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フェバル保管庫2 作者:レスト

剣と魔法の町『サークリス』 前編

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26「ユウ、自分の秘密を話す」

 後で知ったことなのだが、主犯の名はヴェスターというらしい。コロシアム及び町の襲撃事件は、奴の死によって終息した。
 犠牲者の数は数百人にも上り、サークリス史上に残る凄惨な事件として人々の記憶に残ることとなった。
 祭りは即刻中止となり、町中に厳戒態勢が敷かれた。

 俺とアリスは、クラムにコロシアムの近くまで連れて行かれると、バルトン先生の部下に簡単な事情聴取をされた。
 そのときに、酷い怪我をしている俺を見た彼の部下の一人に、治療師を呼ぼうかと言われたが、当てがあったからやんわりと断った。聴取が終わった後、俺たちはやっと解放された。
 すぐに、バルトン先生の近くで話を聞いていたアーガスがやってきた。

「よう。アリスだよな。お前も無事で良かったぜ」

 二人はほっとした顔を覗かせる。

「そうね。お互い無事で何よりよ」
「ところで、途中でユウに会わなかったか? あいつのことだから、どうにか逃げ切ってるとは思うんだが……」
「あー……それはねー……」

 心配そうな表情を浮かべるアーガスを見て、アリスが話していいのかなという感じの困った顔をこちらに向けてきた。
 俺が(アーガスには自分から話すよ)と小声で耳打ちすると、彼女は頷いた。
 アーガスは俺の方を向くと、怪訝な顔で言ってきた。

「そういや、お前は誰なんだ」
「アリスの友達だよ」

 今のところはそう言っておく。アリスも同調してくれた。

「そうなの。一緒に逃げたのよ」
「へえ」

 そこに、こちらへ急いで近づいてくる二人の人間の姿が見えた。ミリアとイネア先生だった。
 騒がしいのは嫌いだから、先生は魔闘技観戦はしなかっただろう。その先生と一緒にいるということは、どうやらミリアは襲撃の際にはその場に居合わせなかったらしい。

「「ミリア! 無事だったんだ(のね)!」」

 アリスと二人で彼女に駆け寄ろうとした矢先、先生が猛スピードで風を切って、俺に真っ先に飛び込んできた。

「ユウ! よく無事だったっ! もしお前までどこかに行ってしまったらと思うと……!」

 いつになく感情を露わにした先生に、ぎゅうぎゅうと、息が苦しいくらい力強く抱きしめられる。
 いつも冷静なあの先生がこんなに取り乱すことがあるんだと思ったが、それだけ自分は愛されているのだろう。そのことが肌で伝わってきて嬉しかった。
 だけどまあ、それと同時にやはり恥ずかしいという感情も沸いてくるわけで。

「先生……」
「なんだ」
「心配してくれるのは嬉しいんですけど。みんな、見てます」

 言われて周りを見回した先生は、自分たちに注目が集まっているのに気付く、と少しだけ顔を赤らめた。

「あ、ああ」

 先生は腕の力を緩め、こほんと一つ咳払いをするとすぐに落ち着きを取り戻した。
 そして、俺に耳打ちしてくる。

(ところで、男の姿なのはなぜだ)
(アリスを襲撃者から助けるために、変身してしまいました)

 事情を言うと、先生は少し驚いたようだった。

(ということは、ばらしたのか)
(はい)
(そうか。だが、後悔はしてなさそうだな)
(おかげでアリスが助けられましたから)

 アリスの方を見ると、彼女は既にミリアとの再会の抱擁を済ませた後のようだった。
 落ち着いたところで、ミリアが言った。

「調べ物をしていたら、コロシアムが襲撃されたという、緊急の知らせが、入ってきたんです。しかもおそらく、あの恐ろしい、爆発魔法が使われていると知って」
「そうね。たぶんミリアが言ってたのと一緒の魔法ね」

 それは俺も思っていた。アリスの言葉にミリアは強く頷く。

「はい。心配で、すぐに動きました。ですが、私だけでは、力になれませんから、急いで戦力になる、イネアさんを探して、連れて来たのですが」

 先生は力なく肩を落とした。

「どうやら一足遅かったらしい。既に全部終わってしまったようだな」

 そして先生は、なんと俺に頭を下げて来たのだった。

「すまない、ユウ。弟子の危機に、何の力にもなれなかった」

 もちろん俺は、先生が謝る必要なんて何もないと思った。だからこう言った。

「そんなことしないで下さい、先生。来てくれただけで十分過ぎるほどですよ。それに、仕方ないですよ。こんな事件が起こるなんて、誰も予測出来ませんでした」
「そうか。すまないな……」

 俺がいいと言っても、先生はまだ自分が許せないようだった。先生は俺の身体を眺め回すと、苦い顔をした。

「それにしても、酷い怪我をしたものだ。全身切り傷と火傷だらけではないか」
「ちょっとやばいですね」

 正直、身体中のあちこちが痛いし、立っているのも辛いくらい身体もふらふらだった。先生はそんな俺を見て、胸を張って言ってくれた。

「よし。すぐに治してやろう」

 この言葉を待っていた。先生の気による治療こそが当てだったのだ。

「お願いします」
「ああ。任せておけ」

 近くの椅子に座ると、先生がすぐ横に座って怪我を治し始めてくれた。先生が手をかざすところに、ほんのりと心地良い温かさを感じる。
 その様子をしげしげと眺めていたアリスが、ほとほと感心したような顔をした。

「ほんと気って便利なのね。今日だけですっかり感心しちゃった。あたしもイネアさんに習おうかしら!」

 意気込む彼女の右腕に、ふと目が行く。相変わらずぐるぐると包帯が巻かれていて、痛々しかった。
 既に治療師に処置をされた後だったし、完治すると聞いていたからわざわざ何もしなかった。だけどこんな事件が起こると知っていれば、アリスも先生に頼んで早く治してもらえばよかったなと思う。
 もっとも、それで魔力まで早く回復するわけではないから、結局彼女は魔法が使えないのだが、それでも逃げるとき少しは楽だったはずだ。
 俺の治療を続けながら、先生がアリスに言った。

「残念だが、お前にはおそらく無理だ。魔力があればあるほど、気の習得は至難を極めるからな」

 そう言われたアリスは、少しだけ悔しそうな顔を見せた。自分にも出来るのではと、期待していたらしい。

「えー。そうなんですか」

 そこで何か疑問に思ったらしく、彼女は首を傾げた。

「でも、あれ? なら、どうしてユウは気が使えるのかしら?」

 なるほど。アリスからしてみれば、俺は魔力値一万の人間だからな。それなのにバンバン気を使いこなしているのが不思議なのだろう。
 どう説明しようかと思っていたら、先生が答えてくれた。

「ああ。こいつだけは例外だ。こっちは気が使える方だと言えばわかるか」

 それで、察しの良いアリスは理解したようだ。

「あー。なるほど。なんとなく、わかりました」

 そのとき、先程からずっと黙って様子を見ていたアーガスが口を開いた。

「おい。さっきからユウって言ってるが、誰のことだ? まさか、こいつか?」

 彼に指をさされる。そうだと言おうとした俺に代わって、ミリアがすかさず答えた。

「そうですよ。この男の名前も、ユウです。それも、ユウ・ホシミなんですよね」

 ミリアがいつものようにこちらを可愛らしいじと目で睨んでくる。

「ああ。そうなのかよ。ったく、同姓同名とは紛らわしいな。そんなに被る名前でもないだろうに」

 ミリアが、じと目のままアリスの方に顔を向けた。

「というか、アリスまで、何か物知り顔ですね。私だけ、仲間外れですか」

 自分だけ何も知らされていないミリアは、どうやらそれが気に入らないようだった。そんな彼女から注がれるプレッシャーに、アリスも苦笑いするしかないみたいだ。 

「あはは。あたしは、成り行きで知っちゃったっていうか。ね」

 引きつった笑顔をこっちに向けてくるアリス。

「ほう。成り行き、ですか」

 再び俺の方を睨んだミリアには、まるで、ゴゴゴ、と暗黒オーラでも漂っているかのようだった。その迫力に、つい気圧されてしまう。

「待て、ミリア。お、落ち着くんだ。もちろん君にも話すから、さ」
「結構です。私は、女の子の方のユウが、話してくれるまで、待つことにしてますから」

 口ではそう言うものの、彼女は明らかに煮え切らない様子だった。

「それなら、彼から聞いても問題ないと思うわ」
「アリス。それは、どういうことですか」
「えーと……」

 いざきつい口調で問われると説明に困ったらしいアリスは、「あなたから言ってよ」と目線で訴えてくる。
 振られた俺も、さてどう言おうかちょっと困ってしまった。
 すっぱりと正体を言えばそれで話はおしまいなのだが、ここには赤の他人も普通にいる。誰かに聞かれる可能性もある以上、それは出来なかった。
 少し考えた末、こう言うことにした。

「彼女からこっちのタイミングで話していいって許可をもらってるんだ」

 アリスもすかさずそれに同調してくれた。

「ええ。そうなの! あたしもそう聞いたわ!」

 だが、この何気ない感じの発言は致命的にまずかった。アリスは初日の朝風呂のこと知らないからしょうがないけど、「私」から聞いたというのはまずいんだ!

「そうですか。アリスには、彼女は話してくれたんですね。私は、尋ねても先延ばしにされたというのに……」

 案の定、彼女の「私」に対する心象がどんどん悪くなっていく。
 やばいと思った俺は、咄嗟に自分自身に対するフォローを入れた。

「いや、あのさ! アリスかミリアのどっちかに話したときは、すぐにもう一人にも話してくれって彼女に言われてるんだ! だからね!」
「ふふ。そうですよね。私だけが、除け者なんて、そんなこと、あるわけないですよね」

 笑顔が怖かった。

「う、うん。うん。そんなことないから、安心して!」

 それを聞いて、ようやく彼女は矛を収めてくれた。

「わかりました。では、あなたから、聞くことにします」

 身の危険が去って、ふう、と溜息を吐いた俺は、首だけを後ろに向けて、背中の辺りの治療に取りかかっていた先生に言った。

「先生。治療が済んだら、道場にみんなで行ってもいいですか? 俺のことを含めて、色々と話したいことがあるので」

 この星屑祭の間に様々なことが明らかになった。事件のこともある。一度じっくりと話し合って、情報の整理をしたいと思った。

「構わんぞ」
「ありがとうございます」

 それから俺は、アーガスにも誘いをかけた。

「アーガスにも来てほしいんだ。話したいことがあるから」
「悪いが断る。オレはユウを探すつもりだ。女の方のな。無事を確かめないと寝覚めが悪いんでね」

 彼の性格ならまあそう言うと思ったが、俺がそのユウだから行かれてしまっては困る。

「アーガスの探してるユウもそこに来るから」

 すると彼は食いついてきた。

「それは本当か? 嘘じゃないよな」
「もちろん本当さ」
「ああ。私も彼女が来ると保証しよう」

 先生もフォローしてくれた。彼は少し考えた後、了承してくれた。

「なら行ってやるよ。あいつの居場所に当てがあるわけじゃないからな」

 俺の治療が済んだ後、俺たちはイネア先生の道場に移動した。ここなら、関係ない人に聞かれたり見られたりする心配はない。
 だたっ広い大広間の真ん中辺りに、俺たちは並んで座る。俺から見て、アリスとミリアが両脇、アーガスとイネア先生は奥のそれぞれ左と右に座った。
 アリスとミリアは、固唾を飲んで俺が口を開くのを待っている。既に事情を知るイネア先生は落ち着き払っており、今のところそんなに話に興味もなさそうなアーガスもいつもと変わらない様子だった。
 俺は一つ息を吐くと、意を決して話し始めた。

「どこから話をしようか――そうだな。まずはこの身体の秘密から話すことにするよ」
「身体の、秘密ですか」

 意外な切り口だったのか、ミリアがちょこんと首を傾げた。

「実は、女の方のユウとは一心同体というか。あれは俺の別の姿というか、そういうものなんだ」

 既にこのことを知っている先生とアリスは何も言わなかったが、ミリアは表情を硬くし、アーガスは怪訝な反応を示した。

「まさか……」
「おい。何の冗談だよ」
「まあそう思うよね。言葉よりも、見せた方が早いか」

 俺は立ち上がった。

「俺には、ちょっとした変身能力があるんだ。まあ、変われるものはたった一つなんだけど」

 念じると、いつもの電流が流れるような感覚と共に、身体と服が瞬時に変化する。
 背が少し低くなって、身体全体が丸みを帯びる。髪は艶を増して伸び、喉仏が消失し、肩幅はやや狭く、手足は白く細くなる。お尻の肉付きが増し、腰はくびれ、胸は膨らんでつんと張る。性器も作り変えられて、男性のそれから女性のそれに作り替わる。

「こうやってね。女になれるというわけ」

 ここにいる全員がよく知るスカート姿の少女となった私は、男のときよりも高い、透き通るような女の声でそう言った。
 既にこの変化を見慣れている先生は平然としていたが、まだ見慣れていないアリスはやや固まり、ミリアとアーガスに至っては、あり得ないものを見たと言わんばかりに口をあんぐりとしていた。
「やっぱり、何回見ても驚きだわ……」とアリスがぽつりと言った。
 しばらく我を忘れたように呆然としていたミリアとアーガスは、やっとのことで口を開いた。

「私、十通りくらい、可能性を、想定してたのですが……一番、あり得ないのが、きました……」

 一応想定内だったのかよ。

「おいおい……どんな魔法だよ……」
「魔法じゃないよ。私が持ってる特別な能力。そして」

 女になったときとは逆の変化をする。イネア先生以外のみんなが、目を見張った。

「また男にもなれる。俺は男と女の二つの身体を持っていて、瞬時に切り替えることが出来るんだ」

 それだけ言うと、再び変身して女に戻り、座った。

「こっちの方がみんな見慣れてると思うから、ここからは私として話すね」

 ミリアとアーガスは、まだ目を丸くしていた。

「まさか、同一人物とは……」
「とりあえず、お前が無事だとわかったのは良かったが……」

 二人が何を言ったら良いのかわからないといった顔をしている横で、アリスが勢いよく手を上げた。

「はーい。質問!」
「なに? アリス」
「どっちが本当の姿なの?」

 うっ。やはり来たか。その質問。
「それ、大事ですよね」とミリアも追随する。
 二人から答えろと強い圧力がかかる。
 そうだよね。ずっと女友達だと思っていて、女としての付き合いをしてきた相手が、実は男でもあると判明したわけだから。
 正体がばれた時点でこうなることは覚悟を決めていた私は、正直なところを答えることにした。

「元々は男だった。こんな風に変身できるようになったのは、十六歳の誕生日のときだよ。それまではこっちの身体は眠っていて、表に出てくることはなかった。でも今は、どっちが本当ってこともないかな。二つの身体を引っくるめて自分というか、そんな気がしてるよ」

 私の返答を聞いた二人は、怒るでも取り乱すでもなく、あくまで静かに、だが棘のある口調で言った。

「へえ。今はともかく、元は男だった。そうなのね」
「そうなのですね?」
「はい……」
「…………」
「…………」

 肩身の狭い思いをしながら頷いた私に、無言の視線が突き刺さる。生殺しにされているようで、辛い。かえって思い切り怒ってくれた方が楽だと思った。
 ごめんなさい。こんな大事なことを今までずるずると言えなくて、本当にすみませんでした。私が悪かったです。だから、何か喋って下さい。
 この私にとっては最悪な空気の中、最初に口を開いたのはアーガスだった。

「やっとわかった。お前、ずっと男だったからだな。道理で女にしては妙にサバサバしてんなというか、無防備だと思ったぜ」
「そうね。話の通りなら、これまでの人生の大半が男だったんだもの。道理で女の常識を何も知らなかったわけだわ」

 アリスも納得したように頷いた。相変わらず彼女の視線は、突き刺さるように冷たいままだった。

「私からも、追加の質問いいですか」
「はい……どうぞ……」

 私は、泣きそうな気分になりながらミリアに頷いた。

「あなたは、自分のことを、男のときは俺、女のときは私と言っていますが、どうしてですか? もしかして、二重人格か何かですか」
「あ、そう言えばそうね! それならまだ」

 私は正直に首を横に振った。

「いや、心はあくまで一つ……だと思う。意識は連続してるし、記憶が分断されたりもしない。ただ、こっちでいるときは私って言う方がしっくりくるし、男でいるときは俺の方がしっくりくるというか。それだけの理由だよ」
「ふーん。じゃあ、あたしとのアレやコレも、男のときも全部覚えてるってわけね」
「私とのコレやソレも、ですよね。それだけでなく、他の人のも」
「はい……そういうことに、なります……」

 蔑むような目で睨んで来る二人に対し、消え入るような声でそう言うことしか出来なかった。
 心が折れそうになっていたところに、アーガスが止めの一言を刺した。

「こりゃあ、とんだ変態だ」

 ああ。ついに。ついに、はっきりと言われてしまった……
 がっくりとうなだれる私。
 そこに救いの手を差し出してきたのは、意外にも一番の被害者であるはずのアリスとミリアだった。

「言い訳を聞こうかしら。何か事情があるんでしょ?」
「あなたは、ずっと身体の接触は、避けようとしてましたから。あなたの性格からして、下らない目的とは、思えませんし。女子になってまで、学校に通いたい理由が、あったんですよね? 現に、あんなに必死になって、魔法の訓練をして」
「まあ。そうだと言えばそうだけど……」

 二人の顔つきが、真剣なものになった。

「お願い。最初からじっくり話して欲しいの。話せることは、全部よ」
「どんなことだって許すと、言ったじゃないですか。私からも、お願いします」

 そこで、事の成り行きを見守っていた先生が口を挟んだ。

「こいつの真実はおそらく想像以上だぞ。ここまでの流れが下らないと思えるくらいにはな」
「それでも、あたしは知りたいわ。だってユウは、親友だもの!」

 こんな事実が発覚した後でも親友だとはっきり言ってくれるアリスに、私はじんときてしまった。

「あたしを助けるために、命懸けで正体まで晒しちゃったバカよ! こんなバカ、そうそういないわ! ほんとバカで、でもかけがえのない友達よ。改めてそう思ったの。姿なんて、関係ないわ!」

 彼女は今にも泣き出しそうな顔になっていた。

「そんなユウが、何か言えない事情で困ってる。いつも、どこか辛そうにしてる。正直ね、見てられないの。あたしは、出来ることなら力になってあげたいってずっと思ってた! ユウ、お願いよ! どうしても言えないことなの? あたしじゃ、力にはなれないの!?」

 彼女の気持ちが痛いほど伝わってきた。私は嬉しくて、また泣きそうになってしまう。
 でも、今度は涙は流さなかった。

「ありがとう。アリス。それに、ミリアもね」
「礼を言いたいのは、こっちの方よ」
「同じくです」

 いや、やっぱり礼を言うべきなのは私の方だと思う。

「ううん。私が馬鹿だったんだ。何でも一人で抱え込もうとしてた。こんなに近くに、力になってくれる人間がいたのに。必要以上に恐れて、遠慮してた。だけど、わかったよ。もう一人じゃ抱えない」
「じゃあ」

 顔を明るくしたアリスに私は言った。

「きっちり話すよ。これまでの経緯、そして、これからのことも」

 当初話そうと考えていたことよりも、ずっと踏み込んで話をしようと思った。この先、私だけの力ではどうしようもない事態がやって来るかもしれない。そのときのためにも。
 私は、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、改めて話し始めた。

「信じてもらえないかもしれないけど……私は、この世界の人間じゃないんだ。地球という、違う星からやってきた」
「えーーーーーーっ!?」
「はい!?」
「はあっ!?」

 三人の驚きの声が、道場を目一杯に揺るがした。
+注意+
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