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セネリオVSペリノア王〜陸戦編。
どうぞご覧下さいませ。_(_^_)_
第18話 レルカー会戦前(4)相克惨花~前編~★残酷な描写有り
第18話 レルカー会戦前(4)相克惨花(前編)



 遂にシレジア軍とリーヴェ軍の戦端が開かれた。
 両軍とも初撃は矢による応酬である。
どちらの陣営も主となる弓種は同じ石弓クロスボウだった。
これは互いに盾で防ぎ、そして応酬しリーヴェ側が先行で突進した。
この時シレジア軍は、セネリオの意図の通り丘の奪取を目論んでいる為、やや後方右下がりの『逆八陣形』に陣形を組み替えた。
 これは別名『斜行陣』ともいう。
(正確に言うと逆八陣形そのものが『斜行陣』の一種です。ここでは分かりやすいようにあえて別分けました。 閑話休題)
 さてここで斜行陣を取る時の最大の理由は3つある。
理由その1は、もし真正面から数優勢の敵を迎え撃つと、直ぐに自軍が崩壊する危険が高いからだ。
 そこで斜行ナナメから受けて敵の攻撃を緩衝する。
この事を『戦争論』の中、著者クラゼヴィッツはこう言っている『攻撃は直進せよ、防御は偏心へんしんせよ』と。
『偏心』とは中心から偏っていること、つまりずれている事をいう。
 たとえるなら、ピンと張った紙より、少し弛んだ紙の方が破れにくいと言う事である。
 つまり「守勢を取るなら斜めから迎え撃て」と言う事だ。
 そしてその通りにシレジア軍はリーヴェ軍に対し守りに入って交戦した。
その激突をもろに受けたのはシレジア軍中央歩兵部隊!!
その為、敵の勢いでシレジア軍中央は後方に押されるも、直ぐに中央軍指揮官ボゴリュープスキー将軍の叱咤号令で大きな混乱による後退は避ける事が出来た。
中央歩兵軍はそこで踏み止まり交戦していく。
その傍ら、敵リーヴェ軍の進撃が、シレジア軍の中央から右側面寄りで広がり攻めてきた事で、シレジア右翼軍が中央軍同様にそのままなだれ込むような形で、敵リーヴェ軍の左翼軍と同時交戦となった。
(※注意:ほぼ正面向き合って両軍は戦っているので、互いに軍は「右対左」のぶつかり合いとなります。よってセネリオ左翼の真ん前にいるのは敵「右翼」です、ややこしいですね。 閑話休題)
 これは布陣している地形の「東」には河があるので、東に布陣する左翼の真側面には敵は攻めては来れない。
 『南』にいる敵リーヴェ軍が『北』布陣のシレジア軍を攻め方。
この時、「西」の「右」か「北」の「正面」しかないので当然の事と言える。
もし伏兵をリーヴェ軍が用意していれば、さらに後ろの「北」から南下してシレジア軍の後背を突く事もあるだろうが、この時はそんな伏兵をリーヴェ軍は用意していなかった。
いやシレジア軍がさせなかったのだ。
 一方、中央並びに右翼の交戦が始まったのを受けた左翼軍にして大本陣セネリオは、その時副将を務めさせるシューイスキーに叫んだ。
鷲戦車隊アリオール・タンクに合図を送れ!!最左翼から丘をれと!!」
 総司令の命令が出るやシューイスキーは伝令兵に合図を出すように指示した。
直ぐに伝令兵はラッパを吹く!!
それはアリオール・タンクへの『突撃ラッパ』である。
そのラッパ音が聞こえるや、アリオール・タンクは始動する。
 これが斜行陣を取る時の最大の理由その2である。
守勢の中で反撃を狙える陣形なのだ。
 それは理由その3に繋げるためのモノでもある。
 そして敵陣突入命令が出た鷲戦車隊アリオール・タンク、現在この部隊は2部隊で編成されている。
それぞれを身に付ける部隊識別章から『クラースヌイ隊』『スィーニー隊』と呼ばれていて、この『クラースヌイ隊』をスヴャトスラフ将軍が、そして一方の『スィーニー隊』をビリュコフ将軍が率いていた。
 まずは血気盛んにスヴャトスラフ将軍が味方に号令を下す。
「はっ、行くぞ我が『クラースヌイ隊』!向日葵・・・刈りだー!!眼前に目につくモンは全て丁重に刈り尽くせ!!」
「おー!!」
 指揮官の号令の下、『クラースヌイ隊』が突撃する。
 それに負けじと『スィーニー隊』ビリュコフ将軍が命を下した。
ようやく我らの出番だ!いざ『スィーニー隊』、全車全力で左翼疾走!!敵陣を崩せ!!」
ダー!!」
 こうして今まで最左翼後方…それは守備につく味方に隠されるように控えていた遊撃部隊。
 それぞれの部隊長号令の下、シレジアの国旗をはためかせ、アリオール・タンク部隊が突撃を開始した。
これに気付いたリーヴェ軍は一気に震え上がった。
北の大国シレジア最強部隊が、遂に戦場という舞台に登場したのだから。
だがこのリーヴェ軍の驚愕は、単にアリオール・タンクが前戦投入されたというその恐怖だけではない。
 それは戦場のアリオール・タンク、その戦車車両にあるモノが装着されていたからである。
そうこの戦い、それはもう一つのアリオール・タンクの凶器となるものが初めてお目見えした記念すべき戦いであった。 
 それを見た敵兵達は大きく狼狽え震え上がった。
「な…なんだあれは!?」
「ヒ…!!」
「剣だーー!!戦車に『長剣』が付けられているぞ!!」 
 それは最前列部を疾走するアリオール・タンクの…その武装戦車の車軸部に、なんと『刃』が取り付けられていたのである。
 そうこれは…決戦前にシレジア軍が仕込んだもう一つの布石だった。

―――勝つ為にである。

 セネリオは考えていた。
 この戦いの勝敗は、全てこの小高いホールムの争奪戦に懸かっていると。
だが敵軍に先取されている以上、奪取するのは容易ではない。
 状況を打破するために、この仕掛けをセネリオは向日葵畑を見て考案した。
向日葵は多くは身の丈程に育つ大きい花だ。
そしてその茎はまるで細木の幹に等しく、やや堅い。
つまり人馬式戦車が滑走するのに、否、戦うのに邪魔になるのだ。
だから邪魔なモノは取り除く事が望ましい。
しかし広大な向日葵畑、その向日葵一本一本人海戦術で刈り取っていては時間が掛かり過ぎる。
 それならばいっそ牛や、ロバ、馬で畑を耕す様に、向日葵の刈り取りも馬で…アリオール・タンクで行えないだろうかと。
 これがアリオール・タンクに『新装備』を導入する切っ掛けとなった。
この時はまだ300両の戦車にしか取り付ける事叶わず、また車軸部固定だけの『刃』。

―――それから13年後、故国フィンダリアの窮地を救う為に挙兵するセネリオが率いた鷲戦車部隊アリオール・タンク
 簡易付の刃は幾度も改良を重ね『稼働式の刃』となり、車軸側の左右に装着するに至る。
 だがそれはまだ遙か遠い未来の話であった。―――

 こうしてアリオール・タンクは新装備を配置した車両を前衛にし突進した。
訓練同様の十列縦隊、だがそれはぶっつけ本番の今までより広い間隔走行。
敢えて距離を置くのは、もし詰めすぎれば左右に隣接する味方を、その備え付けの刃に巻き込むからである。
 そして互いに自滅するだろう。
 だから距離間隔だけはいつも以上に慎重に滑走する馭者兵である。
無論一流の揃えの手綱さばきをするアリオール・タンク馭者兵士の中から、特に選ばれた三百人が駆る人馬式戦車だ。
 彼らの操る六頭だての馬引く戦車は、ミスリル製の刃を地に平行に立て、厳しい特化訓練を受けた最強精鋭部隊の騎手が操る事により、見事な隊列行動を見せ、向日葵畑の街道を切り開き、後続の味方の為に押し広げて敵陣に切り込んだ。
一糸乱れぬとどろき駆けるその部隊。
 彼らが刈り取るは…時期尚早の向日葵だけでなく、国土を侵せし人馬なり。
敵陣に切り込めばその刃が、向日葵ごと一纏めにし逃げ遅れた敵を、時には騎乗した人馬ごと左右で分断する。
 こうしてアリオール・タンクは中距離ではクロスボウで狙い撃ちし、そして接近戦に置いては近づく者を分断するという殺傷方法力を格段に強化した、恐るべき部隊へと発展した。
 その数5千と規模が少ない戦車部隊はその威力を最大限に発揮し、丘を目指した。
リーヴェ軍は怯みながらも弓攻撃で丘を死守する。
 それに対し総大将セネリオが率いる左翼軍は、丘側へと陣形を横隊に伸ばしアリオール・タンクを支援した。
 だが一方でシレジア左翼軍は敵右翼とも激突する。
 防ぐシレジア軍はひるむことなく激しい白兵戦に突入した。
剣と槍、斧、あるいは独特の打撃武器。
中には近距離用の短弓で応戦する兵もいる。
 数では負けていてもシレジア軍は強兵だった。
それは武芸、鍛錬の差だけではない、何より手にする武器が違うのだ。
 シレジア国特産の金属『ミスリル』。
これを原料として作られた武器は切れ味鋭く、そして丈夫であり、鉄以上に刃こぼれし難い非常に高性能の武器となる。
それはこの世界―――ガイア大陸中の国々から、大金を投じても求められる最高の武器類であった。
 その武器はそれ故…高価であることから、他国では王侯貴族や裕福な騎士等にしか持てない。
 しかし生産地であるシレジア国の将兵は、なんとその武器を『一兵卒』に至るまで支給され持っているのだ。
 これもまたシレジアが列強国と云われる所以でもある。
 他国人は云う「下手な傭兵十人相手にするより、シレジア兵一兵の相手の方がより恐ろしい」と。
 このシレジア軍とリーヴェ軍の武器の優越も又戦力比を大きく左右する。
 この武器の優越が有利に働き、シレジア軍は数が劣勢ながらも善戦していたのだ。
 そしてこの最前戦の中心に王太子セネリオが居た。
この時彼が操る剣は別名「王家の剣」と云われるものである。

――――それは国外に輸出されているミスリルとは別の特殊工程で作製される、門外不出の『ミスリル』によって作られた剣。

 国王ユーリー二世がセネリオに与えたシレジア王家の秘蔵剣である。
謂わば王太子の証でもあった。
 そして今、セネリオはその証たる剣を握り、自らの身を再前戦に晒しその陣頭に立つ。
王太子の……一目で大将と分かるその鎧目掛けて、敵将の首級を狙う兵達を次々と彼に襲いかかる。
 それをセネリオは右からも、はたまた左からも、途切れなく襲いくるその刃を、ほとんど一合で切り払う。
 その勇壮なる姿に味方は呼応され、「王太子に続け!!」と戦い、敵兵はそのあまりの強さに怯みを見せた。
 そして遠く離れた陣営から、その最前線の様子を見続ける敵総司令官がいた。
ノーサンバランド国王ペリノアである。
この時敵リーヴェ総指揮官でもあるペリノア王は叱咤する。
「怯むな!!左翼は忘れ、まず敵陣になだれ込め!!」
 右翼(リーヴェ軍からはそうなる)を崩され、丘を奪われそうになりつつも、ペリノア王はシレジア軍の中央分断・・・・に力を注ぐ事にしたのだ!!
 この時のリーヴェ軍の行動はシューイスキーの戦況報告が物語る。
「敵全軍こぞって中央に向かっていきます!!」
 まるで悲鳴のごとくシューイスキーは白兵戦まっただ中のセネリオに叫んだ。
 セネリオも向かい来る直近の敵を退け、呼吸をやや乱しながらも敵方に振り向き確認する。
 それはかん声を上げ、白煙のような埃を立ちこめさせ、シレジア軍中央に向かって騎馬隊を中心にした敵陣が怒濤のごとくこちらに迫りつつ有る姿だった。
突撃フォーサーー!!」
 総指揮官ベリノア王の号令の下、リーヴェ軍の本隊が中央に集中し殺到する。
左翼を制して丘を死守することを止めた敵が中央に戦力を集中させたのである。
 これには中央歩兵部隊も再び押され始めた。 
 これを防ぐためにセネリオが行動を開始した。
「左翼中央転進!!」
 味方の分断を防ぐため、左翼が援護に廻る!!
 同じくガーリチ将軍配下の右翼も同様に中央支援に廻った!!
 こうして戦いは激戦をより深くしていった。

 やがて戦闘開始から数時間が経過した。
だが両軍の決着はまだ着かない。
互いに被害は、戦渦は…拡大する。
 シレジア軍は数に負けて被害を大きくし、一方でリーヴェ軍は強国シレジアの兵に圧倒されて……

 この時セネリオは戦闘の予測を外している。
 敵がシレジア左翼・・に殺到しなかったからだ。
これは敵リーヴェ軍が丘を獲る事よりもシレジア軍の分断を選んだ為である。
言うなればペリノア王がシレジア軍の行動を読んでいたとも言える。
 丘を『えさ』にしてシレジア軍の中央守備を手薄にしたのだ。
しかしすぐさまセネリオの左翼軍と、ガーリチ将軍率いる右翼軍がフォローに徹し、何とか敵の中央突破とそれに続く軍の分断を必死に防いだ。
 この間、遂に丘の主導権を握ったアリオール・タンクは、高所を確保するも味方と離されてしまった。
 それは敵リーヴェ軍に挟まれた形である。
 今のアリオール・タンクは機動部隊であるにも関わらず、高所からクロスボウを放ち攻撃し、一時待機のような状態である。
 高所は敵の弓威力を削ぎ、かつ自軍の敵の弓威力を高める。
下から物を上に投げる原理と上から物を落とすのと同じ原理だ。
つまり引力の法則、落下の法則である。
 しかしこのままでは済まさない!!
 『クラースヌイ隊』のスヴャトスラフ将軍も、そして一方の『スィーニー隊』ビリュコフ将軍も戦局を睨み時機を待つ。

 他方、敵リーヴェ軍総指揮官ペリノア王も又、数に物を言わせた戦いにならずに苦戦を強いられた事に内心穏やかではない。
 
 やはり強い!!

 それがペリノア王のシレジア国の軍隊の評だ。
兵も武器も…そして何より、その敵総指揮官の大胆さ。
完全防御で守りきるのではなく、攻撃を仕掛けるその度胸!!

 それに対し自ら率いるリーヴェ軍は…実際はリーヴェ連合軍である。
しかもその比率は、リーヴェ正規軍1割に対し様々な『同盟国』の兵が寄せ集まった連合軍である。
それはペリノア王の国ノーサンバランドと同様に、隷属されたような国々。
戦う事を強制された国によっての連合軍。

――――いうなればこの軍はリーヴェ軍の捨て石同然だった。

 この時ペリノア王も又、開戦前の偵察隊により、敵軍の位置等を把握している。
その中で誰が敵シレジア軍を率いているのかも知った。

――――シレジアの王太子。

 その名をセネリオ・レグランド・ディス=ツァーリ・フィンダリア=シグルフ。
姓の示す通り、ガイア大陸最古の歴史を誇る国……フィンダリア帝国の第三皇子。
 フィンダリア、そしてシレジア……どちらも同じ大国。
大国に生まれた皇子、そして大国の王太子なった皇子。
大国の……

 そう思うや、まだ若いその王太子にペリノア王は…こう心で叫ぶ。

「分かるまい、汝には分かるまい。我が身の苦悩を、我が民の嘆きを分かるまい!!小国であると言う事が…国が弱いという事は!!」

 そしてペリノア王はこんな格言を思い至る。

 戦争は各国の王たちの取引である――――。

 所詮は強国に…リーヴェの王に…エゼルレッド十二世の食い物にされたのだ。
だが自国を…彼の王の云うままに占領したファレイナ国の様にするわけにはいかない。 望まぬ戦いを強いられた男は、それでもその全てを懸けて陣頭で軍の指揮を振るう。
勝つために、生きるために、祖国に帰るために…と。

 こうして開戦から半日が経過しようとしていた。
互いに戦死者は一割を超え始め、それでも決着は着かない。
人である以上、戦う事に限界が訪れる。
 よって日没と共に軍を退くのが世の慣わし。
この戦いは翌日へと続くだろう…そう両軍の各々の将が考え始めた時だった。
 シレジア王太子セネリオが采配を振るう刻が来たのだ。

 戦局打開へと――――。

 この戦いの行く末は……次話で着くかな?(^^;)
つたない小説を最後まで読んでいただき有難うございました。何か表現等でアドバイスがありましたらお待ちしております。
世界設定集 
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