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この日に合わせて。
長くなったのと、後半もっと加筆したくなったので分割投稿します。
番外篇 「ハロウィン☆~シレジア編~」(上)
番外編 「ハロウィン☆~シレジア編~」



 澄み切った青空が続く秋晴れの中、シレジアの王都ホルムガルドは、この日シレジア王国の王太子夫妻の三年目の結婚記念日だった。
 それは今を遡る事三年前。
 当初シレジア王女イリーナ・フレデリカとフィンダリア第三皇子セネリオ・レグラント結婚式は、シレジアの秋祭りである『収穫祭』に合わせて盛大に行われるはずだった。
 しかし当時シレジア国内に反乱が勃発、幸い瞬時に鎮圧されたと思ったら、とんでもない二大求婚者がシレジア王女に求婚して、一悶着。
それからすったもんだの三つ巴の争いの末に、ようやくセネリオがフレデリカの婿の座を射止めたのだった。
 ……これについては後日語る。

 さて、そんな訳で結婚式が伸びてしまったセネリオとフレデリカ。
収穫祭から一ヶ月後に当たる、三年前の今日に無事挙式となった。
そしてこの日は10月31日。
 三年前まで、ここシレジアには何の変哲もない一日だった
しかしこの日は、シレジア王太子となったセネリオの生まれ故郷フィンダリアでは、折しも万節祭という祭と重なっていた。
 その事から、王太子夫妻の結婚式から翌年よりある催しが、二人の結婚祝いを記念して王都ホルムガルドで盛大に開催された。
今年で早三年目を迎える新しい祭り。
 その準備のために大わらわのシレジア王宮こと『ニフリート・ドヴァリエーツ(翡翠宮殿)』。
 かくて今日の祝祭の主役達は、今この日を迎える仮装・・に大忙しだった。


 この時シレジア王太子セネリオは、通される事を許された愛妻の支度部屋を訪れるや、妻の背後から一声を持って呼び掛けた。
「リーケ、準備出来たかい?」
 その王太子の呼び掛けで、傅く女官達が王太子妃の周囲から少し離れる。
女官達が退いた後、優雅にゆっくりと立ち上がったシレジア王太子妃フレデリカ。
 彼女が纏う赤とクリーム系統色を基調としたドレス。
その姿は秋の実りの象徴林檎の妖精という仮装だった。
 ちなみに赤林檎。
林檎は他に青や黄色があるけれど、それは夫セネリオが「赤!」と強く希望して、しかもセネリオ自ら妻の為に見立てたものだった。
こうしてまばゆいばかりに美しい妖精は、少し赤らめながら照れて夫に微笑んだ。
「此れで良いかしら?」
「勿論さ、とっても似合うよ」
 妻の美しい仮装に大層満足した夫は、ニッコリ笑って喜んだ。
ちなみにこの時のセネリオは、右目に乙女の萌えアイテム黒眼帯アイパッチを着けた海賊王。
 これは物語好きのフレデリカの要望だったりする。
夫婦で仲良く今年の衣装を決め合ったのだ。
 特に黒眼帯アイパッチを付けた見目凛々しい隻眼姿の夫に、人妻になっても忘れない乙女心を刺激されたフレデリカは、更に顔を火照らせた。
妻のウブ可愛い反応を察知した、こっちはオオカミ系年下夫は確信していた。
「惚れ直した?」
「……意地悪ね」
 否定出来ない、こう言う時は夫のペースについ流されてしまう年上妻フレデリカ。
そんな妻をクスクス笑ってセネリオは、フレデリカに手を差し出した。
「さぁ、皆が待っている。早く行こうか」
 にこやかに差し伸べられた夫の手に、照れたまま自らの手を重ねてフレデリカは頷いた。
「そうね、今年も喜んでくれるかしら?」
「大丈夫だよ。さぁ、会場へ行こう」
 にこやかに差し伸べられた夫の手に、自らの手を重ねてフレデリカは頷いた。
 
 半刻後――――シレジア王宮、翡翠宮殿の門が開く。

 同時に上がる大歓声!!
そこにはこの日の為に、多くのシレジア国民達が集まっていたのだ。
大通路を開けて左右に分かれた国民達、そして護衛を務める武官達。
 程なく花道となった通路を豪華な馬車が前後二台通る。
 そう、祝賀パレードである。
まず前方の馬車、そこに乗るのは勿論国王夫妻。
そして後方の馬車は、忘れてはならない本日の主役王太子夫妻だった。
こうして王家の登場で更に歓声は高まった。
 祝福の声が沸き上がる。
 沢山の祝いの声がかけられる中、王太子夫妻は仲良く仮装の出で立ち整えて、馬車に乗りながら隣の仮装した国王夫妻と共に、国民達に手を振った。
 このように大歓呼で迎えられるのは、無論シレジア王家が国民達から慕われているに他ならないが、やはり仮装がその人気に一役買っているに違いない。
 まず国王ユーリー二世は、臼布に金粉をちりばめて作った脱着式の六枚羽を着けて登場している。
 それは本人曰く『妖精の王様』だった。
 続いてその傍らにいるのは、本物のダイヤモンドのラメを散りばめた大きな尖り帽子を被り、同じくキラキラお星様ステッキを持った、自称『正義の魔法使いのお姉様』に扮している王妃イリーナである。
 決して「魔女じゃないのよ~~。お婆さんじゃないのよ~~」というのが、王妃イリーナの言である。
 そしてこの国王夫妻に加わるのが、王太子セネリオの海賊王、そしてフレデリカの赤林檎の妖精姿だった。
 ちなみに今年のシレジア王家の仮装テーマ、それは『メルヘン』。
―――― 一体どこが?と突っ込みたくなるような組み合わせだが、本人達は用意した衣装に大変満足しているので、これで良しとして欲しい。


 さて、手を振り祝い返しの挨拶をしてパレードする国王一家。
このまま馬車が向かうのは、王都中央にある大広場。
別名「ラーイの広場」であった。
 広場ひろば、それは都市や街において主として多くの人が集まるために事前に計画的に設けられた、広く平らな場所のことである。
 時にそこは公開の処刑場となったりするが、多くは人々を集めて祭儀・行事を行うための場所である。
 そしてこの日もまた、王家主催のあるイベントが行われるのだった。
この広場に集まった国民全員が待ちに待ってましたの催しでもある。
さっきまで沿道を埋め尽くしていた者達も、直ぐに民族大移動して此処に集結していた。
 それは――――国王ユーリー二世自らの開会宣言と共に始まる。
「では今年も始めるぞ!!題して『幸運の金の白詰草トリフォリムを手に入れろ!!』さぁ、皆受け取れ~~い!!我らの尊き神から贈り物を!」
「我らの神から贈り物を!」
 国王のかけ声を合図として、国王以下待機していた王妃イリーナも、セネリオも、そしてフレデリカ、他大臣数名が唱和して一斉にある小さな包みを投げ始めた。

 わーーー!!
 絶叫に等しい大歓声。
 そして、投げられた小包に大興奮して群がる人、人、人!!
老いも若きも、男も女も、子供大人も関係なく。
 拾う、拾う、時には奪うの大劇場。
 一体その中身とは――――
 
 手に入れた国民達は直ぐに中身を確認し始めた。
小包の中を開け、そこに入っているのは『お菓子』だった。
しかし彼等は、中に入っていたお菓子を口に含んで食べるのではなく、そのお菓子を割って中身を確認し始めた。
 すると。
「やったーー!!俺の”パンプキンケーキ”には銅貨・・だ!!」
「あたしの”ジンジャークッキー”には銀の指輪(・・・・)よ!!」
「くっそ~~、俺の”シナモンクッキー”は『外れの紙』だーー!!」
「へへへ、オレンジマカロンに金貨発見!!」
 そう、小包の中身はお菓子。
そしてそのお菓子の中にはお楽しみのモノが色々入っていた。
但し外れ(スカ)あり。
趣向を凝らしたお菓子が貰える!!
しかも当たり入り!!
 人々は貧富の差を関係無く喜んだ。
其れを毎年配るのは、仮装した国王一家である。
 そうこれがある催しの全貌、セネリオ提案シレジア風『ハロウィン』だった。
 これには理由がある。
まず、そもそもシレジアに『ハロウィン』がなかったのが切っ掛けだった。
そして自身の結婚記念日がその『ハロウィン』に当たる事から、何かシレジアらしくこの催しを結婚記念日に初めて行いたいと提案したセネリオ。
 国王を始めとした面々は、始めこそびっくりしたが、元々陽気なお国柄もあり、直ぐに国王裁可『許可(いいよ~ん)』が下りた。

 そしてその夜。
「ねぇ、セリー」
「何リーケ?」
 寝台の中で妻フレデリカは、疑問をそのまま口にした。
「どうして昼間、あんな催しを今度しようと思ったの?」
「君は反対かい?」
「いいえ…みんなが喜んでくれるのなら、私は喜んで手伝うわ」
「有難う」
 寝台の中の睦言。
 若い二人は当然愛をたっぷり確かめ合った後である。
 妻を腕枕しつつ、セネリオは理由を話し始めた。
「その日は結婚記念日だよ、リーケ。私達にとっては」
「それは…ええ、そうね、でもだからこそ知りたいわ教えて」
「皆に忘れて欲しくなかった、私達の結婚記念日をさ」
「セリー?」
 フレデリカは横になって、夫の顔を伺い見る。
 そこには、将来の展望を抱くシレジア王太子の顔があった。
「――――シレジアの民達にとっては、私達の華燭の典なんて何れは忘れ去られるちっぽけな出来事さ、けれどね新しいお祭りや趣向というものは、万民受けさえすればまた翌年、更に次の年と毎年回を重ねて末長く続いていく。喩え私達が年を取って死のうとも、私達が始めた試みは続いて欲しいと思ったんだ」
 それはセネリオの我が儘かも知れない、けれども確かな何かを求めようとする男の姿があった。

――――今だけではなく、これから続く未来をも求める男の夢。

 フレデリカが考えた事もない夢だ。
「セリー」
 思わず呼びかけた夫の愛称に、セネリオが気付いてフレデリカと見つめ合った。
「君はそう思わないかい、リーケ?私達がこの世界で廻り合い、そして愛を誓った証の日を、二人でこの国で生きると決めた日を、シレジアの民に残したいと……」
 そのセネリオの言葉は、彼から常に聞く愛の言葉よりも、切にフレデリカを満たした。
「ええ、私もよ」
 フレデリカは笑顔で肯定した。
妻の返事を聞いて顔を綻ばせたセネリオは、そのまま妻に口づけた。
 それから、自身の考えた催しについてやや反省を見せたセネリオはこう呟いた。
「しかし、少し独創性がないかな?フィンダリアの風習を少し取り入れただけだからね」
 やや唸り考えるセネリオに、フレデリカは訊ねた。
「それはお菓子配りの事、セリー?」
「そうそう、フィンダリアでは主にお化けの仮装をした子供達が『トリック・オア・トリート』と言って家々を廻るんだ」
「どういう意味?」
「『おやつをくれないと、悪さをするぞ!!』と言う意味さ。だから子供達が訊ねてきたら大人達は子供に『はい、どうぞ』と言ってお菓子を渡す。貰った子供達は『ハッピー・ハロウィーン』と言ってお礼を言うんだよ」
「変わった風習ね」
「そうだね、元々は厄除けの祭りだよ。色々と諸説があるけれど、フィンダリアでは11月1日から数日は死者を悼む日。死者の為に祭りを行って、死者を慰めるんだ。その行事を万節祭という。そして万節祭の前日にあたる10月31日は、死者だけでなく災厄が甦ると言われていて、それから免れる為にお化けの格好をするようになったらしい」
「あら何故?」
「仮装してお化けになる事で『私達は仲間です!!』とアピールしてるんだよ。それで災厄を運ぶ者達の目を眩まして、難を逃れようとしたのが始まりだって聞いた事がある」
「フフフ、何だか面白いわね」
「そうなんだ、他にも色々と、例えばカボチャで独自のランタンを作るし……」
 その夜、二人はフィンダリアの風習『ハロウィン』について、もっと詳しくそしてたっぷり語り合った。
 
 こうして始まったセネリオ提案シレジア風『ハロウィン』。
このセネリオの提案にまず同調してくれたのは、シレジアの国教を束ねるロマノフ大聖堂の大司教と修道士達だった。
 そうみんなに配っていたお宝、時にはスカ紙入りお菓子は全部彼等のお手製である。
 彼等は日常、様々なお菓子を作って人々に週に一度の礼拝の時に配っていたのである。
人に物を与えるということは宗教では施しに当たる。
聖職者達の協力を得る事で、お菓子を配る事が不自然でないように行えるのだ。
 次にお菓子のあげ方。
 フィンダリアでは、お菓子を求める主に子供達の方から「お菓子をくれなければ、悪戯するぞ!」と一声するが、シレジアでは「我らの尊き神から贈り物を!」と此方から人々にかける事にした。
 修道士達の手作り菓子は、神への有り難みがあるというものだ。
そうする事で一層みんなに配りやすい。
 そうすれば王族という身分高き者が、一般の民を蔑んでいると思われにくいだろうと。
 ……なかなか気を遣うのであった。

 さて、どんなに沢山のお菓子を用意しても、人の手で放り投げると言う事は、当然飛距離に限界が現れる。
 そしてお菓子を待つ人々もしかり。
「此処には全然届かないよ~~」
「こっちにも下さい!!」
「私にも!!」
 その声が次第に高くなると、何時しかこうなるのだった。 
「下さい、セネリオ様!!」
 集まった人々からご指名を受ける王太子。
そう、この王太子には必殺業があったのだ。
今となっては毎年恒例、よってセネリオは熱い民達のアンコールに応える事にした。
「行くぞ、ヘスペリス!!」
≪是!!≫
 威勢良く飛び出す海賊王太子は、自身の僕こと聖獣ヘスペリス、天馬さんばーじょんに跨り、何と空からお菓子を投げ始めた。
 こうする事で、まんべんなく提供。
しかし、それでもやっぱり数は足りないし、また全ての民に行き渡る訳でもない。
お菓子が手に入らなかった人々は、非常に残念がった。
だがこれで終わりではない。
その後はこの催しを準備していた役人達が、もう『当たり』こそは無いが、後日ロマノフ大聖堂の大司教と修道士達が作ったお菓子の無料引換券を配り始めるので、それを貰うために長蛇の列を作り始めるのであった。
 かくて今年も大盛況(?)の内に、シレジア王太子夫妻の結婚記念日イベントその名をシレジア風『ハロウィン』、またはお菓子ばらまき大作戦は無事終了した。
  
次話R-15「らぶえっち」。別名作者ほのめかさないよ篇、何処までやれるか篇かな?この31日に仕上げたい。
世界設定集 
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