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 部署が変わって仕事がわんさか、(@_@)。
ネタ書きも上手くいかないものですね。
PCだけはいっぱいあるのに、ブツブツ。
さてこの話は「本編」で取り上げたかった事でした。
外伝で出して「本編」に繋げます。
第8話 『黒百合』
 第8話 『黒百合』


 フィンダリア帝国『閣議の間』。
 
―――フィンダリア帝国第三皇子セネリオ・レグランドの粛正。
『聖獣』の奪還、あるいは『聖獣』の始末。
 
 現皇帝マチス・ガルボ三世のその非情なる宣下せんげが下りた時、その場に居合わせた者達の多くはどうする事も出来ないやりきれなさに包まれた。
 ここにいる者は誰もが心ならずも『承認』したのだ。
 フィンダリアの為に。
 国の驚異となる最大の不安要素を排除するために。
 だがそれでも異議を唱えた者がいた。
 その名をガロベニス公マティアス、為人の良さで知られる典礼省長官であった。
「陛下、やはりもう一度ご再考しては頂けませんか?セネリオ殿下の…何もお命までは奪わずとも良いのでは……?」
「当然の帰結だ。『聖獣あれ』は一度決めた主に最期まで付き従うモノよ。それこそ主が死するまでな。セネリオが生きている限り、『聖獣』は引き離すことが出来ん。我が子を失うのは辛いが、これも国の為だ」
「陛下………」
 典礼省長官の躊躇いがちの忠言にも、皇帝は息子を伐つ事に関して何ら感傷を見せず、また表情も変えなかった。
「セネリオには死んで貰う、あの息子を討ち取るにはそれ相応の手練れがいるな…集めておけ、良いな、軍務尚書」
 皇帝の後半の言葉は既に次なる勅令に変わっていた。
 そして問われた軍務尚書、その家名をゴルバーン侯爵と言い、皇帝の腹心として名高い男であった。
 そしてこの皇帝の腹心は、皇帝同様何ら感傷を見せることなく応えた。
「は…、明日直ぐにでも正規軍の師団長らに伝えます、しかし……」
「ん」
「彼らだけでは第三皇子とその…『聖獣』を伐つのは難しいかと…」
 皇帝の命には無論従うが、命令が上手く果たせぬ可能性を示唆して軍務尚書ゴルバーンは再度下知を求めた。
「分かっておる、そのためにも早馬でグルニアにいる神官どもを招集しておる。あ奴らにしか出来ぬ『秘技』で『聖獣』を黙らせ、動きを封じればよい」
 皇帝のあっさりとした言葉に軍務尚書ゴルバーンは得心した。
「それでしたら確かに、後は…皇子だけですか?」
「『聖獣』さえ黙らせれば後は息子だけだ。いくらセネリオでも一度に何人もの剣豪の相手は出来んだろう……。例え『聖獣使い』と言えどもな、所詮中身はただ人よ、神ではない」
 ゴルバーンはその皇帝の言に頷いた。
 だが別の者が後から疑問を主君に投げかけた
「宜しいのですか?この場に居られない皇太子殿下にその…内密に全ての事を行っても……?」
 一同は息を飲み皇帝の言葉を待った。
 皇太子マチス・レオナートは、初めからこの御前会議にその姿を現さなかった。

 ―――何故ならこの決議の【結果】となる事に反対している者は…ある者は初めから御前会議を欠席し、またある者は皇帝の裁可が下りる前に退席し、決議を棄権する事で無言の抗議としていた。

 そんな者達の筆頭が『皇太子』であったのだ。
 しかし父帝である彼の言葉は……。
「構わん、皇太子アレも国家に忠義なる者よ。帝国の為だ、あえて逆らうわけがない…この余にな」
 この時代ときの皇帝マチス・ガルボ三世。
彼はまさに【武帝】に羞じない威厳と王者の風格がみなぎっていた。
時に漁色に溺れる事はあっても…である。
 二年ほど前に『東』の大国カルドラ、そして皇太子との亀裂を招く事態があったが、今ではそんな事など無かったかのごとく国政は安泰であった。
 そう、皇帝の権威はこの時不動のモノであったのだ。
しかしそれはあくまで表面上の事のみであった。
 それが分かるのは、現皇帝マチス・ガルボ三世がこの【裁可】を下した後から徐々に明るみになっていく事になる。


 そんな皇帝の冷酷極まる裁可が下りたその頃。
 同じフィンダリア帝城の後宮内、西方のあるさびれた離宮。
フィンダリア皇太子マチス・レオナートことリオンは、何くれとなくその場所で夜空を見ていた。
 今の彼は『一人』である。
そう、姿を変えて皇太子に付き従う彼の『聖獣』さえ除けばである。
ここはフィンダリア後宮の中心『王華殿』にほど近いが、現在は誰も住む『主』はなく、言わば『廃墟』に近かった。
 しかし、この離宮の現在の所有者は『皇太子』である。
そんな『廃墟』のような離宮だったが、しかし後宮の中心にほど近いという好立地条件であり、後宮内に住まいを賜る者達にとっては垂涎すいぜんものであった。
 そう、皇太子である彼が所有していたのもひとえに将来のためだった。

―――何れ生まれてくるはずの…自分の『子供の為の離宮』を建ててあげようと。

 しかしもうそんな未来は訪れない。
 何故ならもう『嫡子こども』を持つ事はない。

―――結婚をしないと決めたのだから……

 フィンダリア皇太子は、よく一人に成りたい時はここに来た。
人の住まない離宮は、時と共に朽ちてゆく。
その侘びしさが…不思議と彼の心を落ち着かせた。
 滅びの美学を愛でる訳でもないが…ここは夢のあとさき。
決して叶わぬ彼自身の『夢』のように……。

(ここはジュリアスにでも与えようかな……?後数年したら…そう10才になった時にでも…)

 ふとそんな事を考えた。
今はまだ早い、そんな未来の事を……そう思うと僅かな笑いを皇太子は浮かべた。
 それから10数年後…この離宮はリオンの命で改築され、彼の溺愛する『サリア・フィーネ』という年の離れた『妹皇女』が住む事になるが、それはまだ先の話である。

 そんな皇太子の手には、一通の『手紙』が握られていた。
その手紙は彼の同母弟おとうとが、故国を去る前に兄である自分に宛てた物であった。
 この手紙を見つけてから、彼は何度読み返しただろう。

 その手紙を―――

(セリー……)

 皇太子リオンは、その手にある手紙を残した弟の事を想い巡らす。
その時の…初めてその手紙を読んだ気持ちを思いおこす。

≪―――兄上、突然フィンダリアを出てしまった事をお許し下さい。
 ですが私はもうこれ以上、この国にいてはならない存在となりました。
 本当は誰よりも兄上の為に尽くしたかった、皇弟としてあなたの側で支えたかった。
これは嘘じゃない!!本当に兄上の力になりたかったんです―――≫
 
(セリー……!)

≪―――(中略)、そうですね…閣僚を束ねる要の『国務尚書』は優秀な『レイ』に『財務尚書』も兼ねてやって貰うのはどうですか?
 きっと今まで以上に『無駄遣い』は減りますよ!!
 それから軍務尚書は『バーン』にやってもらって、『正規軍』に気合いを入れて貰いましょう!
 そして私は『皇弟』としてそんな二人の代弁者。
 う〜ん『仲介者』でしょうか?
 でも私は兄上を支える『最強の剣』にして『最高の楯』になりますよ!!
 肩書きは『帝国宰相ルネス大公セネリオ・レグランド』!!
 時には外敵を撃ち破り、ある時は外交官として色んな国を回るんです。
 貴方の片腕としてね!!
 そう、あなたの…本当の跡継ぎが、子供が出来るまで。

―――そう、これが私が思い描いた将来でした。

 あなたの皇太子が誕生するまで、私が代わりに頑張りたかった。
 そしてあなたに子供が、甥でも姪でも構いませんが生まれたらその子供に沢山色んな事を教えたかった。
 剣でも、勉強でも、今までにあなたが私に教えてくれた事を。
あっ、でもイタズラはダメですよね?
結構使えるモノも有りますが、『落とし穴』とかは……》

 ここ迄、弟の手紙を読んでいた皇太子は、時には吹き出し、そして考え込み最後に苦笑を浮かべた。

《―――(中略)、 だから兄上、どうかお願いです。
 ご結婚して下さい。
 姉上の事は本当に残念な事でした。
ですがこれ以上はもう良いでは有りませんか?
あなたが結婚しても、誰も非難はしません――――――》

(………………)

 《―――(中略)、その結婚相手ですが、『皇帝陛下』が勧めた事もありますが、あのできれば『エリー』が良いですよ。
だって…二人とも同じ位に、私は大好き何ですから!!》

(いや、セリーあのね、それはありえないから…絶対にありえないから!!)

 思わず読んでいてツッコミを入れる皇太子。
 この一節に関しては、兄は受け入れたくなかった。
 自分が『寝取られ皇子』だとか、『甲斐性なし皇子』だとか密かに散々言われ続けているのを知っているが、自分自身が『弟の恋人』であった従姉妹皇女エレイン・アレクサンドラとはそんな関係にだけはなりたくなかったのだ。

 (だってね、君からエレインを『寝取る』訳にはいかないだろう……?)
 
 はぁーとため息をつく皇太子であった。
 そして気持ちを落ち着かせて、再び読み始めたのだ。

《―――(中略)、カルドラ王もあの後、【真実を知った事】で丁重に非礼を詫びたではないですか。
『実に浅慮な事であった。我が娘への非道なる仕打ちの怒りの余り、国威をかざした暴挙に及んだ事許したもうあれ。もしあの時『真実』を、貴殿と我が娘の互いの心を知っていれば、そこまで事に及ばなかったものを。切に申し訳なく、かたじけなく思う、フィンダリア皇太子よ…』
 そう、カルドラ国王も言っていたではないですか!!
 兄上が悪い訳では有りません!!
 姉上を不幸にしたのは、『あのクズ』です!!『あのクズ』なのですから―――》

(………………)

 心が痛む文面、そして最もフィンダリア皇太子たる彼の心を揺るがしたのはこの一節だった。

《―――兄上が望むのであるなら、私はあの時迷う事なく兄上と共に『あのクズ』を……!!あの父上を…フィンダリア皇帝マチス・ガルボ三世を【弑逆しいぎゃく】しました!!》


―――兄上ガ望ムノデアルナラ【アノクズ】ヲ…

―――アノ父上ヲ…フィンダリア皇帝マチス・ガルボ三世ヲ―――

―――【弑逆】シマシタ

 この一句が、どれほど皇太子マチス・レオナートに衝撃を与えたであろうか!?

 そして今、廃離宮同然のその場にいる皇太子リオンは心の内で葛藤する。

 (セリー…正直に云うよ…『あの時』君に会わなかったのはね、こうなる事が怖かったんだよ―――)

(そう……君につい言ってしまいそうで―――)

―――あの時何度もこの胸に封じ込めたこの『言葉』を……!!

―――発狂してしまいそうなあの時の殺意おもいを……!!

(セリー、君に……私は……君に会えば『あの時』堪える自信が無かったんだよ……)

 【父上ニ反旗ヲ翻スカラ手ヲ貸シテクレ】

 そう『あの時』―――彼、皇太子マチス・レオナートが『かんの塔』から出獄しなかったのは、自らを戒めるためだった。
 
―――【父殺し】をしないために。

 そうする事で、皇太子マチス・レオナートはその感情の全てを抑え込む道を選んだ。
 その理由は……2つ。
 最初の理由は……当時、もうすぐ生まれて来る予定だった彼の『弟妹きょうだい』だった。
 その『弟妹』の為に、まず彼は思いとどまったのだ。
 生まれて来る『弟妹』から『父親』を奪わない為に……
 それは理由が何であれ、もし皇帝を―――『父親』を殺せば、皇太子マチス・レオナートは『弟妹』が生まれ落ちると同時に、その乳飲み子たる『弟妹』の『仇』となってしまうから。
 生まれる予定の『弟妹』―――それは彼の愛した女性の『子』。
 心ならずも身ごもってしまった彼女の『子』。

 だから―――恨まれたくなかった。
 そして愛したかったから。
 出来る事なら我が子として、共に暮らしたかったけれど―――叶わなかったからせめて『名前』だけ与えたのだ。
 
―――『ジュリアス・アウグスタス』という名前だけ与えた『子』。

 そしてその『子』は、今まで一人セネリオしかいなかった自分の…愛しい弟に加わった。
 まだ一人歩きを始めておぼつかない今の『弟』。

(どちらも大事な私の『弟』なんだよ、セリー…だから君には『皇太子』の地位を譲りたかったんだ……あんな『噂』を蔓延させてもね…それがこんな事になるとは……)

 そう全ては『彼』が仕組んだ事だった。

―――第3皇子セネリオ・レグランドを皇太子にし、そしてその正妃に現皇帝の姪にして、『現帝国宰相』の娘たるエレイン・アレクサンドラ皇女を据える事。

 幸せな皇太子夫妻の誕生を―――

 自分と同じようにセネリオが『聖獣』を持った事で、事は全て上手く運ぶと見たのに。
その結果として『弟』の方が出て行ってしまったのだ、自分の為に。
しかし自分が『皇太子』の地位を退位すれば、『弟』は戻ってくるはずだった。
退位を撤回させようと、説得するために。
 だが―――これはどういう巡り合わせなのだろう?
 まさか弟が『シレジア王太子』になってしまうとは!!
 
―――そしてその因果が、【こんな事態】を招いている!!

 皮肉だった、結局自分は何一つ『大切な人』を幸せに出来ない。
実弟セネリオも、そして『皇后』も!!
 自身への嘲笑が起こった。
 何と無様なのだろうと。

―――何時の頃からだろうか?

 彼、マチス・レオナートは自身の身の置き所を考えるようになった。
 
『皇太子』である事を―――

 この帝国で全てが手に入るようでいて、現実は決してそうではないこの地位を―――

 何故こんな『皇太子ちい』を異母弟達が欲しがるのかが分からない。
こんなにも多くの義務と責務を負わされるのに、――何一つ本当に欲しい物は手に入らない存在。

 そして『皇帝』になれば、それは益々重くなるのに―――

 『皇帝』には『友』はいない。
 存在するのは臣下のみ、臣下は友には成り得ない。
『友』とは対等な者。
 この帝国フィンダリアで『皇帝かれ』と対等な者など存在しない。
 唯一無二の絶対的な支配者であるのだから。
 
―――孤独な存在。

 だからこそ皇太子マチス・レオナートは思う。

―――『皇帝ちち』は『女』に溺れたのではないかと。

 性の快楽に身を委ねている時だけが、『皇帝かれ』の心を癒したのではないかと。
そしてもう一つ人の心を癒せるのは『愛』。
 弟セネリオに後を託したかったのも、偏に彼には『愛』があるからだ。
 エレインという初恋の従姉妹皇女が。
 
 既にその権利を失った自分マチス・レオナートではなく―――

「『ファナ』……」
 そう皇太子かれが思わず呟くは、現フィンダリア皇后の名。
 かつての自分の『皇太子妃つま』になるはずだった王女。

―――今もなお愛しい女性ひと

 人目を忍び逢瀬を重ねるその女性に、かつて誓ったのが『独身を貫く事』。
それが皇太子マチス・レオナートの精一杯の『愛の誓い』。
 
 例えどんなに馬鹿にされようとも……それしか皇太子マチス・レオナートには出来ない事だったから。
 それは今となっては『不義』と言われる関係を結ぶ『皇后』への、それが彼の愛し方だった。
 
―――そして、もう一つ…皇太子マチス・レオナートが父帝への反逆を思いとどまった理由は……


 人気の無いこの『離宮』。
 この時、皇太子マチス・レオナートに近づこうとする者がいた。
 皇太子の方も感が働いていた、この夜…程なく『彼』が来るだろうと。
特に『彼』を待っていたわけではなかったが、そろそろ頃合いなのだ。
もうすぐ皇帝の心が決まる事を彼は悟っていたのだから。
今夜の御前会議を敢えて欠席したのもそのためだ。
皇太子たる…いや実兄たる『自分』がいない方が、『閣僚かれら』の意見もまとまりやすい。

 その答えを―――

 そして『彼』はやって来た。
何処にいようとも『彼』は皇太子リオンを見つける事が出来るのだ。
自らの『聖獣』にこの姿を隠して欲しいと願わぬ限りは……
 見かけは偉丈夫、そしてその容貌は体に似合わず麗人といえる。
一見すれば近衛の姿だが、『彼』は近衛ではない。
それは言葉遣いで分かる…この呼びかけで。
<皇太子……>
 不遜であろう、このフィンダリアの皇太子に対して『殿下』と尊称しない者は。
 だが呼びかけた『男』も、そして当のフィンダリア皇太子殿下ですらそんな事は気にしない。
 その証拠に皇太子リオンは微笑した。
「やぁ…良くここが分かったね。私を捜したのかな?」
<そうだ>
 端的に答える口調はまさに武官だった。
 一瞬の間の後、皇太子は悟りし事を云った。
「―――『君』が知らせに来たという事は、皆の意見が出たのだろう?その手にあるモノが…『結果』なんだね」
<是…受け取られよ>
 そう言って『男』は皇太子に一輪の【花】を渡す。
 リオンはその【花】を見るや表情を暗くし…そしてその【花】を受け取った。

 【花】―――それは【黒百合】だった。

 フィンダリア帝国の国花は【白百合】…しかし【黒百合】もまた、この帝国にはある事を暗喩する【花】だった。
 例えばフィンダリア人に【黒百合】を送ると最大の敵意、復讐あるいは決闘を挑む事を暗示している。
 それは白手袋を相手に投げつける行為に等しいのだった。
 そして白き百合を最も愛し象徴しているフィンダリア帝室が、黒百合を送るその意味は―――『汝に【死】を与えん』。
 つまり【死刑宣告】である。 
 手の黒百合を見つめたままそれをもたらした『彼』に、皇太子は訊ねた。
「―――これはセリーに送られるモノかい…?」
<是…そして場合により『ヘスペリス』にも届こう>
 淡々と事実だけを伝える『男』だった。
 皇太子は次第に沸き上がる怒りに震える手でその【花】を握り潰した。
「これが『彼』の……父上の答えなのか…!?」
 怒りに震える皇太子の側で、『彼』は無言で立っていた。
 やがて怒りを新たなる決意に変えた皇太子はその言葉を口にした。
「セネリオは殺させない!!」
<是、皇太子よ…その意見は我も同じ!>
「!?」
 驚いた皇太子は『彼』を見た。
 そんな言葉を『彼』から聞けるとは思わなかったのだ。
 だが『彼』は嘘はつかない、そう言う存在なのだ。
 『彼』は告げる僅かな憤りを見せて。
<かの皇子の死を望まない…それが我が『主』の願いだ!!例え我が『主』を苦しめた男でも、それでも『主』は我に願った。かの皇子を『救って欲しい』と……!!>
 強い意志のある瞳をした『彼』に、皇太子リオンは哀しげに微笑を浮かべた。
 その『男』の『主』が味方に付いてくれた事に。
 きっと辛いであろうに、それでも『彼女』は弟を助ける道を選んだのだ。
「そうか……では私たちは『同志』だね」
<是、力を貸す>
「有難う、実はね…もう打てる手は事前にうってあるんだ。私の中のたった一つの『自由になる者』達に頼んでね……だから後は『私』が動くだけだ」
<是、では我は何をすればよい?>
 皇太子リオンは、その胸の内にあった『策』の為にある願いを頼むことになる―――『彼』の名を呼ぶと共に。
「『アリサノス』…君に頼みがある。私は…また同じ事を頼んでもいいかい?」
<是…それは二年前の時と同じ事か?>
「そうだよ、『私』の―――」

 皇太子の願いをこの『男』…『聖獣アリサノス』は快諾した。
……この時フィンダリアにも夏の終わりの風が冷たく、そして強く吹いた。

次の話で「バーン」を出す予定。彼は「名前」だけは出してたんです。まさかこんな脇役が出しゃばってくるとは…(-_-;)
つたない小説を最後まで読んでいただき有難うございました。何か表現等でアドバイスがありましたらお待ちしております。_(^v^)_。
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