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職場で出た「節分話」、書いている33話より早く出来たのに体調悪くて節分アップ仕損ねたものです。
遅くなった……
番外編 国王夫妻の初孫ゲット作戦~節分篇~
番外編 国王夫妻の初孫ゲット作戦~節分篇~



 これはまだシレジア王国に脅威が迫る前の頃のお話。

 北の大国シレジア王国はただ今真冬日到来中。
毎日寒いよ、雪が降る。
それでも平和な国だった。
ただ一つの事を除いて。
 そう、この平和なシレジア王国の悩み事。
とっても豊かな大国なのに、一体何を思い煩うのか、それはシレジア王家のお目出度事情である。
 この国の国王の一人娘フレデリカが、入り婿を迎えて早四年目を迎えたにも関わらず、未だ夫である王太子セネリオとの間に子どもがいない事だった。

 『嫁して3年子無しは去れ』という諺が、公然と罷り通るこの世界。

 さしずめこのシレジアなら「子種無し」?
いやいや、あの父親の子なのだから、其れはないはず、大丈夫。

 そんな事がひそひそと、昨今云われ始めたシレジア王宮内。
 だがこの事を特に気にするのは、子どもがまだいなくても仲良し王太子夫婦当人達よりもこの親夫婦、シレジア国王夫妻だった。
その証拠にここのところ毎日の日課、夫婦だけのお茶タイムは、もはや孫誕生を願うまじない、迷信、縁起担ぎ探しに当てられている。
「今年こそ初孫を!!」を合い言葉に古今東西、やれあっちの国の風習、次はこっちの国の風習と、子宝ならぬ孫宝に結びつきそうな、かつ娘夫妻にそれとなく実践させられるものを厳選していた。
既に自国シレジアの子宝風習は、ことごとくやり尽くしてしまったので、他国の風習頼みの国王夫妻なのだ。
 その為に集めた子宝に関する資料は、ガイア大陸中の書物を含め、他の大陸の物もある。また資料集めだけに留まらず、何人もの情報活動員を他国に飛ばし、子供が授かりやすくなるという方法のネタ収集もさせていた。
 まさに初孫誕生に対するこの夫婦の執念を感じる。

――――あーあ、お二人『お馬鹿』とは言わないが~、そんなに孫が欲しいのか~?
 急がず、慌てず見守れよ~、出来る時には、出来るから~6人♪  
                     
 しかしそんな未来の事を、この時の国王と王妃が知る由もないので致し方ない。
そう言うわけで初孫誕生に繋がる縁起事を探すおしどり国王夫婦、熱心に資料を紐解き読み……そして今回、彼らはある風習に着目した。
「フムフム、2月3日にお面を被った悪魔役に豆をぶつけて悪魔払いをし、その後に自分の年齢の数だけ豆を頬ばると福の神がやってくるか。ホウホウ、それはメデタイの!!」
「あら、それは面白そうね貴方!!それならノリの良いセリーなら、きっと喜んでやりますわよ!!」
「おうおう、お前もそう思うかイリーナや?」
「ええ!!」
 どうやら良い風習が見つかった、今回の縁起担ぎ作戦はこれにしよう。
 国王ユーリー二世と王妃イリーナは、にんまり頷きあった。
「きっと子授けの神が来てくれますわね、貴方!!」
「おうおう、なにせ『福の神』だからの~」
 シレジア夫妻はそう嬉々としているが、しかし風習とは一般の民が基準である。
無論此処で言う『福の神』は、圧倒的大多数の民が望む者。
それは『子ども』ではなく『お金』『豊かさ』を運んでくれる神様だ。

――――う~ん、完全にハズレとも言えないが残念ながら違うのだよ、王様・お后様。

 どこからとも無く神の声が突っ込んだかは不明だが、夫婦はそんな事はお構いなしだった。
更に夫婦は詳しくその風習について書かれてある書物を調べる。
するとまだ縁起を運ぶ催しが、彼らの見ていた書物――――シレジア語翻訳済み――――に記載あり。
ユーリー二世は口に出してその箇所を読んだ。
「何々、他にもその日は、占いで縁起が良いとされた方角に向かって『恵方巻』なるものを無言で食べ切ると願いが成就するらしいぞ!!」
「あら、素敵!!」
「よし!!2月3日か、折しも明日がその日だしの。早速実践してみようかの~」
「あら、でも『恵方巻』って何かしらね、貴方?」
「さぁ、予も知らんが、料理長に言えば何とかなるだろうて」
「そうね~、美味しいモノだと良いけれど」
 夫婦はそう密かに楽しい縁起担ぎ作戦を立てた。
娘夫婦に知られないように。


 明けて翌日。
シレジア王宮、翡翠宮殿ニフリート・ドヴァリエーツの中庭。

「これは何の真似ですか、伯父上?」
 器にてんこ盛りの殻付きピーナッツを渡されたセネリオは、訳が分からず開口一番そう尋ねた。
一方、セネリオに問われた国王ユーリー二世は、ホホホイ笑いながらこれからゲームをするぞと誘った。

(遊びですか?この寒空に?雪の降り積もった王宮の庭で?)

 じーっと白け顔の王太子に、国王は陽気にゲームをしようとしきりに勧めるのだった。
「な~に、面白いぞ!これから現れる的に向かってそれを投げる。どっちが多く的に当てられるか予とお前で勝負じゃ」
「食べ物を粗末にするのは如何なものかと思いますよ、伯父上……」
「ほんのちょっとだろうに~、せこいこと言うな」
最もらしい事を言って、伯父のその異様なやる気を削ごうとしたが失敗したセネリオ。
仕方がないので、ため息混じりにゲーム説明を聞くことにした。
「はぁ、的は何ですか?」
「ほれ、あれじゃい」
「?」
 ユーリー二世が指し示した方向には、怪物らしい仮面をつけた兵士12名からなる一個小隊が8つ集まり二中隊を作り待機していた。
 どうやらこれが『悪魔役』らしい。
寒空の中、ご苦労様である。
 セネリオはそんな兵達を見て呆れ顔になった。
「衛兵に何をさせているのですか、伯父上。国王の臣下イジメになりませんか?」
「まぁ、そう言うな。ちゃんと皆には特別手当と休暇を与える予定だぞ」
「そう言う問題ですか?」
 その説明を受けて、セネリオはますます呆れ顔になった。

(哀れ過ぎるな、衛兵達おまえたち

――――恨むなら、寒い天候、この伯父王。
              (字余り byセネリオ心の俳句)

(はぁー、しかし今日は快晴、雪が降っていないだけまだマシか……)

そんな事を、遠慮無く心の中で考えている入り婿の心を知らず、舅王はぐいぐいと強引に誘った。
「ほれい、良いからやるぞ!!言うなればどっちが多く逃げる敵兵を豆で当てて倒すかゲームじゃ!!」
「……」
 子どものように乗り気な国王に、セネリオはまだ返事をせずにこう考えていた。

(要するに暇なのだな、伯父上。退屈で遊びたいのだな、私をダシにして。ヤレヤレ……)

(まぁ、冬の運動不足解消には良いか…たまには伯父上に付き合うとしよう)

 渋々だが、セネリオはこの勝負を受けて立つことにした。
「分かりましたよ、やりますよ。しかしやるからには手加減しませんからね、伯父上」
「カーカッカ、こっちこそ負けんぞ、セリー」

 そして。
「頑張ってね~、貴方~!!」
「セリーもね!!怪我しないでね!!」  
あったか毛皮をたっぷり着込んで完全防寒の見学組の母娘から声援を受けて、かくてシレジア国王と王太子の豆まき…いや、衛兵さんに豆ぶつけごっこが始まった。
 それはセネリオにとって意味不明なゲーム。
 ところがいざ勝負が開幕すれば、あら意外、それは思わぬ熱戦になった。
とにかく雪中を仮面を付け、そして言われたとおり(国王命令)に逃げまどう兵。
方やそんな彼らを追いかけ豆をぶつける国王親子。
それぞれの愛妻と、聖獣ヘスペリスが上空を飛んで見守る中、雪合戦を彷彿させるその勝負に、ユーリー二世もセネリオも、汗だくになってピーナッツ豆をぶつけるのだった。

 それから日が暮れて夕食時。
 この日シレジア国王一家の夕餉の食卓に上ったのは、シレジア宮廷料理長の『恵方巻』だった。
それは一見、薄焼きクレープに巻かれた肉と野菜。
 そんな料理を初めて見た人物は、不思議そうにテーブルに並べられたそれを見た。
「これは何の料理でしょう?初めて見るわ……」
「本当だ、まぁ上手そうではあるが、どうやって食べるんだ?」
 その本日の夕食を目の当たりにしたシレジア王家の若夫婦は、それぞれそう感想を漏らした。
一方。
「あら、美味しそうね~この『恵方巻』!!」
 王妃イリーナは、出来映えの良い期待通りの素敵な(?)料理に喜び、国王も良さに出来に感服した。「ほうほう、これがかの『恵方巻』か、料理長?」
「さ…然様さようでございます、陛下」
 国王の下問に対して、シレジア屈指の料理人で知られる男は、ひたすら平伏して肯定した。
 勿論娘のイリーナ、および婿養子セネリオは、本日の献立の料理名を初めて聞くや驚いた。
「恵方巻??」
そう声を揃えて料理名を口に出すや直ぐに料理長に注目する。
それから、皆の目を一身に受けた料理長は本日の料理について解説した。
「はい、七つの具を薄く焼いた生地で包みました。具はスペアリブに、刻んだピクルスとチーズ、それにゆで卵を刻んだものを合わせ、更にスライスしたタマネギと二十日大根ラディシュの野菜を加え、そこに特性甘辛ソースをかけて、最後は王宮内の温室ハーブ園で採れたチシャ菜を添えて焼いた薄生地で巻いたものです」
シレジア料理長渾身の一品は、彩り綺麗なサラダクレープ、いや、ブリトーか?
何にせよ、美味しそうな匂いはグー。
 ピーナッツ豆を投げてぶつける運動をしたセネリオは、ただ今とても空腹だった。
説明を聞いた彼は直ぐに料理に手をつけようと、ナイフとフォークを手に持った。
「待て、待て!!」
 セネリオがいざ食べようとしたその時に、突然入る伯父王の「お預け」言葉。
 腹ぺこ王太子は億劫気に問うた。
「何ですか、伯父上?」
「恵方巻を食べる作法がある、その作法で食べなくてはならんのだ」
「作法?」
 これにはセネリオだけでなく、娘のフレデリカも目をぱちくりして驚いた。
 驚く若夫婦を余所に、父親王は意気揚々に国王らしく率先した。
「作法を教える!ほれみな、手にこの『恵方巻』を持つ!!」
 ガシーっとポーズを決めてユーリー二世は恵方巻を右手に持つと、他の家族に真似するように促した。
愛妻イリーナは直ぐに夫に倣ったが、娘夫婦は納得出来なかった。

(何でだよ?)

(お…お行儀が悪いですわ、お父様……)


 理解不能。
昼間の雪中ピーナッツ豆投げごっこといい、一体その行為に何の意味があるのか。
セネリオはそう思ったが、一家の長にしてこの国のNO1(ナンバーワン)には逆らえず、トホホと思いつつも言われるままにシレジア流恵方巻を手に取った。

 そして。

「ようし、そのまま。次は西南西に向かって立つ!!」
恵方巻の食べ方にこだわるユーリー二世の熱血音頭、彼が立って向かったその先の壁にはさりげなく『西南西はこちら♪』という紙が、目印として貼ってあった。
 無論セネリオとフレデリカの二人は異議を唱えた。
「何故、立つのですか、伯父上……。それにどうして『西南西』とまたややこしい方角に向かうのですか?西なら西、南なら南、あるいは二つの方角の間を取るなら『西南』で良いのでは?」
「そうですわ、セリーの言うとおり立って食べるのは、本当にお行儀が悪いですわ、お父様……」
「此で良いのだ、この方角に立って食べるぞ。但し、この恵方巻を食べ終わるまで一言も口を聞いてはいかんぞ!!効き目が無くなるからの!!」
 ますます訳が分からない。
 目を丸くした王太子夫妻。
「効き目って?一体何の事なのお父様?」
 そうフレデリカは父に問い詰め、一方セネリオは更に突っ込んだ質疑を伯父王に行った。
「何ですかそれは、得体の知れない宗教者の入れ知恵か何かですか?どんな事を云われたのですか?」
「福の神を招くのだ!!」
 大きく高らかに言い切った父国王のその声に、娘フレデリカと婿で甥のセネリオは呆気にとられた。

 ふ…福の神……
 そんな事の為にこんな事をするのか?

 若い二人は直ぐに抗議の声を上げようとして、やはりやめた。
 ポヨヨン国王ユーリー二世、しかし、一度腹に据えて行動を起こすや最後まで止めないその意志は、良くも悪くも獅子だった。
 そう、逆らっても無駄、口答えはもっと無駄。
その事をよく知る娘夫婦だった。

 こうして彼らは西南西に向かって立つと、おかしな沈黙の中、食事にありついた。
当然無言なので黙々と食べるだけ。
 しかしその表情は夫婦で対局だった。

国王夫妻はにこやかに、はつらつとして恵方巻をほおばっていた。

(福の神よ、今年こそはどうか一つ孫をよろしくお願いいたしますぞ~!!)
 もぐもぐ願って食べるシレジア国王ユーリー二世。

 そして。
(福の神様、多産の神様、どうか私たちに可愛い孫を与えてくださいませね~)
 娘の妊娠を願う母后イリーナ。

 しかし、これに対してその娘夫婦はというとげんなりしていた。
付き合わされるセネリオとフレデリカの胸中は……

 まずはセネリオ。
(何でこんな食べ方を?どんな呪いだ?これは何かの願掛けのよう、は!ま…まさか、例のあれか?孫祈願の一環なのか?伯父上~~~)

 そしてフレデリカもその事に気づき始めていた。
(これは前と同じ子宝のおまじないね……もうこんな事をして、本当に子供が出来ると思っているのかしら?お父様は……)


 心の中ではぼやきと疑問だらけ。
 その後なんとか無言で完食した王太子夫妻を待っていたのは、『お年の数だけピーナッツを食べよう』という物だった。
 それも親夫婦の圧力に負け食べきった娘夫婦……
 その夜、すっかりこの親国王夫妻に振り回された二人は、もうくたくたでその後の夫婦的なスキンシップを行うことなく、眠りについた。

 あ~あ、一番そこが肝心なのに……残念。
こうしてシレジア王家ベビーまでの道のりは、まだまだ長いのであった……。
 ああ、シレジアに幸あらんことを。
 福の神よ来たれ、アーメン。

              <おしまい♪>

☆後書き兼ねたお知らせ☆
「シレジアの王太子」人物相関図(みてみんver)が完成しました。
挿絵(By みてみん)

 他にも「国家相関図」とコラムを用語集に追加しました。
一読いただければ幸いです。
次話は33話、ピカゾー君の秘密を少し。
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