲のマグマの海は、既に、まるでハリケーンの勢力圏に入った海のように荒れ狂い、噴き上がるマグマ柱はその数を次々と増やしている。ハジメ達の足場も端からマグマが流れ込みだした。まるで終末世界のような光景である。

 ハジメは、僅かな時間、何かを考えるように目を細めた。そして、何かを決断すると、怪我を押して立ち上がった。直後、フリードと白竜が出て行っても残っていた灰竜達が一斉に小極光を放ち始めた。どうあっても、ここで殺すつもりらしい。

 ユエが、“絶禍”を発動して小極光を呑み込みながら攻撃を凌いでいる間に、ハジメは、“宝物庫”を手に握ると、頭上の灰竜達にブレスを放とうとしているティオの堅い竜鱗に覆われた頬に手を這わせ自分の方に顔を向けさせた。

「ティオ、よく聞け。これを持って、お前は一人であの天井から地上へ脱出しろ」

 一瞬、何を言われているのか分からないという表情で目を瞬かせるティオだったが、次の瞬間には傷ついたような表情をして悲しみと怒りの混じった声を響かせた。ハジメの言葉が、まるでティオだけ生き残らせて、自分達を切り捨てろと言っているように聞こえたのだ。

“ご主人様よ、妾は、妾だけは最後を共に過ごすに値しないというのか? 妾に切り捨てろと、そういうのか? 妾は……”

「ティオ、そうじゃない。時間がないから一度しか言わないぞ。俺は、何も諦めていない。神代魔法は手に入れるし、いつかあの野郎はぶっ殺すし、そして“静因石”を届けるという約束も守る。だが、一人じゃ無理なんだ。だからお前の力を貸して欲しい。お前でなければ、全てを突破して期限内にアンカジに戻ることは不可能なんだ……頼む、ティオ」

 今まで一度も向けたことのない真剣な眼差しで、竜化状態のティオの瞳を見つめるハジメ。傲岸不遜で、何でも一人で出来ると言わんばかりのハジメが、全力で頼っている。全ての望みを叶えるには、俺達が全ての困難に打ち勝つには、ティオの協力がなければならないのだと。ティオの力が必要なのだと。そこには諦めも、自己犠牲の精神も、ティオだけを除け者にするような考えも一切ない。

 ティオの心が悲しみや怒りから一転して歓喜に震える。気に入った男から、いや、今や本気で伴侶になりたいと思っている相手から、生死のかかった瀬戸際で大切なものを“託された”のだ。これに応えられなければ、女ではない。

 それ故に、ティオはただ一言、応えた。

“任せよ!”

 ハジメは、ティオのウロコの内側へ“宝物庫”を入れる。こうすることで、竜の肉体を通して人状態のティオの手に渡るのだ。

 ティオは、身の内に“宝物庫”が入った事を確認すると、そっと、ハジメに頭をこすりつけた。今できる、精一杯の愛情表現だ。ハジメも、最後に優しく一撫でするとティオから離れた。ティオは、ユエとシアにも視線を向ける。二人共、諦めなど微塵も感じさせずに力強く頷いた。

「ティオ、香織とミュウに伝言を。“あとで会おう”だ。頼んだぞ」

“ふふ、委細承知じゃよ”

 ハジメの軽すぎる伝言を受け取り、思わず笑い声を漏らしたティオは、一拍の後、力強い風を纏って一気に飛び立った。小極光が襲いかかるが、バレルロールしながらかわし、一気に灰竜の群れへと突っ込んでいく。黒竜の特攻に危機感を抱いたのか、灰竜達の攻撃がティオに集中しだした。

 殺到する小極光をブレスで相殺しようとするが、次々と追加で放たれるので簡単にはいかない。しかし、拮抗するかと思われた瞬間、下方より極光が迸り、ティオに攻撃を加えていた灰竜が数体消し飛んだ。

 ユエが“絶禍”で圧縮した小極光を解放したのだ。さらに、炸裂スラッグ弾が乱発され灰竜達を衝撃波で吹き飛ばしていく。

 と、その時、フリードと白竜が外に出たのか、天井の扉が閉まり始めた。時間がないと悟り、ティオは、被弾覚悟で加速することのみに集中する。そのおかげで飛行速度は更に増加したが、灰竜からの小極光がティオの竜鱗を砕き始めた。

“ふん、この程度の痛みぃ! むしろ心地いいのじゃ! バッチコ~イ!”

 言葉通り、灰竜の攻撃がティオの体にダメージを入れるごとに調子が上がり飛行速度が増していく。“竜化”の派生“痛覚変換”の効果だ。痛みが酷ければ酷いほど、テンションと共に任意の能力が一時的に強化されるという酷い派生能力だ。ちなみに、ハジメと出会ってから数百年ぶりに手に入れたものである。“壁を越えた”というより、“扉を開いた”という表現の方が正しいだろうが。

 灰竜達ですら若干引き気味の中、ティオは遂に小極光の嵐を突破して閉まり切る寸前の扉をくぐり抜けた。頭上を見れば、遥か先に小さな光が見える。地上の光だ。それまでに幾つか扉があるようで、順次締まり始めている。

 ティオは、もう後先考えず、残りの魔力を“竜化”が維持できるギリギリを残して、全て使い切るつもりで風を操ることに注ぎ込んだ。自分の長い生を思い出しても、ここまでの速度は出したことが無いと思えるほどの速度で、文字通り、疾風と化して飛翔する。

 一つ目、二つ目、三つ目と、扉をくぐり抜け、遂に最後の扉、地上へと繋がる分厚い扉のみを残すところまで上がってきた。黒い風を纏って一発の砲弾のごとく突き進むティオ。そんな彼女に、頭上から光弾が襲いかかる。

 どうやら、ティオの存在に気がついて足止めの攻撃を放ってきたらしい。扉は既に半分以上閉まっている。回転しながら回避し、あるいは回避しきれず被弾しながらも速度を緩めず突き進むティオに、白竜からの極光が降り注ぐ。

 魔力が尽きかけているのか当初ほどの威力はない。精々半分程度の威力だ。しかし、それでも喰らえば小極光の比ではないダメージを受けるだろう。かと言って回避しても迎撃して飛行速度は落ちる。そうなれば、扉を抜けるには間に合わないかもしれない。

 ティオは覚悟を決めて、むしろ被弾した直後に“痛覚変換”で更に速度を上げてやるつもり突進した。

 と、その時、ティオの脇を幾つかの影が走り抜け、ティオと迫り来る極光の間に割って入った。

 それは、ティオにとって見覚えのあるもの。浮遊する十字架、オールレンジ兵器、そう、ハジメのクロスビットだ。ティオの直ぐ後ろに付けていたのである。

 飛び出した三機のクロスビットは、紅色の輝きを纏うと角度をつけて極光を遮り、脇へと逸らしていく。極光の威力に、一機、また一機と破壊されていくが、極光が途切れるまでしっかりとティオを守り抜いた。更に、ティオを守るように四機のクロスビットがティオのすぐ傍を飛ぶ。

“ぬはぁー、たまらん! ご主人様よぉ、愛しておるのじゃー!”

 マグマの奔流に襲われているであろうに、ティオにクロスビットを全機付けて地下から操っているハジメに、天地に轟けと愛を叫ぶティオ。竜人族の中でも特に強者であったティオを守る男など、未だかつていなかった。いつだって、彼女は守る側だったのだ。だからこそ、極めて困難な状況において守られているという事実に、今まで感じたことのない喜びが爆発する

「グゥルゥアアア!!!」

 そして、竜の咆哮をも響かせながら、遂に最後の扉をくぐり抜けた。黒い風の塊と化したティオが垂直に飛び出し、巨大な砂嵐に囲まれながらも太陽の光が降り注ぐ天空を舞う。

「あの状況から出て来るとはっ! 化け物揃いめっ! だが、いかに黒竜と言えど既に満身創痍。ここで仕留めッ!?」

 頭上を飛び越えたティオに、白竜に乗ったフリードが驚愕しながらも攻撃を加えようと眼光を鋭くした。だが、その目論見は、言葉と同様に止められることになった。四機のクロスビットが、いつの間にかフリードと白竜を四方から取り囲んでいたからである。

 フリードは、すかさず退避の途中で連れてきた亀型の魔物に障壁を張らせる。クロスビットの攻撃力では、障壁を破壊出来ないことは実証済みだ。炸裂弾が装填されていれば、結果は違ったのだろうが、遠距離攻撃に乏しいシアの炸裂スラッグ弾と、ドンナー・シュラークの弾丸を優先したので、時間的にまだ配備出来ていなかったのだ。

 しかし、クロスビットには、もう一つ強力な攻撃手段がある。それは、クロスビットに対して余裕の表情を浮かべているフリードの表情が凍りつき、次いで白竜もろとも大ダメージを喰らって吹き飛ばされるという形で証明された。

ズゥドォオオオオオン!!!

 クロスビットが、突如、発砲もせず紅色の輝きを異常なほど強めたかと思ったら、次の瞬間――自爆したのである。

 四機のクロスビットが、衝撃を余すことなく標的に伝えるために四方を固めていたため、壮絶な威力の衝撃と内蔵されていた弾丸が嵐の如く飛び散り、障壁を易々と粉砕してフリードと白竜に襲いかかった。

「がぁああ!!」
「ルァアアアアン!!」

 主従揃って悲鳴を上げながら盛大に吹き飛ぶ。

 更に、ダメ押しとばかりに放たれたティオの竜巻が襲い掛かり、フリードと白竜を砂嵐の中まで吹き飛ばした。ティオとしては、ブレスを放って確実に仕留めてしまいたかったのだが、流石に、咄嗟に出せるほど余力がなかったのだ。

 ティオは、しばらくフリード達が消えていった場所を見つめ、変化がないことを確かめると視線を転じ、眼下の【グリューエン大火山】を、先程までの変態的なテンションなど微塵も感じさせない静かな眼差しで見つめた。そして、“信じている”というように一つ頷くと、踵を返してアンカジの方角へと飛翔していった。

 数十分後、【グリューエン大火山】を中心に激震が走った。轟音というのも生温い、大気すら軋ませる大爆発が発生し、一時的に砂嵐さえ吹き飛した。あらわになった【グリューエン大火山】はもうもう黒煙を噴き上げ、赤熱化した岩石を弾き飛ばし、火山雷のスパークを撒き散らしていた。

 現存する歴史書の中で、ただの一度も記録されていない【グリューエン大火山】の大噴火。ある意味、貴重な歴史的瞬間は、どういう原理か数分後には復活した巨大な砂嵐のベールに包まれ、その異様を隠してしまった。

 それでも、まるで世界が上げた悲鳴の如き轟音も、噴き上がる黒煙も、アンカジの人々は確かに観測したのだ。不安が募る。それは、大切な人の帰りを待つ少女と幼子も同じだった。



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