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スーちゃんは俺の嫁 作者:赤砂多菜

一章 無限の供給炉

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7.実はファンタジーではなくホラー?

7.実はファンタジーではなくホラー?





 問屋までの道すがら、カイサルさんが俺のDランクに拘った理由を聞いてみた。

「悪いとは思ったがな」

 一応、罪悪感はあったらしい。
 冒険者ギルドでは見せなかったが、すまなそうな表情で頭をかいている。

「お前さんをそのままFスタートにするのは問題があったんだ」
「問題?」
「トラブルが起きた可能性があった。なにせ、前例があるからな」

 そう言えば、シルヴィアさんも登録の時に、以前の繰り返しになると言っていたな。でも、何の事だ?
 目で続きを請うと、カイサルさんは続けてくれた。

「うちのハリッサも飛び級だったんだ。お前とは違って、一応登録時はFランクだったんだがな」

 そう言えばハリッサさんの名前も出てた。

「マサヨシ。お前もスキルを持ってるなら知ってるだろうが、スキルには系統ってもんがある。戦士系全般的なものなら戦技系統、標準的なサイズの剣スキルなら剣系統。後、俺の職業である魔装戦士ってのは、魔法具を使いこなすのが本領の職業でな。系統名が魔法具ってスキルをもってる」

 急にスキルの話に切り替わった。系統というのは恐らく、【無:ステータス解析】なら無にあたるものだろう。

「基本的に職業とは関係なしに、スキルはどの系統であっても覚える事が出来るとされている。例外の2つを除いてな」
「例外?」
「一つは種族系統。例えばそこのスーちゃんは、進化種とはいえ元はグリーンスライム。なら【種族:溶解】ってスキルを持ってるはずだ。種族系統は特定の種族しか覚える事の出来ないスキルだから、人族である俺達が覚える事が出来ない。
 スキルを奪える奪取、スキルをコピーする複写ってのもあるが、種族系統スキルに対しては必ず失敗する」

 まぁ、納得かな。溶解なんてスキル、使えるイメージがわかないもんな。

「そして、もう一つが特殊系統だ」

 心臓が一瞬高鳴った。俺はそのスキルを持っている。

「これは、ユニーク職業に近いな。個人の適性に完全に依存してて、適性がない奴は絶対に覚えられない。そして、適性を持つ奴自体もレアだ」

 なぜ、カイサルさんは急にこんな話を持ち出したんだろう。俺のDランクの話じゃなかったのか?

「で、だ。ハリッサが実はこの系統のスキル持ちだ。言っとくがこれは内緒だぜ。お前だから話したんだ。同じ特殊系統のスキルを持つお前だから」

 カイサルさんにはカマをかけている雰囲気はなかった。確信出来る何かがあって言っているようだった。

「なぜ、俺のスキルの事を知っているんですか?」
「俺も特殊系スキル持ちだ。【特殊:スキル解析-特殊】って奴でな。特殊系統スキル限定だが、スキルを調べる事が出来るスキルだ。もっとも、使いこなせてなくて、自分以外に対してはスキルの有無ぐらいしか分からんがな」
「もしかして、俺をクランに勧誘したのは――」
「まぁ、それもあったのは否定しない。が、まだ言ってなかったな。《自由なる剣の宴》のモットーは、新人ルーキーには優しく、熟練者ベテランには敬意を、だ。
 お前が特殊系統スキルを持っていなくても、物知らずで危なっかしそうだったからな。結局は勧誘してたろうな」

 俺は何を言うべきか分からずしばらく無言だったが、結局。

「ありがとうございます」

 そう言って頭を下げた。

「よせよせ。言ったろ? 新人ルーキーの世話を焼くのはクランのモットーだからだ。
 話がそれたな。それでハリッサなんだが、あいつの持ってるスキルは【特殊:第六感】って奴でな。勘が良くなる、と言葉で言えばたいした事がないように思えるが、実際はとんでもなくてな。魔物がどんなに巧妙に隠れていても見つけるし、探し物は誰よりも早く見つける」

 ようは万能レーダーみたいなものか。

「まぁ、さすがにギルドに登録時は、そのスキル以外は普通だったんだが。そのスキル一つで十分過ぎた。
 Fランクの討伐依頼は危険度の低いものだし、採取依頼も少し探せば見つかるものばかりだからな。依頼を矢継ぎ早にこなしていった。それはもうFランクの依頼書が掲示板から消える勢いで、だ。そして、Fランクの冒険者はギルドの規約で、ソロではFランクの依頼しか受ける事が出来ない」
「それって他のFランクの人にとってまずくないですか?」
「ああ、まずい。Fランクの依頼はただでさえ多くない。冒険者っつってもFランクなら、普通は一般人に毛が生えた程度だ。冒険者ギルドに依頼をださずに自力でなんとかするって奴も少なくない。
 結果、他の連中の恨みを買った訳だ。と言っても当初は陰口程度で済んでいた。ギルドの目もあるしな。俺が酒でも奢りつつ『少しペースを落としな』とでも言ってやれれば良かったんだろうが……。
 クラン総出で他所の街に出張中だったんでな。アルマリスタに帰った時には、事が起こった直後だった」

 事が起こった?

「まぁ、直接手を出した馬鹿が出ちまったんだ。もっとも、どうやらちょっと脅かす程度のつもりだったらしいが。ただ、陰口が続いたせいでハリッタも精神的にまいってたようでな、正当防衛というにはちょいと派手にやり過ぎた。死んでこそいなかったものの、冒険者を続けられる身体ではなくなって、引退を余儀なくされた」
「それって、問題にならなかったんですか?」
「なった。というかそいつらが属してしたクランが捻じ込んだって感じだな。さっき、会っただろ? リガスがリーダーのクラン《オモイカネ》だ」
「あの人の……」
「まぁ、やられた奴の報復ってよりも、ハリッサが目障りだったんだろうな。
《オモイカネ》は金の亡者達だ。あまり他のクランの悪口は口にしたくないが、ハリッサに対する陰口も、火をつけたのはあいつららしい。ハリッサのスキルの事は知らなくても、驚異的な依頼達成速度を目にすれば、将来的に邪魔になると思ったんだろう」
「で、どうなったんですか?」
「当時、ハリッサはどのクランにも所属してなかったんだが、半ば強引に俺の所に加入させてな。冒険者ギルドの過失も大きいと主張した。実際、ハリッサのランクを上げりゃ、Fランクが依頼に困る事もなかったんだからな。ハリッサを襲った連中に対する管理責任もある。そして、それについては《オモイカネ》も同様だ。
 それでもなおハリッサの責任を問うつもりならば……」

 そこで思わせぶりに言葉を切られた。
 うん、これは聞けという事だろうな。

「責任を問うつもりならば?」
「クラン《自由なる剣の宴》は他の街の冒険者ギルドに移籍するって言ってやったよ」
「それって、圧力になるんですか?」
「クランの規模にもよるだろうな。
 別に所属している冒険者ギルドの街でなきゃ仕事をしてはいけないって訳でもないんだが。冒険者ギルドにとって高ランクの冒険者を多く抱えているのは一種の勲章だ。それに緊急時に動員がかけられなくなるのも大きい。
 俺も含めて、《自由なる剣の宴》はBランク冒険者が複数所属している。冒険者ギルドとしては手放したくないだろうな」
「《オモイカネ》は同じ手を使わなかったんですか?」
「やつらにとっては金が一番だ。アルマリスタのような四つのダンジョンを抱える街なんてそうはないからな。ダンジョンは富を生む。この街からは離れられんさ」

 そんな事があったのか。それじゃ、もしかすると。

「ハリッサさんのあの性格って、もしかしてその事が――」
「ありゃ、根っからだ」

 あっさり、否定された。

「まぁ、お前もDランクになったとはいえ、冒険者としては新人ルーキーには違いないんだ。困ったら遠慮なく先輩である俺に頼れ。
 後、気が向いたらでいいから《自由なる剣の宴》に来い。歓迎するし、特殊系スキルの事も気にする必要がなくなる」
「そうですね。気が向いたら、そうします」

 今はまだちょっと、その気になれない。俺には特殊系スキル以外に異常な魔力という問題もあるし。
 カイサルさんは諦めたように嘆息した。

「ま、心の隅の留めておいてくれ」
「そういえば」

 俺は先程の事を思い出した。シルヴィアさんが何の行動も言葉もなく場を鎮めてしまったのが気にかかった。

「もしかして、シルヴィアさんも高ランクの冒険者だったんですか?」

 俺が聞くとカイサルさんは苦笑した。

「高ランクも何も。Aランクだよ。最高ランク。Bランクの俺より上だ」
「シルヴィアさんが……」
「例えAランクでも、一つの失敗で冒険者を引退なんて事になる。あるいはそれでも運がいい方だ。命があるんだからな。マサヨシ、お前も気をつけな」
「はい」

 頷くしかなかった。



 それから、しばらくして問屋についた。
 何の問屋かというとよろず?
 衣服、旅道具、携帯食、ポーション類。魔法具も色々。なまもの以外はたいていある。
 こういうのは何屋さんと呼べばいいのだろうか?
 カイサルさんが店員さんに声をかけて、俺の服を見繕って欲しいと頼んでくれる。
 俺は何がいいか、わからないので完全に店員さんにお任せした。

 ……下着以外は。

 どう見てもふんどしなあれはちょっと受け付けなかった。
 ネットで着心地が良いというのを見かけた事はあったけど、試す気になれなかった。そして、それ以前の問題として、つけ方が分からない。そんな事で店員さんを煩わせたくもなかった。

「お、なかなか似合ってるじゃないか」

 着替えた俺を見て、カイサルさんがそう評してくれる。
 冒険者ギルドに卸してる問屋なだけあって、俺の今の格好はイメージ的に冒険者っぽく見えると思う。見てくれだけでなく、体のキレもいい。もしかして、これって魔法具なのかも?
 店員さんに聞いてみた。

「いえ、そんな大層なものじゃございません。ただ、その服の生地には神明様の加護をかけてもらってますので、そのせいではないでしょうか?」

 神明様? 加護?
 俺が疑問に思っている事を察してカイサルさんが説明してくれる。

「加護というのは、大きな力を持った存在が、その力を分け与えたものの事だ。お前の村では神明様を奉ってなかったのか? 別に街でなくともたいていの村に祠ぐらいはありそうなもんだが」

 恐らく、神明様というのは神様に相当するものなんだろう。とすると、この服。物凄いものじゃなかろうか?

「別に加護くらいなら、教会に相応のお布施をすれば司祭が付与してくれるぞ」

 一気に俗っぽくなった。
 でも、これが気にいったので下着を含めて数着買う事にした。他にもカイサルさんに聞きながら、冒険者に必要と思われるものをそろえてもらう。店員さんはカイサルさんの事を知っているようで、俺に対しても丁寧に接してくれる。それにスーちゃんには多少驚いた顔をしたものの、タグの存在にすぐに気付いて、その後は特に気にしたそぶりを見せない。

 言ったものはとりあえずそろった。着た服以外はスーちゃんの収納に入れてもらう。
 後は……。

「時計はありますか? 後、収納の魔法具が欲しいんですが」
「時計って。今までのものとは値段の桁が違うぞ。そりゃお前なら払えるだろうが。わざわざ買う必要があるのか? それに収納の魔法具にしたって、スーちゃんがいるだろ」
「いや、スーちゃんから出し入れしてると驚かれる事が多いので、使用頻度の高いもの用に自分でも収納の魔法具はもってたほうがいいかな、と」
「ああ、なるほど。で、時計は?」

 むしろ、なぜ必要ないのか。俺にはそのほうが不思議だった。

「時間が分からないと不便じゃないですか?」
「お前、自分のステータスが見られるんじゃなかったのか?」
「見られますけど、それが――」

 ふと、思いついてやってみる。


【無:ステータス解析】

 時刻
  10:30


 初期設定デフォルトで表示されない項目があるのか!?
 というか、時刻ってステータスでいいのか?

「すいません。やっぱり時計は必要ないようです」
「冒険者の知識と経験が足りないって、一理あるかもな」

 カイサルさんが遠い目をしている。なんか、すいません。

 とりあえず、ウエストポーチ型の収納の魔法具を買った。長いので収納のポーチと呼ぼう、うん。
 店員さんにお礼を言って、支払いをする。お釣りは受け取らなかった。
 深い意味はない。『釣りはいらない』をやってみたかっただけだ。誰だって一度はやってみたいだろう。札束でひっぱたくというのもやってみたいが、この世界に紙幣はあるのだろうか。まぁ、あったとしてもひっぱたく相手がいないのだが。ちなみにひっぱたかれるのは却下だ。俺にそんな趣味はない。

 そして、カイサルさんに連れられて賢者ギルドへ。
 冒険者ギルドの外観は学校だったが、賢者ギルドの外観はビルだった。
 材質は分からないが、壁に継ぎ目が見当たらない。この世界の建築技術っていったいどうなってるんだ? 鉄筋コンクリートとかそういった技術があるんだろうか?
 石レンガや木の建物ばかりの中にあるそれは、俺の目には異様に映った。

「じゃぁ、俺は宿に戻るわ」
「ありがとうございました」

 片手を上げて去るカイサルさんの背に頭を下げてから、俺は賢者ギルドの建物に入った。ちなみに自動ドアはなかった。
 カウンターに向かうと、そこにいたのは……。
 どう言えばいいんだろうか。

 例えばの話だ。呪怨かやこというか、リングさだこというか、ホラー系のオーディションに応募したら、会場に入った瞬間に合格しそうな人がいた。携帯電話がここにあったら、未来日付の着信がきそうだ。
 彼女は入って来た俺に気付かず、心ここにあらずといった風だ。

「あの、もしもし」
「え? あ、ごめんなさい。ちょっと、雑談に夢中になっちゃって」

 顔を隠していた髪を掻き分ける。特に火傷跡や傷跡はなく、普通の人だった。ただ、カウンターには彼女一人だけだった。誰と雑談していたのだろう。怖いから聞かないけど。

「ようこそ、賢者ギルドへ。私は受付のニーナと申します。御用はなんでしょうか?」
「ええっと。図書館を利用したいんですが。もしかして、ギルドに加入しなきゃダメでしょうか?」
「いいえ。ただし、有料となりますが」
「それは聞いています。ちなみにどれくらいですか?」
「そうですね。一ヶ月の利用許可で金貨2枚になります」

 約2ヶ月分の生活費か。確かに高いな。手持ちのお金からしたら余裕で払えるけど。一度、生活費換算すると高く感じるのはなぜだろう? チロル算と同じようなものだろうか。ただチロル算は、10円から20円に値上げされたので、廃れてしまったが。

「賢者ギルドに登録されると無料になりますが」
「え? 本当ですか?」
「はい。登録には、何がしかの研究成果か、その証拠、または論文が必要になります」

 はい、無理。

「とりあえず、図書館の利用だけをお願いしたいのですが」
「……賢者ギルドに入って頂けないのですか?」

 ニーナさんにじっと見つめられる。……怖いよ、怖いよこの人。
 俺を見ているはずなのに、何か別のものを見ていそうな気がする。

「それはまたの機会に改めて。今日はとりあえず、図書館の利用の手続きをお願いします」
「はい、分かりました。いずこかのギルド登録証か住民登録証をお持ちでしょうか」
「冒険者ギルドの登録証があります」

 俺は登録証をカウンターに置いた。

「お借りしますね」

 彼女は冒険者ギルドにもあった、水晶玉と水晶板のセットのうち、水晶玉に手をかざした後、登録証を手にとりペンのようなものの先端を当てた。

「はい、手続きおわりました」
「もう!?」
「お返ししますね」

 登録証を返されたので、それを収納のポーチにしまう。

「図書館の受付で先程の登録証を提示して頂ければご利用になれます。ただ、登録したのは冒険者ギルドの登録証だけなので、他の登録証では無理です。ご注意下さい」

 ああ、なるほど。
 さっき渡した登録証の情報が何らかの方法で、図書館に転送された訳か。たぶん、魔法的なものなんだろうけど、元の世界の電子ネットワークみたいだ。

「ええと、料金は金貨2枚でしたよね」
「利用料は図書館を初めてご利用する時にお支払下さい。その日から30日間ご利用になれますので」
「分かりました。後、図書館の場所が分からないので地図か何かないですか?」

 するとニーナさんが立ち上がった。

「でしたら、ご案内しますね。ここから遠くはありませんので」
「え? それはありがたいですが。ここはいいんですか?」
「お恥ずかしい話ですが、滅多に人が来ないので。それに誰かきたら教えて下さるので大丈夫です」

 ……誰が教えて下さるのですか?

「では、まいりましょう」

 ニーナさんのすぐ後ろをついていく。
 前から来る人が脇によけていくが、これってスーちゃんのせいじゃないよね。


i219707
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