本当は34話より早く、おおよそ出来ていた話です。
(桃の節句の時でした……)
5555字。空白入れてぞろ目投稿。
何か良い事ありますように。
番外編 国王夫妻の初孫ゲット作戦・2~春よ来い、孫も来い!の巻・前編~
番外編 国王夫妻の初孫ゲット作戦・2~春よ来い、孫も来い!の巻・前編~
これはまだシレジア王国に脅威が迫る前の頃のお話。
三月上旬、春うらら~。
北の大国シレジア王国にも、漸く春の兆しが見えだした頃。
そこに待望の初孫を抱っこする時を夢見て頑張る国王夫婦の姿があった。
夫婦だけの私室には、大きく飾った「今年こそ初孫を!!」の合い言葉。
シレジア国王ユーリー二世、そして王妃イリーナ。
今回もまた、夫婦二人だけのお茶の時間は、孫誕生計画に費やしていた。
パラリ、パラリと集めていた子宝資料を眺める夫婦。
今目を通している資料にはめぼしい事はない。
そう思ったイリーナが、ため息を吐いて資料に吹きかけた。
「はあ、あまり良いものがないわね……」
眺めども~、役に立たない、手の文献~ (BY イリーナ心の川柳)
ああ、がっかり。
ため息ばかりが出てしまうイリーナは、今の計画について考える。
縁起ばかり担いで良いのかしら?
他には何か足りないものはないかしら。
…………
そして、イリーナは不安になった。
いても立ってもいられず、まだ真剣に集めた資料に目を通す夫に声をかけた。
「ねえ、貴方?」
「何じゃい、イリーナや?」
愛妻の呼びかけに顔を上げたユーリー二世。
その夫の顔を見てイリーナは、つい思ってしまった不安を口にした。
「私思いますの、こうあの子達に、子宝の恵まれるおまじないばかり試すだけでは効果がないのではないのかしら?」
「ふむ、確かにの~」
愛妻の言には一理あった。
頷くユーリー二世に、なおも彼の愛妻はその不安を具体的に述べ始めた。
「何だかあの子達が祟られているような気がしてね……こう、気になって仕方がないのよ」
「……確かにそれはあるな」
「そうでしょう?」
昨年、ハロウィンで知った新事実。
いやまさか、そんな訳ないよなと思いつつも気になるのは、かのお国のさる止ん事無き皇女。
……セネリオを奪っちゃった恨みが漂ってきたのか?
こんな形で。
夫婦は背中に寒いモノを感じた。
こうしてはいられない、まずイリーナがこう考えた。
「……いっそのこと“厄払い”を実戦してみません?貴方?」
「厄払いか……」
愛妻の意見にユーリー二世も考えた。
しかも政務を執るよりも真剣に。
そして。
ガバっと立ち上がったユーリー二世は妻にこう高々に宣言した。
「よしやるぞ、イリーナ!!あの二人の為に!!」
「まあ、貴方本当に!?」
イリーナはこの夫の心強い言葉を受けてキャーと乙女チックに喜び、大きくユーリー二世は頷くと、どーんと胸板を拳で叩いた。
「勿論だとも!!任せるのだ、マイハニー!!大々的にやるぞ、それも例の厄払いをな!!」
それを聞いてイリーナは途端に心配した。
「え…でも貴方、アレはしばらくぶりでしょう?大丈夫なの!?」
「カーカカカ、大丈夫、大丈夫!!余を誰と心得る?シレジア国王ユーリー二世なるぞ?確かにフレデリカの婿話が落ち着くまで、万が一の事があってはならないからとずっと宮宰に止められていたが、もう再開してもよかろう。それに今年は風邪すらひいておらぬしな。体調は万全、予の健康に揺るぎなし!!今までず~~~っと息子と一緒にアレをヤルのが夢だったからのー。ワハハ、実に楽しみだ!!」
「ええそれなら、勿論セリーを徹底的にさせなくてはね!!」
「フフフ、良し!!ア奴らにも招集をかけて盛大にやるぞ!!」
「貴方素敵よ~!!」
「ワハハ、気合いだ、気合い!!早速準備に取りかかるぞ!!」
一体何を始める気なのか?
それに『ア奴ら』とは一体誰のことなのだろうか?
国王夫妻は異様な盛り上がりを見せていた。
でも準備が必要らしい。
かくして国王夫妻は3日後をX日と定めて、その準備に精を出すことになった。
X日…その早朝。
翡翠宮殿に朝日が差し込みはじめた時間。
シレジア王太子夫妻は今日も仲良く寝台の中、ぐっすり眠っていた。
まだ起床前なのだ。
それに朝がとっても眠い季節でもある。
セネリオとフレデリカには、まだ目覚めの時は訪れていなかった
ゆっくりと人肌ぬくぬく感じ合って眠る若夫婦は実に微笑ましい。
それもセクシーな姿で。
きっと昨日も燃えたに違いない。
しかしその心地良い春眠は、突如破られることになる……。
この日、朝早くからシレジア王宮では、謎の音頭が廊下に響き渡り始めた。
ソレソレソレソレ。
ああ、払い給え、清め給え。
払い給え、清め給え。
アホレ、払い給え、清め給え。
謎の音頭が近づいていく。
それは次第にシレジア王太子夫妻の寝所の方に向かって。
そして遂に気持ちよく眠っていた二人の耳にも届いた。
!!!!
何だか賑やかな音がする。
「ふぁあ~~、何の音だよ…?」
「う……ん、な…に?」
風変わりな目覚まし音に、とうとうセネリオとフレデリカも目を覚ました。
「あふ…おはようセリー」
「ああ、リーケお早う」
「あの音は…歌か何かしら?」
「さあ…幾人かで騒いでいるようだが、どことなく伯父上達の声も混ざっているような……???」
目覚めた夫婦が寝ぼけ眼でそう話し合っている最中、その時突然この部屋の扉が大きく開帳した。
ババババン!!
「おっはよー、二人とも♪」
夫婦で合唱・朝の挨拶シレジア国王夫妻が娘夫婦の寝所に乱入…いや入室した。
当然のごとく驚くセネリオとフレデリカ。
しかも初LOVEの時のような姿であるから無理もない。
しかし、それ以上にこの二人を驚かせたのは国王夫妻の身ごしらえだった。
「お父様!?お母様どうなさったの!?」
「な…何ですかその格好は!?」
国王ユーリー二世。
あったかそうな獣の皮をふんだんに使った毛皮のコート。
それを何故か裸体に纏って仁王立ち。
その纏う毛皮がはだけた所。
そこからちらちら見え隠れするのは、若い頃から鍛えた国王の胸板、しかも漢。
特に毛皮の裾から出た御見足、臑毛が漢。
いやはやその姿は、名実共に立派な『裸の王様ここにあり』である。
誠に男らしい。
さて一方の彼の愛妻イリーナ王妃。
今日の御衣装は鮮やかな可愛い鮮やかな薄ピンクドレス。
朝っぱらから見事に結い上げた髪には、綺麗なピンクの花びらと金粉を撒き散らしてなかなかおしゃれなヘアスタイルである。
言わばパーティー仕様の艶姿だった。
いやはやこちらは実に若々しい。
当然、この夫婦を見てセネリオとフレデリカは目が点になった。
一体何があったのか?
いや、これから何が起こるのか?
娘夫婦は眠気でまどろんだ目がばっちり。
一驚のあまり眠気もぶっ飛ぶというものだ。
「どうしたのですか、伯父上、伯母上!?こんなに朝早くから、それに一体なんですか、その格好は!?」
「何をするの!?お父様!?お母様!?その格好は何!?」
「何をとな?フフフ、今日は厄払いの日なのだ」
「そうなのよ!!今日は厄払いをして邪気を祓うい、生命力が授かる日なのよ!!」
「厄払いの日?生命力?」
「邪気を祓う…って何の事?」
若夫婦二人は首を傾げた。
そんな事は知らない。
勿論公式行事でもない。
特にフィンダリア育ちのセネリオは、故国にいた頃にも聞いた事はない話だった。
だが考えるにつれて、次第にセネリオの心の中に警報フラグが立った。
何だか…嫌な予感がするぞ……
絶対に嫌な予感がする!!
そして案の定、セネリオの予感は的中した。
狼狽える義息子に、彼の舅にして伯父王が声高らかに大宣言したのである。
「さあ、早く起きるのだ二人共!今日はこれよりシレジア王家開運の為に儀式を行う!まずはセリーよ、お前からだぞ!!」
「ぎ…儀式って一体を何を……?」
「邪気を払う為にな、男は裸になって外で“水遊び”だ」
「へ?」
「景気よく寒中水泳といくぞ♪」
「はっいいい~~~!?」
セネリオが素っ頓狂な吃驚を上げた。
三月初頭のこの季節、最高気温は3.3℃、最低気温-7.2℃、平均したら-1.9℃……降雪量ただ今44cm……
(参考:北海道・帯広市3月の平均気温の統計より)
これが北国シレジア、王都ホルムガルドの気候事情――――。
此処は湾岸部と違い比較的温暖だが、それでも氷点下まで下がる場所。
つまり寒い。
それなのに、こんな時期に寒中水泳だって!!!!?
セネリオが青ざめ取り乱すのも無理はない。
起床早々、極限状態。
氷雪の中で寒中水泳、我慢大会か!!?
そんな彼にユーリー二世は、口笛拭いて揚々と誘った。
「スッポンポンならちょうど良い♪ほれ行くぞ!!」
「オーホホホホ、いつ見ても素敵ね、セリーは♪」
そう愉快痛快な国王夫妻の目の前には、素晴らしき肉体美を全開中だよセネリオ君。
引き締まった躰はモリモリ過ぎず、伯父王のと違い漢皆無。
美体イケメン・スバラ~。
上半身のみなのが惜しい。
寝間着のズボンはLOVEの後、しっかり装着済みだったので見えないのだ……残念。
さてさて。
「ちょ…ちょっと待ってください、伯父上!!本気ですか!?今の季節は何だと思っているのですか!?冬ですよ!!風邪を引くじゃないですか!!」
セネリオが悲鳴混じりで抗議をしたが、国王には届かない。
「ワーハハハ、身体を鍛える為の行うのだ。それに心頭滅却すれば火もまた涼しと言うだろう?」
「モノには限度がありますよーーー!!生憎と私はシレジアより南国の育ちですからね、寒さに免疫が無いんです!!出来るわけがないでしょう!!」
嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ。
セネリオの断固拒否の姿勢に、国王が強硬手段に出た。
付き従った衛士達に嫌がる王太子を連れ出すように命じたのだ。
一方その彼らの姿を見たセネリオは一層、「ゲゲゲ!!」とたじろいた。
何故なら伯父王の命で現れた彼ら。
どう言う訳か、皆半裸でマッチョを晒していたからだ。
そう彼らはまたの名を寒中水泳同好会の面々。
北緯44℃の風の中、寒風摩擦が彼らの日課。
マイナスん十度の中を、氷の池に飛び込むことが何より楽しい北国男子。
極寒の我慢大会を地でいく面々だった。
ついでに言うと彼らの漢は濃淡あり……あまり関係ないが。
その彼らがセネリオに「セーヤ!セーヤ!セーヤ!」とお囃子付きで近づいた。
「おい、お前達!!ば…馬鹿!!寄るな!!」
「お許しをセネリオ様、これも陛下の命ですので」
野太い声が幾つも重なって、口では無礼を詫びるも行動は止めない一同。
あっという間にセネリオをシーツにくるんで、ハイ『シレジア王太子の簀巻き』が完成した。
ちなみに……
この時、本来なら主の絶体絶命、危機一髪。
何時駆けつけてもおかしくない存在、聖獣ヘスペリスはというと、シレジア王太子夫婦の隣接した部屋の中で知らん顔をしていた。
どうやら拗ねているようだ。
きっと昨日、LOVEの為に部屋を追い出されているに違いない。
果たして彼女の焼きモチなのだろうか?
それは分からないが……セネリオが連れて行かれた後、少し立ってから主の側に駆けつける事に決めたヘスペリスだった。
よって一番頼りになる助っ人無し。
セネリオは為すがままである。
「止めろーーー!!私はアザラシじゃない~~~~!!伯父上、止めてください!!」
簀巻き状態で上がるセネリオの抗議、けれども入り婿で甥の悲鳴は聞く耳持たず、国王はきっぱりこう告げた。
「慣れろ、この国の王太子になったのなら」
「慣れるかーーー!!」
セネリオの口答えなど意に介さずに、シレジア国王は臣下に簀巻き王太子を背負わせて、いざ寒中水泳の場所に向かった。
そんな、理不尽まかり通るな~~~~~~!!
死ぬ~~~!!
だがセネリオのこの受難と同時進行で、彼の妻フレデリカも大変な事に巻き込まれていた。
美しい裸身を掛布で巻いて即席ガードしたフレデリカ。
そんな娘に母イリーナは、これまた夫王同様引き連れていた女官軍団と共に娘を取り囲んだ。
「さあ、フレデリカ♪男達がお外で精進して身体を鍛えている間、貴女はこれから私とこの花を使ってお払いよ!!」
そう言って見せるのは、桃色撓わに咲き誇る花木。
甘い香りをほんのりさせているその花は桃だった。
「あ…あのちょっと待って、お母様!!」
訳が分からずたじろいた娘、そして母は微笑をニッコリ浮かべて娘に微笑んだ。
「良いから~。貴女の為に、特別に南国から取り寄せたのよこの桃の花!!」
「桃の花を?何故?」
「この花は邪気を払うのよ~!!そして回帰の花なのよ!!生命の花よ!!赤ちゃんの為にいいからこの花を身に付けなさい!!」
「ええっーー!?また例のおまじないなの!?お母様!?」
「そうゆう事♪効くんですって!!」
「そんな……!キャ!」
娘の躊躇い何のその。
王妃イリーナの命を受けた女官達は、一斉に王太子妃の準備に取りかかった。
何故こんな事に~~~~!?
フレデリカの心の悲鳴も周りには聞こえなかった。
かくて心地よい早春の目覚めは、この日シレジア王太子夫婦にとっては厄日の始まりとなった。
※文中の「ギャランドゥ」は、ここでは大幅解釈して「体毛」として使っています。世間一般ではヒ●キの「腹毛」…いや「歌」ですな。
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