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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

第二章

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ブルックの町にて 前編

新年、明けましておめでとうございます
今年も、何とかエタらせずにボチボチ書いていきますので宜しくお願いします


 遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。それなりに、充実した買い物が出来そうだとハジメは頬を緩めた。

「……機嫌がいいのなら、いい加減、この首輪取ってくれませんか?」

 街の方を見て微笑むハジメに、シアが憮然とした様子で頼み込む。シアの首にはめられている黒を基調とした首輪は、小さな水晶のようなものも目立たないが付けられている、かなりしっかりした作りのもので、シアの失言の罰としてハジメが無理やり取り付けたものだ。何故か外れないため、シアが外してくれるよう頼んでいるのだがハジメはスルーしている。

 そろそろ、町の方からもハジメ達を視認できそうなので、魔力駆動二輪を“宝物庫”にしまい、徒歩に切り替えるハジメ達。流石に、漆黒のバイクで乗り付けては大騒ぎになるだろう。

 道中、シアがブチブチと文句を垂れていたが、やはりスルーして遂に町の門までたどり着いた。案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男がハジメ達を呼び止めた。

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。ハジメは、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 ふ~んと気のない声で相槌を打ちながら門番の男がハジメのステータスプレートをチェックする。そして、目を瞬かせた。ちょっと遠くにかざしてみたり、自分の目を揉みほぐしたりしている。その門番の様子をみて、ハジメは「あっ、ヤベ、隠蔽すんの忘れてた」と内心冷や汗を流した。

 ステータスプレートには、ステータスの数値と技能欄を隠蔽する機能があるのだ。冒険者や傭兵においては、戦闘能力の情報漏洩は致命傷になりかねないからである。ハジメは、咄嗟に誤魔化すため、嘘八百を並べ立てた。

「ちょっと前に、魔物に襲われてな、その時に壊れたみたいなんだよ」
「こ、壊れた? いや、しかし……」

 困惑する門番。無理もないだろう。何せ、ハジメのステータスプレートにはレベル表示がなく、ステータスの数値も技能欄の表示もめちゃくちゃだからだ。ステータスプレートの紛失は時々聞くが、壊れた(表示がバグるという意味で)という話は聞いたことがない。なので普通なら一笑に付すところだが、現実的にありえない表示がされているのだから、どう判断すべきかわからないのだ。

 ハジメは、いかにも困った困ったという風に肩を竦めて追い討ちをかける。

「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ? まるで俺が化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?」

 両手を広げておどける様な仕草をするハジメに、門番は苦笑いをする。ステータスプレートの表示が正しければ、文字通り魔王や勇者すら軽く凌駕する化物ということになるのだ。例え聞いたことがなくてもプレートが壊れたと考える方がまともである。

 実は本当に化物だと知ったら、きっと、この門番は卒倒するに違いない。いけしゃあしゃあと嘘をつくハジメに、ユエとシアは呆れた表情を向けている。

「はは、いや、見えないよ。表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな……そっちの二人は……」

 門番がユエとシアにもステータスプレートの提出を求めようとして、二人に視線を向ける。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目でユエとシアを交互に見ている。ユエは言わずもがな、精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だ。そして、シアも喋らなければ神秘性溢れる美少女である。つまり、門番の男は二人に見惚れて正気を失っているのだ。

 ハジメがわざとらしく咳払いをする。それにハッとなって慌てて視線をハジメに戻す門番。

「さっき言った魔物の襲撃のせいでな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は……わかるだろ?」

 その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートをハジメに返す。

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? あんたって意外に金持ち?」

 未だチラチラと二人を見ながら、羨望と嫉妬の入り交じった表情で門番がハジメに尋ねる。ハジメは肩をすくめるだけで何も答えなかった。

「まぁいい。通っていいぞ」
「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」
「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」
「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 門番から情報を得て、ハジメ達は門をくぐり町へと入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。町中は、それなりに活気があった。かつて見たオルクス近郊の町ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。

 こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるものだ。ハジメだけでなく、ユエも楽しげに目元を和らげている。しかし、シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいた。

 怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石に気になって溜息を吐くハジメ。楽しい気分に水を差しやがって、と内心文句を言いながらシアに視線を合わせる。

「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」
「誰がゴリラですかっ! ていうかどんな倒し方しているんですか! ハジメさんなら一撃でしょうに! 何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」
「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」
「まさかの追い討ち!? 酷すぎる! ってそうじゃないですぅ!」

 怒って、ツッコミを入れてと大忙しのシア。手をばたつかせて体全体で「私、不満ですぅ!」と訴えている。ちなみに、ゴリラ型の魔物のエピソードは圧縮錬成の実験台にした時の話だ。決して、虐めて楽しんでいたわけではない。ユエはやたらとツンツンしていたが。ちなみに、この魔物が“豪腕”の固有魔法持ちである。

「これです! この首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 シアが怒っているのは、そういうことらしい。旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが相当ショックだったようだ。もちろん、ハジメが付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束するような力はない。それは、シアもわかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックなのだ。

 そんなシアの様子にハジメはカリカリと頭を掻きながら目を合わせる。

「あのなぁ、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう? まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。面倒……ってなにクネクネしてるんだ?」

 言い訳あるなら言ってみろやゴラァ! という感じでハジメを睨んでいたシアだが、話を聞いている内に照れたように頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。ユエが冷めた表情でシアを見ている。

「も、もう、ハジメさん。こんな公衆の面前で、いきなり何言い出すんですかぁ。そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんてぇ、もうっ! 恥かしいでっぶげら!?」

 調子に乗って話を盛るシアの頬に、ユエの黄金の右ストレートが突き刺さる。可愛げの欠片もない悲鳴を上げて倒れるシア。身体強化していなかったので、別の意味で赤くなった頬をさすりながら起き上がる。

「……調子に乗っちゃだめ」
「……ずびばぜん、ユエざん」

 冷めたユエの声に、ぶるりと体を震わせるシア。そんな様子に呆れた視線を向けながら、ハジメは話を続ける。

「あ~、つまりだ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前を守っているんだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからな、お前は」
「それは……わかりますけど……」

 理屈も有用性もわかる。だがやはり、納得し難いようで不満そうな表情のシア。仲間というものに強い憧れを持っていただけに、そう簡単に割り切れないのだろう。そんなシアに、今度はユエが声をかけた。

「……有象無象の評価なんてどうでもいい」
「ユエさん?」
「……大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。……違う?」
「………………そう、そうですね。そうですよね。」
「……ん、不本意だけど……シアは私が認めた相手……小さい事気にしちゃダメ」
「……ユエさん……えへへ。ありがとうございますぅ」

 かつて大衆の声を聞き、大衆のために力を振るった吸血姫。裏切りの果に至った新たな答えは、例え言葉少なでも確かな重みがあった。だからこそ、その言葉はシアの心にストンと落ちる。自分がハジメとユエの大切な仲間であるということは、ハウリア族のみなも、ハジメやユエも分かっている。いらぬトラブルを招き寄せてまで万人に理解してもらう必要はない。もちろん、それが出来るならそれに越したことはないが……

 シアは、ユエの言葉に照れたように微笑みながらチラッチラッとハジメを見る。何かの言葉を期待するように。

 ハジメは仕方ないという様に肩を竦めて言葉を紡ぐ。

「まぁ、奴隷じゃないとばれて襲われても見捨てたりはしないさ」
「街中の人が敵になってもですか?」
「あのなぁ、既に帝国兵とだって殺りあっただろう?」
「じゃあ、国が相手でもですね! ふふ」
「何言ってんだ。世界だろうと神だろうと変わらねぇよ。敵対するなら何とだって戦うさ」
「くふふ、聞きました? ユエさん。ハジメさんったらこんなこと言ってますよ? よっぽど私達が大事なんですねぇ~」
「……ハジメが大事なのは私だけ」
「ちょっ、空気読んで下さいよ! そこは、何時も通り『…ん』て素直に返事するところですよ!」

 文句を言いながらも嬉しげで楽しげな表情をするシア。いざとなれば、自分のために世界とだって戦ってくれるという言葉は、やはり一人の女として嬉しいものだ。まして、それが惚れた相手なら尚更。

 ハジメは、じゃれあっている(ように見える)二人を尻目に、シアの首輪について話し始める。

「あとな、その首輪だが、念話石と特定石が組み込んであるから、必要なら使え。直接魔力を注いでやれば使えるから」
「念話石と特定石ですか?」

 念話石とは、文字通り念話ができる鉱物のことだ。生成魔法により“念話”を鉱石に付与しており、込めた魔力量に比例して遠方と念話が可能になる。もっとも、現代階では特定の念話石のみと通話いうことはできないので、範囲内にいる所持者全員が受信してしまい内緒話には向かない。

 特定石は、生成魔法により“気配感知[+特定感知]”を付与したものだ。特定感知を使うと、多くの気配の中から特定の気配だけ色濃く捉えて他の気配と識別しやすくなる。それを利用して、魔力を流し込むことでビーコンのような役割を果たすことが出来るようにしたのだ。ビーコンの強さは注ぎ込まれた魔力量に比例する。

 ハジメの説明に、感心の声を上げるシア。

「ちなみに、その首輪、きっちり特定量の魔力を流すことで、ちゃんと外せるからな?」
「なるほどぉ~、つまりこれは……いつでも私の声が聞きたい、居場所が知りたいというハジメさんの気持ちというわけですね? もうっ、そんなに私の事が好きなんですかぁ? 流石にぃ、ちょっと気持ちが重いっていうかぁ、あっ、でも別に嫌ってわけじゃなくッバベルンッ!?」
「……調子にのるな」
「ぐすっ、ずみまぜん」

 美しい曲線を描いて飛来したユエの蹴りが後頭部に決まり、奇怪な悲鳴を上げながら倒れるシア。ユエから、冷ややかな声がかけられる。近接戦苦手だったんじゃ……と言いたくなるくらい見事なハイキックを披露するユエに、シアは涙目で謝る。旅の同行は許しても、ハジメへのアプローチはそうそう許してもらえないらしい。もっとも、シアの言動がアプローチになっているかは甚だ疑問ではあるが。

 そんな風に仲良く? メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

いつも読んで下さり有難うございます
感想・意見・誤字脱字報告も有難うございます

異世界の町でのお話
やたら長くなってしまったので三分割にしました
今日から三日間連投します
時間は18時予定です
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