「本当なのですか」
「はい」
嘘みたいな話だけど、ミルは本当にアヴァンに詳しい。まえに住んでたらしくて、細い裏道まで知ってるほどだ。当然あたしたちの付け焼刃の知識なんて、足元にも及ばない。
――あの調子で、他のこともやってくれるといいのに。
そう思うほど、これだけは見事だった。
まぁだからといって、かき回されない保証はないのだけど……。
「ルーフェイアがそこまで言うなら、彼女も連れていった方がいいんだろうな。
そうするとあとは、誰か上級隊から1人……」
言ってシルファ先輩が考え込む。
確かにこの人選、間違えると大変だ。あたしたち下級生はともかくとして、一緒に仕事を進める相手との相性が悪かったりしたら、できるものまで失敗しかねない。
けど、ロア先輩はまだ資格がないし……。
「エレニアあたりが、いいかもしれませんね」
黙ってしまったあたしたちに、タシュア先輩が言った。
「エレニア? 春に私たちと一緒に合格した、彼女のことか?」
「他にこの学院に、エレニアという名の生徒はいませんよ。
若干15歳で、経験はやや不足ですが、彼女なら上級隊の中でも優秀な部類に入るはずです」
タシュア先輩、自分もいちおう同い年なのは棚に上げて、冷静に指摘する。
でも、言っていることは間違ってない。
上級隊は普通の傭兵隊と同じで、受験資格は「満15歳以上」。でも実際には、この年で昇格するのは至難の技だ。
だけどその離れ業をタシュア先輩とエレニア先輩、やってのけている。
いろいろ事情がありすぎるタシュア先輩はまだともかく、学院へ来る前はまぁ普通にしてたらしいエレニア先輩は、 つまり相当優秀ってことになるだろう。
「在学生に回ってくる任務では、教官に相手を頼むわけにはいきませんし、主だったメンバーは今回の建国祭に出ていますし。
彼女なら女性ですから、クライアントの意向にも沿うでしょう」
「――そうだな」
シルファ先輩がうなずく。
あたしもこの話は、けっこう嬉しかった。ロア先輩ほどじゃないけど、エレニア先輩のことはよく知ってる。文句なんてあるわけなかった。
「えっと、じゃぁ、あたし……訊いてみます。ロア先輩に聞けば、どこにいるか、すぐわかりますから」
「いやでも、そのくらいは自分で頼まないと……」
シルファ先輩、意外とこういうところはきっちりしてるみたいだ。
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