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永久の想い
作:兎羽



直感



「なんで此処に…」

一人で苦悩していると、いつの間にやら空は秀秋の隣に座っていた。いつの間に!と驚いている秀秋に比べて空はウェイターに注文をしてから一緒にいた友達らしきヤツらに笑顔で手をふっていた。
一方コウはというと、目を丸くしながら空をジッと見つめている。
その視線に気が付いた空は「よぅ!」と、初対面なのにも関わらず人懐っこい微笑みでコウに挨拶をしている。それを聞いた途端、コウが嬉しそうに瞳を輝かせた。

「もしかして…空也?」

「い゛!?」

叫ぶように言ったコウの言葉に秀秋は思わず変な声をあげた。

「へ?いや、俺、空だけど?」

突然のコウの発言に、空は首を傾げる。

「いやーまさか空に会えるとは思わなかったよ!もしかして運命ってヤツ?」

興奮気味にコウは握った空の手をブンブンと握手…というよりは振り回していると言ったかんじだった。空は戸惑いを隠せないようで、コウに対して苦笑いを浮かべると、秀秋に視線をうつした。

「この人…誰?」

流石の空も困っているのか、珍しくその笑顔は引きつっていた。

「えー!?忘れるとかヒドくないっ?俺だよ、コウだよ?」

「コウ…ちょっと」

秀秋はコウが暴走しないうちに事情を説明することにした。空にはトイレと言って二人とも席を外す。席を立ってすぐ、空に視線を向けたが空は気にしている様子もなく注文したジャンボチョコパフェを口に頬張って「いっふぇらっふぁ〜い」と右手に持ったスプーンを左右にふっていた。

ほっと一息、溜め息をつくと秀秋はコウに事情を説明した。


――かくかくしかじか。

「へ?記憶がない?」

コウの問いに対して、秀秋は小さく首を縦に振る。信じられない、とでも言うようにコウの表情は青ざめていた。というよりも、秀秋はコウの驚きぶりに首を傾げていた。

「なぁ、お前…もしかして生まれ変わりはみんな記憶がある、なんて思ってないよなぁ?」

「は?違うのか?」

やはり…。

おかしいと思っていたんだ。会ってすぐに記憶が本当にあるかも分からないのに、ブローはないと思う…。あれは痛かった…いや、苦しかった。

秀秋は呆れたように溜め息をつく。

「前世は前世。今は今。そんなに前世の記憶もってるヤツがいたら紛らわしいだろ?てゆうか、トモヤにだって前世の記憶がないことくらい分かったろ?」

「……トモヤ?」

なぜそこでトモヤが出てくるんだ、といぶかしげな目で秀秋を見る。

「まさかトモヤがゴンゼ…ってことしらないんじゃ?」

正しくはゴンゼの生まれ変わり。
コウは記憶をたどるようにゴンゼの名前を連呼する。やっと分かったのか、コウは「えーっ!!」と声を張り上げた。狭いトイレに響くには十分過ぎるほど大声だ。

「ゴゴゴゴゴ、ゴンゼってあの!?副将きどってたオッサン!!!?」

どうやら、コウの中のトモヤ像が少しだけ崩れたような音がしたように思えた。その顔はショックを隠しきれないようだ。

「ま、そーいうことだから」










トイレから戻ってみると、空はすでにパフェを食べ終わっていて暇そうに足をブラブラとしていた。

「遅かったな」

秀秋とコウに気付いた空は不満そうな顔で秀秋をにらんでいた。

「悪いな。意外に混んでた」

秀秋は苦笑いでごまかす。

……って何で俺が謝るんだ!?空が勝手に席移動してきただけなのに!!

「空くん、だっけ?ゴメンねさっきは。知ってる人とあまりに似てたからさ」

「別に気にしてないぞ?コウ…君?あれ?なんか君付けって呼びにくいな〜…コウでいい?」

「ハハ、い〜よ。俺も空って呼ぶからさ」

互いの名前を呼び合い、笑いあう。

う〜む…。こいつらだけ見ると本当に中学生に見えるぞ…。

秀秋は余計なことを考えていた。

「そーいえば空也ってさ〜…」

「「!」」

まさか、空からその名前を聞くとは思ってもいなかった二人は驚いて空に視線を注ぐ。

「ヒデ兄とも知り合いだったりする?」

「ん、あぁ…まぁ、な」

あいまいな返事に空は「やっぱり」と呟いた。なんで?と聞く前にコウが先に口を開く。

「空も知ってるの?」

「いや…知ってる、つーか名前だけ?ヒデの机に落書きされてたから」

落書き…?
そんなものを書いた記憶がなかった。ただ、幼すぎて忘れてるだけかもしれないが…。

コウは面食らったように隣でクスクスと笑っている。

「空也…としゅう、ぜん?かな…二人書いてた」

それだけを言い残し、空は友達に呼ばれてそのまま店から出ていった。
秀秋の心臓は頭まで届きそうな音で脈打っていた。胸に手を当ててギュウ…っとシャツを握り潰すかのようにおさえつけていた。

一時の沈黙が流れ、気まずそうにコウが口を開く。

「あの…さ…」

何かを躊躇っている様子だった。嫌な予感がする。
しかし、体は金縛りのように動きはしない。

「さっき…空也に会って思い出したんだけど…」

この先は聞いたらダメのような気がする。
それは直感のようなものだった。

「空也を殺したやつ…」

ダメだ…っ!!

頭はそう命令を下しているのに体は従おうとはしない。
心臓はドクドクと高鳴る。

嬉しい、悲しい、憎悪、幸福感、嫌悪感…。

いろんな感情が入り混じって、時が流れるのを早く、と待っているかのようだ。

「俺…なんだよね…」

その瞬間、それらは身体中を駆け巡り、膨張していく。
膨らんで膨らんで、パンッ!と何かが弾けたような感覚に襲われ、俺の意識は途切れた――…。












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