chapter1 次郎@中央線
東京駅に向か中央線の電車で見た、
いい歳をしたおっさん二人の朝っぱらの喧嘩。
座席は空いているのに、スーツ姿のビジネスマン風のおっさんは、
戸口の所に腕組みして立っていた。
そこにいると乗り降りの邪魔ですよ、
とは誰も注意しない。
次の駅にいた夜勤明けっぽい作業員風のおっさんは、
戸口のビジネスマンが邪魔で仕方がない様子。
チッと舌打ちしても、わざとぶつかって乗り込んでみても、
ビジネスマンは無視を決め込む。
真後ろに立って、無言のままビジネスマンを睨みつける作業員。
お疲れなのだろうけどさ、
ちょっと失礼
の一言がどうして言えないの? 誰か教えてあげてよ。
作業員があまりに近くに立つものだから、電車が揺れる度に、
ビジネスマンの身体がぶつかる。
作業員の目つきは、どんどん厳しくなるのに、
ビジネスマンは一向に取り合わない。
そして、暫しの膠着着状態の後、事態は急展開を迎えた。
大きな揺れでバランスを崩したビジネスマンが、
作業員の足を踏みつけてしまったんだ。
そこで、作業員がキレた。
立っているなら吊り革に摑まれ、戸口の前に立つな、
作業員の口から次々と出て来る怒声の数々。
うるせぇ、
とビジネスマンが言い返すものだから、作業員は一層激昂する。
とうとう二人は電車から降りて、怒鳴りあいを始めた。
電車がすぐに発車してしまったので事の顛末は分からないが、
何とつまらない喧嘩だろう!
誰かが諭してあげればいいのに!
そういう僕も、その〝誰か〝になるつもりは毛頭なく、
みんなと同じく黙って見ていたんだ。
トラブルはゴメンだ。
と言うより、いちいち関わり合っていられない。
つまらないのは、おっさん達の喧嘩だけじゃないんだ。
私生活や仕事の中でさえ、つまらない事にどれだけの労力を
費やしていることか。
これ以上はご容赦くださいってところだ。
みんな似たようなもんだろうから、誰も偉そうなことは言えないんだ。
でも……。
だとすると、世の中ってのは、つまらないことだらけってことになる。
そうと分かっていながら、誰もが見て見ぬフリをしているんだ。
あの娘は、それを決して許さないんだろうけど。
無関心を装っても、無責任の言い逃れにはならないって。
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