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永久の想い
作:兎羽



心配事


「てゆーかお前、昨日の事チクったな」

何かを思い出したかのように、コーヒーを混ぜていた手を止めて、コウは鋭い視線を秀秋に向けた。

昨日の事…?

秀秋は何のことか分からず、顔を歪める。頭をフル回転させて、昨日のことを思いだし始めた。

――オマエ…偽物。

「あ――…、ね」

アレのことか?

「テメェのせいでトモヤにすっげぇ怒られたんだからな!!『コウ!お前秀秋に何いったんだー!』って!すげー怖かったんだからな!?携帯から怒声が飛んできてさ〜…」

トモヤが電話しながら怒っている様子は、容易に想像できた。
幼いころから一緒だった俺たちは、もちろん、絆も深い。その中でもトモヤは凄く友達想いのいいヤツだ。俺や一樹に何かあった時は、当の本人よりも考え込んでいる。

秀秋は思わず笑った。しかし、小さく笑ったのにも関わらず、コウはそれを見逃さなかった。
「笑ったな!?クソ〜…こっちは本気で口聞いてもらえなくなるとこだったんだぞ!」

若干涙目になりながらも、秀秋をにらんでくるコウを見て、秀秋は余計に笑いを堪えるのに苦労した。過去のコウよりも、今のコウの方が子供っぽく感じていた。

「何だよ…トモヤが落ち込んでるとか言ったから謝ってやろうと思ったのにさ…。全然元気じゃんか」

ボソッとコウは呟く。

「へ?何か言ったか?」

しかし、声が小さすぎて向かい側に座っていた秀秋に声が届くことはなかった。コウは「別に!」とそっぽを向く。

秀前はコウを苦手としていた。
だから秀秋も当然かのように、コウに対して苦手意識を少なからずもっていたが、今となってはコウの性格は結構好ましいものだった。

「ま、コウの言葉で気付いたこともあったからかも知れないけどな…」

「は?」

今までの秀秋は、無意識のうちに自分自身を秀前に重ねてしまっていたのだ。
秀前が嫌いなものは秀秋も嫌い。秀前が好きなものは秀秋も好き。
それが普通になってしまっていた。

そんな自分自身に気付けたのもコウのおかげだと秀秋は思っていたのだ。

「ありがとな」

「な、なんだよいきなり…」

「イヤ…まぁ、コッチの話」

「…ワケわかんねぇ」

2人はたわいもない話をした。

過去のこと。

現在の暮らしのこと。

トモヤの話も…。

「そいえば、トモヤが面白いこと聞かせてくれたぞ!」

ニヤリ、とコウは笑う。
何となく、嫌な予感がした。嫌な予感はしたが、おもしろい話を聞く?聞かない?と訊かれたら、聞くと答えるのが普通で…秀秋には「聞かない」と言うことは無理だった。

「ど…どんな?」

ドキドキしながらも訊いてみると、コウはコホンとひとつ咳払いをしてトモヤの口調をマネ始めた。




―回想―

『そういえば、コウ。前にさ俺の親友の話ししたことあったよな』

それは週末デート(もとい遊び)の帰り道。トモヤは突然そんなことを言い出した。

『ん、あぁ。ヒデアキとイツキだろ?』

トモヤの学校の話を聞くときに必ずといっていいほど出てきていた名前だ。2人でいるときも、トモヤが楽しそうにその2人のことを話すもんだから、コウは少しその親友とやらに嫉妬の念を抱いていた。

『そう、そいつら!ヒデアキのほうなんだけど、アイツ子供の時さ、変なこと言ってたんだよ』

ニコニコしながら話すトモヤに、ちょっとムッとする。

『変なこと?』

しかし、嫉妬なんてカッコ悪いと思っていたコウは平然を装う。
ぶっきらぼうに聞き返すとトモヤは話を続ける。

『まだ幼稚園に通ってたころさ、俺に向かって言うんだよ。「ねぇ、空也は?」ってさ』

『!?』

『そいつ弟いて、空っていうんだけど「空じゃないのか?」って聞いたらさアイツ…』

『トモヤ!』

『な、なんだ?』

トモヤの言葉を遮り、コウは叫んだ。突然のその声に、トモヤは戸惑いを隠せない。

『俺、その2人と遊びたい!』

『…へ?』

―回想終了―



「ってね」

「っ……」

コウの回想のなかには、なぜいきなり秀秋たちとコウが遊ぶことになったかという過程と、秀秋の中では、すでに消し去った思い出が入っていた。

あの頃の秀秋は幼いせいか、夢の中と現実を区別することが難しく、現実世界でも空也を探し求めたりしてしまっていたのだ。もちろん、空が空也だとも知らずに…。

「クソトモヤめ…」

余計な事を…っ!!

「ま、おかげでお前を見つけたってわけ」

なぜか得意気に鼻を高々とするコウを見て秀秋はため息をついた。
自慢じゃないが、トモヤと一樹は産まれたときからの付き合いだ。一樹しか知らないこともあれば、トモヤしかしらないこともある。
そして、そのトモヤとコウが付き合うとなれば、うっかりとトモヤが言ってはいけないことを口にしてしまいそうで、心配で仕方がなかった。
コウは上機嫌に、秀秋は暗い面持ちでコーヒーを口へ運ぶ。

「兄貴!?」

突然、聞き覚えのありすぎる声がキーンと右耳から左耳へと声が突き通った。誰の呪いかは知らないが、どうやら今日は厄日らしい。

嫌々ながらも声のした方へ振り返ると、満面笑顔を浮かべている可愛げな小顔があった。しかし、秀秋はその顔が見えた途端、顔をグリンと元へ戻す。

できれば今会いたくない人物だった。

「空…」












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