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初めて投稿します。至らない点も多々あると思いますが、これを読んで、何か感じて頂けるものがあれば幸いです。
キセキ
作:大河 悠


あなたは奇跡を信じますか





「は?」
「だぁから〜、『あなたは奇跡を信じますか。』YES?NO?」
俺がYESと適当に答えると、明美はまた雑誌に目を戻して、次の質問を投げかけてきた。俺は次々に投げかけられる質問に、漫画を読みながら、全部適当にYESと答えると、
「もう。相性占いなんだから、真剣に答えてよ。」
と明美が頬を膨らました。


正直、奇跡なんて、クソッタレと思う。奇跡なんておこるのなら、世の中に俺みたいな奴は一人としていないだろう。
俺は親の顔を知らない。
赤ん坊のころ、俺が十八まで育った施設の前に捨てられていたらしい。それに、親の顔を知りたいとも思わない。実際、育ててくれたのは、施設の先生達だし、族やってた俺を更正させて、きちんとした職に就かせてくれたのは、現場の棟梁の広田さんだ。今さらになって、これが親ですよ、なんて言われても、納得できない。今までの養育費をおいてってもらえば、それで、バイバイ。それでいい。これは、決して強がりではない。同じような境遇の明美と同棲してるのも、決して傷を舐め合ってるわけじゃない。俺は今までずっとそう思ってきた。


俺は目の前の景色を見て、一瞬、思考回路を停止させた。目の前には、見慣れない公園があった。
「ここはどこだ。」
俺は、昨日の行動を思い返してみた。昨日は、確か、いつもみたいに明美の占いに付き合わされて、夕飯食べて、ヤって、そのまま寝たはずだが。どう思い返してみても、公園に来たという節は思い浮かばない。俺が途方に暮れてると、視線を感じた。その方向に目を向けると、一人のガキが、不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「お兄ちゃん。良い子はもうお家に帰らないといけないんだよ?」
「は?」
俺が返答に困っていると、ガキは一人で早合点して言った。
「そうか。お兄ちゃんお家がないんだね。僕と同じだ。」
そう言うと、寂しそうに笑った。俺は目を見張った。胸が締め付けられる思いだった。
「そうか。なら、俺と遊ぶか?」
どうせ、行く宛てもないのだから、俺はこのガキの相手をすることにした。
「ほんとに?じゃあ、ジャングルジム登ろう。」
そう言って、ガキは無邪気に笑うと、ジャングルジムに走って行った。
俺は楽々とジャングルジムに登ると、ガキが登るのを手伝ってやった。夕日が眩しい。久々に登ったジャングルジムは、とても小さく感じられた。
「なぁ、おまえ、とうちゃんや、かあちゃんがいなくて寂しくないのか。」
俺はガキに尋ねた。ガキは、きょとんとすると、すぐに笑顔になって答えた。
「だって僕には、お兄ちゃんとお姉ちゃんと弟と妹と先生たちが、たっくさんいるもん。そんなに、多くの家族いるひとっていないでしょ。ケン君ちだって、六人家族だよ。僕の家族の方がずっと多いよ。だから、寂しくなんてないよ。」
「そうか。」
俺はそう言って微笑んだ。そして、どうかその純粋な思いがずっと続くように、俺みたいにならないように、心の中でそっと祈った。そこで、ふと、俺はあの質問が思い浮かんだ。こいつなら、俺が辿り着けなかった答えが分かるような気がして。
「おまえ、奇跡って信じるか?」
俺がそう言うと、ガキは、大きく頷いた。
「もちろん。だって、お兄ちゃんと僕がこうして出会えたのも奇跡でしょ。」
そう言うと、花のように笑って、ポケットからビー玉を取り出した。
「はい。友情の証。」
と、ビー玉を渡してきた。俺はそのビー玉を見ると、ハッとして、辺りをせわしなく見回した。
この公園――。俺が小さい頃よく通った公園だ。じゃあ、こいつは――。
俺は、小さい頃よく、公園で知らない奴を見つけては友達になった。それで、友達になった奴に、その証としてビー玉をやっていた。そうやって、絆を見えるものにしておけば、永遠にそれは壊れない気がしたからだ。俺はいつからあきらめてしまったのだろう。いつから親がいない俺は不幸などと決め付けてしまったのだろう。
そいつは相変わらず、笑いながら、手を差し出してきた。俺も手を出してビー玉を受け取った。その瞬間、俺は暖かい、白い光に包まれた。そいつの顔は、光の向こうでもう見えない。俺は、その心地良さに誘われるように目を閉じた。


俺は、いつの間にか、なりたくないと思っていた大人になっていた。そこにあるものを当然と思って、素直に喜べないような大人に。"誰より"か幸せであればいいんじゃない。それが"俺にとって最上級"の幸せであればいいんだ。


俺は、雀の声で目を覚ました。そこは、いつもの俺の部屋のベットの上で、横では、明美が寝息をたててる。その光景に、俺は今までのことが、夢だとわかった。けれど、心はとても満たされていた。少しその場で伸びをすると、明美が起きたらしく、こちらに寝呆け眼を向けて、微笑んだ。
「慎二おはよう。」
「ああ、はよ。」
俺も微笑んで、そう言うと言葉を続けた、
「いつまでも、一緒にいてくれるか?」
その言葉に、明美は目を丸くして、
「うん。」
と言うと、顔を輝かせた。
俺はあまりにも、その表情が眩しくて目をそらすと、明美が抱きついてきた。それに応えるように、俺も抱きしめ返した。明美がいて、本当に良かったと思った。俺は幸せを噛みしめながら、このぬくもりをもう一生放さないと心の中で誓った。俺は、ポケットから、ビー玉が零れ落ちて、朝日に輝いていたことに気づかなかった。





あなたは奇跡を信じますか


ありきたりなオチですみません。ただ、こうして、出会えたことが、すごい確率のもとで起こったこと、奇跡なんだってことを伝えたいがために書いた小説です。では、ここまで読んで下さったみなさん、小説の投稿の場を提供して下さったウメ研究所さんに感謝の意を表しつつ。













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