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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

ありふれたアフターストーリーⅡ

232/257

ありふれたアフターⅡ 傍観者ではいられない

 音を置き去りにする領域の速度で、近未来型の異世界製戦闘機が空を駆ける。

 何かを振り切るように大きな雲山を素晴らしい旋回性を以て迂回し、僅かな減速状態から一気に加速。機体後部にあるノズルから、キラキラと輝く白銀の粒子――それが爆発的に増大する。

 衝撃音と共に、再び音速の世界に突入した空戦機。衝撃波で周囲の雲が吹き飛ぶ。加速は止まるところを知らず、既にマッハ2は軽く超えているだろう。

『ぬぉおおおおっ。速い速いっ。流石、戦闘機! 引き離されるぅううううっ』

 一拍遅れて、必死の形相の黒竜が雲山を突き抜けて現れた。渦巻く黒色の風がティオの周囲に展開されている。傍からみれば、まるで漆黒の竜巻が水平に飛んでいるように見えるだろう。

 空気抵抗を極力なくし、更に螺旋状に絡めとった風を推進力に変えて超速飛行を実現するティオの飛行術。長い竜人族の歴史を見ても、音速の領域に入った者は存在しない。

 故に、ただでさえ未知の領域に突入しながら、それどころか更に倍の速度を維持したまま飛行するなど、まさに常識の埒外。昇華魔法という神代の魔法と、アーティファクトの補助なくてして実現し得ない神技。もちろん、そこには繊細にして強力な、ティオ自身の絶技ともいうべき技量もある。

 トータスにおいて、間違いなく歴史上最速の生物であるティオ。しかし、それでも今なお加速し続ける空戦機に対しては、徐々に引き離されるというのが現実だ。どうにか、背に乗るハジメの狙撃を用いた威嚇によって、度々回避行動を取らせることで食らいついているが……

『んん~、そろそろ脅しも限界だな。当てる気がないことに気が付き始めたみたいだ』
『ぬぅ。戦闘機相手に、純粋な速度勝負では勝てんのは分かっておったが……いざ、こうして引き離されると悔しいのぅ』
『いや、音速の二倍の速度で自由自在に空を飛ぶ、重装甲、高火力の生物って時点で既に悪夢だからな? お前も十分、生き物の範囲を逸脱しているよ』
『褒めてくれるのは嬉しいが、こればかりは理屈ではないのじゃよ』

 既に豆粒みたいになってしまった空戦機を遠目に見ながら、ティオは「むぅ」と不満そうに唸り声を上げる。

 そんなティオを見て、一拍、何かを考えるように首を捻ったハジメは、直後、ニヤリと笑って――とあるものを取り出した。

 黒く、細く、長い、しなやかそうなそれ――

『いくぜ、ティオ。俺達のコンビネーションを見せてやろう』
『む? いったいなにを――ッ、そ、それは!?』

 ハジメの言葉に、チラリと振り返ったティオは、ギョッと目を見開いて驚愕半分歓喜半分の声を張り上げた。

 その視線の先にあるもの。今まさに振るわれようとしているそれ。

――打黒鞭ver2.1 〝これは武器じゃありません。専用です〟

 なんの専用かは推して知るべし。

『イケッ、ティオ! 空の彼方まで!』

 振り下ろされた黒い鞭が、ヒュンッと風を切り、器用にも真後ろへと飛んでベチンッと実にいい音を立てた。

『アッーーー!! なのじゃぁああああっ。こ、この久しぶりの感覚はっ』
『どうしたティオ! お前の力はこんなものじゃないはずだ!』

 再び、ベチコンッ! 大きく迂回した鞭の先端が、ドンピシャ、ティオの尻を叩いた。

『キタキタキタッ! 力が溢れて来るのじゃ! もっと! もっと妾のお尻をぶってぇ! そしたら妾、もっと行ける気がする!』
『よく言った! それでこそ希代の変態ドラゴンだ! もっといくぞ!』
『ばっちこーーーいっ!!』

 ティオの瞳がうるうると潤む。ハァハァと熱い吐息が漏れ出す。体は歓喜に震え、纏う漆黒の竜巻は加速度的に激しさを増す! 特殊技能〝痛覚変換〟により、ご主人様より与えられたご褒美がティオに力を与える! 速度が際限なく上がっていく!

 豆粒だった空戦機が、親指ほどの大きさになった!

『ぶってたもう! 妾のお尻ぃ、もっと虐めてたもう!』

 ヒュンヒュンッヒューンッと風を切る音が響けば、その懇願に応えるようにビシッ、バシッ、ベチコンッと鞭打つ音が響く。黒鱗を透過し、内部に直接絶妙な痛みのみを与える専用アーティファクトにより、駄竜さんは絶好調だ!

 前方の空戦機が一瞬ぐらついた。

 生身で空戦機を破壊する理解不能な化け物から命からがら逃げ延びたと思ったら、お次は見たこともない勇壮な黒竜が、漆黒の竜巻を纏って追い駆けて来るのだ。それも音速かつ、閃光のような砲撃付きで。

 いったい何度、驚愕に操縦を誤って減速してしまったか……

 その上で、空から降って来るような荘厳な声音で、『妾のお尻をぶってぇえええっ』という興奮交じりのド変態な雄叫びが届くのだ。

 パイロットは混乱した! ついでに涙目になった! もう、現実が理解できない!

「グローサー4ッ。俺はお前を信じてる! 俺を、この悪夢から連れ出してくれ!」

 懇願じみた声音で、愛機――グローサー4に呼びかけるパイロット。意思など持たない機体は、当然、沈黙を以て返すが、スロットペダルのベタ踏みにより、その性能の限界まで能力が発揮される。

 単純な直線速度では、カタログ上、最高速度マッハ4.4というスペックを有する超速空戦機だ。空気を破裂させるような爆音を置き去りにして、まさに一筋の流星となって大空を疾走する。

 その後ろを、ぴったり追走する駄竜さん! その背に乗る飼い主さんはノリノリで“これ専”を振るいまくる! 大空に響き渡る歓喜の咆哮! ティオ=クラルスは、現代戦闘機を凌駕する!

『オラオラオラオラオラッ、ちょっと引き離されてっぞ! ケツに力を入れろ! この駄竜めっ』
『あひぃいいいいっ! いってしまう! 妾、空の彼方へいってしまうのじゃぁああああああっ』
「なんなんだよっ。もうやだよっ。誰か助けてぇええええええっ」

 空は蒼い。風は爽やかで、雲海は美しい。

 そんな雄大な自然の中、三者三様の雄叫びは……

 まさに、カオスだった。



 蒼穹の大空にカオスを撒き散らしてしばらく、

『ぐすっ……』
「泣くなよ、ティオ。新記録だぞ? 間違いなく歴史上最速の生物だ。お前はすごかったよ。いろんな意味で」

 泣きべそを掻きながら普通の速度で飛ぶテォオと、それを慰めるハジメの姿があった。

 さもありなん。一瞬とはいえ、音速の四倍の領域に到達したティオは、間違いなく生物の範囲を逸脱した神域の存在といっていいだろう。が、それでも、常時その速度を維持できる異世界の未来型戦闘機には持久力の面で及ばず、結局、こうして引き離されてしまい、プライドを傷つけられてしまったわけだ。

『悔しいのぅ、悔しいのぅ』
「ほら、もう泣き止めって。お前は凄いよ」

 さっきまで高笑いしながら嵐のような鞭打ちを披露していた人物とは思えない、優しい表情をさらすハジメ。ティオの艶やかな黒鱗をぽんぽん、なでなでする。

 ムチの後のアメに、ティオは悔し涙を引っ込めると、ほんのり嬉しそうな雰囲気を纏いながら、「じゃが……」と続ける。

『せっかくのコミュニケーション可能な相手を逃がしてしもうた。これからどうするのじゃ、ご主人様よ』
「う~ん、そうだな。さっきの浮島に戻って島が浮く原因を調べてもいいが、結構な距離を飛んで来ちまったしなぁ。このまま、あいつが飛んでいった方へ、適当に行ってみよう」
『まぁ、元々、あてのない冒険じゃし、妾は構わんよ』

 そんなことを言いながら、どこまで逃げたのか分からない相手を追って、のんびりと飛び続ける二人。

 時折、ハジメが「あっちに行ってみよう」とか、「あの雲の方へ行ってみよう」などと、微妙に進路を変えていく。ティオは、「もう追う気がなくなったのかしらん?」と首を傾げつつも、特に反対する理由もないので指示通りに飛び続けた。

 そうして、半日も飛び続けただろうか。

 途中、いくつかの浮島を発見しつつ、特に代わり映えのしない景色の中を進み、陽が雲海の向こう側へ沈み始めた頃。

 茜色に染まる切ないほどに美しい世界の中に、それは現れた。

「へぇ。これはまた随分と大きいな。母艦ってやつかな?」
『……あやつが所属する所とは限らんが。まぁ、方角、距離的に、間違いなさそうじゃな』
「おう。間違いないぞ」

 一瞬、ティオが何とも言えない眼差しをハジメに向けたが、直ぐに気を取り直して「どうする?」と問いかけた。

 ハジメは考える素振りを見せながら、その視線の先のものを見つめる。

 オレンジ色の陽の光に照らされてうっそりと輝く鈍色の大型飛行艦。形は、地球で言うところの飛行船に似ている。ラグビーボールのようなずんぐりした形だ。金属製ということを考えれば、およそ飛行には適さない造形だが、安定感は遠目にも確か。背後へ煌めく白銀の粒子を噴出させながら、結構な速度で飛んでいる。

 大きさは、地球で言うところの空母二艦分くらいだろうか。よくよく見れば、外部に筒状の突起物が無数についている。もしかしなくても、艦載兵器だろう。無数にならんだ正方形の小さなハッチは、きっとミサイルやら何やらの兵器が搭載されているに違いない。

 ますます、SFじみてきた――などと思いながら、ハジメは方針を口にした。

「よし、純ファンタジーから半SFにチェンジしたんだ。俺達も、冒険者からスパイにジョブチェンジしよう」
『う、うむ? つまり、潜入するということかの?』
「ああ、なんだかワクワクしてきたな。ティオ、竜化を解いてくれ。隠形系アーティファクト全開で、あのロマン溢れる空母艦――ゴリア○に潜入するぞ」
『その仮称が、あの艦の運命を物語っていそうなんじゃが……某タイタニッ○さん並に沈没フラグが立っておるよ』

 そう言いつつ、パァッと輝いて竜化を解いたティオは、部分竜化で翼を出しつつ滞空した。ハジメも、“宝物庫Ⅱ”からスカイボードを出して乗ると、ペンシル・クロス・ヴェルトを起動して隠形用結界を展開する。

「あいつらに、こっちの隠形を破るくらいの技術があるか……物は試しだ」
「ばれたらどうするんじゃ?」
「もちろん、平和的な話し合いだ。俺は善良で模範的な日本人だからな。さっきのふざけたやつを差し出すなら、命だけは助けてやると言えば、友好的な関係が築けるだろう」
「ご主人様よ、それはジョークじゃよな? 真顔じゃし、声音が平坦じゃが、ジョークなんじゃろ? そうなんじゃよな?」

 ハジメさんは答えなかった。古き良き日本男児は寡黙なものなのだ!

 音もなく、傍から見れば姿もなく、更には熱も感知できないような状態で、二人はスィ~~と空母艦の後方から接近した。近くによればよるほど、その巨大さを実感する。

 空母艦の上に到達した二人はスカイボードと翼を消すと、巨大な甲板の端っこに着地した。

「……知らない金属だが、特に何かの効果を持っているわけじゃないな。普通の金属だろう」
「金属そのものに浮遊の効果があるわけではないというわけじゃな」

 ツルツルとした甲板の床に片膝を突いて手を這わせていたハジメが呟く。ティオが周囲へ気を配るが甲板上に人影はない。中央部分に、空母の司令室のような突出した場所があり、風防越しに人影がチラチラと見える。本当に司令室なのか、それともただの物見台なのかまでは判別できない。

「ご主人様よ。不可視の結界があるとはいえ、こうも広い場所に長居するのはどうにも落ち着かん。あそこに入口らしきものが見えるし、そろそろ行ってみんか?」
「そうだな。材質とかいろいろ気になるが……まぁ、サンプルをもらっておけばいいか」

 そんなことを言って、無造作に手すりを引き千切って“宝物庫Ⅱ”にしまってしまうハジメ。入口らしき扉のあるところに行く十メートルほどの間に、まるで空母艦は虫食いにでもあったみたいに一部をでこぼこさせた。

 なんて自然な器物損壊&窃盗行為か。お巡りさん、この魔王です。

 背後からの、ティオの呆れた視線を知ってか知らずか、潜入のはずなのに忍ぶ気ゼロのハジメはスタスタと甲板を進み、内部へと続く扉前に辿り着いた。気圧差で警報などが鳴らないように扉全体を結界で覆いつつ、扉に手をついて妙な仕掛けがないか調べる。

 そして、錬成を使ってあっさりと扉をただの穴に変えると、これまた無造作に足を踏み入れた。ティオが続き、再び錬成によって扉が元の形を取り戻す。錬成師相手に、扉の鍵やらなんやらは無意味だ。

「取り敢えず、潜入成功っと」
「おかしいのぅ。妾の知っとる潜入と違うんじゃが」

 特にアラートが鳴り響く様子もなく、ハジメは満足そうに頷いた。ティオは何とも微妙な表情だ。

 二人は周囲の気配を探りながら先へと歩みを進めた。金属のツルツルした通路を進む。ところどころ、ハジメさんの手で抉られていく。それはまるで、適当に歩きながらコインで道端の車に傷をつけていくかのよう。なんて質の悪い悪戯(?)だろうか。

「動力があるのは、おそらく船体後部だろうな。あとは、あの一番高い場所が、物見台なのか司令室なのかってところか」
「あのキラキラ光る粒子が、島が浮く要因の一つじゃろ。なら、まずは船体後部の探索かの?」

 ティオの提案に、ハジメはちょっと考えてから頷いた。

「だな。あの泳がせた奴に、さっさと後悔って言葉を刻み付けてやりたいところだが、まぁ、この艦の中にいるのは分かっているし、後回しでいいだろう」
「……そうじゃな」

 二人は船体後部に向かって適当に進む。船体の巨大さに反して、中の通路は意外なほど広くない。大人が三人、横並びになれば狭苦しさを感じる程度だ。

 当然、搭乗員と遭遇することは多々あった。

 気配感知で鉢合わせする前に相手の位置を知ることができるハジメ達は、特に見つかるということもなく、先へと進んでいく。

 廊下の狭さから小さな集団と出くわした場合も、天井に飛び上がって貫手で天井に指を突き刺し、そのまま天井に張り付いてやり過ごしたり、適当な壁を錬成して隙間を作り、そこに体を押し込んでやり過ごしたりした。

 気分はまさに、どこぞのスパイ。ハジメの表情は童心に戻ったかのように楽しそうである。

 ちなみに、天井に張り付く際は、ティオを抱えた状態でハジメが人間ハンモックみたいになっていたり、壁の隙間に潜り込んだ際は、ハジメがティオをきつく抱き締めた状態になったりしていたので、ティオ的にも嬉し恥ずかしと、実に楽しそうであった。

「どうやら、きちんとした国家が存在するようじゃの。彼等は軍人といったところか。モラルは低そうじゃが、指揮命令系統に対する従順さはあるようじゃの」
「ああ。階級分けされて上下関係のはっきりした軍隊だ。この規模を遠征に出せるってことは、帰属する国もそれなりの規模がありそうだな」

 配色は異なるが統一された衣服を纏う搭乗員達の姿、漏れ聞こえる会話、更に、彼等が装備している武器の類が明らかに銃であり、これもまた統一されたものであることから、二人はそう推測した。

 そうやって会話しつつも、存分にスパイごっこを楽しみつつ、いくつかの扉を潜り、いくつかの広間を抜け、いくつかの階段を降り、最下層は後部の、一際大きな通路に出たそのとき、不意に不快な匂いが鼻をついた。

 ハジメとティオは、覚えのある異臭に、互いにしかめた顔を見合わせつつ、誘われるようにして匂いを辿る。

 通路の角の向こう側から話し声が聞こえた。二人は角から顔を覗かせる。

「おい、聞いたか? グローサー隊の奴等、ヒッグズを残して全滅したって」
「それ、本当なのか? いったい、なにがあったんだよ。アーヴェンストの奴等か?」
「かもな。ただ、補給に出ていた(・・・・・・・)グローサー隊のうち、めちゃくちゃ怯えたヒッグスしか戻ってこなかったのは本当っぽいぞ。奴等に襲われたくらいで、そんなに怯えるか?」
「それは……新兵器でも使われた、とか?」
「あいつらに、そんな力あるかよ。伝統だの誇りだの、くだらねぇ妄言ばっか口にしてるただの空賊だぞ?」
「じゃあ、なんであいつ等如きに、そんなに怯えんだよ?」
「俺に聞いたってわかるわけねぇだろ」

 いくつか気になる情報を口にしつつ、通路の壁にもたれて話している二人の男。匂いの原因は、確かにその二人だ。一見して分かる。なぜなら、その二人は、つなぎのような作業着を血濡れにしていたのだから。

 彼の前には大きな扉がある。そこで、血に濡れるような作業をしていたのだろう。なにが行われていたのか、あまり想像はしたくない。おそらく、今は休憩中なのだろう。

「まぁ、とにかく、空戦機を四機も失ったのは本当なんだろ。こうして、予備機用の燃料を取り出しておけって命令を受けたんだからよ」
「そう、だな」

 味方の不幸に溜息を吐き合う作業着の二人。仲間意識の強弱は、彼等の会話からは判然としない。ただ、ハジメが墜とした空戦機の補充には、彼等を血濡れにする作業が必要だということだけは確かなようだ。

 二人の作業員は、タバコらしきもので一服すると、やれやれと言った様子で部屋の中へ戻っていった。その際、開いた扉の奥から強烈なまでの匂い――血の匂いが溢れて来る。

「ご主人様」
「ああ、いくぞ」

 今更、血生臭い匂い程度で怯むような可愛らしい性格はしていない。ハジメとティオは、空戦機の、そして、おそらくはこの空母艦や浮島が浮遊する原因である〝燃料〟とやらの正体を確かめるべく、部屋へと近づいた。

 扉はスライド式で、おそらく一定時間で勝手に閉まるのだろう。ハジメとティオは、スライド式の扉が閉まる前に、部屋の中へと身を滑り込ませた。

 そして、目撃する。何故、あの空戦機乗り達が竜達を生け捕りにしようとしていたのか。〝燃料〟とは何なのか、を。

 部屋の中は広かった。二階分の高さがあり、縦横百メートルはありそうだ。三方の壁は隙間なく檻でできており、部屋の中央には何かの作業台がある。天井や床からはクレーンや、アームのようなものがいくつも飛び出していた。

 檻の中にいるのは、例外なく竜だ。大きさや、色、姿形はいろいろだか、一見して竜と分かる生き物である。先の浮島で戯れた竜達と同じ灰色の竜もいる。大きくとも三メートルを越えるものはおらず、たいていが一メートルから二メートルといった小柄な竜ばかりだ。中には、三十センチ程度の竜もいるようだ。

 部屋の中央は、まさに血の海といった様子。大きな作業台があり、そこにアームで固定された竜が横たわっている。そに目に光は既になく、裂かれた胸元からは未だに血が流れていた。

 作業員は、先程の二人を含めて十人ほど。その内の一人が、竜から今まさに取り出した白銀色の小さな石のようなものを丁寧に洗っている。

 そして、それを傍にあった機械に入れ、表示される何かを確認した後、他の作業員に渡した。白銀の小石を受け取った作業員は、また別の機械に小石をセットし、何度も何かを確かめながら機械を操作している。

 そうして出来たのは、先程までの歪な形だった小石が、綺麗な正方形のチップのように加工されたものだった。

 正方形のチップ型に加工された白銀の石は、また別の作業員に渡された。その作業員は、大きな機械にコードで繋げられた、水筒のような円柱形の機械の底面にそのチップを差し込んだ。そして、いくつかのボタンを操作すると、円柱形の機械の側面にあるメーターの表示計が、下の方から順次白銀色に輝いていく。

 そこまで確認して、ハジメは無表情のままポツリと呟いた。

「……なるほどな。この世界の竜にも、魔石のようなものがあるってことか」
「それを加工して、〝燃料〟にしとるわけじゃな」

 隣で頷くティオは、納得の言葉とは裏腹に、ハジメと同じく無表情。声音には全く抑揚がない。

「浮島にも、同じような鉱石があるんだろう。……ったく、それだけなら、ファンタジー万歳で終わったんだがな。胸くそ悪い」
「じゃが、だからと言って止めるわけにも、まして憤りをぶつけるわけにもいくまいて。地上が汚染された世界で空に生きる彼等にとって、竜狩りはまさに死活問題。それを邪魔することは、彼等に死ねという等しいのかもしれんのだから」
「まぁな」

 もっと言えば、竜人族であるが故に、竜種というものに対しては少しばかり思い入れのあるティオであったが、それでも、関係のない魔物といえばそれまでだ。トータスにおいても、竜種の魔物を討伐することに躊躇いなどなかった。

 ただ、やはり、この異世界で最初に出会った懐っこい竜が頭の片隅を過ってしまう。故に、電池代わりにされていることに対して、何も思わないなど、できるはずもなかった。

 まさに、ハジメの言う通り、彼等の行為は理解はできても、〝胸くそ悪い〟という思いだった。

「行こう、ティオ。もう、十分だ」
「そうじゃな」

 嫌なものを見た、知ってしまった――そんな思いで部屋を後にするハジメとティオ。時折耳に届く弱々しい竜達の鳴き声が、まるで二人に助けを求めているようで、気のせいだと分かっていても、溜息を吐かずにはいられない。

 そうして、ハジメとティオが部屋から出て行こうとした、そのとき、

ゴウゥンッ

 と、腹の底に響くような音と共に、船体が一気に加速したかのようなGが体に襲い掛かった。

 ハジメとティオはどうということもなかったが、作業員達の何人かが転倒したり、尻餅をついている。

『司令室より伝達。アーヴェンストの機影を確認。これより本艦は戦闘行動に入る。総員、直ちに持ち場へつけ。繰り返す、本艦はこれより戦闘行動に入る。総員、直ちに持ち場へつけ』

 甲高いアラート音が艦内に響くと同時に、全体放送が響き渡る。司令室からの伝達により、空戦機部隊の出撃が命じられ、更に、この部屋の作業員達にも補給を急ぐよう命令が下された。

 にわかに慌ただしくなる現場。作業員が十本ほどの先程の円筒型機械をケースに収めて台車に乗せ、駆け足で部屋を出ていく。

 それに合わせて部屋の外に出ながら、ハジメは思案顔で口を開いた。

「アーヴェンストって、さっきの奴らが話してた空賊って奴か?」
「そうかもしれんの。偶然か必然か、それは分からんが、どうやら戦闘になるようじゃな」

 相手の戦力は分からないが、国家に所属する正規の軍が、そうそう〝賊〟にやられるとは思えない。

 しかし、それでも、保有戦力未知数の軍隊が、同じく戦力未知数の敵と戦争をしようというのだ。万が一、この空母艦が墜とされるような事態になった場合に、仲良く心中するのは勘弁である。

「さっさと出るか。浮遊の原因は掴めたし、この空母艦に馬鹿みたいな推進力を与えている動力炉が破壊されたときのエネルギーは、少し危険な香りがする。距離を取って、様子見としよう」
「うむ。それが賢明じゃろう」

 慌ただしい艦内をまるっと無視して、ショートカットで外に出ようというのか、適当に錬成した床を階段状にしつつ穴を空けていくハジメが、思い出したように口を開いた。

「そういえば、あの生き残り……確か、〝びっくり〟だったか?」
「確かに、妾達と出会ってからびっくりの連続じゃったと思うが、びっくりではなく、〝ヒッグス〟じゃよ。小さい〝つ〟しかあっとらんぞ」
「まぁ、ぱっくりでも、ぽっくりでもなんでもいいけど。悪いな、ぶちのめす暇はなさそうだ」
「そんなこと……別に気にしとらんよ。妾のためにご主人様が怒ってくれただけで、替えの下着が必要なくらいじゃ」
「安心しろ。そんなこともあろうかと、ティオ用の下着なら宝物庫にストックしている」
「なん、じゃと? は、初耳じゃ」
「ユエが持たせてくれたんだ。少し前に、お前と二人で出かける機会があったろ? そのときにな、『ハンカチは持った? おサイフは持った? ティオのパンツは? もう、忘れちゃダメでしょ。んっ』ってな感じで」
「なんという正妻力……」

 先程までの嫌な気持ちを流すように、そんな阿呆な会話をしながら勝手に船体に穴を空けたハジメは、轟々と風を唸らせながら高速航行する空母艦から飛び降りた。ティオも続いて飛び降りる。

 すかさずスカイボードに乗り込み、ティオも竜翼を出して空母艦から距離を取りつつ並走を始めた。

 ハジメは、ティオと自分を全体的に覆うようにして隠蔽結界を張りつつ、空母艦が追うものへ視線を向けた。

 アーヴェンストという空賊の飛行艦は、空母艦と形状は似ているが、その大きさ三分の一程度だった。空母艦と異なり、船体後部から噴き出しているのは白銀の粒子ではなく、ともすれば無色にも見える白色の光だ。

 速度差は歴然で、空母艦から飛び出した空戦機が早くも追いついて攻撃を開始している。

 それを、空賊の飛行艦は巧みな動きで凌ぎつつ、艦載兵器で寄せ付けないよう迎撃している。加えて、空賊の飛行艦からも発進したらしい空戦機が、これまた見事な空戦技を披露しながら、襲い来る敵から母艦を守っていた。

「どうやら、空賊の方が、装備や機体は貧弱だが腕はいいようだな」
「速度差は歴然、旋回能力、搭載兵器も一見して劣っているのに、見事に凌いでおる。じゃが……」
「ああ、戦力の差はどうしようもない」

 そう、いかに空賊側の腕が良くても、戦力が圧倒的に不足していた。空戦機の数は、ぱっと見た感じでも三倍差があるし、バルカンやミサイル類にしても、威力や追尾性が目を覆いたくなるほど貧弱だ。

 おそらく、空賊側はミサイル一発か、バルカンの弾丸を数発も受ければ撃墜されてしまうだろう。対して、軍側の空戦機は、ミサイルはともかく、空賊側空戦機のバルカン程度なら、数十発を受けても戦闘能力に影響はなさそうだった。

 数倍の数の敵相手に、数倍の攻撃を当てなければ撃墜することも叶わず、速度で振り切ることもできそうにない。卓越したパイロット達の腕が、思わず感嘆の溜息を漏らしたくなるほど奇跡の凌ぎを見せているが、それも時間の問題なのは明らかだ。

「どう考えても、空賊側の襲撃というわけじゃなくて、運悪く軍側に見つかっちまった……ってことだろうな」
「お、ご主人様よ。空賊側の母艦が進路を変えたようじゃぞ。ほぅ、どうやら、あの雲の山脈らしいところへ飛び込む気のようじゃの?」

 左方に、巨大な雲の滝が見えた。世界の果てまで続いていそうなそびえる雲の山脈から、ドライアイスの煙が地に落ちるように、雲の川が流れ落ちている。単に、雲海の中でも高低差のある場所なだけなのだろうが、傍から見れば確かに雲の山脈だ。

 雲海の中は、細胞を壊死させる黒い雨と、激しい雷風が荒れ狂う場所だ。果たして、スペックの低そうな空賊の飛空艦と空戦機が耐えられる環境なのか……

 どう考えても、一か八かの賭けだろう。だが、どの道、このままでは撃墜されるのは時間の問題なのだ。彼等も、もう賭けに出るしかないに違いない。

 大きく弧を描くようにして左旋回を始めた空賊の飛空艦。既に空戦機から何発からの直撃を食らって一部が損壊している。それでも、空母艦からの強力な砲撃やミサイルだけは回避しているのだから、もはや呆れた技量である。

 もっとも、それで逃げ切れるかと問われれば、

「……厳しいな」
「そう、じゃな」

 空母艦は、もう直ぐそこまで迫っている。近づけば近づくほど、被弾の確率は増大する。いかに操縦士の腕が神憑っていても、これ以上距離を詰められたらどうしようもないだろう。

 とても、雲の山脈まで持つとは思えなかった。

 そんな光景を見ているハジメ達は、もちろん、救援に向かったりはしない。彼等はこの世界の〝賊〟だ。大多数が守るルールを無視するアウトローなのだ。ちょっとした冒険気分で、好奇心を満たしに来たに過ぎない異世界人が、適当に引っ掻き回していい問題ではない。

 いくら、軍側のパイロットのモラルに問題があろうが、〝燃料〟の精製に気分が悪くなろうが、そんなことで空賊の味方をしようなど、思えるはずもなかった。

 純粋に楽しむには、やはり少々、環境も人々の在り方も、シビアすぎる世界だったな――と、苦笑いを浮かべたハジメとティオ。人が大量に死ぬところをわざわざ鑑賞するような悪趣味はないので、この空域を離脱しようと視線を逸らした。

 が、それで簡単に行かせてくれるほど、ハジメ達に纏わりつく運命とやらは良い奴ではないのだ。異世界トータスでの全ての出来事しかり、ちょっと散歩に出たら異世界に転落したことしかり、その世界が割と終わっていて、しかも二陣営の争いが目の前で繰り広げられていることしかり……

――ぴぃいいいいいいっ

「あ?」
「む?」

 爆音と風のうねりと、オレンジの爆炎で彩られた戦場に、突如、甲高い音が響き渡った。ホイッスルが吹き鳴らされたような、しかし、もっと切実で、必死さの込められた――鳴き声。

 思わず戦場へと視線を戻したハジメとティオは、何か小さいものが高速で接近してくる気配を捉えた。

 雲海と空の狭間から照らす夕日と、爆炎のオレンジの隙間を縫うように飛んでくる、白銀色に輝く小さな物体。それは、小さくも壮麗な竜だった。

「ぴぃっ。ぴぃいいいいいっ」

 翼を必死にはためかせ、喉が裂けんばかりに鳴き声を上げる白銀の小竜。

 迷い竜か? と疑問に思ったハジメ達だったが、直ぐに気が付く。その小さな存在が、真っ直ぐにハジメ達を、否、正確にはティオを見つめていることに。

 ハジメは周囲に浮くペンシル・クロス・ヴェルトを見やった。機能は正常に稼働している。隠蔽効果は健在だ。姿も、匂いも、熱源も感知できないはず。だが、こちらに向かってくる小竜は、どう見てもティオを目指して一直線だ。

 ハジメは、おもむろにティオへ顔を近づけ、すんすんと鼻を鳴らした。

「な、なんじゃ、ご主人様よ。いきなり匂いを嗅がれるのは、流石に恥ずかしいのじゃが」
「いや、俺のアーティファクトでも隠し切れない、特殊な匂いでも発しているのかと思ってな」
「……今、ご主人様をぶん殴りたいと思った妾は間違っておらんはず」

 珍しくも怒った様子のティオは、ちょっぴり頬を染めつつハジメの顔に手を押しつけて引き離した。

 そうこうしている間にも、小竜はハジメ達の元へ辿り着き、「ぴぃ! ぴぃっ!」と鳴き声を上げながら二人の周囲をくるくると旋回する。何かの間違いでもなく、どうやら本当に二人の存在を感知しているらしい。

「おいおい、なんだってんだ? なんか、随分と必死感が漂ってるが」
「……まさか、助けを求めておるのか?」

 ティオが何とも言えない表情で小竜を見やる。何故、人間を恐れているはずの竜が、人間の争いに関わろうとするのか。ハジメも訳が分からないといった様子で首を傾げた。

 が、おかしなことは更に続く。

 なんと、死にもの狂いで雲の山脈へと向かっていたはずの空賊が、大きく旋回しつつさらに進路を曲げ始めたのだ。その機首が向く先は――ハジメ達の方。

「どうなってんだ? まさか本当に隠蔽効果が破られたのか?」
「いや、ご主人様よ。おそらくじゃが、この子が原因ではないかの?」
「今にも撃墜されそうな瀬戸際で、空中を旋回している小さな竜を追い駆ける? マジで意味が分からねぇ」

 空賊が進路変更したことで、軍側も小竜の存在に気が付いたのか、驚いたことに空戦機の何機かが、戦線を離脱して迫って来た。卓越した空賊の空戦機にかかりきりだったはずなのに、戦力に穴を空けても小竜に迫る。

 同時に、空賊の空戦機も、母艦の護衛そっちのけで小竜の元へ飛び出した。

「……お主は、いったい何なんじゃ?」

 必死に、何かを訴えかけてくる小竜に、ティオは無意識に問いかけていた。命を捨てでも小竜を求める空賊。仕留める寸前の空賊を放置してでも追い駆ける軍。

 もはや、この白銀の小竜がただのはぐれ竜でないことは明白だった。

「チッ。なんか知らんが、このままだと巻き込まれる。ティオ、傍観は終わりだ。さっさとこの空域から離脱するぞ」
「む、承知した」

 小竜の存在は気になるが、軍と空賊がこぞって追い駆ける存在を懐に抱え込むなど論外だ。ハジメとティオは互いに頷くと、その場を離れようとした。

 その瞬間、まるで二人の意思を察したように、小竜が進路上に立ち塞がった。そして、直後には白銀の光を発し始める。

 まばゆく、どこか荘厳に輝く小竜に、思わず足を止めたハジメとティオの頭に、どこか幼さを感じさせる、されどこれ以上ないほど切実な想いが込められた嘆願が響いた。

『たすけてっ、たすけて! おうさま、おねがい! みんなを、ともだちを、たすけてっ』

 明確な言葉として聞えたわけではない。だが、確かに伝わったその想い。

 困惑を隠せないハジメとティオが、動きを止めたまま顔を見合わせる。

 刹那、音速の衝撃が周囲一帯に襲い掛かった。

「ぴぃっ!?」
「うおっ」
「ぬわっ。これはあのときの!」

 浮島で、空戦機が放った音波攻撃。それより遥かに威力があり、物理的な衝撃波すらも発生させたそれは、容赦なくハジメ達を襲った。

 当然、ハジメとティオにはダメージなどなかったが、小竜まで無事とはいかない。白銀の不思議な光を霧散させた小竜は、衝撃で吹き飛ばされ、更には意識も断たれたのか力なく墜ちていく。

「あ、これ、しっかりせんか!」

 思わず飛び出したティオが、両手で小竜を抱き抱えた。

「ティオ! ぼさっするな!」
「ぬ?」

 一瞬で通り過ぎた軍の空戦機。ハジメが警告の声を発したときには、後続の二番機が、浮島でしたのと同じように空中の檻を展開するミサイルを放った後だった。

 眼前で破裂し、大きく覆いかぶさるように広がる特殊な網。

 それがティオと気絶する小竜に覆いかぶさる寸前で、その間にハジメが割り込んだ。

「ハァッ!!」

 気合い一発。指向性を持たされて噴き出した魔力が、技能〝魔衝波〟によって物理的衝撃に変換される。絶大な威力を持った真紅の波動は、そのまま檻の網を彼方へと吹き飛ばした。

 二番機が通り過ぎた後、更に迫っていた三番機が減速しつつ、機体の下部からフックのようなものを展開した。おそらく、それで空中の檻網を捉えて母艦まで運ぶのだろう。

 迫る三番機のパイロットが、驚愕に目を見開いているのが分かる。

 何せ、華麗な連携で小竜を鹵獲しようとしたら、いきなり空中に翼を生やした美女が現れて小竜を抱き締め、更には、檻網が真紅の波動に吹き飛ばされた挙句、その後にも空飛ぶボードに乗った男が現れたのだから、驚くなという方が無理だろう。

 そう、ティオは飛び出した時点で隠蔽範囲から出てしまっており、ハジメも魔衝波によって姿をあらわにしてしまったのだ。

 急迫する三番機の下部に飛び出した頑丈そうなフックが、ハジメと、ハジメが庇うティオと小竜に直撃しそうになる。

 ハジメの右手の指が、かぎ爪のように曲げられる。刹那、直撃寸前のフックに対して右手が振るわれた。

 そうすれば、後に残ったのは弾き飛ばされ肉塊に成り果てたハジメの姿――などでは当然なく、細切れにされたフックの残骸が雲海へと落ちていく光景のみ。技能〝風爪〟によってフックは細切れにされたのだ。

 軍の空戦機を追い駆けてきていた空賊の空戦機が、ハジメ達を避けるように大きく旋回する。

 ハジメがチラリと視線を向ければ、やはり、空賊のパイロットも目玉が飛び出さんばかりに驚愕の表情を見せていた。まさに、「なんじゃありゃぁあああああああっ」といった様子である。

「ティオ、そいつは?」
「うむ、気絶しとるだけで大事はなさそうじゃ。……すまん、ご主人様よ。つい飛び出してしもうたせいで、面倒に巻き込まれた」

 申し訳なさそうな表情を見せながら、ハジメの隣へと近寄ったティオに、ハジメは苦笑いしながら肩を竦める。

「体が勝手に動いたなら、それが、ティオが本心から求める行動だったってことだろ。なら、別に構わねぇよ。第一、面倒ごとに巻き込まれるなんて今更だ。傍観者気取ってりゃあ、こういうこともあるだろうよ」
「う、うむ。そうか。ありがとうの」

 ハジメのあっけらかんとした物言いに、ティオは口元をもにょもにょさせる。そして、こころなし、さっきよりもハジメの近くに寄り添った。

 ハジメの視線先では、空賊の飛空戦が迫り、軍の空母艦がハジメ達を中心に回り込むように旋回している光景が広がっていた。空戦機は、警戒と困惑からか、ハジメ達を中心にぐるぐると旋回している。

 そんな光景を目に、ハジメは苦笑いを深めて呟いた。

「さて、まずは平和的に、〝お話〟から始めてみようか」


いつもお読みいただきありがとうございます。
感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。

ちょっとした告知ですが、オーバーラップ様のHPにて連載中のコミック版が更新されました。
やべぇ、マジやべぇ。爪熊との戦いとか迫力がやべぇっす。
凄く迫力があって、奈落初期のハジメを、また新鮮な感じで楽しめると思います。
ご興味があれば、ぜひ、見に行ってみてください!

次話の更新も、土曜日の18時の予定です。
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