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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

ありふれたアフターストーリー

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ありふれたアフター 街中デート? その1

すみません、少し、遅れました……
短いですが、ご容赦を。
 ハジメの家がある町からは、いくつか離れたとある町の駅前広場。中々に立派な噴水が設置されたその場所は、休日ということもあって多くの人々に賑わっていた。

 当然、そこには待ち合わせしていると思しき若い男女が多くおり、しきりに腕時計と待ち人が来るであろう方向へ視線を交互に向けたり、スマホを弄ったりして時間を潰している。

 そんな若者達の中に、ハジメの姿があった。他の者達と異なるのは、特に時計を見るでも、スマホを弄るでもなく、噴水傍のベンチに腰掛けたまま、まるで休日に子供を遊びに連れてきたはいいものの、日頃の疲れからだれているお父さんのようにぼへ~と空を眺めていることだ。

 もっとも、そんな風にだれているにもかかわらず、どことなく背筋が伸びるような存在感があるのは、ハジメが、普通の同年代の少年少女達が決して遭遇することのない異常な経験を積んできたからか。

 どこまでも自然体でありながら、その存在感のせいで自然と意識を吸い寄せられる。落ち着いた雰囲気が妙な安心感を覚えさせるのに、ほんの少し、危険な香りもする。

 時折、チラチラとハジメに視線を向ける女の子の集団がいるのも当然と言えば当然なのかもしれない。中には少し頬を染めながらヒソヒソと話し合っている女の子達もいて、逆ナン一歩手前といった様子。

 異世界トータスに召喚される前では考えられないモテ具合だ。

「……気配遮断でもしとくんだったか」

 当然、スペックが化け物レベルのハジメにとって、そんな周囲の動向は筒抜けであり、姿勢も視線も全く動かさないまま、そんなことを独り言ちた。

 そうして、遂に勇気ある(?)女の子の集まりが、ハジメに声をかけようとおずおずした様子で近寄っていき、周囲の女の子達や男達が注目したそのとき、彼等に目を剥くような驚愕を与える元気な呼び声が響いた。

「あっ、いたの~。パパぁ~~~~!」

 ステテテテテーと駅のアーケードから駆けてくるのは、エメラルドブロンドをふわふわさせながら、満面の笑みを浮かべるミュウだ。その一生懸命駆けてくる外国の美幼女の愛らしい姿に、駅前の広場の人々に視線が一斉にミュウへと向けられる。

 ミュウは、そんな視線など知らん! と言わんばかり全く反応を示さず、そのまま勢いよく、ベンチでだれるハジメへとダイブした。

 弾丸の如き、遠慮容赦の一切ない全力の飛び込み。普段なら、タイミングを合わせたスウェイバックで衝撃を完璧に殺して優しく受け止めるハジメだが、今はベンチに座ったままなので、それはできない。

 なので、ハジメは飛び込んできたミュウの肩に優しく片手を添えると、上手くいなして突進力を回転力に変換する。いうなれば、合気のようなものだ。ミュウはハジメの腹部に着弾する直前に空中でくるりと一回転すると、そのままポスッとお膝の上に座り込む形で落ちた。

「こら、ミュウ。危ないから飛び込むなって、いつも言ってるだろう?」
「えへへ~、ごめんなさいなの~」

 一瞬、何が起きたのか分からず目をぱちくりとさせるミュウだったが、苦笑いしながら注意するハジメを見て、直ぐににへら~と笑うと胸元にペタリとくっついた。

 余り反省の色が見えない愛娘の様子に、ハジメは困ったような笑みを浮かべると、ミュウを片手で抱き直して立ち上がる。

 周囲から、「え、えぇ? パパ? 今、パパって呼ばれてなかった?」とか「うそ、子持ちなの!?」とか、「おいおい、あいつ何歳だよ……あの子が娘なら、いったいいつ産ませたんだ……」とか、「つか、今のすごくね? あの子、一回転してたぞ?」とか、もの凄い勢いで話題が広がっていく。

 が、ミュウの登場などまだまだ序の口だ。彼等は更に驚愕の光景を目にすることになる。

「あらあら、ミュウったら。一人で行っちゃだめって言ったでしょう? こっちの世界は、迷いやすいんだから……」
「ママぁ。でも、パパがいたから……」
「うふふ、ミュウは本当にパパっ子ね。あなた……お待たせしました」

 ぱたぱたと可愛らしくサンダルを鳴らしながら、ロングスカートと上品なカーディガン、それに三つ編みにしてシュシュで飾ったエメラルドグリーンの髪を揺らしながらレミアがやって来た。

 年上の、というか未亡人の色気たっぷりの外国人お姉さんの登場に、どこからゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。幾人かの男からは、ハジメに対し美人妻子を持つことへの嫉妬の視線が既に突き刺さり始めている。

 だが、まだだ。まだ終わらん!

「ハジメさぁ~ん、お待たせしました~」
「待たせてすまんのぅ、ご主人様よ」

 そう言ってやって来たのは、淡青白色のロングストレートの髪を揺らし、ミニスカートから白くしなやかな美脚をおしげもなく晒すシアと、普段の和装を止めてふわりとしたパンツとV字のシャツ、それにロングカーディガンという姿のティオだった。

 どちらも、アイドルや女優が裸足で逃げ出しそうな美貌の持ち主。そんな二人が、子持ちで妻もいるらしいと分かるハジメのもとへ、明らかに好意全開の表情で寄ってくるのだ。

 駅前広場の人々の視線は既に釘付け状態。好奇心が有頂天になっているようだ。

 そんな人々をさくっと無視して、ハジメはミュウを抱いたまま肩を竦める。

「“待ち合わせ”がしたかったんだろう? 別に構わねぇよ。何もせず、ボーっとする時間ってのも、たまには悪くないもんだ」

 そう、ハジメの言葉通り、一緒に住んでいるハジメ達が、何故、駅前広場で待ち合わせをしていたかというと、それが女性陣からの要望だったからだ。内心、一緒に行けばいいじゃない、と思っていたハジメだが、それが要望とあれば是非もない。可愛い頼みごとだ。

「んで、ユエはどうした? 一緒に来たんだろう?」

 たった一人、未だこの場に姿を現さない恋人に、ハジメは首を傾げる。

「あぁ、もうすぐ来ると思いますよ。電車の中で“なんぱ”をされまして、ユエさんが処理しておくから先に行ってと」
「処理……まさか、スマッシュしてんじゃないだろうな? 勘弁してくれよ。この世界まで、服屋の化け物で溢れかえったら……俺は戦争も辞さないぞ」
「神殺しのくせに、未だにクリスタベル達が苦手なのじゃなぁ」

 シアの説明に、ハジメは表情を引き攣らせる。その有様に、ティオが若干呆れを見せるが、異世界の漢女達に毎回、熱い眼差しでケツを見つめられるハジメを思えば、仕方ないやもしれんと同情混じりの視線へと変わる。

 ちなみに、シアの補足によれば魂魄魔法によって記憶やら意識やらを弄っているだけで、股間スマッシュはしていないらしい。異世界に比べて、法による秩序の維持が厳格な日本におけるトラブルに対する対処の仕方というものを、一応、ユエ達も身につけているのだ。

 そうこうしているうちに、駅のアーケードの方がにわかに浮つき出した気配を感じて、ハジメが視線を向ける。

 そこからは案の定、冗談じみた金髪紅眼の美少女が、まるで女王がレッドカーペットを行くが如く、威風堂々と、それでいて気品とたおやかさを併せ持って、ゆったりと歩いてくる姿があった。

 普段の十二歳くらいの少女モードではない。ハジメと同じ、十七歳くらいの見た目年齢に変化している。妖艶さは言わずもがな、薄らと浮かんだ口元の笑みは、これから視線の先の最愛を想ってか。それが柔らかさをも醸し出していて、完璧な美貌を何倍にも魅力的なものにしている。

 一見すれば絶世の美人というべき大人の魅力を放つユエだったが、来ている服はゆったりとしたパーカーにレーススカートという実にラフかつ可愛らしいもので、それがまた美人特有の取っ付きにくさというものを排し魅力を押し上げていた。

 老若男女を問わず、一度ユエの姿を見れば、誰もが視線を吸い寄せられてしまう。あちこちで、ゴンッとか、ガシャンッとか、バチコンッとか聞こえているのは、そんなある意味歩く災害であるユエの被害者が奏でる被災の音だ。

 ユエを見ながら歩いていた青年が電柱にぶつかったり、学生らしき男子集団が店の看板に雪崩を打ったり、ハッと我に返った彼女が隣の彼氏を現実に引き戻すための一撃を見舞ったりした音である。

 しかし、ユエは全く気にしない。颯爽と歩を進め、やがて注目が集まる中、ハジメの傍まで歩み寄ると、

「……ん。ハジメ、“待ち合わせ”してくれて、ありがと」

 そう言って、そのままチュッとハジメの唇に自らのそれを合わせる。それはもう自然に、そうであるのが当然のように、風が吹けば草木が揺れるが如く。

 ハジメの胸元にそっと手を置き、踵をクッと上げて少し背伸びをしてキスをしたユエに、周囲がどよめいた。

「むぅ、ユエお姉ちゃんずるいの! ミュウもちゅうする!」
「あらあら、では私も……」
「う、公衆の面前でというのは少し恥ずかしいですが……」
「そうかの? むしろ、妾はちょっと興奮するが?」

 ユエが離れた直後、唇を狙って迫ってきたミュウのタコさんちゅうをさりげなくかわしてほっぺちゅうにし、その後のレミアとシアのキスを受け入れ、ティオにはビンタを贈ってやる。ほんのり頬を染める女性陣と、頬を押さえながらハァハァしている一人の変態。

 一人の子持ちの男が、複数の美女・美少女とキスを交わすリアルハーレムな光景に、周囲の人々のテンションは有頂天だ。「なんだあれ!? なにが起こってんの!? なにかの撮影!?」とパニックになったり、「あ、あの男、なにもんなの!? どっかの財閥の息子とか?」とハジメの正体に想像をめぐらしたり、「こ、ここ日本だよな?」と自分の所在地を疑ったりと大忙しだ。

 遂には、こんなレアな光景、逃してたまるかとスマホのカメラを向ける者が複数現れる。

 が、例外なく、

「あ、あれ? ちょっ、いきなり画面が消えたんだけど!?」
「なにこれ、ノイズだらけじゃん!?」
「うそ、壊れたの!? 勘弁してよ!」

 と、全てのスマホが突然不調になってしまい写メどころではなくなってしまった。原因は当然、ハジメだ。固有魔法“纏雷”を微調整して妨害のための電磁波を放出したのだ。もちろん、ハジメから離れれば元に戻る。

「……ん。騒がしくなってきた。ハジメ、そろそろ行こ?」
「いやいや、なにをナチュラルに出発しようとしてんだ。まだ、来てないメンバーがいるだろうが」
「……? ハジメ、あなた疲れてるのよ」
「誰がモル○ー捜査官だ。Xファ○ルごっこして誤魔化すな」

 まだ来ていないメンバーがいることを知っていながら、ごく自然に、出発を促すユエに、ハジメは苦笑しながらツッコミを入れる。

「……大丈夫、問題ない。あの二人は酷い便秘で来れなく――」
「ユエぇ~~~~! なにを言ってるのっ~~!」
「ちょっとっ、いくらなんでも、その嘘は酷すぎるわよ!」

 ユエの、乙女に対しては酷すぎる誤魔化しの言葉を大声で遮って、フェミニンなワンピースを揺らしながら走って来たのは、元の肉体に戻った香織と、トレードマークのポニーテールをふりふりさせる雫だ。

 更なる美少女の追加に、周囲がてんやわんやしているのを尻目に、香織は一瞬、ユエをキッと睨んだあと、直ぐにハジメに向き直って優しく微笑んだ。

「ごめんね、ハジメくん。待った?」

 ハジメが口を開こうとする、がその前に、

「……ん。死ぬほど待った。罰として、香織はこのまま帰って。さぁ、早く帰って。さぁ、さぁ」
「帰らないよ! ユエの意地悪っ。そういうユエこそ、帰りなよ!」

 香織をぐいぐいと押し出そうとするユエに、香織は律儀に反応しながらユエを掴み返した。いわゆる、プロレスでいう“手四つ”状態で組み合って、ギリギリと力を込め合っていく。互いに、額を突き合わせて一歩も引かない。

 ちなみに、使徒の体ではないのに、香織がユエと対等に向かい合っていられるのは、香織の元の体そのものが使徒の肉体要素を組み込まれた特別製に変わっているからだったりする。

 ハジメ達との寿命の違い的な問題などをクリアするための肉体改造だが、それだけでなく“使徒モード”を発動することもでき、その場合、銀髪に変わって銀の翼を出せるようになる。もちろん、分解能力や双大剣術なども問題ない。……平和な日本での生活には不要すぎるものだが。

 いつも何かと喧嘩するユエと香織だが、香織の肉体改造の音頭をとったのは他ならぬユエだ。エヒトに乗っ取られていたときの影響か、なんとなく使徒創造の方法が分かるようで、あらゆる神代魔法を駆使し、ハジメやティオが手伝うことで見事、香織の使徒化を成功させた。喧嘩するほど仲がいい……それはこの二人のためにある言葉かもしれない。

「えっと、ハジメ。一応、時間通りだと思うのだけど……待たせたちゃったかしら?」

 二人の争いに困った表情をしつつも、雫がおずおずとハジメに尋ねる。もちろん、ハジメは否定する。それにホッと息を吐いた雫は、ちょっと恥ずかしそうに周囲を見回したあと、遠慮がちに尋ねた。

「あの……変じゃないかしら?」

 それは当然、自分のファッションのことだろう。異世界に召喚される前も、召喚されていたときも、基本的にパンツルックだった雫だが、今日はフレアスカートとノースリーブシャツ姿だ。もっとも、スカートは膝上くらいの長さで、シャツのボタンもしっかりと止められている点がなんとも雫らしい。

「ああ、可愛いと思うぞ。というか、前も、スカートくらいでそんなに恥ずかしがることはないって言っただろう? 本当に、よく似合ってんだから」
「そ、そう? ふふ、ありがとう」

 テレテレとスカートを弄る雫の姿は、彼女をお姉様と慕う自称妹達が見たなら悶絶すること間違いないだろう。それくらい、ハジメの前では生来の乙女チックな性格が出てしまう雫の姿は、実に愛らしかった。

 そして、そんな雫とハジメのやり取りを、手を組み合いながら首だけ回してジトッと見つめるユエと香織は、

「……さりげなく、美味しいところを持っていく。雫、恐ろしい子」
「雫ちゃん……最近、ユエと喧嘩してても止めてくれないよね……」

 そんな二人の呟きも、乙女全開の剣士様の耳には全く届いていなかった。

 その後、ユエ達がハジメとキスしていたことを知った香織が、やはりハジメにキスを迫り、雫が公衆の面前では出来ない! と顔を真っ赤にしながらも自分だけしないことにちょっとしょんぼりし、見兼ねたハジメが強引にキスして気絶したり、と駅前広場がとんでもないことになったのは言うまでもない。

 そうして、いい加減、騒ぎが大きくなってきたこともあり、召喚されたクラスメイト達との食事会が始まる午後五時までデートをしようと、ハジメ達は町へと繰り出すのだった。

「なんか……すごいもん見た」

 後に残った誰かのそんな呟きは、まさに駅前広場の全員の気持ちを代弁するものだった。

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次回も、土曜日の28時更新⇒訂正⇒18時更新の予定です。
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