挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スーちゃんは俺の嫁 作者:赤砂多菜

三章 虚本偽書がもたらすもの

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

51/77

51.一対の雛

51.一対の雛





 会議室でそのまま、いつもの面子+クロエさんを呼んで作戦会議とあいなった。

 ……つーか、いつもの面子にクロエさん入れていいんじゃないかな。
 どーせ、今後もカイサルさんにくっついてくるだろう。

 食堂にみんなを呼びに行こうとしたら、会議室のドアのすぐ横で待機してたし。
 ……ストーカー? ヤンデレ(つれなくしたら)さん(拉致監禁♪)の兆候あり?

 まぁ、対象はカイサルさんだしな。モテ税だとでも思ってもらおう。せめて、高くつかないシルヴィアさんのめにつかない事を祈る。

 みんな、お酒のせいで赤ら顔だ。
 ハリッサさんのテンションが高いが酒が入るといつもの事だ。
 後、そこのリズさん(ひんにゅう)。酔ったフリしてスーちゃんに抱きつこうとすんなし。抱き枕型スーちゃん出してもらうから、それで我慢しとけ。

「さて、お手元の資料の通り、他のパーティが攻略できなかったところをウチ(自由なる剣の宴)で。というよりも、この面子で挑みたいのですが、異論はありますか?」

 手元の資料は地図に魔物のリスト、それにツイストギガスのスケッチ。全部スーちゃんが手書きコピーしたものだ。正直、どっちが原本か判断出来ない精度だ。

「いいっすよー。どうせ、なんかわけありなんだろうけどっ、問題ないっすー!」

 ハリッサさんが片手を振り上げて、ぐるぐる回している。近くにいるニコライさんは迷惑そうだ。
 あ、取り押さえられた。

「目的についても触れますが、まず先に言っておきたいのはスケッチのあるツイストギガスの相手は、スーちゃんにまかせてもらいたいという事です」

 ヴィクトールさんが眉を潜める。

「そこまでヤバイ奴なのか?」

 スーちゃんにまかせるというのは、ある意味前衛の否定みたいなものだからね。まぁ、ここにいるみんなはスーちゃんの力を知っているので、そこまで角が立たないけど。
 それでも、やはり気分のいいものではないはずだ。

「まず、このツイストギガスについては情報が少ないんですよ。図書館の本の情報も、他の街でのものですし。出現情報がレア守護者だというのが状況に輪をかけてる気がしますが」
「昨日も言っていたが。レア守護者なのか? こいつは」

 カイサルさんがツイストギガスのイラストを指で叩く。

「他の街のダンジョンに出現した例はそうです。ただ、今回の場合、どのダンジョンも全体的にエリア難度が高いですので、普通の守護者でもおかしくないかと思います」

 まぁ、レア守護者であるなら、俺達が行った時には別の魔物が守っている可能性もあるが、それはそれでよし、だ。敵が弱くなるだけだ。通常時なら稼ぎに影響するので良し悪しだろうが、少なくとも今の状況では悪い話ではない。

「なるほどな。続きを頼む」
「巨人タイプの魔物ですが、特に似ているタイプとしてはトロールですかね。強さ的には上位種相当ですが」
「手のかかる相手という事?」

 リズさんが挙手しての質問。空いてる片手にはしっかりと抱き枕型スーちゃんを抱えている。――エルフ族にはない弾力を堪能するがよい。

「そうですね。結構な再生能力を持ってるみたいですが、トロールのそれよりも能力は低いですね。そのかわり、接触とガスブレスによる状態異常持ちです」

 状態異常攻撃はスーちゃんの十八番(とくいわざ)なので、ここの面子にいまさらやっかいさの説明は不要だろう。

「状態異常の種類はなんだ?」
「接触は麻痺、ガスブレスは腐食らしいですね。個別にさらに何かを獲得している可能性も否定出来ないですが」
「……確かに近づきたくない相手だな」

 ヴィクトールさんが何度も頷いている。
 麻痺もやっかいだが、重戦士のヴィクトールさんにとっては腐食こそ天敵だろう。

 腐食の効果は装備の効果低下、それに加えて低確率の破壊。
 近接戦闘で武器、防具系のスキルを駆使する重戦士にとって相性最悪なのだ。

「それともう一つやっかいな点があります。見ての通り、こいつは歪な体つきをしていますが、間接の可動域がデタラメに広いらしいです」

 なんでも、腕の関節が内側にも外側にも折りたためるらしい。
 ……想像すると胃にきそうだ。

「リズ殿の弓術で遠距離撃破では駄目なのか?」

 今度はクロエさんが挙手をする。

「有効だとは思いますが、相手も攻撃されれば接近してくるでしょう。倒しきれる確信があるならともかく、接近されてからスーちゃんに動いてもらうくらいならスーちゃんにはじめからお願いして、俺達は取り巻きの相手に注力した方が良い、と。それが俺の考えです」
「ふむ」

 クロエさんは魔物リストに視線を落とした。

「確かにこちらも軽んじていい相手ではないな。数も質も」

 ドラゴン族は先天的に好戦的(イケイケ)な種族だが、その中でもクロエさんは比較的穏やかな気質の(ドラゴン)である。……あくまで比較的の話だが。

 ちなみにこの(ドラゴン)。職業こそ治癒魔術師だが、左手に杖、右手に剣という変則的なスタイルだ。まぁ、理由は聞かずともわかる。人だろうが、ドラゴンだろうが、惚れた相手のそばにいたいのは同じなのだろう。
 彼女いない暦(イコール)実年齢な俺が偉そうな事いえんのだが。

 いいんだよ、俺にはスーちゃんいるから!

「まぁ、メイン(しゅごしゃ)についてはこんなもんですけど、何かありますか?」

 俺は全員を見渡すが、特に何もないようだ。

「よっしゃ。じゃぁ、こっからは全体的な対策に移ろうか」

 カイサルさんの言葉を合図に、全員が地図を睨めっこしつつ、道中について意見を出し合った。





 打ち合わせが解散となって、自分の部屋に戻ろうとしたらエリカと鉢合わせした。
 ……よく考えたらこいつもパーティメンバーなんだよな。声かけるの忘れてたわ。
 まぁ、こいつの場合いてもいなくても大してかわらんのだが。
 一応、それなりに自分でも決断が下せるようになったが、まだ基本は俺が基準のままだしな。

 それより――。

「エリカ。それはなんだ?」
「モノバードの雛」
「それは見りゃ分かる」

 エリカの肩には1匹。いや、2匹の鳥が止まっていた。

 モノバード。

 2匹で一対の鳥。一匹では単眼、方翼、一本足の鳥。左右のペアがいて初めて行動でき、生涯をペアで過す変わった生態を持つ。
 アルマリスタのかつてのダンジョンにはいなかったが、低難度のダンジョンにいる魔物。

 そう魔物なのだ。

 契約魔物を示すタグもつけてないようだが、なぜにエリカの肩にいる?
 それと、もう一つ。モノバードが雛である事だ。
 魔物は本来子供を産まない。産めない。それが人や獣との大きな違い。ダンジョンのような魔力溜りから成体として発生する為、雛という状態がありえないのだが。

「フロムさんからもらったの」
「フロムさん?」

 聞き覚えのある名前だが、顔と名前が一致しない。
 《自由なる剣の宴》のメンバーである事だけははっきりしているのだが。

「今日、その人のパーティと一緒に図書館にいったの」

 ああ、ラシードさんのパーティの人だ。職業は調教師だったな。

 調教師は召喚魔術師のように、契約魔物が自身の代わりに戦うスタイルの職業だ。
 ただ、冒険者全体で調教師の人数は少ない。召喚魔術師も少ないようだが、輪をかけて少ない。
 その理由は、調教師固有に近いスキルにある。

 【使役:繁殖】

 字面から分かるように、本来子を産めない魔物を繁殖させるスキルだ。

 この世界――まぁ、少なくとも大陸では移動手段として馬は使わない。馬自体はいるのだが、畜産が一般的ではないのだ。理由は例によってダンジョンで替わりになる魔物が手にはいるからだ。

 そして、そういった馬代わりの魔物の提供を生業にしているのが、熟練の調教師だ。
 冒険者である調教師の多くは、修行兼将来牧場を開くための資金集めの場合がほとんどだ。
 まぁ、そういう生き方もありだろう。冒険者が危険な仕事に変わりない。

 フロムさんは確かCランク。足を洗うなら今がいいタイミングなのだろうが、未だラシードさんのパーティにいるあたり、当面その気がないのだろう。

 しかし、モノバードか。

「いいのか? 確かかなり高いはずだが」

 低ランクの割には素材価格が高いので良く覚えてた。……素材換算というのもあれだが。

「マサヨシの友達だったら、魔物でも大事に育ててくれるだろうからいいって」
「ああ、なるほど」

 モノバードが主に高いのは魔石。魔石の主な適性は情報系で、特にペアの魔石なら無加工でもトランシーバーまがいの事が出来るらしい。
 ただ、魔石というのは魔物が死ぬ事によって初めて発生する物。恐らく世の魔物牧場の中には素材目的のモノもあるんだろうが。
 俺みたいに契約魔物に情が移ってるような奴にはとても出来ない事だ。フロムさんもその口なんだろう。

 俺はスーちゃんに首にかけるタイプのタグを出してもらった。俺の場合契約魔物数が多いので、ギルドから複数もらっているのだ。
 まぁ、ギルドも俺の契約魔物の全容を把握してないだろうけど。

 俺はおとなしくエリカの肩に止まったままのモノバードに、それぞれの首にタグをかけてやる。
 これで、盗難する馬鹿もいないだろ。まぁ、エリカ相手に盗難とか、自殺とかわらんのだが。

「名前はあるのか?」
「まだ。マサヨシがつけてくれる?」
「俺かよ」

 まぁ、エレディミーアームズ時代。俺の真似をしてこいつがあだ名をつけたら中々に悲惨なキラキラネームすらなまぬるい事になったからな。英断かも知れない。

「そうだな」

 といっても、いきなり振られてもな。
 左右一対の鳥。左右か。
 ふと、頭に思い浮かんだのは寄生獣という漫画だ。右手だからミギー。
 よし、オーケー。

「こっちミギー。こっちがヒダリーだ」

 いつも通り本人(?)以外の苦情は受け付けない。エリカからも特に異論はないようだしな。……いや、まて。このままだと、こいつらは異論が言えないんじゃないか?

「エリカ。ミギー達って、契約結んでるのか?」
「ううん。フロムさんはマサヨシに契約を結んでもらえって」

 うーん。
 いや、確かに【契約魔法:召喚契約】で他人の召喚契約は可能なんだ。仕様上ではな。
 だから、フロムさんもそう言ったのだろうが。

 ぶっちゃけ、やった事がないので自信ないです。

 や、だって必要なかったしね。まぁ、駆け出しの召喚魔術師はそういった第三者の契約を仲介して小遣い稼ぎしてるそうだが。俺、金に困った事ねぇし。

 【契約魔法:権限委譲】があるから、俺が契約してそれをエリカに移動させるのは出来るが。

 ……雛だしな。【神:進化の導き】に耐えられるといいんだが。

「マサヨシ。契約はやく結んでー」

 エリカにせかされた。
 まぁ、やばそうだったら打ち切ってフロムさんに改めてやってもらうとするか。


 【契約魔法:召喚契約】

 そして、即。

 【契約魔法:権限委譲】


 うむ、無事に成功――、のはずだが、変だな。
 モノバードの外見に変化がまったくない。【神:進化の導き】の影響が出てない?


 気になったのでステータスを見てみた。


【無:ステータス解析】

 名前:ミギー&ヒダリー
 種族:モノバード(幼体)

 生命力:5/5
 精神力:7/7
 体力:6/6
 魔力:6/6

 筋力:1
 耐久力:2
 知力:5
 器用度:5
 敏捷度:4
 幸運度:2

 スキル
  【種族:密着】
  【種族:思考共有】
  【特殊:進化の道筋】

 召還契約主:エリカクラウゼン




 うん?
 【特殊:進化の道筋】ってなんだ?


『恐らく、進化するには幼すぎると本能的に判断したのでしょう。スキルという形で保留していると思われます』

 ヘルプさんの解説に俺は首を捻った。
 そんな真似が出来るのなら、俺の契約魔物の中でも少しくらいは同じ事をやっていそうなものだが。特に家具ズ(めんどくさがり)あたり。

『やろうと思って出来るものではないかと。これは、この子達の才能と言っても過言ではないと思われます』


 うぇーい。
 将来有望って事ですな。

「良かったな、エリカ。ひょっとしたらユニーク個体もありえるかも知れないぞ」
「そうなったら、一緒に空飛べるの!?」
「いや、それはどうだろうな」

 こいつ、自分の飛行速度自覚してるのか?
 いくら、鳥の魔物とはいえ、音速(マッハ)につき合わせないか心配だな。

「強くなれよ」

 俺はミギーとヒダリーの頭をなでてやる。
 目を閉じてされるがままなのがかわゆい。
 ん? スーちゃんが足元をつんつんしてる。……妬いてる?

「別に戦わせるつもりはないよ?」

 お前に付き合わせる日々がある意味戦いだ。
 その意味では波乱万丈を約束された不憫な子達なのかもしれない。

「ハリッサ達に見せびらかしてくる。みんなはどこ?」
「たぶん食堂のはずだ」

 ハリッサさんが飲みなおしとか言ってたからな。他の人もハリッサさんを放置しておかないだろう。
 カイサルさんは避難している可能性アリ。もっとも、ハリッサさんの世話から逃れられても、クロエさんからは逃げられないだろうけど。
 ちなみに人族とドラゴン族でも、いたしたらデキるらしい。
 いや、深い意味はない。

「行ってくる」

 エリカが駆け出していく。

 家の中で走るな!
 まったく。

 俺もみんなの反応が気になるので、エリカを背を追っていった。

i219707
面白い作品だと思って下さった方は、ブックマークをして下さると励みになります。
また、下をポチって下さるとありがたいです。もちろん、面白いと思って頂けたらです。
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ