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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

ありふれたアフターストーリー

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ありふれたアフター クリスマス記念 サンタさんの贈り物

リア充たちも、ぼっち村の村民たちも、みんなまとめて

メリークリスマス!
 色とりどりの仮装をした人々、不思議な生物(マスコット)達、歓声や興奮を孕む悲鳴、あちこちから響く効果音や音楽。

 非現実的で、非日常的なそこは、とある有名なテーマパークだった。

 季節は冬。それも一年の終わりが、もうすぐそこまで来ている日――クリスマスの日。

 普段より恋人達が多いのは当然だが、家族連れや友人同士で来ている者達も、クリスマス色に染められた期間限定の模様替えをしているテーマパークを存分に楽しもうと大勢が訪れていた。

 そんな、経営陣の顔がホクホクしそうな来場者数を計測しているテーマパークには、ちょっと特殊な集団がいた。男一人に、八人の美女・美少女。そして、その男の肩には瞳をキラッキラッさせている幼女。言わずもがな、ハジメ父娘と嫁~ズ(ユエ、シア、ティオ、香織、雫、レミア、愛子、リリアーナ)である。愁と菫は、お仕事だ。二人が血涙を流したのは言うまでもない。

 ちなみに、リリアーナは今のところ、まだまだ王国を離れるわけにはいかないので、普段は王国在住である。しかし、せっかくの聖夜に、リリアーナだけ除け者というのはあんまりなので、ハジメがゲートを開いて執務中だったリリアーナを拉致してきたのだ。

 一応、電力を魔力に変換するシステム(ハジメが地中深くに自前の地熱発電所を建造したので変換し放題)により、トータスとの行き来は自由度を増しているため、特に問題はなかった。

「パパ、パパ! あっち、あっちに行くの! サメさんがガバッってしてるやつ!」
「はいはい。寒ぃのに、わざわざ水系のアトラクション選ばんでもいいだろうに。種族特性か?」

 ハジメに肩車されながら両足をパタパタさせて、きゃっきゃと騒ぐミュウ。その頭には、もふもふしたサンタ帽が被せられており、服装もミニスカサンタ姿だ。足元は白のストッキングで包まれていて、ブーツには白いポンポンがつけられており、動く度にふりふりしている。

 サンタ帽から流れるエメラルドブロンドの髪と、母親譲りと優しさを感じる整った容貌、無邪気に騒ぎ、めいっぱいパパに甘える小さなサンタさんは、周囲を囲むお姉ちゃん達のこともあり、非常に目立っている。周囲の人々は無意識に視線を吸い寄せられ、一度、見てしまえばほんわりと表情を緩めずにはいられないようだ。

 ミュウサンタのご所望通り、ハジメパパは巨大サメが潜む川を冒険するという水上アトラクションへと向かった。

 待っている間、ユエ達の美貌に他の客達がチラチラと視線を向ける……ということはない。認識阻害のアーティファクトで、周囲からユエ達へ注意が向かないようにしているのだ。

 代わりに、ユエ達の方が周囲へキョロキョロと視線を彷徨わせている。特に、こちらの世界にまだ馴染みの薄いリリアーナは、いろいろとカルチャーショックを受けているようで、認識阻害用の眼鏡の奥から、あるいはミュウ以上にキラッキラッした眼差しを巡らせていた。

 朝から入園し、日もだいぶ傾いていきているのだが、いまだ興奮は収まらないらしい。

「……本当に、ハジメさんの世界はビックリ箱のようなところですね。ただ娯楽のためだけに、これほどの施設を建造してしまうなんて。ちょっとした都市級の規模ですよ? フューレンの観光区も大概ですが、それでもここはレベルが違う。いえ、娯楽にかける熱意、本気度が違うというべきでしょうか? 大規模な施設なのに、細部にまでこだわりが見えるのは、単なる商売としての合理性を超えた、建築に関わった人々の情熱を感じます。建造費はいくらくらいなのでしょう? 採算は? 年間の来場者数は? 今後の展開は? 母体は一般商会……ではなく企業でしたか? これを国営に出来れば……。いえ、実質的なところはフューレンに任せて、王国は契約相手に……」

 どうやら、少々観点のずれた興奮をしているようだ。せっかく夢の世界の、それも聖なる夜にやって来たというのに、異世界の王女様は、テーマパークの売り上げが気になるらしい。そうすると不思議なことに、夢見る乙女のようなキラキラの瞳が、銭を狙うギラギラに見えてくるから不思議だ。

 ハジメ達が地球に帰ってから、どれだけリリアーナが頑張って来たのか、想像はつくので仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが……少々、放置しすぎたかもしれないと、ハジメのみならず、ユエ達も同情混じりの生暖かい視線をリリアーナに送る。

 そうこうしているうちに、ハジメ達の順番が回って来た。目の前に流れてきたボートに乗る。ボートは天井付きの二十人くらい乗れるもので、中央に縦長のベンチが設置されており、外側を向いて座れるようになっている。

 ミュウは当然のようにハジメのお膝の上に座り、わくわくした様子で進路上を眺めていた。

 やがてボートがゆっくりと進み出した。同時に、冒険者のような恰好をしたお姉さんが、ライフル銃を片手に、いかにこの冒険が危険か、水の底に潜む存在がいかに凶悪かを、臨場感たっぷりに語っていく。

 流石は大規模テーマパークの従業員だけあって、その話術は一流だ。大人は大人で雰囲気を楽しんでいるし、子供達は怯えたように水上へ視線をやりながら親の手をギュッと握っている。

「パパ」
「ん? なんだ、ミュウ」

 お膝の上から上目遣いで振り返ったミュウの呼びかけに、ちょっとずれたサンタ帽の位置を直しながらハジメが首を傾げる。ミュウは、にこにことしながらパパに聞いた。

「サメさんが襲ってきたら、あのお姉さんが倒すの?」
「ああ、そうだな。あのライフルを撃って、守ってくれるんだろう」
「ふ~ん」

 ミュウはハジメの言葉を聞くと、マジマジとお姉さんを見つめ出した。お姉さんが、可愛らしいサンタさんの視線に、にこっと笑顔を浮かべて小さく手を振る。流石、テーマパークのお姉さん。ゼロ円スマイルも超一流だ。

 が、普通の子供なら、ちょっと恥ずかしそうに親の陰に隠れるか、普通に笑い返すだろうその場面で、ミュウがした反応は……

「ふっ」

 何故か、小さく息を吐き、「やれやれだぜ」とでもいうように肩を竦めるというものだった。お姉さんの超スマイルにヒビが入った! ハジメパパの表情には引き攣りが入った!

 お姉さんは、テーマパークの従業員必須技能である“瞬時切り替え”によって、直ぐに笑顔を修復したが、ハジメは引き攣った表情のままミュウの頭をポフポフする。そして、ミュウに先の態度の理由を聞けば、「お姉さん、弱そうだったから」と答える。どうやら、ミュウ的には、「無理すんなよ」と言いたかったらしい。

 そうこうしているうちに、アトラクションはイベントが始まった。水上に背びれが現れはじめ、お姉さんがライフル銃で威嚇射撃をする。弾はでない模造のライフルだが、タイミングを合わせて水しぶきが上がるようになっているようで、子供達から見れば本当にお姉さんが銃を撃って追い払っているように見えるだろう。事実、ちびっ子達は歓声を上げている。

 しかし、下から突き上げられるようにボートが揺れたり、巨大ザメに襲われて大破した船の残骸が現れ始めると、子供達の表情にも再び緊張と怯えが見え始める。それは、巨大ザメが巨大な顎門を晒しながら、水面から飛び出してきた時点でピークとなった。

 わーきゃーと興奮した声音が響く中、お姉さんがライフルで巨大ザメを追い払う。しかし、揺れたボートに足を取られて転倒し、足首をくじいた(もちろん設定)らしく、このままではライフルを撃てないといい、誰か協力を! と呼びかけた。当然、協力するのはちびっ子達だ。

「ほれ、ミュウ。お前も行って来い」
「はいなの~」

 恐々と、あるいはわくわくとお姉さんにライフルを撃たせてもらうちびっ子達の集団へ、ミュウも飛び込んでいく。

「……う~ん、意外ですねぇ。ミュウちゃんなら、本物以上(・・・・)を見知っているでしょうに」

 シアが、作り物の巨大ザメにきゃっきゃしているミュウを見て微笑ましそうにしながらも首を傾げた。ミュウは普通の幼児と異なり、本物の海の魔物も、命の奪い合いも知っている。にもかかわず、本気でドキワクしている姿が、ちょっと不思議だったのだ。

「ふふ。もちろん、ミュウは分かっていますよ。でも、安全の保障された危険の体験という奇妙な娯楽が、逆にミュウとしては珍しくて面白いのだと思いますよ」
「……ん。最近、戦闘系のゲームにはまり出しているのが、少し困る」
「妾達の訓練もあるじゃろうに、夜更かししていることもあるようじゃしのぅ」
「小さいときの睡眠不足は、成長の悪影響です。ハジメくん、しっかり注意してあげなきゃダメですよ?」

 愛子の注意に、ハジメパパは苦笑いしながら頷く。最近、ハジメも思っていたところなのだ。

「あ、ミュウちゃんの番だよ」
「カメラは任せて。巨大ザメと戦うミュウちゃん、ばっちり写真に収めるわ」

 香織が呼びかけれ、雫が一眼レフのカメラを構える。そのレンズの先には、今、まさにライフルを渡されるミュウの姿があった。

 普通なら、ここでお姉さんがそっと構え方を教え、支えて上げるところだ。そして、サメが出てきたところでタイミングを図って「今だよ! 撃って!」と言えば、サメの体や口内に火花が散って、いかにも撃ったように見えるのだ。

 が、ライフルを渡された小さなサンタは、異世界でさんざん硝煙とスパークと銃火器に慣れ親しんだ超幼女だ。しかも、今は、チートお姉さん達と、魔王なパパに鍛えられている訓練された幼女だ。

 故に、ミュウはライフルを受け取った瞬間、手慣れた様子でくるりと回すと、それを肩に担いで、視線を水上へと向けた。お姉さんの支えようとした手が宙を彷徨う。長物の銃を肩に担ぐ姿が、妙に様になっているミニスカ幼女サンタに、客達の目がパチクリとする。雫がシャッターを切った。連続で。

「えっと、お名前はなんていうのかな~?」

 お姉さんがプロ根性でにこやかに名前を聞く。

「ミュウです。六歳です。海の女です」
「……ミュ、ミュウちゃんかぁ! よぉし、ミュウちゃん、もう少し先まで行けば逃げ切れるはずだから、頑張って恐いサメを追い払おうね!」

 お姉さんはプロだ! どんなトリッキーな客が相手でも揺ぎはしない!

 しないのだが、お姉さんの「追い払おう」という言葉を受けたミュウは、チラリとお姉さんに視線を向けると、口元に不敵な笑みを浮かべ……

「追い払うの? それも悪くないけど……殺ってしまってもかまわんのだろう?」
「いえ、それは困ります」

 お姉さんが素で返してしまった! 

 と、次の瞬間、巨大ザメがザパァッと水しぶきを上げながら飛び出してきた。ミュウは、一瞬で、ライフル銃を構える。ストック部分を肩に当て、左手で銃身を支え、リアサイトに視線を合わせる。物凄く様になっていた。

 お姉さんの目が遠くを見始めた。子供達がわぁと感嘆の声を上げる。大人達が、保護者であるハジメ達に微妙な視線を向けている。

 そんなカオスになりつつある船内に、小さなサンタの素敵なセリフが響いた。

「ド頭、ぶち抜いてやるの!」

 ドパァンと効果音が鳴り、巨大ザメの口内で火花が散る。巨大ザメは水の奥へと消えて行った。お姉さんの瞳からも光が消えそうだ。大人達の子供達を応援する言葉は既に消えている。

 そんな中、やはり慣れた手つきでライフルをくるりと回し肩に担いだミュウは、一拍して、「みゅ!」とサムズアップを決めた。

 いろんなものが消えた船内に、激しいシャッター音が鳴り響いていた。


~~~~~~~~~~~~~~~


「あ、始まったの!」

 日もすっかり落ちて、しかし、夜の闇を駆逐するように広がるテーマパークの眩い光が、上機嫌なミュウを照らす。ハジメの肩の上で、ミュウが指差しているのは、パレードの先頭集団だ。

 テーマパークにつきものの、夜のパレードが始まったのである。クリスマスということもあり、普段以上に豪勢で、派手なパレードだ。通りに集まっている人々も、これでもかというくらいひしめき合っている。

 しばらくの間、楽しさ満点のパレードを見ていたハジメ達だったが、おもむろにハジメがミュウを肩から降ろした。そして、キョトンとするミュウを、ティオの肩に乗せる。ハジメより少し低いくらい身長であるティオなら、ミュウもパレードが見えないということはない。

 ハジメは、ユエ達に目配せした。この日の為に、用意したあれこれのために、ユエ達と事前に打ち合わせした通り、ハジメは一度、この場を離れるつもりなのだ。

「ミュウ。パパはちょっと用事を果たしに行ってくる。すぐに戻るから、ちょっと待っていてくれ」
「……はいなの」

 ちょっと寂しそうなミュウに後ろ髪引かれる思いのハジメだったが、どうにか振り切る。今回は、ミュウにとっては初めての盛大なクリスマスイベントだ。前回のクリスマスは、まだ戻ってきて間がないこともあって、内輪で小さなパーティーをしたくらいだった。だから、どうしても、ハジメパパは愛娘のために、あれをしたかったのだ。

 ハジメが人込みに紛れて消える。ミュウはその姿を見つめた後、ユエ達に促されてパレードに視線を戻した。すぐに楽しそうな笑顔が戻るが、やはり、大好きなパパがいないと全力全開とはいかないようだ。

 が、その憂いも、直ぐに晴れることになった。

 シャンシャンシャンシャンと澄んだ鈴の音が響く。誰もが、パレードの音響かと思っているようだが、その音が大きくなるにつれて「おや?」と首を傾げ出した。そう、聞えて来る鈴の音が、やけに上の方からなのだ。

 そうして、導かれるように頭上を見上げれば、そこには、

「あっ、サンタさんだっ」

 どこかの男の子が指を指しながら声を張り上げた。釣られて頭上を見上げた人達が、口々に「えっ、嘘、飛んでる!?」とか、「ト、トナカイ? 本物!?」「すご~い!!」などと声を上げている。

 そう、男の子が指差した先にいたのは、立派なトナカイと、そのトナカイが引くソリに乗ったサンタクロースが、宙を滑るように飛んでいる姿だった。

 普通ならあり得ない超常現象に悲鳴の一つでも上がりそうなものだが、ここは夢の国。非現実と非日常で彩られた幻想世界。故に、誰もがテーマパークの演出だと思って、驚愕は次第に歓声へと変わっていった。パレードをしている従業員たちが、たとえポカンとしていても、視線は頭上に集まっているので気が付かれることはなかった。

 聖夜の星空を駆けるサンタクロースは、やがて宙に描かれた螺旋階段を降りるように旋回しながら降りてきた。そして、そのまま人込みへとゆっくり近づいていく。

 ソリの接近に、人込みが自然と割れていく。その先にはいるのは、小さなサンタさんだ。

「メリークリスマス、小さな同胞のお嬢さん」

 ソリから降りた白い髭と丸メガネで顔の分かりづらいサンタクロースが、ティオの肩から降ろされたミュウの前に片膝を突いて、そんなことを言った。

 対するミュウは、目をパチクリとさせ、

「パパ、なにしてるの?」
「…………………パパじゃない。サンタだ」
「え、でも……」
「サンタだ」
「パ――」
「さぁんたぁっ、だ」
「ア、ハイ」

 ちょっと必死な感じのサンタに、ミュウはコクコクと頷いた。素直ないい子である。

 サンタはミュウの様子に満足げに頷くと、肩を震わせているユエ達を極力無視して、ソリに積んでいた白く大きな袋をミュウの前に置いた。

「さて、今年一年、実にいい子にしていた君に、サンタからのプレゼントだ」
「プレゼント?」

 首を傾げるミュウに、サンタは袋から可愛らしいピンク色の宝石のようなキラキラした石が散りばめられた箱を取り出した。それ自体、宝箱としてプレゼントになりそうな、女の子らしい箱だ。

 周りで、テーマパークのイベントだろうと事の成り行きを見守っていた人々も、「おぉ」とほっこりしたような表情している。どこかの女の子が、父親に「あれが欲しい」とおねだりしている声が聞えた。

 そんな中、可愛らしい箱を受け取ったミュウは、視線で開けていいのかとパ――サンタに尋ねる。頷くサンタ。

 そうして蓋を開けてみれば……

「あっ」

 ミュウが思わず声を上げる。そして、その戸惑いすら浮かんでいた表情が、一気に喜色に彩られた。まるで、つぼみが一気に開花したような、そんな花咲くような満面の笑み。

 きっと、子供用のアクセサリーだとか、なにかのキャラのグッズだとか、そんな女の子らしいプレゼントでも入っていたのだろうと、誰もがそう思った。

 が、ミュウが取り出したそれらは……

「ドンナーとシュラークなのぉっ!!!!」

 二丁の拳銃だった……。

 そこかしこでずっこける人が続出する。きっと大阪出身に違いない。他の人々も、口々にツッコミを入れる。しかし、当のミュウは、二丁の拳銃をぶんぶんと振り回しながら、「やっと、もらえたの!」と、これ以上ないほどに喜びをあらわにしている。

 聖なる夜に、以前からおねだりしていたらしい二丁の拳銃をプレゼントされて、狂喜乱舞する幼女サンタの姿が、そこにはあった。

「お嬢さん、それはドンナー・シュラークではない。“どんなぁー・しゅらーくぅ”だ」
「どんなぁー・しゅらーくぅ?」
「うむ、どんなぁー・しゅらーくぅ、だ」

 サンタは、そう訂正すると、更にゴソゴソと白いプレゼント袋を漁り、

「それとこれ、“ぴっこぴこはんまぁ”」
「ぴっこぴこはんまぁ!!!」
「“これは武器です”」
「これは武器で~す!」
「これも忘れちゃいけない、“むぅらまさ”と――」
「むぅらまさ!!」
「“こてつぅ”だ」
「こてつぅううう!!」

 ミュウのテンションは天元突破した! ぴょんぴょん飛び跳ねて、もらった武器の数々を豪快に振り回す!

 そこから更に、ガンベルトとユエお姉ちゃんの愛という名のプレゼントも貰ったミュウは、「パ――サンタさん! ありがとうなの! だい、だい、だい好きなの!!」と、サンタの胸に飛び込むのだった。

 その後、唖然呆然としている人々の向こう側に、警備員らしき姿を確認したサンタは、そそくさとソリに乗り込んだ。そして、手綱をピシリと鳴らして再び空へと戻っていく。「いったい、どうやって飛んでいるんだ」と誰もが疑問に思う中、ミュウ達が警備員さん達に煩わされることのないよう、サンタは次の手を打った。

「メリークリスマス」

 そんなことを言って、ソリから大量の落下傘を落としたのだ。聖夜の空から降り注ぐ、数えるのもばからしい落下傘には、全て、クリスマスプレゼントが括り付けられていた。おもちゃやぬいぐるみはもちろんのこと、ちょっとしたアクセサリーやゲーム機まで。あらゆるプレゼントが空から降って来る。

 戸惑う人々だったが、「パークからのささやかなクリスマスプレゼントだ。お好きなものをどうぞ」という、やけに通る声が響けば、「わぁ!!」と歓声を上げて落下傘に飛びついた。押し合い圧し合いで事故が起きないよう、ユエがさりげなく魔法でサポートする。

ちなみに、ソリには明らかに載りきらない量なのだが、誰もが興奮してスルーしていた。可愛いトナカイに乗ったサンタからのプレゼントなのだ。場の空気もあって、細かいことはいいんだよぉの精神なのかもしれない。

 もっとも、そのトナカイが、実は内部に武装を満載した機械仕掛けの死神(グリムリパー)だと知ったら……きっとパニックに違いない。世の中には、知るべきでないことがあるのだ。


 翌日、前代未聞のテーマパークのイベントが、盛大にニュースで取り上げられたのは言うまでもない。粋な演出と剛毅な振る舞いに、パークの売り上げが伸びて、あのサンタは誰だ! と上層部が血眼になって探したのも言うまでもないことだ。

 そして、南雲家の小さなお姫様の、本当に嬉しそうな表情に、南雲家の面々が身悶えたのも当然。ただ、拳銃や戦槌、鞭や小太刀に頬ずりしたり、一緒に寝ようとしたりするのは……

 プレゼントしておいてなんだが、ハジメパパの、「うちの娘、これでいいのだろうか」という微妙な悩みになるのだった。
いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字脱字報告も有難うございます。

クリスマスなのに、ぼっち村の村民である白米は、ふと思い立って書いてしまいました。
良かったら、一人クリスマスケーキのお共にどうぞ。
白米はチョコケーキにしますた。

明日も、いつも通り、更新しますよ~
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