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Chapter:01 依頼
Episode:02
 昇降台を降りると、いつものようにひんやりとした風が駆けぬけた。
 玄関に飾られてる水盤を、水が流れる音が響く。
 はじめて見た時、不思議なくらいに澄んで見えたこの校内。その印象は、いまでも変わらない。

 あれから、ちょうど1年。夢を見ているような気がする。
 でもその夢は覚めることがなくて、あたしを取り巻きつづけていた。

――覚めませんように。
 わかっていても、いつもそう願わずにはいられない。
 ある日目が覚めたらそこはやっぱり戦場で、これはぜんぶ夢。そんなふうになりそうで仕方がなかった。

 これが夢じゃないと信じられるようになるまで、どのくらいかかるのだろう?
 せめてこの学院を卒業するまで、このままでいられますように……。
 そう祈りながら廊下を歩く。

 もう何度となく歩いて慣れているはずなのに、それでも足元が浮いているような気がした。
 廊下を曲がって、中庭へ足を向ける。
 図書館、診療所、そして食堂。
 傭兵学校のはずなのに、ここにいると戦場を忘れそうだ。

 広くて清潔で小綺麗な食堂の中も、まさに平和だった。たくさんの生徒たちが、お喋りをしてる。
 それをひととおり見渡して、あたしは先輩たちを見つけた。誰かにぶつかったりしないように、ゆっくり歩いてそっちへ行く。
 でも声をかけようとして、あたしは躊躇った。

――先輩たちの周り、空気が違う。

 踏みこんじゃいけない、そんな雰囲気だった。
 時折交わされる言葉は少ない。でもそこに、絆が見える。
 その一言一言、何気ない仕草。そんなところから互いへの思いやりが感じられた。

 いいな、と思う。
 父さんと母さんもそうだけど、こんな風にお互いに相手を信頼して、尊敬できるなんて。
 穏やかに会話を続ける先輩たちが、 見ていてとても羨ましかった。
 いつかあたしにも、こんな風に話せる相手ができるんだろうか?

 そんなことを考えながら、どのくらいぼうっとしていたのだろう。
「ルーフェイア。そんなところに立っていては、迷惑ですよ」
「あ、すみません」
 さっそく先輩に注意される。

――でもよく考えたら、呼び出したのは先輩だったような?
 けどそう言ったところで、また怒られるだけだろう。

「ともかく座りなさい」
「はい」
 向かい合わせに座る先輩たちの間に入る格好で、あたしも椅子にかけた。
 気をつけないと、またいらないことを言って怒られそうで、ともかく落ちつかない。

「あの、お呼びだって、聞いたんですけど……?」
 恐る恐る、タシュア先輩に訊いてみる。




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