力の行方 ルーフェイア・シリーズ08(31/65)PDFで表示縦書き表示RDF


力の行方 ルーフェイア・シリーズ08
作:こっこ



Episode:31 策略


◇Rufeir
 こんな会場にでるなんて、久しぶりだった。
 立食式の会場は、たくさんの着飾った人々で賑わっている。
――この黒いつぶつぶののったパン、おいしい♪
 ただ今日は幸いにも、あたしを知ってる人はほとんどどいない。いわばアヴァン国内の内輪だし、一方であたしはごくたまに財界関係に顔を出す程度だから、面識がない人ばかりだ。

 殿下には今は、エレニア先輩とミル(!)がついてくれてる。いずれにせよ会場の内外はかなり厳しく警護されてるから、あとは誰かが殿下に張り付いていれば、ほぼ大丈夫だろう。
 もっとも油断はできないから、残りのメンバーも遠巻きにするようにして気を配ってはいた。

――あ♪
 シルファ先輩の後ろ姿をみつける。ナティエスたちが選んだ薄紫のドレスが、とてもよく似合っていた。
 タシュア先輩が見たら、なんて言うだろうか?
 あたしだけ綺麗な先輩を見て、申し訳ないような気がする。

「――シルファ先輩」
「あ、ルーフェイアか」
 声をかけると、先輩が振り向いた。

――あれ?
 よく見ると先輩、最初にナティエスたちが選んでいたのとは違うアクセサリーを付けている。
 銀の鎖にさがる――これは水晶だろうか? 綺麗な結晶の形をしていて、滅多にお目にかかれないほどの透明度だった。

「先輩、そのペンダント……?」
「え? ああ……そういえば、折角ルーフェイアが用意してくれたのを、付けなかったな。すまない」
「あれはどうせ、ありあわせですから。
――これ、水晶ですよね?」
 近づいてみても、傷ひとつ見当たらない。結晶の内部も完全な透明だ。

「こんなに透明度が高いの、珍しいですけど……どうしたんですか?」
 掃いて捨てるほど――ほんと、困るだけ――あるうちのアクセサリーの中にも、これだけ透き通ったクリスタルはあまりないだろう。
「これか? タシュアが、くれたんだ」
「えぇっ!」
 思わず声をあげる。

「そんなに、意外か?」
「え、あ、別にその、あっちゃいけないとかは……けど、でも……」
 どう取り繕ったらいいのか分からない。
 けどシルファ先輩、そんなあたしを見て笑っただけだった。

「信じられないだろうな」
「はい……」
 あの毒舌によらず、意外にもタシュア先輩が優しいのは、あたしも知ってる。けど、まさかプレゼントをするとは思わなかった。

「誕生日に……もらったんだ」
 そう言ってシルファ先輩が、水晶を握り締める。
――不思議な表情。
 うっとりとしているのに、どこかに遠い昔の寂しさが混ざっている。
 でも、この学院でこの表情をする人は多い。

 孤児故に、何も持たずに育った。それがこの学院へ来て年数を重ねて、やっと信じられるものを手にして……そんな時にみんな、この表情を見せる。
 シルファ先輩も他の生徒の多くと同じように、早くに両親をなくしたと聞いていた。だから多分、学院へ来る前はいろいろ苦労したんだろう。
 そのまま幸せになって欲しいと、願わずにはいられない表情だった。









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遠き風に願いし君は 純愛ファンタジー? 長編です

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