力の行方 ルーフェイア・シリーズ08(32/65)PDFで表示縦書き表示RDF


力の行方 ルーフェイア・シリーズ08
作:こっこ



Episode:32


「素敵な、プレゼントですね」
「ああ」
 そのまま2人で黙ってしまう。

 シルファ先輩はとても口数が多いとは言えないし、あたしもミルやナティエスのようには喋れないのだから、当然といえば当然だ。
 けど、こうしてるのは嫌いじゃなかった。
 手にしているグラスの中身を飲みながら、なんとなく暖かい雰囲気に浸る。

「ルーフェイア、ここだったのか」
 それを破ったのは、シーモアの声だった。
 彼女が着ているのは、銀色のドレス。袖なしで、前合わせのちょっと見かけないデザイン――誰がこんなの作らせたんだろう?――で、身体にぴったりとはりついている。
 髪も結い上げてるから、まるで別人みたいだ。

「なに?」
「いや、また殿下があんたお呼びだから、探しに来たのさ」
「また……?」
 どう考えても多すぎないだろうか?

「ともかく、行ってくれないか? あたしらじゃ、てんでダメらしいからね、あの殿下は」
「あ、うん。
 えっと先輩、ちょっと失礼します」
「気をつけるんだぞ」

 シルファ先輩の声を背中に、シーモアに先導される格好で会場を横切る。
 エレニア先輩といっしょにいた殿下が、あたしたちを見つけて近づいてきた。

「ルーフェイア、時間はあるのか?」
「あ、はい。殿下のお傍にいるのが、任務ですから」
 時間も何も、このためにいるとしか言いようがない。

「そうだったな。ちょっと一緒に来てくれないか?
 ――他の者は少し、下がってもらいたいんだが」
「それは承諾しかねます」

 エレニア先輩――ハイネックに、裾だけ広がったデザインのドレス、すごく似合ってる――が即座に反対した。
 それもそうだろう。何かあった時に護衛があたしひとりでは、殿下をかばいきれないかもしれない。
 でも殿下、そのくらいじゃびくともしなかった。

「それならお前たちへの依頼を、解消するだけだ。行くぞ」
 こう言われたら、やりようがない。エレニア先輩が歯噛みをしているのが分かる。
 ただその時、目があったミルがウインクした。そして彼女、小さく手を振る。

――そうか。

 いったいどうしたわけか、ミルはこの会場の構造に詳しかった。おそらくこっそり、付いてきてくれるつもりなんだろう。
 彼女がどうにかしてくれることを祈りながら、殿下と一緒に会場を歩く。

 きらびやかな屋内。
 南側の庭に面したこの大広間は、透き通ったガラスがふんだんに使われてた。日中はそれに日の光が反射して、とてもきれいだっていう。
 ただ今はもう夕暮れを過ぎているから、代わりに無数の灯りの光が反射して、やっぱり複雑に煌いていた。









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遠き風に願いし君は 純愛ファンタジー? 長編です

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