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約2Wぶりです。その間に「R−18」の本編で5話ほど書いたりしてました。設定集も作りましたしね。
急に話がぶっとび序章に時が戻ります。
第14話 レルカー会戦前(1)不協和音
第14話 レルカー会戦前(1)不協和音


  我らの前に道は無し、我らの後にこそ道が創られる――――


 再び時は移り――――
二十歳であるセネリオ・レグランドは、大運河都市レルカーから少し離れた街道都市『パトソールニチニクグラード』にその身を置いていた。
 理由は此所から数キロ手前で敵リーヴェ軍を迎え撃つ為である。
わざわざレルカーより前方に出て来たのは、敵の進軍速度が思ったよりも早く、また味方の歩兵主軸陸戦部隊と少しでも早く合流する為でもあった。
 決戦の地というものは、先に選んだ者勝ちである。
それに戦場が自国シレジア内である以上、出来る限り戦渦の及ばない地域グラードが望ましい。
いや、そうしなければならないと考えた王太子セネリオは、敢えて此所を選んだ。
敵をおびき出す餌があり、そして被害を最小限に抑える事が可能な場所。
 それがこのパトソールニチニクグラードであった。
 そもそもパトソールニチニクグラードは運河都市レルカーとシレジア王都ホルムガルドを結ぶ中継都市として栄えている町である。
 パトソールニチニクグラード、それは『向日葵ひまわりの町』と言う意味で、その名の通り、夏の代名詞である向日葵が多く栽培されている町。
この町の周囲は、至る所にさまざまな種の向日葵が咲き誇り、まさに初夏である今が見頃となりつつあるのであった。
 パトソールニチニクグラードは豊かな都市だが、そこから少し外れるとこの周辺数キロ先は、土地がやや痩せており民家が少ない地帯である。
 よって向日葵畑が広がるこの郊外、民家もまばらで人的被害を最小限に抑えられる。
もっとも事前にシレジア王太子の名で非難勧告を住民に通達しているので、農民達も逃げている事だろう。
 さてこの向日葵、元々はシレジアの原産種ではない。
つまり貿易により伝えられた物である。
そして向日葵というものは、実は万能植物なのだ。
北国でも良く育ち、種子は食用、そして特に油脂加工が出来る事から重宝され、ここシレジアでは伝来後、瞬く間に栽培される植物となっていた。
 土地がやや痩せていて、麦栽培には適さない土地でも向日葵は良く育った。
特に栽培に力を入れていたのがこのパトソールニチニクグラードで、さまざまな品種改良を行って、より食用に向いた品種、油脂用品種、そして観賞品種を作り上げている。
また一方では別の向日葵研究が進み、廃材料同然だった茎から何と『紙』を作る事にも成功している。
この紙製法の新発明は非常に画期的な事であった。
今ではこの『向日葵紙ブゥマーガ』がシレジアの庶民の使い紙として出回っていた。
残念ながら紙質の方は、流通している『通常紙かみ』や羊皮紙に比べて今一つであるが、これはこれからのシレジア王国の研究課題になるであろう。
また安易な紙の流通により、シレジアは国民の識字率が非常に高い国となっている。
これは安価な紙が容易に手に入る事が、国民に字を書くという習慣を作り上げたからである。
 識字率、これは文化の発展において重要な要素である。
 文明の高さは国力の強さと密接な関わりがある――――。
 シレジアが富国強兵なのもこの辺りが所以の一つであろう。 

 そんな中、本格的な布陣を前に王太子セネリオは『愛鳥わしヘスペリス』と共に、この地域名物の向日葵畑を見ていた。
「綺麗だねヘスペリス、宮殿にも向日葵は咲いているけれど、これ程沢山ではないし…圧巻だね……」
≪はい……≫
 表情は明るいセネリオ、だが追随する『鷲』は主とは違うように見えた。
「ほら、あれなんかガーベラみたいに真っ赤で美しいよ……」
≪主…≫
「リーケに見せて上げたいね……」
≪主…無理に元気になさらないで下さい≫
 主が無理をして明るく振る舞っている様に耐えきれず、そう『鷲』は声をかけた。
 その気遣いに感謝しつつも、セネリオは止めなかった。
「……無理でもそうしないといけないさ。臣下に不安を与えてはならない」
≪主……≫
「初めから分かっていた事だ……。ただね、こう面に向かって言われたのは本当に久しぶりだった…ただそれだけだよ……」
≪…………≫
 そうセネリオはほんの少し、表情に哀しみをたたえて呟いた。

――――「フィンダリアの皇子であった者の言など、直ぐに信用できるか!!」

 これが王都ホルムガルドからほど遠いレルカーの盟主達に、シレジア王太子であるセネリオが軍議の席で言われた言葉である。
 この時の軍議に臨んだ半分以上のレルカーの名士達が、セネリオ個人に対して非好意的であった。
 祖国フィンダリアからは完全に縁を切られ、そうしてシレジアに暮らし始めて早四年、そう…もう四年も経過したのにも関わらず、未だセネリオはこのような目に遭う。
宮廷内では最早文句一つ無い立派な王太子ぶりを発揮しているセネリオだが、一度地方都市に出るとまだ強い抵抗勢力を感じるのであった。
 セネリオは…今もなお、正式に王太子ツァーリーとして認められていないのだ。
 出自だけでセネリオをまだ否定する者……これはレルカーの過激派と言われる者達に多かった。
 次に中立派と言われる者達の中からもこんな声が……

――――「ええ、確かにさようでございましょうとも殿下。フィンダリア帝室ご出身たる御君には何せ『聖獣』がついて居られるとの事。かつて聞き及びました初陣・・の時のように、その『聖獣』に命じてドラゴンブレス一つで、貴方だけでも勝てるでしょうな」

 これは過去を持ちだした者の発言。
この嫌味を言われたセネリオは、自嘲した。
ああ、そうだったなと。
肩に乗せていた『鷲』を撫でて、「何もするな」と無言で命じた。
 話題に上ったシレジア王太子の初陣。
綿密な準備と、軍備に作戦を軍首脳人に見せ、なるべく犠牲の出ない反乱鎮圧を目標に掲げた新王太子セネリオ軍。
 そこで華々しく勝利……するはずが、張り切りすぎた『ヘスペリス』が大暴走した。
巨大な竜に変身した『聖獣』は、問答無用の大攻撃をした。

――――ドラゴンブレス。

 前面に布陣した敵軍は、一瞬の内にドラゴンブレスで灰燼かいじんのごとく四散した。
 その灼熱の咆吼の前では、人間など無力。
 その炎を放たれた敵兵は、叫び声は一瞬、そして同じように体は瞬時に灼熱の炎に焼かれるのではなく、あまりの熱温で蒸発し消え去ったのだから。
 反乱軍が実際の刃を合わせずに消滅した事で、味方の軍勢は最初こそ度肝を抜かれていたその驚異なる『力』。
 だがしばらくしてそれは歓喜となり、瞬く間に味方に広がった。

――――味方の被害ゼロ、完全勝利だと。

 しかし、セネリオだけは違った。
率いていた兵達が勝利に湧く中で、彼は『聖獣しもべ』に懇々と説くのである。

「もうその『力』だけは使わないでくれ」

 そう前置きし、その理由を語り始めた。

「――――もう一度言うよ、もうその『力』だけは使わないでくれ。例え『私の為』であってもだ。確かに君のその『力』はすごい。その『力』があればきっとこれから先は、ずっと『君』がシレジアにある限り、この国は負け知らずだろう。だが、その『力』、それは人には過ぎた『力』なんだ。戦場でもしそれを使えば、もうそれは『戦い』とは言えなくなる。明らかに一方的な『大量虐殺』だ。………それは本当に『勝利』であろうか?『正義』はあるのだろうか?イヤ、『戦争』に『正当性』を求めるのもおかしな話か………だが、その『力』だけは金輪際・・・もう使わないでくれ」と。

 これ以降、反省した『ヘスペリス』はその力だけは使わぬ事を誓約した。

 さてこの初陣…結果的には勝利には違いないが、これによりセネリオは戦術能力などは一切その真の実力を見せる事が出来ずに終わった。
 そしてこの初陣話だけが一人歩きし、現在シレジア中に広まったのである。
それから幾度かの小規模抗争で武力衝突し、正統な戦争で勝利を飾っても…余り実力などは評価されなくなったセネリオである。
 何でも「聖獣がいたから勝てたんだろう」と決めつけられてしまうが故に。
 口惜しい事この上ないが、致し方ないのである。
その事を悟りの境地の心で受け入れるセネリオだった。
今は堪え忍ぶしかないと……。

 だが、出自、初陣のケチ付を更に上回る悪意の極めつけはこの…発言だった。

――――「……そう言う事は、お早く『跡継ぎ』を儲けられてからおっしゃていただきたいですな」

 セネリオはこの言を放たれた時、辛うじて怒りを収めた。
これは彼だけでなく、彼の正妃つまに対しても不敬な発言である。
流石にこの言を口走った者は、他の者からもすぐさま咎められたので、セネリオは平静を保つ事に務めたが。

――――この時セネリオと妻フレデリカとの間にはまだ子供がいなかった。

(彼らが望むのは現王太子わたしではない、私が現国王長女フレデリカに与える子供なのだ……)

 そう思い知らされた一言でもあった。
 そんなセネリオとフレデリカ…夫婦仲は悪くはない、むしろ仲睦まじい。
愛ある生活を送っているが、結婚生活四年目にも関わらずに子宝に恵まれていなかった。
世の中には子がいなくても幸せな夫婦もいるだろう、だがそもそも王統の継続を求められての婚姻であった彼らは、そういうわけにはいかなかった。
その事を気にするのは…セネリオも勿論気にはなるが、何よりシレジア国王夫妻の方が心配しており、そしてその事を正妃フレデリカは心痛めていた。

――――愛妻リーケは、結婚して子が出来ないのを非常に気にしている。

 こればかりは…セネリオでもどうする事も出来なかった。
神頼み…であった。
 
 そんな守るべき者たちより心ない中傷を受けて来た王太子は、向日葵畑を見つめ…感傷に浸る。
 沈思の中、ふと昔を思い出す。
 それはまだフィンダリアにいた頃の事。
 言葉であった。

――――「……人語解成人和加流加?人真相解念悟斯阿伊多氣禮婆、曾禮伊士餘宇能物袁斯理許登陀」
訳:(…言葉が解れば人が分かるか?人を真に理解し合いたいのなら、それ以上の物を識る事だ)

 それは…かつてセネリオが『彼』から言われた言葉である。
 しかしそう言われた当時のセネリオには、その発せられた言葉と共に翻訳された『彼』の言葉の意味もよく解らなかった。
 だが今なら――――
 『彼』が初めてセネリオと出会った時に、何故…話せるはずのフィンダリア語を使わずに、えて自国の言葉でセネリオに語りかけ、そして時を過ごしていたのかを。

(――――ごめんよ…。あの時の私は…まだ『兄上離れ』も出来ず、そして君の心が分らない子供だった…。その真の意図が…君が私に伝えたかった事が……)

(――――言葉が通じるから理解し合っている訳ではない……)

(――――同胞だから…同じ国民だから、仲間であるとは言い切れない……)

(――――そんな簡単な事だったのに、あの時の私は…その事が解らなかったんだ……)

 そして現在のセネリオには…『シレジア王太子』セネリオには、あの時『彼』が言った『言葉』が身に染み入るのであった。

 己を信じて貰えぬ哀しみ、わかり合えぬ苦しみ。

 それを心に抱く今の彼には……
 
 思い出すはあの日の邂逅かいこう
 今は遠い遙かなる記憶。

  セネリオと『彼』との初対面は、兄の収監…いや引き籠っている『かんの塔』の前だった。

『坎の塔』――――
 それはフィンダリア皇城内の最北深部にそびえる塔である。
別名『獄門塔』――。
 代々特に重い犯罪者――――帝室に対して不敬を働いた者、さまざまな国家反逆罪に問われた者達が朽ち死ぬまで収監される塔。
五階層からなる堅城なるくすんだような赤い壁は、その周囲の雰囲気も相まって異様な寒気を感じさせる。
 その塔からは囚人達の異様な叫び声、うめき声が聞こえてくるので昼間でも人は近づかない。
それは無き囚人達の怨念をも感じさせられる。
塔の内部の作りも所々に仕掛けがあり、入り口は一つ、出入り口は三重の鋼鉄の扉。
しかも中からしか開けられない。塔の中は最上階を除き窓は無く、只明かりを取る隙間が申し訳なさ程度にあるだけだった。
 中に入った罪人ものは死を待たずに発狂するという、そして生きて出ることはないとされる――――フィンダリアにとっての恐怖の象徴。
 そして最も恐るべき事は…この塔には古の聖女がかけた封印が残り、何故か『聖獣』達はその本来の『力』を封じられるという。
 まさに難攻不落を誇る塔。
 
 そんな場所に今、兄リオンがいて――――その塔の前で佇んでいた『彼』をセネリオが見つけた。
 陽の落ちたその場所は…何時(いつ)何が出てきてもおかしくない異様さがある場所。
現に今も塔の中からは不気味な叫び声が聞こえる。
 そこで出会った異国の若者。
年の頃は兄皇太子と同年だろう、上等なきらびやか異国の服、そして驚くべきは肩に連れている美しい『鳥』。
 孔雀に似ているが、色が全く異なる。
そう雄の孔雀なら瑠璃色系統だが、『彼』の連れている鳥は正反対に桜桃色混ざりの…緋色系の鳥だった。
 そんな鳥を初めてセネリオは見たし、そして更に驚愕するは『彼』の容貌。
女と見紛うほどの麗人だった。
 彼とは異なる金髪…黄檗色きはだいろの髪、そしてその瞳は透き通ったまるで紫水晶を思わせる藤紫色。
恐らく先に顔を見ていれば…女だと誤認しただろう。
 思わず『男』に見とれてしまった少年皇子と、そしてセネリオの気配に気付いた『彼』。
 我に返ったセネリオは誰何すいかした。
「…見たところ兄上の遊学先の国の者だな、お前一体何者だ?ここで一体何をしている」
 彼はセネリオの顔を凝視したが、まるで心当たりがあるようにその名を言った。
「……世禰利王セネリオ?」
 初対面の彼に…名を言い当てられたセネリオは、怪訝な顔した。
「何故…私の名を知っている?」
 それを尋ねられた男は、僅かに目元を細めた。
璃王无りおん……」
「兄上を知っているのか?」
「汝能名袁彼加良聞伊提知都弖伊流。酷似弖伊流泥…佐須賀波『岐餘宇陀伊』」
訳:(君の名を彼から聞いて知っている。よく似ているね…流石は『兄弟』)
 重ねて問いただすセネリオに、彼は自国の言葉で語った。
 だがセネリオにはその言葉は理解出来なかった。
「?おい…お前、フィンダリア語…話せないのか?」
 この問には『彼』は答えなかった。
「……何を言っているかは解らない……だが、ここは立ち入り禁止区域だ。近衛に見つかればただではすまない、早くここから離れるんだ」
「気遣伊波良伊情賀氣陀、佐須賀波璃王无能『弟』余…」
訳:(気遣いは良い心がけだ、さすがはリオンの『弟』よ…)
「『リオン』…と言ったのは理解できた、何か兄上と較べたのか?お前?」
「感賀良伊事母、兄譲理加那」
訳:(感が良い事も、兄譲りかな)
 セネリオには『彼』の言葉は解せない。
一時期は熱心に教師について覚えた彼であったが、兄と一緒に遊学出来ない事を知った時から、彼はその言葉を習うのを止めたからである。
だが不思議な事に…たとえ自分セネリオが理解出来なくとも会話が成り立っている様だと、この時彼は思った。
 その一方で相手の『彼』の方はというと、そんなセネリオをほくそ笑んだ。
 そして『彼』はセネリオに近づき……
「な、何をするんだ?」
「………伊伊加良知餘都登弖都陀延!」
訳:(良いからちょっと手伝え!)
 セネリオの腕をガシっと掴み、強引に引きずるように『彼』は少し場所を移動する。
 それは塔の入り口とは反対側、最上階の塔の窓がある場所。
此所に連れて来られたセネリオは、はっとした。

(此所…は…確か兄上が……)

 そう『彼』がセネリオを強引にひっぱてきたその辺りは…兄であるフィンダリア皇太子リオンのいる場所だった。
高くそびえる『かんの塔』の5階、つまり最上階は、身分ある者を拘束する『貴賓室』。
 既に『罪人』ではない兄は、此所で毎日過ごしているはずだった。
 会いたくても、面会してくれない兄。
 たった一度だけ…会ってはくれたが、それ以降は『レイ』を介しての手紙のやり取りしかしていない。
 そんな兄……。
 
(兄上のいる場所…しかし、何故コイツは…?)

 そうセネリオが思惑し始める傍ら、『彼』はそんなフィンダリア第三皇子を気にする事なく何をするのか準備をはじめた。
 地面を足で踏んで確かめて、塔の頂上を確認するように眺め、そして距離を測るように歩幅を歩き、適度の所で立ち止まった。

(な…何する気だ?)

 セネリオはその様子を注視していると、不意に『彼』はセネリオに振り向いて手招きした。

(こ…『来い』と言っているのか?)

 どうやら刺客では無いようなので、少し警戒を解いたセネリオは『彼』の直ぐ側に近づいた。
「何だよ?」
 会話が通じるか分からない相手に思わずそう尋ねるセネリオ。
一方の『彼』は微笑して、携帯していた空五倍子色うつぶしいろの手荷物袋をセネリオに手渡した。
「?」
 差し出された携帯袋の中を開け、中身を確認したセネリオ。
 入っていたのは『筒状』の物だった。
 それは……
「これ…は?」
 数本入っていたが、その内の一本手に取ってマジマジ見つめるセネリオ。
 それは手で持てるほどの長さ…約30センチ前後ほどで、下にはすえ置き台と紐らしきものがついた変な筒だった。
  
 (何だか怪しい物体だな、何だこれは?一体何に使う物だ?)

 未知なる物体との遭遇に思わず「?」を浮かべる聡明な皇子。
そんなセネリオに『彼』は手を出しジェスチャーする。
言葉が分からないセネリオは、そんな『彼』の行動を解読しなくてはならない。
「……この『筒』を寄越せと言っているのか?」
『彼』はコクリと頷いた。
 どうやら『是』らしい。
「ほら……」
 そう言って一本渡すセネリオ。
『彼』は受け取ると、地面に置いた。
 置き終えるとまた『彼』はセネリオに手を出す。
「……まだいるのか?」
 コクコクと『彼』は頷いた。
 仕方がないのでまた手渡し、そして同じ様に『彼』は先に置いた『筒』よりちょっと離して、並べるように地面に置いた。
 ……それをセネリオと『彼』は、何度か繰り返した。
 そうして袋に入っていた『筒』を全て並び終えた二人。
 終わったのでセネリオは何をするのか聞いた。
「これからどうするんだ?」
 セネリオには『彼』の言葉が分からないが、何故か通じるようだったからだ。
『彼』はクスリと笑みを見せ、それから少し並び終えた『筒』から離れ…、そしてセネリオにも手招きした。

(また『こっち来い』と言っているのか?)

 この頃になると、既にセネリオは『彼』に対して警戒を完全に解いていた。
だがそんな中でセネリオは…漠然と何かを感じ取る、『彼』には不思議とそうさせてしまう何かがあった。
 素直にセネリオは彼の隣に移ると、彼は指を鳴らした。
「!?」
 鳴らすと同時に一番左端の『筒』の紐が着火し、そして燃えていき…『筒』から音が上がると同時に光体が藍空に上がるや…破裂!その空に赤、青、黄、緑の四色の美しい流れ星のような光景が生まれた。

(ハ…ハレルヤ!!)

 それはセネリオが初めて見た『音と光が織りなす夜空の炎の芸術』――――異国・・の『花火』であった。
 
 フィンダリアの『花火』――――それは、硝石、硫黄、木炭を配合した黒色火薬を中心に塗料を混ぜ、かなり大がかりな物である。
使われ方は祝砲、時には戦時での合図である、つまり昼間・・に使う『煙』と『音』が出る物。
謂わば綺麗な煙と音が出る『狼煙のろし』同然で、このような光彩を放たなかった。
 だから驚いたのである。
こんなに小さくて、こんなに美しい『花火』を。

(花火の歴史は古くBCの中国、火薬の発明からである。それがAD13世紀にヨーロッパに伝わり、花開くは『イタリア』。その後日本に入るのは『鉄砲伝来 1543年』で、それから日本が独自で美しい花火を改良し作り上げ、日本の花火は世界一精巧で華麗と謳われ世界に80余国に輸出される人気商品なのだ。   閑話休題)

「凄い……」
 その刹那の夜空の美に感動したセネリオは呟いた。
 隣の『彼』はそんな異国の第三皇子を見て笑い(こぼ)れた。


そしてまた過去へ……「彼」の本名は何にしようかな?(^^;)
ああ、アリオールタンクの秘密はお預けになってしまいましたね。すみません。_(_^_)_
つたない小説を最後まで読んでいただき有難うございました。何か表現等でアドバイスがありましたらお待ちしております。_(^v^)_。
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