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さて、ようやく30話です…がどうでしょうか。
第30話 命の在処 救世の人~前編~
第30話 命の在処 救世の人~前編~



 ロストフポーリの戦いから数えて3日目の夜。
 煌めき渡る夏の夜は、シレジアの大地に静かな安らぎを与えていた。
それはシレジア軍とリーヴェ軍との凄惨な剣戟があったことなど知らぬように。

 そう喩えどのような出来事があろうとも、自然の摂理は等しく万民に与えられる恩寵だ。
喜びも、哀しみも、全てはこの摂理に溶けて思い出、過去のものとなり、これが国の一大事件なら、その出来事を後の世に伝えようとする人の手によって語られるだろう。
それは詩となり唄となり、時には教訓となり、あるいは詳細に記された書物として残り、国史となって刻まれるだろう。
 
 だが唯一つだけ……決して、正しく後の世の人々に伝わらない事がある。

 高名な学者陣、優れた語り部達、そんな彼等でも到底伝えきれない事がある。

 史実とは事実の分析、課程、状況考察。
 物語とは事実に基づいた脚本演出に、更に独自性の空想をねたもの。

 だから誰も。
 その事件に関わった人物達、真実の感情は分からない。
「おそらくこうなんだろう」という、可能な事は、その人物達の仮定だけ、彼等の心を慮るだけ。
 
 人の心とは、対峙する目の前の人物すらも推し量れぬものだ。
ましてや会った事の無い人物達について、一体何が分かるだろうか?

 いや、分からない。
 想像だけが一人歩きしていくのだ。
今までも、そしてこれからも―――人の歴史はかく創られていく。

 そしてこの物語の皇子は今―――生命の岐路の中だった。


☆°*。+°☆*。+°☆°*。+°☆°*。+°☆*。+°☆°*。+


 あれは昔のこと。
 ある夕餉ゆうげの頃を迎えた時だった……。

「―――え…あにうえ、どうして今日の夕飯を食べてはいけないの?だって、みんながご飯の時間だって呼んでるのに」
「セリー……」
 この時ほど、兄上の顔が強ばったのを今まで見た事が無かった。
「どうしてご飯を食べに行かないの?ご飯の時間だよ、あにうえ。みんなも呼んでるし、行こうよ!」
 私の問いかけと誘いに、これほど躊躇う兄上を見たのもおそらくこの時が初めてだった。
「私は…行かない。そして君も行ってはダメだよ、セリー」
「どうして?ご飯食べたいよ……」
「そうだね、私もだよ……」 
「じゃあ行こうよ、あにうえ」
「いや、駄目なんだ。あそこに並んだ物は食べられないんだよ…だから行かない」
 兄上の顔が困っている。
 何故だろう?
「どうして?ボクお腹すいたのに」
「ごめんよ……」
「あにうえ…」
「もうすぐラインノールが来るよ、彼に頼んであるんだ。サンドイッチとリンゴ、そして君の好きなお菓子をね、だからもう少しだけ我慢して欲しい」
「どうして…?」
 城の中に入れば沢山用意された食事。
 お菓子も果物もそれこそ豊富に並んでいるに。
この国の第一皇子と第三皇子の為に。
それなのに―――何故空腹で過ごさなければならないのか?
この時の私は分からなかった。
 空腹が幼い私の忍耐を超える。
 見る間にそれは幼い私の目から生まれた。
「あにうえ……」
「本当にご免よ……」
 空腹の余りぐずぐずと泣き始めた私を、兄上はそっと抱きしめた。
「お腹が空いたね、でも我慢して欲しい。多分今日の食事で証拠があがる筈だから。それまでの辛抱だよ」
「しょうこ?」
 まだぐずったまま小首を傾げた私に、その時兄上は教えてくれた。
「―――きっと彼女とって私達は目障りな存在だろうからね、第四皇子タナトスが産まれて……」
 私はその時初めて見たかも知れない。
 その時の兄上の目は、何時もの優しい木漏れ日を受けた翠の瞳ではなく、暗く冷たい深淵の森。
 そして呟かれた兄上の言葉―――あの時の貴方の言葉を理解するには、当時の私は余りにも幼子過ぎた。
 だが、今なら良く分かる。
私達は毒殺されるところだったのだと。
母上が亡くなり、前正妃の遺児となった私と兄上。
フィンダリアの帝位継承を狙うなら、当然私達は邪魔な存在だ。 そうあの女―――あのクズの後正妃ごさい、第二正妃ニュクシーヌ・アグストリッド=フィンダリアにとっては―――

 これは彼の記憶。
フィンダリア皇子であった頃の哀しい幼児体験。

 そして今、かつての幼児体験を最悪な形で再現して彼―――セネリオは毒に倒れていた。


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 さて、この時シレジア軍は天上を覆う美しい夜空とは裏腹に、暗雲の中だった。
その理由は、国王親征にも係わらずに、予期せぬ事態の為に進軍の停滞を余儀なくされていたからである。

―――売国奴の存在が判明した直後、国王等の前に現れた暗殺者。
 
―――それから暗殺者と相対した王太子の負傷とその後の昏倒。

 しかも王太子のその昏倒、それが正体不明の毒物によるものだと発覚するや、それら一連の騒ぎがシレジア軍に瞬く間に知れ渡り、兵士達を動揺させた。
 シレジア中にその力及ぶ限り、民の為に様々な施策を行ってきた王太子セネリオ。
 その彼が卑劣な暗殺者の手に掛かった。
 しかもかなりの深刻な容態だという―――
 そしてこれを聞いた兵達の反応は。
 ある者は王太子不予を聞くや、彼の回復を願い神に祈り、またある者は王太子を負傷させた暗殺者の仲間が他に居ないかと、同志達と共に『スパイ狩り』を行った。
 残念ながら捕まえられた当の暗殺者は、拘束直後に自らの失態をあざ笑いながら自決して何の情報も得られなかった。
しかし王太子を慕う熱狂的な兵達の復讐心が効を成し、その結果、暗殺者を手引きした者を数名発見し捕らえるに至る。
 捕らえられた者は、その時より大逆罪を犯した者である。

 大逆罪―――。

 重犯罪の中で最も重いもの。
 そして重犯罪の区分で国王に対する犯罪は反逆罪といい、更に反逆罪の中で更に重い『罪』を『大逆罪』という。
 その内訳は、国王一家の暗殺、計画、暴行を加えた者、国王に対して反乱を起こした者、国の敵に便宜を図りし者、そして貨幣の偽造等を行いし者……等。
 
 今回捕らえられた者達はその内二つの禁を犯していた。
即ち国王一家―――王太子セネリオの暗殺未遂と、そして敵国へスパイ活動を行い便宜を図った罪がそれだ。

 王太子を害した不届きな輩!!
 その憎き仲間!! 

 コモンローの刑罰理論の大肯定ではないが、この時のシレジア兵の感情はまさに「大逆者には死を!!」であった。
 捕らえた者達を拘束する時も、逆上のあまり必要以上の暴力―――私刑を加えた兵もいて、そんな兵達を止めさせるのにも一苦労だった。
 だがその思いは何もシレジア兵達だけではない。
 国王ユーリー二世もまた同じだった。
 大切な義理の息子への危害。
 烈火のごとき感情をぶつけ、捕らえし大逆人に極刑を言い渡してもおかしくはない。
しかし。
「―――決して殺してはならぬ。だがいかなる手段を用いても構わん、必ず吐かせろ!!」
 北の居眠り獅子王と評される彼は、その怒りではらわたが煮えくりかえるのを辛うじて押さえ、処刑を行わず、代わりに事に至る詳しい経緯、そして捕らえた者達と敵国との繋がりの全貌を明かせと言明した。

―――そう喩えどのような手を使っても。 

 こうして捕らえられた者達は、現在厳重な監視下の中で過酷な取り調べを受ける事になった。
 だが喩え彼等を捕らえても、王太子セネリオの体調の回復が見込めるわけではない。
国王や兵達の祈りや、医師の手厚い看護を受けながらも、まったく好転しなかった。
 そして。

 このままでは埒が明かない!!

 主が倒れて一中夜。
 遂に痺れを切らした王太子の聖獣ヘスペリスが、救いを求めてかつての祖国フィンダリアへ旅立って更に一日夜が過ぎた。
 そんな暗雲シレジア軍の野営陣地。
 この時、天かける馬に乗りし人物が、このシレジア軍の駐在している場所に舞い降りた。 
―――何者だ!?

 兵士達の動揺を余所に、その人物は地上に着いたその天馬より降り立った。
それから乗せていた人物を降ろした天馬は、程なく翼あるものへと変化し、今度はその人物の肩に留まる。
 兵士達は星明かりと掲げた松明の光で、目をこらしてその人物を警戒と共に観察した。
その相手を―――

 かなり身なりの良い旅装姿、背中には背嚢はいのうを背負っているが武器は所持していない。
 だが明かりを受けて浮かび上がったその人物の容姿は―――何と美しい。

 その人物を目の当たりにしたシレジア兵達は、その美しさに一同見惚れると、警戒心がたちまち霧散した。
 さて、シレジア兵を美貌で骨抜きにしたその人物の方はというと、特に感慨を持つでもなく辺りの兵に呼びかけた。
「シレジア王と王太子に面会を希望する。取り次いで貰えるか?」
 玲瓏なるテノール声が響く。
 そしてその人物の声を聞いた兵達は、顎を外すほどに一驚した。
―――男だと思わなかったのである。

 

 一方その頃、シレジア国王ユーリー二世は深い焦燥の中だった。
 それは今立たされたシレジア国の立場―――レーヴェという外敵に攻められた事による国土防衛の為の遠征の不安ではない。
 このシレジア国王は、北の居眠り獅子と国の内外から畏怖されるこの男は、そんな敵など恐れない。
 それは国王だけでなく、彼が率いる国軍も同じだった。
 国王ユーリー二世が今憂い悩むのは、大事な跡取りの容態―――婿養子として迎えた甥セネリオの生死だった。

―――セネリオの死。

 もしこの最悪の事態が現実のものになれば、今この国は、そして大切な一人娘がどうなるか。
 未だ子のない娘夫婦だ。
だがこのままセネリオが死ねば―――心苦しいが愛娘フレデリカには、寡婦になった悲しみの薄れぬ内に、身を包んでいるだろう喪服を脱がせて、再び婚礼衣装を着せなければならないだろう。
否応なく国の為に愛娘を再婚させるだろう……おそらく国王として。 
 そう喩え娘が望まなくても……一人娘フレデリカ、彼女が子を成さなければシレジア王家は断絶するのだ。
 そうしなければ何れ国王ユーリー二世自身の死後、シレジア国内が乱れる。
 内乱、下手をすれば周辺の国家の野心に火を付け、国内侵攻されるだろう。
それは今受けているリーヴェの脅威の比どころではない。
シレジア国中が戦場となるだろう。
 それだけは避けねばならない。
 シレジア王家として。
 国王として。
 けれども……もしこのまま回復叶わずセネリオが死に、その後娘フレデリカが再婚した相手を、ユーリー二世が今の甥セネリオの様に遇せるのかと問われれば、答えは否だった。

 実妹の息子という血の縁を、そして今まで婿として、また息子として暮らしてきた日々を越えるものはないだろうと……。

―――出来る事なら…己の存命中に、全ての行く末を見届けたい。
自身が選んだ後継者と愛娘の幸福を、そして我が国シレジアの未来を!!

 それがユーリー二世の切願だった。
国王として、父親としての彼の素懐でもあった。

(だから死ぬでないぞ、セネリオよ……)

 意識無く横たわるセネリオの寝台で、何度そう呼びかけたであろうか。
しかし彼には何も出来なかった。
 彼の側にただ付きそう事は出来ても、治療する事は出来ない。
 それに一日中セネリオの側に居る訳にはいかない。
 国王である以上、軍の大元帥として遠征の軍を束ねる軍務などもあるからだ。
 よってこの時のユーリー二世は、王太子の治療に当たる医師を呼びつけ、今日何度か目の状況説明を求めた。
「……様子はどうだ?」
「一向にお変わりございません」
 王太子の容態を尋ねる国王に、医師は平伏して今回もまた同じ事を繰り返した。
 またも同じ台詞を言うか。
 国王の眼光が鋭く光り、その視線を直視した医師が迫力に押されて更に頭を低くした 
「も、申し訳ありません!!さ…最善の治療を施しておりますが……何分解毒法が分らず苦心しております」
「~~~~~」
 ユーリー二世はそんな不甲斐ない医師の報告を受け、一層焦りを深めて憤った。
この目の前の医師を感情の昂じに乗じて「役立たず!!」と一喝するのは簡単だ。
だが医師を怒鳴り付けたところでセネリオの容態が回復する訳ではない。
ユーリー二世は辛うじて八つ当たりだけは止めた。
 けれども本当なら考えたくもない、恐るべき悪夢に苛み、そして苦悩していくのを止める事が出来ない。

(セリー……)

 その時、養子むすこを案じるユーリ二世の元に、慌ただしく側近が駆け込んで来た。
「へ…陛下!!」
「何じゃ、騒々しい!!」
 只でさえご機嫌斜めの国王は、その側近に怒りの雷音を叩きつけた。
 不機嫌の極みの国王の声を浴びせられた側近は、言うなれば国王のとばっちりを受け狼狽えるが、それでも彼は役目を果たすべく跪いた。
「も、申し上げます!!たった今我が陣営に『客人』が参りました!!」
「なぬ?客だと!?」
 これには『北の居眠り獅子王』も度肝を抜かれた。
 今彼等―――シレジア軍のいる地帯。
 そこは戦場となったパトソールニチニクグラード、この周囲に暮らしている領民は、シレジアと戦火を交えた敵国の残存兵を恐れてやっては来ない。
ましてや現在時刻は夜、未だ弔いきれない沢山の死兵が横たわる大地を遙々闊歩してくるだろうか?
 そう迷信深い者なら、戦死者達の霊に震えるだろう。
 一体何者か?
いや、それ以上に本当に客人、味方なのか?
敵の間者、いや新たなる刺客の可能性もある。
 ユーリー二世の中に猜疑心が起こった。
 一方その事実を伝えた側近は恐る恐る主君の裁可を待った。
「如何致しましょう?」
「―――どの様な素性の者か?」
「はい、中々身なり良い……」
 国王の問に側近が答えようとした、その時だった。
「随分と待たせる案内だ…事は一刻を争うのだろう?」
 発せられたのは第3の声。
 天幕の入り口から、それは届いた。
 国王も、側にいた医師も、そして来訪者を告げた側近も、全ての視線がその入り口に注がれた。
 国王の居る天幕の外を守備する兵に入り口を開けて貰い入ってきたその人物。
その人物を見て、シレジア国王の記憶の書庫は直ぐに開かれた。
「貴殿は……」
「―――お久しぶりですね、シレジア王」
 流暢なシレジア語を使ってにこやかに会釈した、甥の様に肩に鳥を乗せたその人物。
 忘れる訳はない、その美貌とかつての過去の出来事を瞬時に探し当てたユーリー二世は直ぐにその名を口にした。
「マルクス・ヴァレリアヌス殿か?」
「はい!」
 ユーリー二世が驚かされたその現れた客人、それはピカゾーだった。
フィンダリア名は『リプル伯ヴァレリー・フラマ・エムバーレン』。
だが『公式名』はシレジア国王が言った名が正しい。
 彼の真の正体は、偽名を使い、フィンダリアにお忍び滞在していた異国の王。
 そしてかつての娘の求婚者の一人(・・・・・・・・)
 一方のピカゾーは覚えていて貰えた事の喜びで、破顔していた。
「また御会いできて光栄です、ユーリー二世陛下。お変わりなくお元気そうで、何よりです」
「……一体どうして貴殿が此処シレジアに?」
 まるで狐に騙されたような国王の問に、ピカゾーはやんわり首を振って会話を打ち切った。
「詳しい話は後にしましょう。それよりもセリーの事が先です。ここに来るまでに粗方事情は聞きました、だから私に例のモノを見せて下さい」
「何をだの?」
「毒の事です。何か残っていませんか?手がかりがあれば解毒剤が作れるんです。これでもそういった知識は常人より持ち合わせていますよ」
 ピカゾーの申し出は望外の転機、ユーリー二世を始め、その場の医師や側近の顔に希望が差し込んだ。
 何よりその希望に国王が飛びついた。
「本当かの!?」
「何もやらないよりはマシでしょう。さぁ、早く!!」
 ピカゾーはやや急いて訊ねると、医師が答えた。
「こちらにあります!!少量の残骸ですが…とにかく見て下さい!!」
 そして医師の案内でピカゾーは移動した。


 それからしばらく経ち―――
 場所はセネリオの二部屋続きの天幕寝室にて。
「OK、OK!!解析完了!」
「おお!!」
 周囲の期待の声が上がる。
 この声を上げたのは、国王と案内した医師、そしていつの間にかに集まった武将達である。
 さて自作『簡易毒判定ぺーパー』の結果を見たピカゾーは、結果に大変満足した。
「ああ、成る程。これはね、今は毒性は薄れてるけど『カシュー油』の毒ね、南国性のモノだからシレジアにないのは当たり前。特性は揮発性…つまり大気に溶けちゃうタイプね。その濃縮したモノを粉に含ませてたのか……。ん?でもこの粉…これも『アブリン』かな?う~ん、よくブレンドしてるわね……殺す気マンマンだったのね~」
「あの…マルクス・ヴァレリアヌス殿や……」
 解説に熱が入るピカゾーに、ユーリー二世は躊躇いがちに話しかけた。
 しかしピカゾーはそれに気付かずに続けた。
「おまけに使っている武器には、高濃度の『クラーレ』をたっぷりヌリヌリしていたし……」
「マルクス・ヴァレリアヌス殿やい、その、どうなんじゃ!?」
 少々大き過ぎる声を張り上げて、ユーリー二世は再度呼びかけた。
 すると、甚だ呼びかけに気付いたとは言い難いが、ピカゾーはニッコリ笑って国王に向かい結論づけた。
「うん!良かった。これなら…この毒なら、きっと今私が持ってる常備薬『竜丹エース』が効くはず!!」
「おおお!!」
 ピカゾーが出した結論に、異口同音、勝利の雄叫び以上の声を上げる国王以下一同。
 するとそんな彼等に構わずに、ピカゾーはせっせとここに来る時まで背負っていた背嚢はいのうから小さな小箱を取り出して見せると、中には丸薬が入っていた。
「これセリーに飲ませるから水をお願いね!!」
「は…はい!!直ぐに!!」
 代表して控えていた武将の一人シューイスキーが、小姓となってコップに水を用意。
 その間、セネリオの伏せっている寝台に移動したピカゾー。
 そしてセネリオのすぐ横の寝台の端に腰を下ろした美形王。
 そっと寝台の中の懐かしき皇子を見遣る。

 体温低下。
 呼吸はかぼそく、少しやつれた感がある王太子。 
 勿論意識無し。
 だけど。
 やっぱり兄弟だね、とっても似てるよ君。
 ホント…リオンに似てる、だから好き、可愛いから。

 フフフフ。

 程なくシューイスキーより水を受け取ったピカゾーは、ついっと眠れる可愛い皇子に顔を寄せた。「さぁ飲んでね、セリー…と、いっけなぁ~い、意識無しだったか。それじゃあね……」

 その光景を目撃したユーリー二世はたまげた。

 それは、見てはならない禁断の世界か。

 くっついちゃった甥の唇。
 教えられないよ、妻と娘に。
 熱い、熱い、ブッChu☆を。
 しかもがっちりChu☆は奥内進入。

 そして、新たなる波乱のファンファーレ。
それはこの一声で始まる。
遅ればせながらシレジア王太子の天幕に、ようやく『彼女』が足を踏み入れたのだ。
「いっやーーー!!何してるのよ、馬鹿オカマ!!とっとと、私のセリー(・・・・・)から離れなさい!!この変態!!」
 フィンダリアからやっと駆け付けた皇女エレインは、その光景を見て悲鳴を上げた。
 
―――水割り、行きずり、古い疵。

 男と女とお姉マンのらぶバトルゲームが始まろうとしていた。

次話、前半らぶコメ、後半はシリアス予定です。

つたない小説を最後まで読んでいただき有難うございました。何か表現等でアドバイスがありましたらお待ちしております。
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