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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

第六章

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フェアベルゲンの夜

 フェアベルゲンを結界のように覆う樹々の隙間から強烈な光が降り注いでいる。

 その光の柱に照らされた広場からは亜人達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、遠巻きに一体何事かと戦々恐々とした表情で見守っていた。

 同じく、兵士達が恐怖に表情を引き攣らせながらも広場を囲むように展開した。

ベキベキッ、バキッ、ベキッ!!

 その直後、頭上からまるで悲鳴のように樹々のへし折れる音が響いた。「すわっ、新手の魔物かっ!」と、フェアベルゲンの住民達が身構える中で、それは現れた。

 最初に見えたのは巨大な金属の塊。徐々に高度を下げる事で、ようやくそれがゴンドラだと、フェアベルゲンの住民達は理解した。次いで、現れたのはマンタ型の飛空艇“フェルニル”。船底の前後に取り付けられた強烈なサーチライトで地上を照らし、着陸場所の安全を確かめている。

 周囲の人々が、ただただ目を見開いて驚愕の余り口をあんぐりと開けている中、フェルニルはゴンドラをゆっくり着陸させパージすると、本体をそのゴンドラの脇に着陸させた。

 ゴンドラとフェルニルだけで広場は一杯となり、周囲の人々が慌てて距離を取る。同時にこれから一体何が起こるのかと不安そうな眼差しを向けた。

 と、その時、長方形型のゴンドラの前後が何の前触れもなくパカリと開いた。ビクッとする亜人達。兵士達も武器を握る手に大量の汗を掻き、喉をゴクリと鳴らす。暗闇に包まれるゴンドラの中から何が飛び出すのかと表情を強ばらせる。

 住民達が注視する中、おずおずという雰囲気で現れたのは……兎人族の少女だ。それに住民達は、キョトンとした表情になる。そんな理解が追いついていない住民達を置いて、暗がりから次々と解放された亜人達が現れた。

 ぞろぞろとゴンドラから出てきた彼等は、一様に、どこか信じられないといった表情で周囲を見渡している。静謐で清涼な空気、たくましく、それでいて包み込むような安心感を与えてくれる樹々、懐かしいフェアベルゲンの灯り、そして、もう二度と会えないと思っていた多くの同胞達。

 呆然としていた彼等だが、草木が水を吸い取るように、じわじわと実感しているようだ。“故郷に帰って来た”のだということを。

 それは、フェアベルゲンの住民達も同じだった。

 おもむろに一人の女性がフラフラとした足取りで前に進み出る。中年くらいの垂れた犬耳を付けた女性だ。彼女は、目の端に涙を溜めながら、そっと失ったと諦めていたその名を呼んだ。

「……ザック。ザックかい?」

 その声に反応したのは、同じく垂れた犬耳の少年。帝都にて光輝が気にかけていたあの少年だ。少年は、女性の姿を視界に捉えると、顔をくしゃくしゃにして涙を流し、ダッと駆け出した。

「母さん!」
「ザック!」

 跪き両手を広げた女性の胸に犬耳少年が飛びつく。母と呼ばれた犬耳の女性は、腕の中の息子が夢幻でないことを確かめるようにきつく抱き締めた。そして、親子揃って奇跡の再会に歓喜の涙をホロホロと流す。

 そんな親子の再会を期に、帰って来た亜人達と住民達は地を揺らさんばかりの歓声を上げて互いに走り寄り、家族、友人、恋人など知人を見つける度に声を枯らす勢いで無事を喜び合った。

 フェアベルゲンは、大きな喜びに包まれ、普段の静謐さは何処にいったのかと思う程のかつてないお祭り騒ぎとなった。

 そんな笑顔溢れる亜人達の喧騒の中、フェルニルから降り立ったハジメ達にアルフレリックを始めとした長老達が駆け寄ってくる。

「少年……全く、とんでもない登場をしてくれたな」
「ん? ああ、アルフレリックか。まぁ、色々面倒だったんで、大目に見てくれ」

 アルフレリックが、頭上のバッキバッキに折られた樹々を見て苦笑い気味に言うと、ハジメは、頬をポリポリと掻きながら、若干、バツの悪そうな表情になった。

 樹海の上空から、問答無用に樹々を押し潰して下降するという方法を取ったのは、単に樹海の外から歩いてくるのも、ゲートで一人一人転移させるのも面倒だったからであり、また、ガリガリと削られた魔力のせいで判断が大雑把だったからである。

 しかし、ハジメもフェアベルゲンの景観の美しさには感動を覚えていたので、流石に、ちょっとやってしまった感があるのだ。

「悪い、ユエ。頼めるか?」
「ん……任せて」

 ハジメが傍らのユエに声を掛けると、ユエはどこか苦笑いするように口元を緩めてスッと右手を頭上にかざした。

「“絶象”」

 再生魔法“絶象”。有機物、無機物に関わらずあらゆる損壊を再生し復元する魔法である。

 ユエが、魔法のトリガーを引いた瞬間、頭上の傷ついた樹々が一瞬で元の姿を取り戻した。その余りに非常識な魔法に、長老衆がポカンと間抜け面を晒している。アルフレリックだけは、新たな神代魔法だろうと察しつつ、疲れたように眉間の皺を揉みほぐした。

「お祖父様、お気持ちは察しますが、そろそろ……」
「む、そうだな。少年……いや、南雲殿。大体の事情はカムから聞いている。にわかには信じられない事ではあるが、どうやら本当に同胞達は解放されたようだ。おそらく、今、私達は歴史的な瞬間に立ち会っているのだろう。まずは、フェアベルゲンを代表して礼を言わせてもらう」
「言っておくが、事を成したのはハウリア族だぞ。そこは間違えないでくれよ?」

 アルフレリックの言葉に、ハジメが気のない様子でフェルニルとゴンドラを“宝物庫”にしまいながら釘を刺す。広場から突然、巨大な物体が姿を消したことに、喜びに湧いていた亜人達が目を瞬かせた。そして、長老衆と向き合うハジメ達に注目する。

「ああ、もちろんだ。ハウリア族がいなければ、そもそも先の襲撃だけでフェアベルゲンは壊滅していたかもしれん。それも合わせて考えれば、信じざるを得んだろう。ふふっ、まさか、追放した最弱のはずのハウリア族が帝国を落とすとは……長生きはしてみるものだ」

 ハウリア族が帝国に戦いを挑んだあげく勝利を掴み取り同胞を救い出した――その事実がアルフレリックの口から明言されたことで、住民達も大切な人を取り戻してくれたのが誰なのか理解したようだ。

 アルフレリックの隣で背筋を伸ばすカムに注目が向けられる。彼等の瞳に宿っているのは、最弱種族に対する蔑みではなく、大きな敬意と若干の畏怖を含んだ英雄を見るような色だった。

 その視線に気がついたカムは、何かを思いついたように悪戯っぽい笑みを浮かべると、おもむろに右手を掲げた。そして、「こっちに来い!」とでも言うように指先をクイクイッと曲げる。帝城侵入の際にも使ったハンドシグナルである。

 その瞬間、「いやいや、どこにいたんだよ!」と思わずツッコミが入りそうなくらい唐突に、ハウリア達がシュバッ! とカムの周りに現れた。そして、統率のとれた動きで整列すると一斉に“休め”の体勢で微動だにしなくなった。

 カムは、整列した一族に満足気な笑みを浮かべると、その刃のように鋭い視線と思わず後退りしそうになる程の覇気を纏って、住民達――正確には兎人族に向かって声を張り上げた。

「同族達よ。長きに渡り、屈辱と諦観の海で喘いでいた者達よ。聞け。此度は、帝国に打ち勝つことが出来たが、永遠の平和など有り得ない。お前達の未来は、そう遠くない内に再び脅かされるだろう」

 その言葉に、広場にいる何百という兎人族がその身を恐怖で震わせる。また、帝国での辛い日々がやって来るのかと、どこか縋るような目で演説するカムを見つめる。

「そうなれば、お前達はまた昨日までの日々に逆戻りだ。それだけではない。今度は、奴隷を免れていた仲間も同じ目に遭うかも知れない」

 今助かっても、未来は暗いと言う事実を突きつけられて、兎人族だけでなく他の亜人族達も伏し目がちとなる。

「お前達はそれでいいのか?」

 いいわけがない。尊厳の尽くを踏みにじられるような日々に戻りたいわけがない。まして、そんな辛さを、大切な者に味わせたいわけがない。

 だが、だからといってどうすればいいというのか……

 カムは、俯く同胞に厳しい視線を向けつつ、答えなど目の前にあるだろうと更に声を張り上げた。

「いいわけがないな? なら、どうすればいいか。簡単だ。今、隣にいる大切な者を守りたいと思うなら……戦え。ただ搾取され諦観と共に生きることをよしとしないなら……立ち上がれ。兎人族の境遇を変えたいと願うなら……心を怒りで充たせ! 我等ハウリア族はそうした! 兎人族は決して最弱などではないのだ! 決意さえすれば、どこまでも強くなれる種族なのだ! 我等がそれを証明しただろう!」

 誰かが「あ……」と声を漏らした。巨大な敵を打ち破り、自分達を救い出したのは、特別な存在などではなく、同じ兎人族の一部族なのだと気がついたように。俯いていた兎人族達が一人、また一人と顔を上げていく。

「帝国で受けた屈辱を思い出せ。不遇な境遇に甘んじるな。大切な者は自らの手で守り抜けっ。諦観に浸る暇があるなら武器を磨け! 戦う術なら我等が教えよう。力を求め、戦う決意をしたのなら、我等のもとに来るといい。ハウリア族は、いつでもお前達を歓迎する!!」

 そう言って演説を締めくくったカムは、再びハンドシグナルを出す。すると、ハウリア達は、どこぞの忍者のようにシュバ! と散開して一瞬で姿をくらませた。

 それを見て、既に幾人かの兎人族の瞳に火が宿っているのを確認し、カムはほくそ笑んだ。「これでまた戦力が増えそうだ! 一度訓練にさえ参加させれば、逃さず精神を魔改造してやるぜ!」と。

「ボス、お話の最中に失礼しました。ちょうど人材確保にタイミングが良かったもので」
「ああ、別にそれはいいけどよ。……お前も言うようになったなぁ~。その内、兎人族はハウリアで統一されるんじゃないか?」
「はっはっはっ、そうなれば恐いものなしですな!」
「……最近、父様の言動が益々ハジメさん風になってきてますぅ。そう遠くない内に、“温厚な兎人族”は絶滅する気がしますよ」

 シアが、乾いた笑みを浮かべながら遠い目をした。どうやら、兎人族の全員が魔改造されるのも時間の問題のようだ。

 ちなみに、この場にはガハルドもいる。目の前で自分を負かしたハウリア族が戦力強化を図っているのだが、特に何も言わない。というか言えない状況だった。フェアベルゲンの情報を極力渡さないように、魔力封じの枷を手足に付けられ、光と音を完全に遮断するハジメお手製の仮面(黄土色)を被らされているからだ。

 この後、長老衆の面前で帝国の敗北の証明と誓約の説明をしたあと、ゲートによって即行で叩き返されるという予定である。このためだけに連れて来られた皇帝陛下――威厳も何もあったものではない。

「ふむ、これ以上、この場にいても仕方ないな。奥に案内しよう。アルテナ、頼むぞ」
「はい、お祖父様。さぁ、こちらです。南雲様」

 カムの演説のせいで、やたらと注目されてしまい挨拶どころではなくなってしまったので、アルフレリックは、アルテナに用意しておいた広間への案内を促した。

 それを受けたアルテナは、一つ頷くと、何故かハジメの手を取ってにこやかに案内をしようとする。それに、ユエ達の目がスッと細まった。たまたま手に取ったのがユエのいる右側ではなくシアのいる左側だったので、同じく、にこやかに微笑みながら、シアがハジメの手をさり気なく取り返す。

 シアとアルテナの視線が交わる。何故だが、バチバチと放電でもしていそうな幻聴が聞こえた。

私達の(・・・)案内、お願いしますね。アルテナさん?」
「ええ、もちろんですわ、シアさん。でも、人が多いですから、逸れないように念のため手を引かせていただきますわね?」

 そう言って、アルテナはシアからハジメの左手を取り返そうとする。どうやら、カムの挑発が地味に効いているようだ。森人族のお姫様にあるまじき態度である。単に、ハジメに対して云々というより、シアに対する対抗心という面が強そうだが。

 「計画通り!」という様子でニヤリと笑うカムの様子から、その辺の事情を察したハジメが、にこやかに殺気を向けた。一瞬にして、カムが滝のような冷や汗を流す。

 ハジメは、ガクブルし始めたカムに溜息を吐きながら、しっかりシアの手を握り返した。

「あ……」

 シアが、思わず声を漏す。そして、次の瞬間には満面の笑みでギュッとハジメの腕ごと抱え込んだ。義手ではあるが、擬似的な神経が通っているので胸の谷間に埋もれた左腕から素晴らしい感触が伝わる。

 そんな嬉しそうなシアを見て、思わずハジメに目を向けるアルテナだったが、ハジメの目が「さっさと案内しろや」という冷めたものだったので、ガクッと肩を落とし、悄然と先導し始めた。最初から、共に旅をしてきたシアと大して接点のないアルテナでは天秤に乗ることすらないので、わかりきった結果である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 案内された広間では、奥に長老衆が座り、その対面にカムを含めた幾人かのハウリア族が、その右側にガハルドを挟んでハジメ達が座っている。

 既に、ヘルシャー帝国皇帝直々の敗北宣言により、ガハルドがした宣誓の内容は本人により確かなものだと長老衆に証言がなされた。これで、全ての長老が、ハウリア族の言葉を真実と認めたようだ。

「ふん。しかし、よくも一人でのこのこと来られたものだな。貴様は我等の怨敵だぞ。まさか、生きて帰れるとは思っていないだろうな?」

 長老の一人――虎人族のゼルが、敵地に一人でありながら、不遜な態度を崩さないガハルドを憎々しげに睨む。今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。

 しかし、そんな眼光を向けられてもガハルドはどこ吹く風である。

「はぁ? 思っているに決まっているだろう。まさか、本気で俺を殺せると思ってやしないだろうな。だとしたら、フェアベルゲンの頭はとんだ阿呆ということになるぞ?」
「なんだと、貴様!」

 激昂するゼルを、アルフレリックが抑える。

「ゼル、よせ。気持ちはわかるがな。ガハルドがここに来たのは、我等にハウリア族の成した事と誓約の効力を証明するためだ。それ以上でも以下でもない。ここで殺してしまっては、ハウリア族が身命を賭した意味がなくなってしまう」
「くっ……」

 悔しそうに顔を歪め、床に拳を叩きつけるゼル。

 ガハルドは、そんなゼルを見て鼻で笑う。場の雰囲気は最悪だ。ガハルドに、亜人を奴隷にしていたことに対する罪悪感や謝罪の念が皆無なのが原因である。しかし、ガハルドとしては、亜人は弱いから奴隷にされたのであり、ハウリア族は強かったから奴隷を解放できたというだけの話なのだ。

 長老や側近達がギラギラと殺意を宿した眼差しでガハルドを睨み、ガハルドが挑発的に笑うという状況が続く。

 そんな状況を問答無用にあっさりと打開したのはハジメだった。いい加減鬱陶しくなってきたのである。

「おい、ガハルド。あんたもういいぞ。さっさと帰れ」
「あ?」

 立ち上がったハジメは、疑問の声を上げるガハルドを無視して、ゲートを起動すると、むんずっとガハルドの首根っこを引っ掴んだ。

「お、おい! まさか、本当にこのまま送り帰す気かっ! ちょっと待て、折角、フェアベルゲンまで来たってのにっ、色々知りたいことがっ。それにお前のことも、って離せ! こら、てめぇ! 俺は皇帝だぞ! 引きずるんじゃねぇよ!」

 ジタバタと暴れるガハルドだったが、人外の膂力に勝てるはずもなく、容赦なくゲートの向こう側に放り投げられてしまった。

 確かに、皇帝自らハウリアのさせた誓約を認めることが連れてきた理由なので、既に用済みと言えばそうなのだが……「覚えてろよぉ! 南雲ハジメぇ~!!」とドップラーさせながらゲートの向こうへ消えていった皇帝陛下は、流石に哀れを誘うものだった。

 傍にいたリリアーナが妙に嬉しそうな表情で「皇帝なのに~、皇帝なのに~、その扱い~」とリズミカルに呟いていたりする。どうやら、自分と同じように雑な扱いをされたのが、仲間っぽくて嬉しかったらしい。

 最近、残念王女となりつつあるリリアーナに、傍らの雫が何とも残念そうな眼差しを向けていた。

 一方、長老、特にゼルなどは露骨にハジメを睨んでいる。「なぜ、皇帝を帰した!」とその眼光が物語っていた。答えるのも馬鹿らしい上に、ガハルドを帰してしまえば、正直、ハジメがここにいる意味もないのでさっさと出ていこうとする。

「待ってくれ、南雲殿。まだ、報いる方法が決まっていない。もう少し付き合ってくれないか」
「いや、なんもいらねぇから。視線も鬱陶しいし、出て行かせてもらうよ」
「そう言うな。これだけの大恩があって、何もしなければ亜人族はとんだ恥知らずになってしまう。せめて、今夜の寝床や料理くらいは振舞わせて欲しい。だから、もう少し頼む」
「……はぁ~、わかったよ」

 ハジメは面倒そうにしながらも、アルフレリックに頷き元の場所に座り直した。それを確認し、アルフレリックがカムに向き直る。

「さて、これでハウリア族の功績が確かに確認された。追放された身で、襲撃者共を駆逐し、尚且つ、帝国に誓約までさせ同胞を取り返した。我等は、お前達に報いなければならない。取り敢えず、ハウリア族の追放処分を取り消すことに異存のある者はいない。これは先の襲撃後の長老会議で既に決定したことだ。これからは自由にフェアベルゲンへ訪れて欲しい」

 追放処分の取り消し。それは以前、散々揉めた長老会議の決定を覆すに等しいものであり、それを認めたということは、それだけハウリア族の功績が大きいということだろう。

 しかし、当のカムは「そうか」と呟くだけで、特に喜んでいる様子はなかった。どうでもいいと思っているような態度だ。

「そしてだ。此度の功績に対しては、ハウリア族の族長であるカムに、新たな長老の座を用意することで報いの一つとすることを提案したい。他の長老方はどうか?」

 アルフレリックの言葉に、側近達が驚いたように目を見開いた。ここ数百年、現在の種族以外が長老の一座席を受けたことはないのだ。森人、虎人、熊人、翼人、狐人、土人が亜人族の最優六種族なのである。そこに兎人族を加えるというのは、亜人族の基準からすれば、まさに歴史的快挙とも言うべき種族の誉れなのである。

 アルフレリックの提案に、他の長老達は、一度顔を見合わせると頷き合い、賛成で満場一致した。

「ふむ、そういうわけだ。カムよ。長老の座、受け取ってくれるか?」
「もちろん、断る」
「「「「「……え?」」」」」

 なんだか、「新たな仲間を迎えよう!」みたいな清々しい空気が流れていたのだが、カムはあっさりそんな空気をぶった切った。長老達の目が点になる。まさか断られるとは思ってもみなかったようだ。

「……なぜか聞いてもいいか?」

 アルフレリックが、どうにか気持ちを持ち直し、亜人族として最高位の恩返しの何が気に食わないのか頭痛を堪えるようにして尋ねた。

「なぜも何も、そもそもお前達は根本的に勘違いをしている」
「勘違い?」
「そうだ。私が亜人族全体を助けたのはもののついでだ。我等が決起を決意したのは、あくまで同族である兎人族の未来を思ってのこと。他の亜人族は、言ってしまえば“どうでもいい”のだよ」
「……なんだと」

 淡々と語るカムに長老達は信じられないものを見るような目を向けている。

「故に、勘違いするな。我等ハウリア族は、決してお前達の味方ではない。もし、お前達が、此度の勝利に味をしめ、人間族への無謀な戦争を企てたり、武器道具の類を仕入れようと我等やボスに迷惑をかけるようなことがあれば……ハウリア族の刃は貴様達自身に向くと思え」
「わ、我等は、同胞ではないか! 同じ亜人族に刃を向けるというのか! まるで狂人ではないか!」
「ふん、兎人族を蔑んでいたのはお前達も変わらんだろうに。今更、親しげにされてもな。まぁ、そんな事はどうでもいい。とにかく、我等の刃は全て、兎人族の未来のために振るわれる。それだけ胸に刻んでおけばいい」

 言い切ったカムの表情は清々しい。後ろに控えるハウリア達もいい笑顔だ。長老に加えることで、自分達の力をいいように使えると思ったら大間違いだぞ! とその瞳が語っている。

 実際、そういう打算が全くなかったと言えば嘘になるので、アルフレリック達の表情は苦々しい。

 一方、ハジメの周りに控えて事の推移を見守っていた者達は、一様に、ジト目をハジメに向けていた。「大切な者以外、知ったことか! 興味ねぇんだよ! ぺっ!」というカムの言動が、どこかの誰かさんにそっくりだったからである。

「まるで、亜人族から兎人族だけ独立したような言い方だな」
「アルフレリック、お前はいつでも的確だな。全く、その通り。これからは、兎人族は兎人族のルールでやっていく。フェアベルゲンのルールに組み込まれて、いいように使われるのは御免なのでな」

 カムの不遜な物言いに気の短いゼルや長老を蔑ろにされた側近達が激しく憤る。カムは涼しい顔だが、後ろに控える部下のハウリア達は「あぁ? やんのかゴラァ!」とチンピラのようにメンチを切っていた。

 そんな中、難しい表情で考え込んでいたアルフレリックは、まるで、かつてハジメを相手にした時のようにどこか疲れた表情でカムに話しかけた。

「では、カムよ。お前さん達を“一種族にしてフェアベルゲンと対等である”と認めるというのはどうだ。当然、長老会議への参加資格を有することにして。これなら、フェアベルゲンの掟にも長老会議の決定にも従う義務はなく、その上で、我等にも十分な影響力を持てる」
「ほほう~。まぁ、悪くはないな」

 アルフレリックの新たな提案に、「その言葉が聞きたかった!」とでも言うようにカムはニヤリと笑った。

 カムとしては、いつか帝国が侵攻して来た場合に備えて、フェアベルゲンとの繋がりは欲しいと考えていた。しかし、だからといってフェアベルゲンに組み込まれてしまうと長老会議を無視できなくなって自由に動くことができなくなってしまう。なので、あくまで同盟種族、あるいは外部機関的な立場がベストだと考えていたのだ。

 だが、それは当然、ハウリア族を優遇し過ぎであると反発の声が上がる。それに対してアルフレリックは、溜息を吐きながら答えた。

「彼等は、一部族だけで事を成したのだぞ? フェアベルゲンが総力を上げても出来ないであろうことを、だ。対等と認めるには十分な理由だと思うが? それに、このままではハウリア族と縁が切れてしまう可能性があるわけだが、その損失の度合いを測れないお前達ではあるまい。同盟という形をとれば、追放してしまった彼等とも、また縁を繋げるのだ。ならば、この程度のこと、成し遂げてくれたことの大きさに比しても、過剰とは言えまいよ」

 長老達は、ぐぬぬぬっという音が聞こえそうなくらい頭を捻ったが、結局、良案がでるわけでもなく、種族の矜持やら長老会議の威信やらを何とか押し込めて、アルフレリックの提案を呑む事になった。

「そういう訳で、カムよ。長老会議の決定として、ハウリア族に“同盟種族”の地位を認める、ということでよいか?」
「まぁ、認められようが認められまいが、我等のやることは変わらんが、そういうことでいいだろう。ああ、ついでに、大樹近辺と南方は我等が使うから無断で入ってくるなよ? 命の保障は出来んからな」

 カム、まさかの追加注文。

 というか勝手に自分達の土地を決めてしまった。流石のアルフレリックも頬がピクっている。ハジメの傍らでシアが顔を両手で覆ってしまった。父親の傍若無人ぶりが恥ずかしくなったらしい。家の父様がヒャッハーしてますぅ~と。

 その後、妙に疲れた顔をしている長老衆を残し、ハジメ達は大樹に向かうまでの間、フェアベルゲンで滞在するための部屋に案内された。

 町中は、未だ、帰還した亜人達への対処に大騒ぎとなっている。光輝達は、何か手伝えることはないかと飛び出していったが、ハジメ達はどこ吹く風と部屋でくつろぐことにした。

 ちなみに、リリアーナはほんの少し前に王国へ送り帰している。まだまだ、帝国との折衝は必要であるし、今回の一大事件についても報告し、王国なりの行動方針を決めなければならないからだ。

 なぜ、直ぐに帰らず、ついさっきなのかについては……単純な話だ。リリアーナに送り帰して欲しいと言われるまで、ハジメが彼女の存在を忘れていたからである。ゲートをくぐるとき、リリアーナの瞳に光るものがあったのは言うまでもない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 夜中。

 未だ、ちらほらと町中の喧騒が聞こえてくる。どこかで帰還を祝って宴会でもしているのかもしれない。

 そんな中、割り当てられた部屋で思い思いにくつろぐハジメ達。だが、若干一名、妙にそわそわとしている者がいた。

 シアだ。先程から、チラチラとハジメを見ては、何か考え込んでいる。

 もっとも、当の本人はユエに膝枕されたまま、うつらうつらと半ば夢の世界に旅立ちつつあるので、シアの様子には気が付いていない。流石に、数千人を運ぶのは骨が折れたようだ。ユエは、体を弛緩させてだれているハジメを優しく撫でながら、「ふむ」と少し首を傾げながらシアを横目に見る。

 次いで、ユエを羨ましそうに見ながらハジメの傍に陣取る香織とティオを見た。そして、もう一度「ふむ」と頷くと、おもむろに香織とティオに話しかけた。

「……香織、ティオ。膝枕したい?」
「え? 代わってくれるの?」
「む? もちろん、してみたいのじゃ」

 期待した目を向ける香織とティオに、ユエはフッと笑う。

「……聞いただけ」
「「……」」

 どこか小馬鹿にしたような笑みを口元に浮かべたユエ。それを見て、香織とティオの額に青筋が浮かんだ。さらに、ユエは「どうだ、羨ましいだろう?」とでも言うように、ハジメの頭をギュッと抱え込んだ。

「……ユエ、喧嘩売ってるのかな? かな?」
「ふふふ、妾、ちょっとカチンと来たのじゃ」
「……やるの?」

 ユエの挑発的な笑みに、二人が「昼間の続きなら受けて立つ!」といきり立った。ちなみに、昼間の勝負ではユエ・シアペアの勝利だったりする。

「……逃げる私を捕まえられたら、ハジメの隣、今晩は譲ってあげる」
「「!」」

 流石に、町中で模擬戦するわけにはいかないので、鬼ごっこを提案するユエ。そして、勝利のご褒美は破格だった。香織とティオのテンションが夜中にもかかわらずハイになる。

 ユエは二人の反応を確認すると、優しくハジメの頭を枕に置き、愛おしげに一撫でした。そして、重力を感じさせずにふわりと窓際まで跳躍すると、そのままダンスでもしているかのようにクルリとターンを決めつつ後ろ手に窓を開いた。

 その際、「何事?」と目を瞬かせているシアにチラリと視線を向けるとパチリとウインクする。シアは、それでユエの意図を悟ったらしく、小さく笑みを浮かべながら感謝を込めて頷いた。

「……ゲームスタート」

 その一言と共にユエはスッと窓の向こう側へ身を躍らせ、次の瞬間にはその姿を夜闇に溶け込ませて消えてしまった。

「くっ、絶対に捕まえるよ! 添い寝のために!」
「ふふ、負けんのじゃ!」

 気合一発。香織は銀の翼を、ティオは竜の翼を生やして窓から勢いよく飛び出していった。

 傍目には置いて行かれた形のシアだが、ユエがわざと香織達を挑発して二人を連れ出してくれたことは分かっていたので、有り難くチャンスを生かすことにする。いそいそと、ハジメの傍によると、優しく揺り起こした。

「ハジメさん、ハジメさん……起きてください」
「ん? どうした、シア。っていうかさっきユエ達が出て行ったっぽいんだが……お前は行かなかったのか?」

 夢現でも、魔力の流れを感じてユエ達が窓から出て行ったことは感知していたハジメが、なんでお前はいるんだと首を傾げる。

「え~と、それは何となく乗り遅れたみたいな、そんな感じです」
「……何となく、ねぇ」
「うっ。それより! みんな出ていってしまいましたし、私達も散歩がてら外出しませんか? 私、フェアベルゲンの中って知らないんですよね」

 シアは髪色のせいで人目に付けなかったので、フェアベルゲンに来たのはハジメ達と来たのが最初だったりする。その時も、直ぐに出ていくことになったので町中を知らないのだ。

「……まぁ、いいが」
「はい! 真夜中のデートですね! ……ちょっと卑猥な響きです」
「知らねぇよ」

 何となく、シアが話をしたがっているように感じて、本当はもう眠りたかったのだが、仕方なく付き合うことにしたハジメ。シアは、嬉しそうにハジメの腕にギュッと抱きついた。そして、二人で腕を組みながら真夜中のフェアベルゲンに繰り出した。

 十分ほど、他愛ない話をしながら二人並んで散歩をしていると、町中の喧騒が聞こえなくなるくらい遠くまでやって来たことに気が付く。そして、なにやら天井の樹々が淡青色に点々と輝く場所を発見した。

「あっ、モントファルタですよ、ハジメさん」
「モントファルタ?」
「はい、月明かりみたいな淡い青色に発光する蝶のことです。あんな風に群れて樹々の高いところに止まるので、まるで夜空に輝く星みたいに見えて人気なんですよ。ただ、いつどこであんな風に発光するか分からないので結構珍しいんです。一年に一回見られるか見られないかくらい」
「へぇ~、確かに綺麗なもんだな……」

 頭上を見上げる二人は、折角だからもっと近くで見ようと高い樹の上にヒョイヒョイと登っていき、太く座り心地のいい枝に並んで座った。しばらく、モントファルタの発するプラネタリウムのような光を堪能する。

 どれくらいそうしていたのか、おもむろにシアが口を開いた。

「あの、ハジメさん」
「ん?」
「有難うございました。色々、言葉にしきれないくらい……本当に有難うございました」
「……ああ。たっぷり感謝してくれ。大迷宮攻略では期待してるからな」
「ふふ。そこは普通、“気にするな”とか言うものじゃないんですか?」

 ハジメらしい返答に、シアがクスクスと笑う。しかし、直ぐに難しそうな表情になって、ハジメに視線を向ける。

「私、何をすればハジメさんに返せますか?」
「礼なら今受け取っただろう?」
「そんなの唯の言葉じゃないですか。私は、もっと形として恩返しがしたいんです。ハジメさんは、私が何をすれば嬉しいと感じてくれますか? ……ハジメさんが望むなら何だってします。本当に何だって……」

 シアはウサミミをピコピコと動かしながら、お尻をずらして隣に座るハジメにピトリと密着する。直ぐ傍でハジメを見つめる瞳は熱を孕んで潤んでおり、吐息は火傷しそうな程に熱い。言外に、シアが何を言っているのかをハジメは正確に理解していたが、敢えて気がつかない振りをする。

「……お前は、能天気に笑ってりゃいいんだよ。俺達のムードメイカーだろう?」
「もうっ、何ですか、能天気って! 皇帝の前で私のことを大切だって抱き締めたくせにぃ! ここは、『ならお前の体で礼をしてもらおうか、ぐっへっへっへ!』と言って私を襲う場面じゃないですか。空気読んで下さいよぉ」
「一度、お前の中の俺のイメージについて、とことん話し合う必要がありそうだな」
「一途という名のヘタレですぅ」
「そこは、普通に一途でいいだろうが」

 シアは、ぷくっと頬を膨らませて不満をあらわにした。しかし、直ぐに気落ちしたように項垂れる。ウサミミもペタリと力を失ったように垂れてしまった。

「……冗談抜きに、何かお礼をしたいんです。ハジメさん達と出会ってから、私はずっと貰いっぱなしです。ハジメさんもユエさんも笑ってくれればいいって言いますが、そんなの、お二人といるのが幸せな私からすれば自然なことで、全然お礼なんかじゃないです」
「だがなぁ、仲間だろ? いちいち、そんなこと考える必要ないと思うけどなぁ」
「親しき仲にも礼儀ですよ。ハジメさんにもユエさんにも、ちゃんとお礼がしたいんです。……色々、考えていたんですけど、中々思いつかなくて。ハジメさんは、私の体なんていらないっていうし……大切だって抱き締めたくせに、いらないって言うし……」
「やさぐれるなよ……」

 ハジメは、いじけるシアに困った表情になる。本当に、改めて恩返しがしたいと言われても、身内を助けるのは当然のことなのだから、一言「ありがとう」とでも言われれば十二分なのだ。

 だが、シアとしては、それではどうにも気持ちが収まらないらしい。

「ハジメさんが惚れてくれていれば、こんな苦労しませんのに。一杯、ご奉仕(お礼)しますのに……はぁ、仕方ありませんね。これまで以上に旅でお役に立てるよう頑張ることでお返しすることにします」
「そうか」

 シアは肩を竦めると、再び、頭上のモントファルタを眺めだした。

 その横顔を眺めながら、ハジメは、ふと、ガハルドの前でユエとシアを抱き寄せた時のことを思い出した。

 実を言うと、あれはほとんど無意識だった。気が付けば、二人共抱き寄せていたのだ。

 依然、“特別”だと断言できるような大きな気持ちはユエにしか抱いていない。それは断言できる。しかし、無意識にでも、シアを腕の中に閉じ込めたのは……

 そこまで考えて、ハジメは自嘲気味な笑みを浮かべた。

 何とも、まぁ、自分勝手なことだと思ったからだ。ユエに並ぶ者などいないと言いながら、シアに対して独占欲を持っているなんて、本当に身勝手である。気が付けば、シアの存在は随分と大きくなっていたらしい。少なくとも、ユエにそうしたように、無意識の内に離したくないと抱き寄せてしまうくらいには。

 ユエ以上の気持ちを誰かに抱くことはないだろうが、それでも、もはやシアに対する想いを誤魔化すことはできそうになかった。自覚してしまった以上、気がつかなかったことには出来ない。ならば、一生懸命頑張って、自分達について来た眼前の少女に相応の態度をとるべきではいか? ハジメは、ふと、そんな事を考えた。

「え、えっと、何でしょう? そんなにジッと見つめられると流石に恥ずかしいのですが……」

 気が付けば、シアが頬を真っ赤に染めながら恥じらうようにもじもじとしていた。ウサミミも「うぅ~、どうして見てるの~」というようにペタリと倒れながら、時折、ふにゃふにゃと動いてはハジメの方を向く。

 そんなシアに、ハジメは目元を和らげると、そっと手を伸ばした。そして、その恥じらうウサミミを優しく撫でる。

「ハ、ハジメさん?」
「……なぁ、シア。一つ、頼みがあるんだが……」
「頼み、ですか? もちろん、いいですよ! 何でも言って下さいですぅ」

 一瞬、ハジメの言葉に驚いたものの、シアは、少しでもお礼が返せるとニコニコしながら快諾する。

「いや、何、少し横になりたくってな。よかったら膝枕頼めないか?」
「ふぇ、そんなの頼まなくても、普通に使って下さい。さぁ、どうぞどうぞ」
「ありがとよ」

 シアは、ハジメの頼みに拍子抜けしたような表情をするものの、膝枕するのは嬉しいらしく、満面の笑みで自分の太ももをペシペシと叩いた。ハジメは、笑みを零しながら礼をいい、そのまま遠慮なく横になる。

 シアはミニスカートなので、直接、太ももの感触を感じる。温かくフニフニした感触が、柔らかくハジメの頭部を支える。仄かに、ユエとは似て非なる甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「ふふ、香織さんとティオさんに悪いですね。今頃、ハジメさんへの膝枕やら添い寝をかけてユエさんと勝負しているでしょうに、先に私が頂いてしまいました」
「まぁ、どうせユエが勝つから気にしなくていいんじゃないか?」
「そんな事言っちゃダメですよぉ。ハジメさんに惚れて欲しくて頑張っているんですから。ほんとに、いつになったらハジメさんは惚れてくれるんですかねぇ~」
「……諦める気は?」
「ないですねぇ~」
「そうか~」

 シアの手が優しくハジメの髪を撫でる。心地よい感触に、ハジメは目を細める。そして、お返しとばかりに、目の前に垂れ下がっているシアの髪を手に取り指で弄んだ。淡い青みがかった白髪は、頭上に輝くモントファルタの発光色と相まって実に神秘的だ。

 今のハジメとシアを見た者がいたのなら、きっと砂糖を吐きそうな顔をするに違いない。それくらい、二人の醸し出す雰囲気は甘かった。そう、まるでハジメとユエの作り出す世界のように。

 しかし、残念な事に、ユエを見ていつか自分もと願った雰囲気を既に作り出せていることに、シア自身は全く気がついていなかった。その辺、やはりシアは残念ウサギなのかもしれない。

 当の本人は気がつかず、それでも甘やかな時間は優しく流れる。モントファルタの月光が照らす中、ハジメとシアはしばらくの間、二人っきりの時間を楽しむのだった。



いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字脱字報告も有難うございます。

物語も終盤。
そろそろ、ユエ以外のヒロインにも色々あっていいはず。
そう思うものの、ユエ=特別の構図が出来上がってしまい、心理描写が苦しい……
まぁ、ユエが別格なのは変わりませんが。

次回から大迷宮攻略です。

更新は土曜日の18時予定です。
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