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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

第一章

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真の歴史



 魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光で満たす。

 中央に立つハジメの眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

「ああ、質問は許して欲しい。これは唯の記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話しとは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は“神敵”だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、“解放者”と呼ばれた集団である。

 彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか“解放者”のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。“解放者”のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 彼等は、“神界”と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。“解放者”のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、“解放者”達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした“反逆者”のレッテルを貼られ“解放者”達は討たれていった。

 最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を打つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいためと理解できたので大人しく耐えた。

 やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ハジメはゆっくり息を吐いた。

「ハジメ……大丈夫?」
「ああ、平気だ……にしても、何かどえらいこと聞いちまったな」
「……うん……どうするの?」

 ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。

「うん? 別にどうもしないぞ? 元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないし。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。それだけだ。……ユエは気になるのか?」

 一昔前のハジメなら何とかしようと奮起したかもしれない。しかし、変心した価値観がオスカーの話を切って捨てた。お前たちの世界のことはお前達の世界の住人が何とかしろと。しかし、ユエはこの世界の住人だ。故に、彼女が放っておけないというのなら、ハジメも色々考えなければならない。オスカーの願いと同じく簡単に切って捨てられるほど、既にハジメにとって、ユエとの繋がりは軽くないのだ。そう思って尋ねたのだが、ユエは僅かな躊躇いもなくふるふると首を振った。

「私の居場所はここ……他は知らない」

 そう言って、ハジメに寄り添いその手を取る。ギュと握られた手が本心であることを如実に語る。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ

 その牢獄から救い出してくれたのはハジメだ。だからこそハジメの隣こそがユエの全てなのである。

「……そうかい」

 若干、照れくさそうなハジメ。それを誤魔化すためか咳払いを一つして、ハジメが衝撃の事実をさらりと告げる。

「あ~、あと何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだ」
「……ホント?」

 信じられないといった表情のユエ。それも仕方ないだろう。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。ハジメ達をこの世界に召喚した転移魔法も同じ神代魔法である。

「何かこの床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄る? みたいな」
「……大丈夫?」
「おう、問題ない。しかもこの魔法……俺のためにあるような魔法だな」
「……どんな魔法?」
「え~と、生成魔法ってやつだな。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法だ」

 ハジメの言葉にポカンと口を開いて驚愕を表にするユエ。

「……アーティファクト作れる?」
「ああ、そういうことだな」

 そう、生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法だったのだ。まさに“錬成師”のためにある魔法である。実を言うとオスカーの天職も“錬成師”だったりする。

「ユエも覚えたらどうだ? 何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられるんじゃないか?」
「……錬成使わない……」
「まぁ、そうだろうけど……せっかくの神代の魔法だぜ? 覚えておいて損はないんじゃないか?」
「……ん……ハジメが言うなら」

 ハジメの勧めに魔法陣の中央に入るユエ。魔法陣が輝きユエの記憶を探る。そして、試練をクリアしたものと判断されたのか……

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスry……」

 またオスカーが現れた。何かいろいろ台無しな感じだった。ハジメとユエはペラペラと同じことを話すオスカーを無視して会話を続ける。

「どうだ? 修得したか?」
「ん……した。でも……アーティファクトは難しい」
「う~ん、やっぱり神代魔法も相性とか適正とかあるのかもな」

 そんなことを話しながらも隣でオスカーは何もない空間に微笑みながら話している。すごくシュールだった。後ろの骸が心なし悲しそうに見えたのは気のせいではないかもしれない。

「あ~、取り敢えず、ここはもう俺等のもんだし、あの死体片付けるか」

 ハジメに慈悲はなかった。

「ん……畑の肥料……」

 ユエにも慈悲はなかった。

 風もないのにオスカーの骸がカタリと項垂れた。

 オスカーの骸を畑の端に埋め、一応、墓石も立てた。流石に、肥料扱いは可哀想すぎる。

 埋葬が終わると、ハジメとユエは封印されていた場所へ向かった。次いでにオスカーが嵌めていたと思われる指輪も頂いておいた。墓荒らしとか言ってはいけない。その指輪には十字に円が重った文様が刻まれており、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。

 まずは書斎だ。

 一番の目的である地上への道を探らなければならない。ハジメとユエは書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。すると、この住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴られたものだ。

「ビンゴ! あったぞ、ユエ!」
「んっ」

 ハジメから歓喜の声が上がる。ユエも嬉しそうだ。設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。盗ん……貰っておいてよかった。

 更に設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自立型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。

 工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。これは盗ん……譲ってもらうべきだろう。道具は使ってなんぼである。

「ハジメ……これ」
「うん?」

 ハジメが設計図をチェックしていると他の資料を探っていたユエが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。

 その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。

「……つまり、あれか? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」
「……かも」

 手記によれば、オスカーと同様に六人の“解放者”達も迷宮の最新部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……

「……帰る方法見つかるかも」

 ユエの言う通り、その可能性は十分にあるだろう。実際、召喚魔法という世界を超える転移魔法は神代魔法なのだから。

「だな。これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」
「んっ」

 明確な指針ができて頬が緩むハジメ。思わずユエの頭を撫でるとユエも嬉しそうに目を細めた。

 それから暫く探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろう。

 暫くして書斎あさりに満足した二人は、工房へと移動した。

 工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。

 ハジメは、それらを見ながら腕を組み少し思案する。そんなハジメの様子を見て、ユエが首を傾げながら尋ねた。

「……どうしたの?」

 ハジメは暫く考え込んだ後、ユエに提案した。

「う~ん、あのな、ユエ。暫くここに留まらないか? さっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ?」

 ユエは三百年も地下深くに封印されていたのだから一秒でも早く外に出たいだろうと思ったのだが、ハジメの提案にキョトンとした後、直ぐに了承した。不思議に思ったハジメだが……

「……ハジメと一緒なら何処でもいい」

 そういう事らしい。ユエのこの不意打ちはどうにかならんものかと照れくささを誤魔化すハジメ。

 結局、二人はここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。


~~~~~~~~~~~~~~~
おまけ

 その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。奈落に落ちてから、ここまで緩んだのは初めてである。風呂は心の洗濯とはよく言ったものだ。

「はふぅ~、最高だぁ~」

 今のハジメからは考えられないほど気の抜けた声が風呂場に響く。全身をだらんとさせたままボーとしていると、突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。完全に油断していたハジメは戦慄する。一人で入るって言ったのに!

 タプンと音を立てて湯船に入ってきたのはもちろん、

「んっ……気持ちいい……」

 一糸まとわぬ姿でハジメのすぐ隣に腰を下ろすユエである。

「……ユエさんや、一人で入るって言ったよな?」
「……だが断る」
「ちょっと待て! 何でそのネタ知ってる!」
「……」
「……せめて前を隠せ。タオル沢山あったろ」
「むしろ見て」
「……」
「……えい」
「……あ、当たってるんだが?」
「当ててんのよ」
「だから何でそのネタを知ってんだ! ええい、俺は上がるからな!」
「逃がさない!」
「ちょ、まて、あっ、アッーーーーー!!!」

 その後、何があったのかはご想像にお任せする。

おまけ2

 その頃の香織

「あれ? 何か急に殺意が……」
「香織!? 背後に般若が見えるわよ!?」
何時も読んで下さり有難うございます。
見放されずに感想頂けているのが、すごく嬉しいです。

今回、狂った神様を出しました。正直やっちまった感があります。先の展開は何も考えてません。果たしてハジメは神殺しになるのか……まぁ、そういう展開になったとしてもずっと先の話ですね。きっと。
取り敢えず、設定をまだ考えていない八大迷宮を何とかせねば……
+注意+
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