「ちょっと、そこのお兄さん」
アンジェは男のほうへ近づきながら言った。
「あぁ〜、何ら(だ)よおまえ〜、ヒックッ」
男はかなり酔っているようで言葉にろれつが回っていない。
「うわ〜、かんなり酔ってるな〜」
アンジェはそう思いながらチラっと絡まれている少女を見る。
少女はアンジェの登場に「助けてもらえる」と思ったようで顔がパッと明るくなっていた。
それにしても、今まで助けが来なかったのはおかしい。
いくら、あまり人が通らなくても王宮なのだから兵や従者の一人ぐらい通ったはずだ。
ちょっと不思議に思ったがだからっと言って少女を見捨てるわけじゃないアンジェは
「それじゃぁ、ご希望通りに」
と言いながら一定の距離をとって歩みを止める。
距離をとらないと酔っているやつは何をするかわからないからだ。
「お兄さん、そこの女の子嫌がっているみたいだけど、放してあげたら」
アンジェはニッコリしながら言う。
「あぁ〜、何ら(だ)とぉ〜、オレさまを誰ら(だ)と・・・」
すると、男は急に自分自慢をしはじめた。
「これはチャ〜ンス」
とアンジェは思い、少女に顔を向け、小さい声で
「行って」
といった。
そしたら少女もわかったようで
「ありがとうございます」
と小さくお辞儀して行ってしまった。
「いい子だな〜」
としばらくアンジェは見えなくなるまで少女が逃げた方を見ていたら
「あっ、いない、お前ぇ〜、逃がしたな〜」
ついに男が少女がいないのに気づいた。
その時、アンジェも気づいたことがあった。
「あっ、逃げるの忘れてた」
ここにマリアがいたら「はぁ〜」とため息をついていたところだろう。
そんなことを考えているうちに男が剣を抜いてきた。
「マジですかっ!」
と思いながらもアンジェも一応持っていた剣を抜く。
「フンっ、お前みたいなもやし男がオレに勝てると思ってるのか」
男はふらついているものの酔いがだんだん醒めてきたようだ。
そこで一瞬、男が言った『もやし男』に疑問を抱いたがそういえば今、自分は男の格好をしていたと思い出した。
アンジェは今、長い髪を頭の上でターバンで隠し、男の格好をしていたのだ。
「オレは今の王の第一騎士のセーランド様だぞぉー」
その言葉でアンジェは気づいた、
「だから、だれもさっきの少女を助けなかったのか」
と。
でも、今はそんな事考えている暇はない。
男はいきなりアンジェに向かって剣を振り落としてくる、すかさずアンジェはそれを受け止める。
「重い」
アンジェはそう思った。
さすが、王の第一騎士、押してくる力が半端ではない。
このままではアンジェの細い手首は折れてしまう。
アンジェはすぐに男のすきを探した。
「あった」
男は酔っているので結構簡単に見つけれた。
そして、そこにアンジェが剣をいれようとした時、
「そこまでっ」
威厳のある重い一言が聞こえた。
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