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3.

「それ、もしかしなくても私に言ってる?」

「ひょえっ!?」


 男の子は、びくんと跳ねて声を裏返していた。怖がらせているのだろうか。私はショーウィンドウのスペースから、床によじよじと降り立つ。ちら、と見渡すと、どうやらここはお店のようだった。それも、人形店だ。棚にはビスクドールや、ぬいぐるみが所狭しと並んでいる。どの子もお美しいご尊顔をしていて暫く眺めていたい感情に駆られてしまうが、今は少し抑えておこう。それにしても、店の端っこにやたら大きな人形が佇んでいる。2メートルはあるだろうか、黒人の女ピエロの人形だ。あれは、ちょっと可愛くないな。いや、それよりも、目の前のもやし男だ。


「あんたか……あんたが、私をこんな目に合わしたんか!」

「ふえっ、ひょええっ!?」

「成敗しちゃる!」


 少年は私の姿を見定めると、驚きからか恐怖からか、もう腰が抜けて動けなくなってしまっていた。更に、舌が縺れたのか、言葉を発する事ができないみたいだ。……怒りが湧き上がる。

 私の様に愛らしい少女をテディベアに作り変えてしまうとは許せん! 絶対に許せん! 具体的に言うと、生かしておけん!


――憎悪 LV.1を獲得しました。


 なんか知らないけど変なの出た! いや、そんな事はどうでもいい。私はずいずいとその少年の前へと立ちはだかると、大きく振りかぶって全身全霊のベアナックル(くまぱんち)を叩きつける!


「死ねーっ!!」


 ぽふん。


「……まあ、効かないんだけどさ」

「ひょええええ!? モンスター!!」


 モンスター?

 マジか、なんだその怒涛のような展開は。この期に及んで、遂にはモンスターまで現われたのか。ファンタジー此処に極まれりですか。私は攻撃力ゼロ(もしくは、愛らしさで相手を回復させることができるだろう)のふんわりくまぱんちを下ろす。

 見あげると、少年はがたがた震えながら、後退りをしていた。どうしたのだろう。私の後ろに何か余程恐ろしいものがいるのだろうか。……と、振り向いてみたが、特に誰もいなかった。という事は。


「……えっ。モンスターって、私?」


 少年はこくこくと頷いていた。……えっ。えっ。


「私、モンスター?」

「オートマタ……!」

「私、オートマタ……?」


 自動人形オートマタ

 それは、ええと、確かに。自律起動するテディベアは、確かに、オートマタだ。オートマタだけどさあ。


「私モンスターになっちゃったのーっ!?」


 それは、うら若き可憐な乙女として、どーなのよー!?

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