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スーちゃんは俺の嫁 作者:赤砂多菜

一章 無限の供給炉

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21.不穏な気配

21.不穏な気配





 お茶そのものは、試したとかの意図はなかったらしい。ただ、毒が盛られていないか警戒されると思っていたとの事。

 どんだけ猜疑心強いんだ。

 ……とか、思ってみたものの。たぶん、それだけ怯えて生きてきたんだろうし、苦労もしたんだろう。
 実際、殺された人もいると言う事は一概に被害妄想とまでは言えない。
 この農業の概念が薄い世界において、あの畑の状態までもっていった努力を考えると、異世界から来たとはいえ、お気楽な生活を送ってきた俺に、何か言える気もしない。

「いくつか、質問いいですか?」
「どうぞ」

 落ち着いた口調のエトムント村長の目に覚悟の光が。
 あー、これ。選択肢間違えたらバッドエンドなヤツだな。
 デッドエンド(俺が死亡)ジェノサイド(村人皆殺し)かは分からんけど。

 とりあえず、選択肢が来る前に聞ける事を聞いておこう。

「アルマリスタでは年一回、森の調査をしているそうですが、なぜ今まで発見されなかったんですか?」

 もし、口封じに殺しても、調査依頼を受けた冒険者が戻らなかったら不審に思うはずだ。

「ああ、それは結界のせいですね。普通は結界に近づくと方向感覚を狂わされて、ここまでたどりつけないようになってます」
「結界は魔物の出入りを防ぐためのものと聞きましたが」
「それも結界の機能の一つです。魔物の進入を防ぎ、誰かに発見されないように隠蔽し、そして結界内の魔力の消費」

 魔力の消費?

「最後のは結界の維持の為でもあるのですが、同時に濃すぎる魔力を薄め我々に害のないレベルにまで落とす為です」
「なるほど。魔力の濃いはずの森の中に村があるのは疑問に思ってはいたんですが。でも、そんな都合の良いスキルがよくありましたね」
「元々、我々一族は結界魔法を使う職業である結界魔術師が多かったのです。そのせいかどうか、儂らの家系にはユニーク職業に就くものが多かったのです」

 ユニーク職業!?

「ユニーク職業って血筋関係あるんですか?」
「分かりません。ただ、事実として儂も、そして孫の二人もそのユニーク職業である結界師。そして、結界師のスキル【特殊:多機能結界】によってこの村は守られてきたんです」

 なるほど、スーちゃんが感じた嫌な気配はスキルによるものか。
 しかし、天然記念物扱いに近いユニーク職業の血筋ね。
 ん? あ、嫌な事思いついた。

「あのー。そのユニーク職業になる人が出始めたのはいつからですか?」
「正確には分かりませんが、街から追い出される前からのようですね」

 俺の質問の意図を理解しているのだろう。エトムント村長は頷いた。

「可能性はありますね。ユニーク職業の血筋の秘密を得る為、あるいはスキルの恩恵を得る為に街を襲った。ですが、それを知るすべはありませんし、今となってはどうでも良い事です」

 そう言ってエトムント村長は苦笑した。
 この人も気付いてはいたんだろうな。いや、部外者の俺がすぐに気付くんだ。当事者が気付かないはずがない。だが、確かに今さらだ。もはや、糾弾すべき相手も、責任を取るべき相手もいないのだから。

 話を変える事にする。

「お孫さんが結界の外にいた理由は? そもそも俺がここに来たのは、あなた方の誰かの姿を見られたせいだと思いますが、心当たりは?」

 エトムント村長は渋面になる。
 なんだ? 何か知られたくない事に触れちゃったのだろうか?
 フラグ(背後からブスッ)とかじゃないよね?

「我々は基本的には結界の外には出ません。職業が結界師以外の者が結界を通過すると一時的に、結界のその部分の効果が低減するからです。
 ただ、どうしても結界の外に出なければいけない時があるのです。それはある野草の採取です」

 野草……て草だよね? なんだろ。薬草の類なのかな?

「村をご覧になられたと思いますが、我々は農耕で暮らしております。ただ、その弊害というべきか、ここに移り住んだ時から、筋力が大幅に低下してしまったのです」

 うーん。もしかして、野菜だけの生活なのかな? タンパク質とれないよね。
 筋力の低下。大した事のないようにも聞こえるけど、農耕で食っている身では死活問題だ。

「家畜とかはいないんですか?」
「それも過去に案としては出たのですが、森の中の獣は凶暴でして」

 うん。なにせ、魔物がいる中で生きていけるくらいだしね。

「森の外といっても、我々は街に入れないので、街で買う訳にはいきません。例え野生の獣を見つけたとしても、今度は森の外から、村まで生きたままどうやってつれて戻ってくるのか」

 確かに。それに食肉用ならある程度同種の動物を数多くそろえないといけないよね。

「それで、筋力低下を補える方法を模索した結果、森の中に自生しているある野草に筋力低下を防ぐ効果がある事を発見したのです」

 野草にタンパク質があるとも思えないけど。なにか薬効的成分でも含まれてるのかな?

「それ、村で栽培する訳にはいかないのですか?」
「それが、どうやら濃い魔力の中でしか育たないようでして、実際試してみたのですが、結界の内側ではどうしても育つ前に枯れてしまうありさまで。定期的に取りに出向かないとならないのです。
 ただ、結界の外は危険ですので、魔物よけや獣よけの類の結界魔法の使い手がその野草を取りに行くのですが、まれに魔物よけが通じない魔物と遭遇したりする事もあります」

 スーちゃんも村の結界を突破してたしな。いても不思議ではない。

「先日もその類の魔物に襲われて、運が悪い事に固まって行動していた為、集団で怪我を負ってしまったのです。命に別状こそないものの、当分は野草を取りにいけそうにないので、儂のような老人や、エステルなどの子供まで野草取りに出る事になったのです。
 ただ、エドガーは職業こそ結界師であるものの、まだスキルの扱いが未熟ですので、野草取りから外していたのですが。……あれで、責任感の強い子で」

 自分も野草取りに出ちゃったと。エドガー君良い子じゃん。5うぇーいぐらいあげちゃうぞ。でも、自分の身も守れないのに、危険なところへ行くのはダメだぞ。スーちゃんに守られっぱなしの俺が言うのもあれだが。

「恐らく姿を見られたのも、その中の一人でしょう。普段から野草を取っている訳ではなかったので、自生している場所が分からずかなり遠くまで行ってしまったようで。その者の中で、見知らぬ誰かと遭遇した話を聞いています。村から離れた場所でありましたし、あまり重要視してなかったのですが」

 いや、その目はやめようよ。
 隠してるつもりなんだろうけど、その『冥土の手向けに全てを教えてあげよう』的なやつはさぁ。
 俺、泣いちゃうよ?

「で、俺をどうするつもりです?」

 もう、いっそ自分から聞いちゃおう。彼らの良心ザックザクな音が耳に響く。いや、もちろん心情的にだけど。
 俺の言葉にエトムント村長は少し迷ったようだが。

「どうやら、察しておられるようですので正直に言います。孫の恩人にこのような事を言うのは心苦しいのですが……。一生、この村から出ないで頂きます。さもなくば」

 エトムント村長以外が立ち上がった。エステルもだ。だが、全員の顔色が悪い。武器こそ抜いていないものの、罪悪感にさい悩まされているのだろう。……エステル以外は。

 エステル、君は周りを見習え。なんでそんな平気そうなんだ。というかなんで殺るなら私がってオーラを放ってるんだ。
 おじいちゃん、あなたのお孫さん。教育に問題ありませんでしたか?

「俺がこの村の存在を黙っている。それではいけませんか?」
「儂としてはそれを信じたいです。ですが村の長として、何の根拠もなく信じる訳にもいかないのです。申し訳ない」

 心から搾り出すような言葉に、俺はため息をついた。
 エトムント村長の言葉も分かる。自分一人がどうこうなるのならいいだろう。だが、もしも村全体に悪意の波が押し寄せる可能性があるとしたら? 俺がエトムント村長の立場ならどうする?

 ………………。
 ごめん、分からん。やはり、こういうのは同じ立場に立たないと分からないよね。
 と言う事で俺は俺の立場に立って行動する事にする。

「担保を渡す。それではダメですか?」
「担保……ですか?」

 エトムント村長が不思議そうに首を傾げる。確かにこの状況で担保になるような物なんて、普通はないだろう。

 物ならな。


【召喚魔法:召喚】


 建物の外から悲鳴が聞こえる。スケルトンアーミーを数体呼び出したからな。
 一人が扉から外を見る。

「なんだ、この大勢のスケルトンは!?」

 ……大勢?
 俺が召喚したのは数体なんだけど?

 俺は席を立って扉に向かう。外が気になるのか、俺の行動を邪魔するものはいない。

 うぇーい!!?

 ちょ、なんで広場にぎっしりとスケルトンアーミーが並んでるの!
 うわっ、ゴブリン達がすっげぇ怯えてる。子供も泣いてるよっ!!

 お前ら、ちょっとそこに正座!

 正座するスケルトンアーミー一同。

 俺が呼んだのは数体だけのはずだけど?

 何? 暇だった? 個別指名じゃなかったから、それに乗じて来た?

 意外に器用な事するな。……じゃなくて、状況考えろよ、TPO(時と場所と場合)だよ、TPO(とってもピンチな俺)!!

 威嚇のつもりじゃなかったんだけどなぁ……。仕方ない。
 俺はすぐ隣に来ていたエトムント村長に向き直った。

「心配いりません。全部、俺の契約魔物です」

 まぁ、正座してる時点で俺の支配下にあるのは一目瞭然ではあるのだが。

「こ、これを貴方が!? しかし、ありえません! いかに召喚魔術師であってもこの数を同時に召喚など不可能なはず。いや、それ以前にこの数の魔物との契約など――」
「俺は召喚魔術師ではありません。お孫さんにはそう説明しましたが、トラブルを避ける為の方便でした。本当の俺の職業は召喚師(・・・)です」

 召喚師の部分をエトムント村長に噛んで含めるように言う。

「召喚師……ですか?」
「そうです。結界師と同じユニーク職業です」

 ストンとエトムント村長の腰が椅子に落ちた。座ったというよりも腰が抜けた感じだ。

「マサヨシ殿もユニーク職業?」
「はい、ただ俺がユニーク職業なのは冒険者ギルドに知られているので、担保になりえません。なので俺が周囲に秘密にしているものを明かそうと思ったのですが。すいません、やり過ぎたようです」

 まさか、暇な連中が遊び気分で来ましたとも言えん。
 ちなみにスケルトンアーミーは正座続行中。ただ、スケルトンに正座が有効かどうかは知らん。……後で感想聞いてみよう。

「このスケルトンが秘密ですか?」
「正確にはスケルトンに武具系の魔物を装備させているのですが。まぁ、重要なのはそこではなく、俺はこれを3桁レベルで契約を保有しています。そして、全て同時に召喚できます」

 実演する気はまったくなかったけどな!
 そして、こいつら。これでもまだ一部なんだよな。全員じゃなくて良かったよ。

 ん? ゲートさん? どしたの?
 え? 全員が来そうだったので慌てて止めた?
 まぢで!? グッジョブだ、ゲートさん!
 そして、ケンザン。貴様は中間管理職失格。後で正座な!

「確かにこのような事が出来る事が公にされたら、本人の本質とは無関係に危険人物として扱われるでしょうな」

 エトムント村長の理解が早くて、この状況では後光が見える。
 元よりスーちゃんだけでも過剰戦力な俺。これにケンザンにスケルトンアーミーも加えたら、アルマリスタを攻め落とすのも、決して不可能じゃない。
 他にもハウスさんやら、ゲートさんの存在もなかなかにアウト(致命的)

 カイサルさん達ですら、一部を知っているだけだ。

「俺の秘密は担保にはなりえませんか?」

 お互いの秘密を握りあう。悪くない条件のはずだ。
 エトムント村長がうなる。感触は悪くない。ついでだ。もう一押しといくか。

「この村に他人のステータスが見られる人はいますか? 魔法具でもいいのですが」
「ステータスをですか?」

 野草の話で筋力の事が触れられていた。まぁ、筋力の低下自体は力仕事をしていれば実感としては分かるかも知れないが。筋力低下が野草で防げると断定出来たのは村人のステータスから判断したのではないかと思う。まぁ、その野草自体の効果を調べるスキルの存在も否定出来ないけどね。

「儂が【無:ステータス解析】というスキルを持っております。これで他人のステータスを調べる事が出来ます。相手の許可が必要になりますが」

 おお、エトムント村長がもってるとは。これ以上ない良い流れだ。

「許可しますから、俺のステータスを見て下さい」
「しかし、マサヨシ殿がユニーク職業なのは、あのスケルトンの集団を見れば分かりますが」
「俺のステータスを見てもらえば、きっと納得してもらえますよ」

 しばらく俺を凝視していたエトムント村長の表情に、変化はすぐおとずれた。

「ありえない」

 エトムント村長は、蒼白になって首を横に振った。
 そう、ありえないんだよね。言葉そのままに。
 ステータスの項目のうち、現在値と最大値を持つ項目は限度が999。3桁までだ。
 それはもう神の使いや悪魔の類ですら例外ではない。

 例えばの話だ。バケツでプリンを作ると自重で潰れる。よく何かのネタに使われるあれだ。元の世界ではチャレンジした猛者が、潰れたプリンで床をメチャメチャにした為、そのアパートでは、その後に契約書でバケツプリン禁止の項目が作られたくらいだ。
 しかし、実際に無理なのかといわれると、そうでもない。工夫次第では作れなくもない。もちろん食べられるものだ。食べられないものはプリンと呼ばない。

 だが、そのバケツが直径も高さも1キロメートルだったらどうだ? くじらだって陸に打ち上げられたら自重で内臓が圧迫されて死に至るくらいだ。容器をひっくり返し、形を維持出来るようなら、もはやその存在は食べ物ではありえない。

 つまりどういう事かというと、俺がその直径高さ1キロメートルの容器で作られたプリンだという事だ。
 世界の常識どころか法則レベルでブッチギっちゃってます。俺の魔力。
 まだ何も知らない内に誰かに話したりしなくて、本当に良かったよ。図書館で事実を知った時は冷や汗ものだった。

「おじいちゃんに何をしたの!?」

 どうも、俺がエトムント村長に何かしたと思われたようで、エステルがかけよって来る。だが、それをエトムント村長自身がさえぎった。

「大丈夫だ、エステル。そして、皆も落ち着きなさい」

 そして、世界の秘密レベルのものを見ちゃったのに、気丈に平静を装い俺を見る。
 スゲーよ、この人。まじ尊敬する。俺が年取ったらこの人みたいになれるのか?

「今見たものに関しては儂が墓までもっていきましょう。決して他言はいたしませぬ。たとえ、この場にいる同胞であっても」

 そして、エトムント村長は周りを見渡して宣言した。

「儂は彼を。マサヨシ殿を信用する。これはエトムント個人ではなく村の長であるエトムントとしての言葉だ。異議のあるものは口にするがいい」

 その気迫を前に誰一人として異議を口にしなかった。あのエステルですら。






 結局、俺は村の客人として迎えられた。もちろん、帰してももらえる。
 ただ、やはり今後の事に関しては相談する事になり、俺はこの村に数日滞在する事になった。また、他の冒険者と遭遇しないとも限らないからだ。
 アルマリスタには、ハウスさんの【特殊:空間接続】(どこでもドア)があればすぐに帰れるしね。


i219707
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