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連悪幻夢

きんきんきらきら

作者: DirtyTom

 


 これはとある小学校に言い伝えられているお話です。


 『夕日』という曲をご存知でしょうか。

 ぎんぎんぎらぎら、という歌い出しで始まり、真っ赤に輝く夕日が沈む様を、のどかに緩やかに歌い上げた童謡の名曲です。

 替え歌も多く存在し、曲名は知らなくても、どこかで誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 また、きんきんきらきら、と歌われていた時期もあるそうで、これはその頃のお話なのかもしれません。


 その男の子のクラスでは、発表会で『夕日』のお遊戯をすることになっていました。

 お碗の形にした両手を頭上に掲げ、きんきんきらきら、の調子に合わせて、手首をくるくると回すのです。

 簡単な振り付けでしたが、男の子だけそれがうまくできませんでした。

 他の全員ができることなのに、何度やってもその子だけが上手にできません。

 しだいに先生は、その子がわざとふざけているのだと思うようになってきました。

 とうとう先生は怒ってしまい、「できるようになるまで練習してなさい」と言って、職員室へ行ってしまいました。

 先生としては不真面目に見えるその子の様子にあきれてしまって、何の気なしに口走ってしまっただけだったのですが、根が真面目な男の子はそれを真に受け、授業が終わってからも教室に残って、一人でお遊戯の練習を続けていたのです。

 クラスのみんなが帰ってしまっても、男の子はいつまでも練習していました。

 先生が許してくれるのを待って、暗くなってからも、泣きながらずっと。

 そんなことなど思いもしなかった先生は、仕事が終わったら当然のように帰宅してしまいました。


 先生の家にその子の親から連絡があったのは、夜遅くなってからでした。

「うちの子がまだ帰ってこないのですが心当たりはありませんか?」

 友達の家にはすべて聞いて回ったそうですが、誰もが知らないと答えるだけでした。

 一人の生徒が、そういえば先生に居残りさせられてお遊戯の練習をしていたかもしれない、と教えてくれたそうです。

 驚いた先生が慌てて学校へ向かうと、そこには見るも無残な姿に変わり果ててしまった男の子の亡き骸がありました。

 明かりもつけずに練習をしていたため見回りの人にも気づかれず、その後やってきた泥棒に見つかり教室で殺されてしまったのだそうです。


 それからです。

 夜、校舎の横を通りかかると、教室の窓からそれが見えるようになったのは。


 お碗の形をした小さな手がくるくる回りながら、きんきんきらきら、と……







                            了



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