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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

ありふれたアフターストーリーⅡ

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ありふれたアフターⅡ 魔物友達の再会

短編です。長編の導入ではありません、
ちょっと立て込んでいて、文章量も少ないです。次で終わります。

流石に、こいつらで長編は無理w


 ズドォンと、腹の底に響くような衝撃音が大気を震わせた。

 まるでどこぞの魔王が砲撃でもしたかのような轟音と振動は、一度で終わることなく連続して鳴り響く。

 同時に、赤錆色の世界――グリューエン大砂漠に巨大な砂柱が立ち上り、巻き上げられた砂煙が太陽の光を遮る。

 もっとも、太陽の光を遮っているのは砂煙が主ではない。ここに人が(・・)いたのなら、間違いなく目を剥いて己の正気を疑うか、砂漠特有の蜃気楼だと現実逃避するだろう。

 それくらいの事態にして物体が、空を舞い、砂煙以上に太陽の光を局所的に遮っているのだ。

 そう、

「「「「ぎゅぉおおおおおおおっ」」」」

 悲鳴を上げながら打ち上げられた大砂漠の殺し屋――サンドワームによって。

 本来、地中に潜行していて音や震動で獲物を察知し、地中からいきなり飛び出して掘削機のような口内へと呑み込むという特性を持つサンドワーム。発見の難しさとその奇襲性から砂漠を行く者にとって最大の警戒対象であり、恐怖の対象だ。

 そんな、獲物を捕食するとき以外で地上に姿を見せない殺し屋共が、何故、地上どころか空を舞っているのか。

 もちろん、彼等が進化を果たして空を飛ぶ能力を身につけたというわけではない。

 その原因はこれ。

『死にさらせぇええええええっ』

 打ち上げられたサンドワームよりなお高く、天空へと駆け上がっていた存在。ヤクザのような啖呵を切りながら、ウサミミを(・・・・・)靡かせて降ってくる。

 異常に発達した後ろ足が宙を蹴る度に加速し、ついには空気の壁すら突破して一つの白い砲弾と化したそれ。奈落の底出身の蹴りウサギ――イナバだ。

 重力加速と、空力と爆縮地を併用した突貫はさながら隕石の如く。打ち上がったサンドワームには回避の術などあるはずもなく、イナバのかかと落としを受けて体の中央部分を爆散させる。

 血肉が降りかかるよりも速く、宙を蹴って進路を急激に変更したイナバは、そのまま前方宙返りの要領で更に下方にいたサンドワームの頭部を粉砕した。

 駆け抜け様に身を捻って空中回し蹴り。ひゅるりとなびいたウサミミが美しい。が、もたらされる結果は凄絶そのもの。蹴りの軌道に沿って飛び出した衝撃波が落ち始めたサンドワームの一体を消し飛ばす。

 更に、ブレイクダンスでもしているかのように逆さまで逆足を振り抜けば、そこからは足刀というべきか斬撃が飛び出し、最後の一体を真っ二つに切り裂いた。

 スタッと着地したイナバは前足でウサミミをふぁさっとする。直後、血肉と絶命したサンドワームの死体が周囲に降り注いだ。血と肉のスコールの中心で、イナバは悠然と佇む。

『気が付かへんと思うたか? ええ加減に出てこいや。おどれに主としての矜持があるんならな』

 ちなみに、普通にイナバさんが話すと「もきゅ、もきゅきゅ? うきゅ。もきゅ~~きゅもきゅ」と聞こえます。ラブリーです。進化の果て、見た目も真っ白でもふもふで、紅色のつぶらな瞳がうるうるしている感じのラブリーウサちゃんです。

 人語を話せるのは、ウサミミに取り付けられたいくつかのイヤーカフスの内の一つが有する能力故だ。〝言語理解〟と〝念話〟の能力があり、拡散機能により普通に話すように外部へ言葉を伝えることができる。

 もちろん、作製者は奴である。

 イナバの問いかけに、グリューエン大砂漠は水を打ったような静けさを返した。一拍、二拍……待てど変化は現れない。

『……まぁ、ええわ。ワイも弱い者いじめがしたいわけやない。売られた喧嘩を買うただけや。そっちがしっぽ巻いて逃げる言うんなら、追いはせん。ほなな』

 さっと踵を返して、西へと歩き出したイナバ。

 その直後、地面が爆発した。

 イナバが呼びかけた相手。特別強い魔力を放っていた砂漠の怪物。先程のサンドワーム達が子供に見えるほどの――超巨大サンドワーム。そいつが、地面を吹き飛ばして、イナバを真下から強襲したのだ。

 イナバの姿はない。

 一瞬で百メートル以上上空へとせり出した巨大サンドワームの巨体だけが、砂漠のど真ん中に突然出現した塔のようにそびえ立っている。

 あわや、イナバの魔物としては比較的小さな体は丸呑みにされてしまったのか……

 そう思われた直後、

『動きどころか、本能まで鈍いとはな。終わりや! おどれの愚かさを嘆いて――往生せいや!』

 灼熱の太陽の中に、黒点が生じた。正体は当然、イナバ。

 巨大サンドワームが飛び出すと同時に、その顎門を蹴って遙か上空へと飛び出したのだ。

 裂帛の気合いと共に振り下ろされた豪脚は、サンドワームの上向いた顎門を衝撃と共に縦断し、そのまま瓦割りでもするかのように地面まで奔った。

 再び地に足をつけたイナバのウサミミがふぁさっ。

 一拍おいて、ビクンビクンッと痙攣していた巨大サンドワームは綺麗に縦真っ二つとなって左右に倒れ込んだ。

『ワイに喧嘩を売るんやったら、せめて奈落の底の底に蔓延る化け物共に勝てるようになってからにし……って、もう聞こえてへんか』

 ウサミミを竦めたイナバは、くるりと踵を返すと、今度こそ西の海を目指して重縮地していった。




『それにしても、やっぱり地上の魔物は歯ごたえがあらへんなぁ。これやったら、またあの生意気なウサギか、王様に相手してもらえへんか、多少待つことになっても王宮で待つべきやったかもなぁ』

 ぶつくさと不満を垂れ流しながら、砂漠を視認するのも難しい速度で爆走するイナバ。

 現在、イナバは雇用主で友人でもある鈴の元を離れている。

 元より、鈴の従魔をしていたのは強くなるためだ。現代日本の地でそれは叶わない。もちろん、以前、ついて行った際には、シアやハジメなどと模擬戦をしてもらえることもあったのだが、流石に忙しい彼等に毎日相手をしてもらうわけにはいかない。

 なので、北山脈や樹海の深部、ライセン大峡谷の奥地、奈落の最下層など、強そうな敵のいる場所を転々と旅していたのだが、今のイナバが苦戦するほどの敵は、ついにいなくなってしまったのだ。

 修行こそ、それを通しての己の成長こそがイナバの生きがい。己の武を高め、己の限界を知ることこそライフワーク。

 一介の魔物でも、努力の末に武の極みへと至れるのだと、己の蹴撃は、世界の頂点へと至ることができるのだと、それを証明してみたいのだ。

 そんな武人なイナバにとって、血湧き肉躍るような、死線を越えねばならないような、そんな戦いが皆無の現在は、正直、実に萎える状況だった。ウサミミも普段からへんにょりしてしまうほどに。

『退屈と停滞こそ、最大の敵やな。よし、ちょいと探して会えへんかったら、さくっと王宮に行って、王様がゲート開いてくれんのを待とう。鈴はんにも久しぶりに会いたいしなぁ。龍の字が鈴はんを泣かすようなことしとったら……ドタマかち割ったる』

 ウサミミを砂漠の乾いた風になびかせて数時間ほど。

 驚異的な速度で横断したイナバは遂に西の海に辿り着いた。沖合には【海上の町エリセン】があるが、イナバの目的地はそこではない。

 イナバは会いに来たのだ。退屈を感じ始めた日々の中で、ふと思い立った友人に。そう言えば、もう随分と顔を見せていないと。

 海岸から一歩を踏み出す。イナバが海に落ちることはない。足下には赤黒い波紋が広がり、しっかりと宙に足場が作られている。

 そのまま海の上を歩くようにどんどん沖合へと出て行く。

 そして、そろそろ岸を視認するのが難しくなってきたところで、イナバは大きく息を吸い、目的の相手に大声で呼びかけた。

『すぅ~~~~~っ、リィ~~~~~~~~の、だぁ~~~んなぁ~~~~~ッ!!』

 波紋のように広がっていく念話の大声。魔力も乗せ、アーティファクトにより拡声された呼びかけは、本気でやれば半径百キロくらいには届く。

 しばらく反応を伺うようにウサミミを澄ませるイナバ。

 すると……

『どでけぇ声、上げてんじゃねぇ~~~~っ!! どこの馬鹿だぁっ!!』

 渋い声音の怒声が返ってきた。無駄にダンディな声音だが、今は寝ているところを耳元で拡声器による目覚ましを受けたような不機嫌さが宿っている。

『おお、一発で届いた。中々、運がええやないの』

 そんな呑気なことを言いながら待つこと数分。ちゃぷっと顔を覗かせたのはおっさん顔の人面魚――リーマンその人(?)だった。

『なんでぇ、イナバじゃねぇか。どこの馬鹿かと思ったぞ』
『すまんなぁ、リーの旦那。旦那を見つけるのに一番手っ取り早い方法やったもんで。寝とったか?』

 和気あいあいと話し出す二人。

 実は、この二人は面識があったりする。タイミング的には神話決戦が終わって地球に帰還するまでの一ヶ月の間だ。ハジメがリーマンに顔見せに行き、同行したイナバと対面したのである。

 同じ魔物にして、人間、それもハジメと強い繋がりがあるということで意気投合した二人は、それ以降、友人と呼べる関係になっていたのである。

 頭を掻いて詫びを入れるイナバに、リーマンはちゃぷちゃぷと海面を揺らしながら顔を振る。

『寝ちゃいねぇよ。最近、ちょいと西の方が騒がしいもんでな、巡回とおいたの過ぎる馬鹿野郎共を締めてたんだよ。女房とガキ共が安心できねぇからな』
『ご家族が息災なようで何よりや。……しかし、神殺しのご友人が縄張り張っとる領域で馬鹿やるとは……中々、命知らずな奴等やなぁ。まぁ、普通の魔物にそんな思考は出来んのやろうけど』

 海面すれすれの場所に作った宙の足場に腰を降ろしたイナバが、面白そうにウサミミを揺らしながらそう言う。

 その脇にぷかりと浮き上がったリーマンも、久しぶりに再会した友人との雑談に興じるためリラックスした様子で視線を投げた。

『俺はそんな大したもんじゃねぇよ。ハー坊のお節介がなきゃあ、ちょいと海の住人に命令できる程度の力しかねぇ。しがないおっさんさ。お前さんも含めて、どうにも妙な敬意を払ってくる奴が多くて、据わりが悪いったらありゃしねぇ』
『そりゃあ、王様の命の恩人なんや。それくらい敬意を払われるんは当然やろ。その証拠に、随分なアーティファクトを送られてるそうやないか。人間の一部には、旦那のアーティファクトを手に入れられへんか、画策してどぎついしっぺ返しを食らった奴もおるんやろ?』

 イナバの言う通り、人面魚リーマンの名は、実は割と人間達の間に浸透しているのだ。

 神話決戦から後、当然の如く歴史家や詩人達がかの神殺しの魔王を称える物語、詩を作りまくった。その中で、ハジメが帰還までの一ヶ月の間に会いに行ったリーマンの正体を突き止めたり、某ウサミミ少女に取材したりして、その活躍が大きく伝わっているのだ。

 古代より海の底に潜む怪物――悪食に食われそうだったハジメ一行の窮地に駆けつけ、たった一匹で時間を稼ぎ、起死回生の一手を打たせたと。

 歴史家達は言う。そのとき、リーマンが駆けつけなければ、世界は狂った神に対抗する手段を失い、世界は滅亡していたかもしれないと。

――人面魚の魔物にして、神殺しの魔王の親友 リーマン

 それが、広く大陸に伝説となって伝わっている認識なのである。

 はぁと深く溜息を吐いたリーマンは、しかし、ジロリとイナバを睨み付ける。

『アーティファクトだの恩人だの、それを言ったらお前さんの方がとんでもだろうが』

 リーマンの視線が、イナバのウサミミに着いている幾つものイヤーカフスへ向く。どれもこれも、王宮で管理されるべき国宝級のアーティファクトであり、今や超絶レアな伝説のアーティファクトとなっているハジメ謹製の作品だ。

 そして何より、イナバの知名度はリーマンのそれを上回っている。何せ、

『魔物にして唯一、己の意思で魔王一行に味方し、神域で戦い抜いた者――脚撃王イナバ。何百という屍獣兵も、強力無比な神域の魔物も、その技の前に立つことは許されない、だろ? くくくっ』
『や、やめてぇな、旦那。ワイは大したことしてへん。鈴はんがご友人と話できるように、ちょいと手伝っただけや。ワイこそ、大したことあらへん』

 困ったようにウサミミをぺたんと折り畳んだイナバに、リーマンは愉快そうに笑い声を上げた。

 二人とも、己が魔物であるという自覚があるのだ。数奇な運命により人類の救世主と深い関係を持つに至った二人だが、本来、魔物とは人間の敵。二人に人間に対する敵意など微塵もないが、それでも、その人間達から称賛や敬意を向けられるのは、何とも居心地の悪いような気分になるのである。

『んで、何の用だったんだ?』

 気を取り直すように、リーマンが問う。

『いや、特に用があったわけやないんよ。もう、こっちではワイと満足に戦える敵もおらんからな、次の機会に王様のとこへ行こうと思って。そしたら、旦那ともまた当分会わへんし、顔見せしとこ~と思ってな』
『律儀な奴だな。まぁ、ありがとよ。ハー坊に会えたら、よろしく言っておいてくれ』
『承知や』

 それからリーマンとイナバは近況などについて語り合った。

 大海原のど真ん中で、おっさんくさい話題で盛り上がる魔物達。一方はやたらとダンディな声音で、やたらと含蓄のある言葉を紡ぎ、もう片方は関西弁と流れるようなボケ&ツッコミを炸裂させる。

 途中、シアをディスるイナバに、リーマンが苦笑いしながら「あんま嬢ちゃんを目の敵にしてやんな」と諫めたりなど、シアの話題に盛り上がったりしつつ時間が流れること少し。

 おもむろに、リーマンが『ん?』と何かに気がついたように視線を明後日の方向へ向けた。

『旦那、どないした?』
『……海が、泣いてやがる』

 厨二ではありません。リーマンは、海の魔物でない生き物達が恐慌に陥って右往左往している、と言いたいようです。

『なんや、ようない雰囲気やな。……ワイも感じて来たわ。海の中やから判然とはせんけどこれは――戦場の空気やで』

 目を細めて西の海を眺めるイナバに、リーマンも眉間に皺を寄せながら頷いた。

『……さっき、西の方が騒がしいと言っただろ? どうも、かなり遠くの方からこっちに流れて来てるらしい。一度、調査のために日が十度沈む間進んでみたんだが、特に異常はなかった。ただ、奇妙なんだよな』
『奇妙? なにがや?』
『どうにもな、怯えてるように感じんだよ。流れの魔物共が』
『怯えてる……。相当遠方で何かが起きてる言うことかいな? それで、その何かに怯えて魔物共がこっちに流れて来てると』
『あくまで推測の段階だがな』

 何ともキナ臭い。だが、同時にイナバの心は躍る。未知なら良し。それが脅威であるなら尚のこと良し。退屈と停滞こそイナバの最大の敵だ。

『せっかくや、旦那。また流れの魔物共がこっちに来てるんやろ? ワイも連れてってや。手は多い方がええやろ? 張り切って海の平和を守ろうやないか』
『……まったく、てめぇは。そんなウキウキした面して何が平和だ。戦闘狂全開じゃねぇか』
『戦闘狂やない。武人や。強敵との戦いこそ、ワイの求めるもの。連れて行かれんでも、勝手に行くで?』

 やれやれだぜ、と言いたげにヒレを揺らすリーマンは、ジト目をイナバに向ける。

『海中で戦えんのかよ? お守りはごめんだぜ?』
『海中では戦えん。でもな、ワイを殺したかったら、海から飛び出すしかない。せいぜい挑発するわ。それにほれ、ワイって美味そうやろ?』
『ウサギだからな。見た目は』

 ハッハッハッハと笑うイナバに、リーマンは「もう何も言わねぇ」と頭痛を堪えるような表情になりつつ、直後、強力な念話を放った。

 それは海の生き物達を誘導するためのもの。流れ込む遙か西の海から来た魔物達に、いたずらに殺されないための、海の環境(リーマンの生活圏)を守るための措置だ。

 同時に、イナバから尋常でない闘気とも言うべきプレッシャーが放たれた。完璧に制御された闘気は、指向性を持って西へと延びる。

 ウサ足をぐりぐりして準備運動しながら、不敵な笑みを浮かべたイナバはウサミミをふぁさり。

『ほな、行こか、神殺しの友よ』
『やれやれ、しょうがねぇな。行くとしようか、神域の脚撃王』

 そう言って、二人は混乱する西へと飛び出したのだった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。

最近、おっさんいいなぁと思う。
渋いおっさん、格好いいおっさん、めちゃ強いおっさん。
何事にも動じず、大人な対応ができるおっさん。
そんなおっさん達をメインにしたお話を、いつか書いてみたい。
以上、白米でした。

PS
漫画版ありふれたの最新話が更新されています。
ユエが可愛い。いろんなユエが見れます。
よかったらオーバーラップ様のHPで見れますので、見に行ってみてください。
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