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スーちゃんは俺の嫁 作者:赤砂多菜

一章 無限の供給炉

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25.作戦会議をしましょう

25.作戦会議をしましょう





「ちょっと待つっす。そもそもリガスはいつからゴブリン達の事を知っていたっすか?
 商人ギルドの手続きが済んでるって事は、森に出向く前にもう畑の事を知っていないとおかしいっすよね?」

 ハリッサさんの疑問はもっともだったが。
 推測は――まぁ、出来るな。

「それは、人型魔物の噂が出たあたりじゃないかな?」
「たぶんニコライさんの言う通りだと思います。シルヴィアさんによると商人ギルドが報酬を出し渋っていた為に、適性なランクに依頼を出せなかったようで。その人型魔物の発見報告から随分と時間が空いてしまっているみたいです」
「そこらが、商人ギルドの作為的なものかどうかは不明だが。恐らくリガスはその人型魔物を見たFランク冒険者から直接話を聞いたんだろうな。金の匂いには敏感な奴だ。人型魔物の正体もゴブリンだとあたりをつけていたんだろう」
「でも、団長。いつ畑の事を知ったんですか? 話じゃ、森で遭遇して相手の顔を見たぐらいって事ですが」
「当然、アルマリアの森に斥候を放って調べたんだろうな。そして、そこで村と畑を発見しちまったんだろ」

 いや、だが村には結界があったはず。

「ちょっと待って下さい。村に結界があって、冒険者ギルドの年一回の調査もそれでやり過ごしていました。Fランク冒険者に発見されたのは結界の外です」
「結界か。結界魔法にもいくつか種類があるが。特徴は分かるか?」
「特殊系統のスキルによるものと聞いてます。魔物の進入を防ぎ、人を惑わせ、結界内の魔力を薄める効果があるそうです」
「人を惑わせ、か」

 カイサルさんは物憂げに手のひらで顔をする。

「恐らくそれじゃ厳しいだろうな。もちろん、結界の強度にも左右されるだろうが、基本幻惑タイプの結界じゃ、目的がはっきりしている相手には効果が低下する。何も知らずに森の奥に入った奴ならともかく、ゴブリンの集落があるだろうと当たりとつけた連中相手では厳しい。
 それにゴブリン達は結界から外にはでていないのか? Fランク冒険者が発見したのは結界の外なんだろう?」
「確かに結界の外に出ています。彼らは生活を維持する為にある野草を必要としています。それは結界の外でしか手に入りません」
「恐らく、奥地周辺で張っていたんだろうな。そして、その結界の外に出たゴブリンの後を付けたんだろう」

 確か、結界は人が通ると一時的に効果が薄くなると言っていた。
 だがしかし、果たして村に他種族が侵入して、村人達がそれを見逃すだろうか?
 俺の疑問が言わずとも伝わったのだろう、カイサルさんが。

「スカウト系統の職業には認識阻害の効果のあるスキルがある。
 ハリッサ、お前も使えたろ? 実演してみろ」

 水を向けられたハリッサさんが慌てる。

「はにゃ!? い、いや。いきなりやれと言われても。こんな集中して見られた状況で効果なんて出ないっすよ」
「わかってるって。ほらよ」

 カイサルさんは真上に向けて何かを放った。それは銀貨だった。
 天井スレスレまでとんだそれは再び、カイサルさんの手に収まった。

「え!?」

 ハリッサさんが姿が消えていた。部屋を見渡してもどこにもいない。あんな短時間で隠れた?
 これが認識阻害のスキル!?

 スーちゃんから、彼女が座っていた椅子の後ろに注意するよう促される。

「うーにゃー」

 その声と共にハリッサさんは姿を現した。彼女はただ、自分が座っていた椅子のすぐ後ろにいた。隠れてすらいなかった。
 スーちゃんには見破られていたようだったが、俺はまったく術中にはまっていた。

「Cランクのスカウト系なら、下っ端のCランクマイナスとか言われてる連中じゃない限りは、これくらい使えるっす」

 ドヤ顔で胸を張るハリッサさんだが、ドヤ顔するだけの事はある。
 これじゃ進入されても、発見は困難だ。
 あるいはユニーク職業である結界師。エトムント村長やエステルなら見破る術をもっていたのかも知れない。だが、彼らは普段野草取りをしていた人達が怪我を負っていた為、定期的に村を出ていたはずだ。結界師ならエドガー君もいたが、あの子はまだ未熟だった。


 もしも、俺が村へ行くのがもう少し早ければ、スーちゃんがそいつらを発見出来たかも知れない。
 もしも、俺が村へ行くのがもう少し遅ければ。あるいは村を出るのを後一日伸ばしていれば、村を守る事が可能だったのかも知れない。

「マサヨシ。もしなんて下らない事を考えてるようだったら、これからの事を考えろ」

 顔に出ていたのだろう。カイサルさんに釘を刺された。

「それと、これは酷な事を聞くようだが。村人の死体は――」
「全員じゃありません」

 カイサルさんの言いたい事を察して、俺は言った。
 明らかに死体が少なかった。
 気付いてはいたが、あの時はそれ以上に死体を見て頭に血がのぼって、その事が頭から消えていた。
 カイサルさんは村の規模や、建物の数とかで判断したんだろう。

「土地だけ取っても、せいぜい得られるのは、今なっている作物だけだ。そんな一過性のものにあんな真似をするには割に合わない。奴の狙いはゴブリン達がもってる農業のノウハウだろうな。ついでに犯罪奴隷扱いで労働力としてもこき使うつもりだろう。たぶん、どこかに生き残りのゴブリンを集めてスキルで隠しているんだろう」
「うーにゃ? それだとあの殺された人達はどうなるっす? 殺してしまったら、――えーと、確かニーナさんっすよね。この人のように死者の声が聞けないかぎりはノウハウが手に入らないっすよ?」
「見せしめ、だろうな。なんせ、村人の数が多い。団結して反抗されたらやっかいだ。なら、まず恐怖を植え付ける。俺達に逆らったらこうなるぞ、と。後でこき使う為の布石でもあるんだろうな。胸くそ悪いが理には適っている」

 ()()か。

 カイサルさんは頭を掻きながら、頭を悩ませている。

「なんとか、リガスの論理(ロジック)を崩さにゃならん。リガスがあくまで合法の立場をとってる限り、うかつに手をだせばアルマリスタそのものを敵に回しかねない。だが、リガスの立場を保障してるのは商人ギルドだ。くそっ、本来ならこんな時にこそ奴を頼りたいんだが――」

 奴? そういえば、リガスの仲間達の一人とは知り合いのようだったけど。
 確か、名前は――。

「ブラートって人と話してましたよね。知り合いだったんですか?」
「ああ。奴は《オモイカネ》じゃなく生粋の商人だ。まぁ、付き合いがあったのは奴の上司の方だったんだがな。
 冒険者駆け出しの頃のいわゆる同期って奴だ。もっとも、あいつは商人のほうが向いてたようで、すぐに鞍替えしちまったがな。出世が早かったから、まぁ選択は正解だったんだろうな」
「その人を頼る事は出来ないんですか?」
「ブラートが言っていただろ。奴でも反対できないって。本来のあいつならあんな所業を見逃しはしない。幹部クラスの奴だから、商人ギルドでもあいつの意思をねじ伏せれられる時点で、もうリガスが誰を抱きこんだのかはっきりしている」
「誰です」
「ギルド長だ。商人ギルドのマスター権限者。マスター議会で議題に出せるって話からも間違いない。相手が相手だ。いくら奴でも単なる感情論や同情の類で動ける相手じゃない。リガスがアルマリスタの法の内側にいる間はな」

 商人ギルド長。つまりは本当に商人ギルドそのものが俺達の相手。
 各種ギルドの長は街の(まつりごと)もつかさどる。カイサルさんの言った、アルマリスタそのものを敵にまわすってのは、決して大げさな言い回しではない。
 なんてこった。

 と、スーちゃんがコンタクトを取ってきた。

 ん? 何? 名刺?

 一瞬何の事か分からなかったが、すぐに思い出す。
 そして、収納ポーチからその名刺を取り出した。

 このハウスさん家の土地と、ハウスさんの本体である家屋を買ったとき、担当だった商人ギルドの人の名刺だ。
 だが、相手はギルド長だ。一介のギルド員にどうこう出来るとは思えない。そもそも名刺を渡したからって、俺達に協力する義理もないのだ。

 だが、俺が取り出した名刺をカイサルさんが凝視していた。

「マサヨシ、それちょっと見せてみろ」
「え? あ、はい」

 それを受け取ったカイサルさんは、真剣な表情でそれを見ている。

「マサヨシ。この名刺、どこで――いや、どうやって手にいれた」
「この家を土地ごと買った事は話した事ありますよね。その時の商人ギルドの担当の人からもらったんですけど? もしかして、その人とも知り合いですか?」
「知り合いも何も。これは奴の名刺だ。ラヴレンチ。ブラートの上司で、かつて冒険者ギルドで俺と同期だった奴だ」

 え? まじで?

「でも、結局ギルド長相手には逆らえないんですよね?」
「基本的にはな。だがな、これでちょっと風向きが変わったぞ」

 カイサルさんは俺に名刺を返した。それを収納ポーチにしまう。

「商人の名刺ってのは、ただの自己紹介で渡すもんじゃねぇ。それが借りか貸しかはともかくとして、『これを持つ者は俺と縁を持っている奴だ』って証明だ。
 奴と繋がりのある商人に対しては、間接的に紹介するようなものだし、商人の名刺を持ってるってのは、それだけで信用になる。
 普通はたった一回取引しただけの相手に渡すもんじゃない」

 特に気にする事もなく受け取ってしまったけど。重要なものだったんだな。

「反面、その信用を利用して悪さをすれば、名刺の商人の信用低下につながる。商人の中には名刺を悪用した奴に殺し屋を向かわせる者もいるくらいだ」

 うぇーい!
 なに!? その怖い風習は!!?

 でも、風向きが変わったってどういう意味だろ。

「商人ギルドの(ルール)として、ギルド員で邪魔をし合わないというのがある。
 お前がラヴレンチの名刺を持つ以上、奴の得意先という事になる。ギルド長の権威に逆らう訳にはいかないが、奴の商人としての行動には水をさすことが出来ない。
 ギルド長も商人である以上、商人ギルドの(ルール)には逆らえない」

 えーと。つまりはどういう事?

「リガスがアルマリアの森の仮保証人になっているのを支えているのは二つ。
 商人ギルド長があの土地の管理を次のマスター議会において、議題に出す事。もう一つはリガスがあの土地の管理人になる為に、多額の保証金を積んでいる事。
 どちらか、一つを。出来れば両方の論理(ロジック)を崩したい所だが――」

 カイサルさんはニーナさんを見る。ちなみに彼女の顔は髪が覆って、隙間からぎらぎらした目だけが覗いている。怖い……。
 ハリッサさんやニコライさんも引き気味だ。

「賢者ギルドのお嬢さん。次のマスター議会で、商人ギルドの出す議題に賢者ギルド長がどうでるか、予測出来るか?」
「はい」

 ニーナさんは頷いて、髪を掻き分けた。顔があらわになる。顔は普通なんだから普段からそうしようよ。

「賢者ギルドは、今回の非道な行いに組みする事はないと断言します」
「断言? あんたが?」
「はい。死者の魂に誓って」

 出来れば別のものに誓って下さい。お願いします。

 まぁ、ニーナさんはユニーク職業だ。受付穣とはいえ、なんらかの特権を持っている可能性は十分に考えられるだろう。

「他のギルドに伝手はねぇからな。例え賢者ギルドがこっち側でも、リガスの奴が他を取り込む可能性も考えられる。確実とは言えないな。
 もう片方の方を潰すほうが正解なのかも知れないが――」

 リガスの積んだ多額の保証金。つまりは。

「金ですね」
「そうだ。あいつは冒険者であり、商人だ。事、金儲けに関しては俺達よりもはるかに上だろう。どれだけ溜め込んでいたのか。そして、今回の事に対してどれだけ張り込んだのか。正直みえん。
 理屈上はこちらが、リガスより金を積めばいい。だが、小出しにして金の積み合いになるのはまずいんだ」
「なぜですか?」
「状況が長引くと、冒険者ギルドと商人ギルドの対立という構図が目立つ。真実がどうとかはこの際問題じゃない。アルマリスタの2大ギルドが割れたら、街は大混乱になるだろう」

 カイサルさんは、パシっと自らの手のひらで拳を受け止める。

「一撃だ。出来れば奴に反撃不能な額を積みたい。だが、金を集めるのも問題だが、奴がどれだけ積めるのか。その限度額が読めない。
 今のままじゃ、底なし沼に金を放り込むようなものだ」

 確かに青天井で金の積み合いなんて真似はしたくない。福本伸行の漫画じゃねぇんだから。

「少し席を外していいですか?」
「マサヨシ?」
「ちょっと一人になって頭をまとめたいです」
「そうだな。ちょっと、休憩いれようか」

 俺が席を外すのを良いタイミングと見たのか、カイサルさんの提案で休憩タイムになった。

 俺はハウスさんに頼んで、皆が望むなら空き部屋や食べ物を提供するようにお願いして、ハウスさん家の俺の部屋に入った。
 俺の部屋と言っても滅多に使った事はない。だいたい剣の休息亭泊まりだったからな。
 俺はベッドに横になった。


 実のところ、金のあてはある。より正確には金を生み出す力。
 そう商人の顔を持つリガスが金に強みを持つのなら、冒険者一本である俺達が勝るのは力だ。魔物を倒す力。苦境、逆境を切り開く力。

 そして、俺はユニーク職業というさらに大きな力を持つ。そして、さらにもう一つ、そこに上乗せ出来る力。


 俺は召喚師強化パック(・・・・・・・・)という言葉に意識を集中する。


 光のスクリーンが現れ、そこには前と変わらぬ一覧が出ている。
 どれが正解だ?
 どれがもっとも即戦力になる?

 以前は否定した生贄型も、あえて近視眼的に見れば魅力的に思えてくる。


 分からない。どれが正解か分からない。

 選択出来ない(・・・・・・)

 俺はまた(・・)後悔したりしないだろうか?



≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫


 俺が悩んだまま光のスクリーンをそのままにしていると謎お告げが催促して来た。

 なんだ? 前の時は何も言って来なかったのに。制限時間でもあるのか?

 勝手に選択される風でもなかったので放置する。


≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫
≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫
≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫
≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫
≪召喚師強化パックの選択肢を選択して下さい≫


 延々とエンドレスに催促が続く。
 おかげで考えがまとまらない。どころか、催促の言葉で頭が埋め尽くされていく。

 いい加減にしてくれ。俺は思わず叫んでいた。

「やかましい!! だったら力をよこせ!! 確実に強くなれる、確実に奴を、リガスを潰せる力を俺によこせよ!!!」

 叫びながら、我ながら無意味な事を言ってるのは分かっていた。
 この謎お告げは召喚師強化パックの選択肢の催促をしているだけだ。
 そこに何の意思もなく機械的な繰り返し。そこに文句を言ってなんになる。


 だからこそ、次に起きた事が理解出来なかった。


≪召喚師強化パックがキャンセルされました≫
≪丸井正義が要請を行いました≫
≪管理者神明が丸井正義の要請を優先度最上位で受諾≫
≪召喚師強化パックが召喚師強化パック(改)に変更されました≫
≪管理者神明が丸井正義にメッセージを送りました≫


今のは実績――じゃないよな?
確認の為にステータスを表示する。


【無:ステータス解析】

 所有
  召喚師強化パック(改)
  神明からのメッセージ

 実績
  職業パックを使用
  召喚師
  連携を意識
  はじめてのダンジョン
  慈悲をかけた


 実績は変っていない。だが、所有が変っていた。
 俺は神明からのメッセージを実行した。


 正義様の自由な選択を奪うのは心苦しかったのですが、早急な力が必要との事でしたので召喚師強化パックを改変させて頂きました。
 現状、私どもにおける最上のものと自負しております。ただし、少々リソースの消費が大きかった為、しばらくバックアップ出来そうもありません。
 申し訳ございません。
 ご武運を祈っております。


 神明って、確かこの世界の神様の名前だよな?
 いや、あくまで神明教の唯一神の名前か。この世界では神明教が主流だが、他に宗教がない訳じゃないんだよな。……神明教がぷちぷち潰してるって噂だけど。

 で、だ。なんで、神様からメッセージが届くの?
 バックアップって何? もしかして、職業パックとか実績って神様の仕業だったの?
 うぇーい? なぜに?
 俺、神様に知り合いいないよ?

 頭のネジが2、3本とんだような感じだ。
 ああ、もうどうにでもなれ。

 召喚師強化パック(改)を実行した。
 光のスクリーンに浮かんだのは――。



 万能兼超召喚型 選択されるまで後 59秒



 選択肢ですらねぇ!?
 というか、その何でもあり感な名前はいったいなんなの? それはありなの!?
 ねぇ、神様。それでいいの!!?


 カウントの数字はどんどん減っていく。
 俺はなす術もなくカウントを見守るしかない。
 だって、キャンセルすらねぇし。

 3
 2
 1

≪召喚師強化パック(改)を開始します≫

 その謎お告げを最後に俺の意識は闇に沈んだ。

i219707
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