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永久の想い
作:兎羽



魔女の微笑み



「ね…眠い……」

机に伏せたまま秀秋は呟いた。
昨夜のことは結局、ワケの分からぬままだ。
空に尋ねても、馬鹿の言葉はひとつも要点が掴めず。
司は司で盗み撮りしていた写真を決して渡そうとはせずに、おかげで朝まで司を追い掛けまわしていた。

お陰で眠ることなどできるはずもなく…。

寝不足登校。

一瞬でも気を抜けば、眠り倒れてしまうのは目に見えていた。

「へ〜めずらしいこともあるもんだな。寝起きだけはいいお前が欠伸なんてな。てかお前でも欠伸なんてすんだな」

いったい人を何だと思っているんだ、的な発言をしたのは、幼馴染みの中野智也だ。
もの珍しそうにまじまじと俺の顔をのぞきこんでくる。
秀秋は今日何度目かも分からないため息をついた。

「それは今、俺の顔を見てため息をついたと考えていいのか?」

「すげー言い掛かり…」

ため息をついた時に、たまたま智也の顔が目の前にあっただけだ。
それに、今は俺は智也の相手してやるほどの元気はない。

「ゴンゼ、頼む!!!俺を寝かせてくれ〜〜…」

…消沈。

なぜか智也の前世の名前を呼んでしまった俺。

そうとう病んでるな、俺…。
「ゴンゼって誰だよ…てか、おぃ!!秀?眠いなら保健室にでも行けよ」

「保健室!?あそこにはチラリズム魔女がいるんだぞ!!!危険…だ…」

ゴイン、という痛そうな音をたてて、秀秋の頭は机に落下した。

「ぉ、おいっ、ヒデ!?」

いきなり動かなくなった秀秋を心配そうに揺さぶり起こしてみるが、返事はない。

「!」

トモヤは、揺さぶるのをやめて、小さくため息をついた。

「どうした、トモヤ!?スゲェ痛そうな音が…」

遠くから密かに二人の様子をうかがっていた久堂一樹(くどういつき)が、秀秋がいきなり頭を打ったのを見て、あわてて駆け寄ってきた。
しかし、その時すでにトモヤは落ち着いていて、呆れたように肩をすくませた。

「…寝てる」

「はぁ?」

一樹は机に伏せた状態のままの秀秋を見た。確かに、微かにおだやかな寝息が聞こえる。
それを見た一樹は笑いだし、タイミングよく授業の始まりを告げる鐘がなり、科学の教科担任が教室へと入ってきた。まだ座っていなかった二人を見て、席につけと促されるが、二人は秀秋の体を支えながら立ち上がらせた。

「この馬鹿、保健室に連れていきます」

「あ、あぁ…」

一樹はその一言を告げると扉を閉めた。
教科担任は呆然としながらも、気を持ち直して授業を始める。それを確認するように、ひそかに聞耳をたてていたトモヤと一樹は
「やったな!」と言って、互いの拳をあわせて笑いあった。











「………?」

目が覚めて、はじめて視覚に入ったのは真っ白な天井だった。
なんだかデジャヴを感じた。秀秋は寝返りをうって、再び夢の中へと堕ちていった。









「…………!?」

そして再び目を覚ましたとき、驚いて思わずその目を見開いた。
目の前わずか3センチ先には、どこかで見たことのあるような肉の塊。秀秋は此処が保健室であって、この肉がその魔女のモノだと気づくのに時間はあまりかからなかった。

「あら、起きちゃった?」

顔をのぞきこんでくる魔女は、残念そうに呟いてベッドから降りた。
なんでヤツがベッドから降りたかって?そんなもんはソコの魔女に聞いてくれ…。

「なにしてくれちゃってるんですか?」

半分呆れながらも、できれば聞きたくないがココは聞かなくてはいけないだろうと思い尋ねてみる。

「何って…夜這い?ぁ、でも夜じゃないから昼這いかな?それとこ寝込み襲いかな?」

この人わ……っ!!!!

「どっちでもいぃですよ、もう。てか、寝込み襲われました…って言ってクビにしますよ?」

冗談半分本気半分で脅してみると、魔女はニッコリ笑った。

「あら、そうなると貴方たち3名を除くこの学校の男子生徒全員を敵に回すことになるわよ?」

「…………………」

……おそろしい。
俺を追い掛けてくる男共を想像するのも怖いが、そんな繊細な男共の心を平気で利用する魔女が一番怖い。
つか、笑いながら言うことじゃねぇ…っ。

「今日はラッキーだったわ♪ヒデ君とトモ君とイッ君をセットでみれるなんて♪」

…ということは、俺を此処に連れてきたのはアイツラか。さっきの
「貴方たち3人」というのも、俺とトモヤと一樹のことだろう。
秀秋は心の隅で、保健室に運びやがった二人を恨みながら、ベッドを囲んでいるカーテンをにらみつけた。

すると、シャッという音をたててカーテンが開かれた。カーテンを開けたらしい少女は俺の顔を見て、驚いたように目を見開いた。

「先生〜注文してたヤツ…ってあれ?ヒデちゃん!?」

「司…」

「あ!司ちゃん♪」

魔女は司に駆け寄ると、軽く抱擁をして何やら二人で話をしはじめた。
司は戸惑いがちに、俺と魔女を見比べている。

「なにしてたんですか?」

「白雪姫ごっこ♪」

魔女は楽しそうに司の問いに答えた。
嘘をつくな嘘を。

「へ〜眠りの王子に先生がキスしてたんですか〜」

未遂だよ未遂。
つか、なんで司は話を理解しちゃってんだよ。

「ところで司ちゃん♪例のもの…」

「あぁ、ハイ。セットで7800円です」

そう言って司は、何冊かの本を魔女に渡した。
そして、おつりなしの金を受けとり、颯爽と保健室から逃げるように退散していった。

「あれ?司、一緒に帰らないの?」

「ぁ、空!!今日は危ないから友達と帰るね♪」

そんな会話が、廊下のほうで聞こえて、少しだけ嫌な予感がした。

危ない、ってなに?

空は俺の鞄を持ってきたらしく、なんとも偉そうな態度だった。

「ヒデにぃの鞄持ってきたぞ!!」

「ん、あぁ。サンキュ…」

空から鞄を受けとり、チラチラと魔女を見てみる。
あの本はなんだ?

「……っっ///萌え〜v」

なんか危ない発言してるし…。
俺はさりげなく魔女の背後へとまわり、その本をのぞいてみた。

「………………」

「………………」

俺も空も絶句。

「こ、こ、こここのカメラ目線がセクシーすぎっ!!!!!」

「………………」

「………………」























もちろん、このあと司に説教をくれてやったことは言うまでもないだろう…。














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