挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
仮想戦記(仮 作者:ロックウッド
87/247

1942エル・アラメイン砲撃戦17

 敵陣地への攻撃計画は変則的なものとなった。実質上、作戦開始当初から行動を開始するのは英国陸軍のチャーチル歩兵戦車小隊の三両と若干の歩兵部隊に過ぎなかった。
 チャーチル歩兵戦車小隊の支援のために随伴する一個分隊規模の歩兵を除けば、日本軍部隊は、オータム中尉達チャーチル歩兵戦車隊の行動の成否を確認してから行動を開始することとしていた。

 このように消極的な動きとなったのには、中隊長を始めとする日本軍側の指揮官が、オータム中尉達が敵陣地への攻撃を成功させるとはとても思えなかったからだ。
 確かに英国製のチャーチル歩兵戦車は、日本軍が装備する最新鋭の一式中戦車などと比べても装甲は厚いようだが、動きは遅いから、遠距離からでもドイツ軍の対戦車砲の集中射を食らってしまうのではないのか。
 一発や二発ならばともかく、複数の対戦車砲から集中射撃を受ければ、どんな重戦車でも無力化されてしまうのではないのか、そう考えていたようだ。

 結局そのように判断した中隊長が出した条件が、オータム中尉達の敵陣地への無事な進出を確認してからの本隊の攻撃開始という曖昧なものという作戦内容になったのだ。
 だが、ほとんど支援がないにも関わらず、オータム中尉が作戦の成功を疑う様子はまるでなかった。


 積極的なオータム中尉とは違って、中隊長などは攻撃が成功するとは、ほとんど考えていないようだった。だから随伴する歩兵部隊も、損害を受けた小隊の残余である一個分隊におさえていた。しかもその分隊は軽機関銃を喪失していたから、歩兵分隊としては火力が恐ろしく減少していた。
 指揮をとっていた歩兵小隊長が後送されたものだから、その分隊は本来予備隊として中隊長が直率していたのだが、今回の攻撃作戦に投入されることとなった。
 ただし、中隊長は彼らの任務はチャーチル歩兵戦車の支援ではなく、実際には攻撃が失敗した際の乗員救助になると考えている様だった。中隊長は、分隊長の軍曹に向かって、チャーチル歩兵戦車に近づき過ぎて巻き添えを食らわないように、無理をしないようにと、作戦開始前に何度も念を押していた。
 だが、あまり意気の上がらない様子の軍曹の様子からして、中隊長が命令しなくとも、彼らが積極的な行動を取るとは思えななかった。

 攻撃発起点で待機している他の歩兵部隊もあまり乗り気はなさそうだった。おそらく自分たちの出番が来ることもなく作戦は中止されるだろうと高を括っているのだろう。
 慌ただしく行動を開始していたのは、大隊砲小隊から分派されて、この機動歩兵中隊に配属されていた分隊だけだった。この分隊は、8センチ口径の九七式曲射歩兵砲を車体中央部に装備した一式半装軌装甲兵車五型に乗車しており、中隊に貴重な砲火力の支援を行う部隊だった。
 ただし、この部隊も積極的な戦闘を行うつもりはまるで無かった。やはり攻撃失敗時の撤収に備えて、煙幕弾を連続発射する準備を整えているだけだった。


 もっとも、池部中尉達戦車隊も状況はさほど変わらなかった。隊長車の指揮を由良軍曹に任せると、池部中尉自身は状況を把握するために、無線機を担いだ通信兵を伴って、再び砂丘の頂上に登っていた。
 やはり池部中尉も作戦がすんなりと成功して、チャーチル歩兵戦車小隊が敵陣地に進出できるとは考えていなかった。おそらく陣地に接近しても至近距離から対戦車砲を撃ち込まれるだけだ。
 ただし、一式中戦車よりも格段に重装甲と思えるチャーチル歩兵戦車が、安々と対戦車砲に撃破されるとは思えなかった。運が良ければ一発や二発ならば耐えられるのではないのか。

 だが、陣地に接近するにつれて、チャーチル歩兵戦車に向けられる砲火力は強まるはずだ。こちらには精度の良い曲射弾道射撃が可能な支援火力もないのだから、遮蔽された対戦車砲を制圧するのには苦労するだろう。だから、ある程度は耐えられても、チャーチル歩兵戦車が最終的に陣地を突破できるとは限らなかった。
 実は、一式中戦車隊を控えさせている理由の一つは、敵前で擱座したチャーチル歩兵戦車を強行回収するためだった。ここには戦車隊段列が運用する戦車回収用の力作車は未だ到着していなかったし、一式中戦車や九七式中戦車を原形とした力作車では、大重量のチャーチル歩兵戦車が相手では自重やエンジン出力が不足しているから一両では牽引することも出来ないはずだ。
 だから、いざとなれば一式中戦車二両で協力してでもチャーチル歩兵戦車を牽引しなければならなくなるはずだ。
 池部中尉が変則的な指揮の取り方を行っているのも、一式中戦車を回収のために突入させるタイミングを広い視野で判断するためだった。一式中戦車が待機する攻撃発起点は、敵陣地から死界となる砂丘の陰に設定されていたから、敵情を把握するのが難しかったのだ。

 実際に作戦が開始されたのは、池部中尉と通信兵が砂丘の頂上についてからしばらくしてからの事だった。再びチャーチル歩兵戦車のエンジンが轟音とともに唸りを上げ始めた。同時に冷却ファンによって巻き上げられた砂塵がもうもうと立ち上がっていた。
 池部中尉は、チャーチル歩兵戦車の動きを確認した敵陣地に緊張が走るのを感じていた。


 だが、その後の動きは、池部中尉には予想もつかない展開となった。
 敵陣地への進出路は地形上制限されていた。少なくともこれまで池部中尉達はそう考えていた。散開して接近しても、ある距離以内に踏み込めば、険しい崖や地雷原などに阻害されて狭い個所を通行せざるを得ないのだ。
 ドイツ軍にすればその狭隘な地形に対戦車砲他の火器の照準を合わせておけばいいのだから、これほど防衛が容易な陣地はそうそうないはずだ。
 しかし、チャーチル歩兵戦車の進路は池部中尉達の考えを裏切るものだった。移動を開始したチャーチル歩兵戦車小隊は、砂丘の影から進出すると、ためらうこと無く、枯れ谷であるワジへと乗り込んでいったのだ。

 マルサ・マトルー周辺を通過するワジは以前から注目されていた。雨季の降雨があった時のみ出現するワジは、普段は干上がって涸れ谷となっている地形だった。
 流水の通り道となっているから、岩呉などのような障害物は少なく、乾季には付近の住民たちの交通路としても使用されていた。


 実は、敵陣地の配置を把握した頃から、その付近のワジを接近路として使用する研究は行われていた。
 ワジは谷状の地形となっているから、相当近距離まで敵陣地からの射界に入ること無く接近できるのではないのか、そう考えられていたからだ。だが、実際に検討してみると、そのワジを接近路として使用するのは困難なものだった。
 確かにある程度の距離までは、安全に接近できそうなのだが、ワジから高地に築かれた陣地までの最短地点の間には、激しい傾斜面が待ち受けていた。その傾斜角度は極めて大きく、とてもではないが短時間で登坂できるとは思えなかった。

 おそらく歩兵部隊だけならば、そのような激しい傾斜地も突破できるはずだが、これまでの戦闘から、強固に築城された陣地に対して、戦車や火砲の支援を欠いた部隊ではいくら側面をついたとしても、陣地群を突破することは極めて難しいことが確認されていた。
 そのことはおそらく枢軸軍も気がついているはずだった。限られた兵力を有効に使用するために、陣地側面となる傾斜面に戦力が展開する様子がなかったのだ。

 それにそのワジは、陣地に再接近した後は、急速にマルサ・マルトーの市街地を離れるように屈折しながら海岸線に向かっていたから、陣地を無視して、ワジをマルサ・マルトーまでの交通路として使用することも出来なかったのだ。
 さらに、今はワジは流水が枯れて川底を見せていたが、先日の豪雨の際には水流が復活していた。その豪雨の勢いは凄まじく、国際連盟軍の進攻速度を大きく低下させていた。中には洪水に巻き込まれて死傷者を出した部隊もあったらしい。

 そして、ちょうど池部中尉達がマルサ・マルトー近くまで進出した頃に、その豪雨は発生していたから、中尉達はワジを勢い良く流れる流れを目撃していた。
 乾季には砂漠を横切るちょっとした谷にしか見えないワジだったが、砂漠地帯は水はけが悪いのか、集中した豪雨によって発生した膨大な降水量が、すべてちっぽけなワジに流れ込んだかのようだった。
 平坦な砂漠を流れるワジだったが、その時に目撃した流水の勢いは凄まじく、急峻な地形の続く日本本土を流れる暴れ川にも匹敵するように思えていた。
 当然だが、水流が復活した時のワジを渡河することは極めて難しかった。おそらく、延長吸排気管などの渡河装置を備えた重戦車であっても単独での渡河は不可能だったのではないのか。
 砂漠地帯に進出した国際連盟軍には、本格的な渡河装置を装備した工兵部隊の数は少なかったから、後方部隊では実質上降雨のあった時期は足止めを余儀なくされていたようだった。


 まだ、あの豪雨からさほど日は経っていなかった。遠目にはワジは、乾季の姿を取り戻しているようにも見えたが、あの急流を見た限りでは谷底の状態がどうなっているのかは分からなかった。おそらく流水の影響でまだ乾燥しきらずに泥濘地帯になっているのではないのか。
 ワジを横切って渡河するのならばともかく、接近路として谷底を進むのは履帯を備えた装軌式の車両でも難しいのではないのか、池部中尉はそう考えていた。
 チャーチル歩兵戦車小隊三両に随伴して進む一式半装軌装甲兵車から、分隊長の軍曹が身を乗り出してから不安そうな顔をして振り向いたが、中隊長を始めとする指揮官達は戸惑ったまま成り行きに任せるしか無かった。
 接近路の詳細な指示までは出していなかったから、経路の選定はオータム中尉に任せていたのだが、それがワジとは思わなかったのだ。

 チャーチル歩兵戦車小隊は、一式中戦車などと比べると恐ろしく緩慢な動きに見える速度でようやくワジの端に到達すると、ためらいなく谷底へと落ち込むようにして進んでいた。
 やはりワジの底はまだ乾燥しきっていないようで、チャーチル歩兵戦車隊が巻き上げていた砂塵が見えなくなっていた。おそらく湿った土壌が強制通風ファンの勢いにも関わらず巻き上がらないのだろう。
 だが、そのように不安定な状態の地面にも関わらず、チャーチル歩兵戦車の動きに異常は全く見られなかった。相変わらず速度は遅いが、乾燥した砂漠地帯の街道を走行していた時と状態の違いは見られなかった。
 むしろ、チャーチル歩兵戦車に後続する一式半装軌装甲兵車の方が、チャーチル歩兵戦車の走行によって掘り返された泥濘に阻害されて行動に支障が出ているようだった。
 自重で言えば、少なくとも五倍程度は一式半装軌装甲兵車よりもチャーチル歩兵戦車の方が重いはずなのだが、悪路での走行を見る限りでは、そのようにはまるで見えなかった。
 車体上部に到達する巨大な履帯と、整備性の悪そうな数多くの小型転輪との組み合わせが、チャーチル歩兵戦車の膨大な重量を分散させて、軽量なはずの一式半装軌装甲兵車よりも、接地圧では低くなっているのかもしれなかった。

 緩やかな湾曲を描くワジに乗り込んだチャーチル歩兵戦車と一式半装軌装甲兵車の姿は、すぐに見えなくなった。巻き上がる砂塵も見えないから、位置を観測する手段が失われていた。
 一式半装軌装甲兵車のエンジン音は、チャーチル歩兵戦車のそれにまぎれて全く聞こえなくなっていた。泥濘に吸収されるのか、履帯が地面を叩く轟音は弱まっていたが、強制通風ファンの甲高い音は途切れること無く聞こえていた。
 ただし、ワジの谷底に入ったことで複雑な地形によって音が屈折するのか、どのあたりから聞こえているのか、特定することは難しかった。


 この状況に困惑しているのは、池部中尉達、日本軍の指揮官たちだけではなかった。かなりの距離があり、しかも隠蔽されているにもかかわらず、敵陣地からは動揺している様子が伺えた。
 やはり音源の位置を特定することは出来ないらしく、無防備な態勢で的はずれな方向に向けられた兵達の頭がいくつか見えていた。距離があるし、専門の狙撃兵がいないから射撃は行えなかったが、無防備な態勢を見せる兵達の姿を見ると、池部中尉は敵陣地にこもる将兵の練度を見直する必要があるかもしれないと考え始めていた。
 少なくとも、これまでの戦闘とは違って、今陣地で右往左往しているらしい将兵からは、高い士気や練度は感じられなかったのだ。

 しかし、敵陣地の混乱に乗じることができるかどうかは、また別の問題だった。確かにワジを接近路として使用することで、敵陣地の近くまで安全に進出することはできるだろうが、結局陣地を攻略しようとすれば、最後はワジから出るしか無い。
 その地点はすでに敵対戦車砲の射程内に入っているから、そこからオータム中尉がどのような行動を取るつもりなのかはよく分からなかった。
 中隊長も、不安そうな表情を浮かべながらも、情勢をどのように判断すればいいのか迷っているようだった。少なくともワジから出た後のチャーチル歩兵戦車隊の動きを確認しない限り、総攻撃の実施に踏み切ることは出来なさそうだった。


 暫くの間、敵味方双方ともにたった三両のチャーチル歩兵戦車隊に振り回されて次の行動が阻害された状況が続いていた。チャーチル歩兵戦車隊がどのように動くのか予想できたものはほとんどいなかったはずだった。
 池部中尉も困惑したまま、双眼鏡を敵陣地近くに向けて何度もあてどもなく捜索を続けた。

 湿地帯でも足を取られること無く行動が出来たとしても、やはりチャーチル歩兵戦車の速度が遅いことに変わりはなかった。だから、敵陣地周辺で次の動きが見られるまでかなりの時間がかかっていた。
 一式中戦車であれば、十分に敵陣地まで往復できるほどの時間が過ぎてから、ようやくチャーチル歩兵戦車のエンジン音に変化がおきていた。
 エンジンに異常が生じている気配はなかった。相変わらずエンジン冷却ファンは甲高い音を立てていた。機関の調子そのものには変化は起きていないようだった。
 変化が起きているのはチャーチル歩兵戦車そのものだった。マルサ・マルトー周辺の険しい地形を避けて複雑に蛇行していたワジの谷底を移動していたチャーチル歩兵戦車が、平坦な砂漠へと抜けだそうとしていたのだ。
 だから戦車周囲の地形が変化して、それまで反響していたエンジン音に変化が訪れていたのだろう。


 もちろんその変化は敵陣地でも把握していた。にわかに敵陣地の緊張が高まっているのが池部中尉にも感じられた。おそらく敵陣地中枢では対戦車砲群が射撃準備を行っているはずだ。
 大半の対戦車砲は陣地正面に向けられているはずだが、側面に向けられる砲が全くないとは思えなかった。数は少なくとも連続砲撃されれば重戦車でも撃破される可能性は低くはなかった。

 次の瞬間、池部中尉達の前にチャーチル歩兵戦車がゆっくりと姿を表していた。だが、中尉達は唖然としてその姿を見つめていた。
 チャーチル歩兵戦車が出現したのは、ワジと敵陣地との最短距離とは微妙にずれていた。そこは、敵陣地が築かれた高地とワジとが連続して傾斜地を形成している地点だった。
 むしろ、雨季にだけ現れるワジが、陣地が構築されている高地を年ごとに侵食している個所と言ったほうが正確だった。
 地形的には最近になって形成された個所だからか、傾斜は最短地点よりも急だった。それに斜面を利用して形成された陣地からはやや離れていた。
 その代わり、敵陣地の側面どころか、後方に近い無防備な個所から接近することができるはずだった。

 ただし、敵陣地に接近することが出来たとしても、それは急傾斜の登坂が可能であればの話だった。あのような角度の傾斜では、戦車どころか、歩兵ですら登坂は難しいはずだった。
 だからなのか、敵陣地も意表を突かれて混乱しているようだった。少なくともその地点からの攻撃を警戒していた様子はなかった。あの急角度では、警戒すらおざなりになっていたはずだ。もっと警戒すべき地点は他にもあったからだ。
 だが、チャーチル歩兵戦車隊はためらうこと無く、傾斜地を登っていった。やはり、その速度は決して早くはなく、徒歩の歩兵ですら追いつけそうな程だったが、急斜面の登坂にも関わらず、チャーチル歩兵戦車の機動に不安定さは感じられなかった。
 ゆっくりとだが着実にチャーチル歩兵戦車は傾斜を上り詰めようとしていた。
 むしろ、随伴する歩兵分隊の方が、傾斜に対応できずにいるようだった。歩兵分隊が乗車していた一式半装軌装甲兵車は、ワジの谷底の泥濘地帯では足を取られかけながらもチャーチル歩兵戦車に随伴していたが、急傾斜を後続して登坂することは最初からあきらめているようだった。
 一式半装軌装甲兵車は、ワジから這い出たあたりで、適当な遮蔽物の陰に入り込むと載せていた歩兵分隊を降車させていた。だが降車した歩兵分隊の動きも腰が引けている様だった。

 歩兵分隊は、傾斜を登り続けるチャーチル歩兵戦車のはるか後方を、慎重に追随していた。急傾斜を登り切れずにチャーチル歩兵戦車が滑りだすのを警戒して距離をとっているのかもしれないが、あれでは咄嗟の時に援護するのも難しいのではないのか。
 池部中尉の懸念は、決して杞憂のものではないはずだった。唐突に遮蔽物に隠れた一式半装軌装甲兵車から、発砲音が聞こえていた。おそらく車内に残した車載の機関銃が射撃を開始したのだろう。
 ここからでは角度が悪くて、何を撃っているのかはよくわからないが、おそらく敵将兵がチャーチル歩兵戦車の接近に対応するべく陣地内を配置転換しようとしているのだろう。
 今はまだ軽快な歩兵部隊のみの移動だろうが、いずれは対戦車砲も移動を開始するはずだった。そうでなければ無防備な方向から陣地内に乗り込んだチャーチル歩兵戦車に一方的に殲滅されてしまうからだ。

 そのことに気がついた瞬間、池部中尉は中隊長に顔を向けていた。中隊長は渋い顔をしていたが、苦虫を噛み潰したような顔で池部中尉に頷いてみせてから、指揮下の部隊に総攻撃を開始するように命じていた。
 その声を背中に聞きながら、池部中尉は斜面を転がり落ちるようにしながら一式中戦車中隊に向けて急いでいた。今は時間が惜しかった。
 チャーチル歩兵戦車が陣地内の敵兵を惹きつけていくれている間に、隙を見せた敵陣地にいち早く接近しなければならなかったからだ。


 しかし、愛車の一式中戦車の元へ急ぎながらも、池部中尉は全く別のことを考えていた。脳裏に浮かんでいたのは、ワジの底の泥濘地帯や、急傾斜を物ともせずに突破していくチャーチル歩兵戦車の姿だった。最高速度は遅いようだったが、一式中戦車ではとてもではないが、あのような地形を易易と踏破することは出来そうになかった。おそらく幅が広く巨大な履帯と、数多く搭載された小型転輪との組み合わせが接地圧を低減して、高い走破性をチャーチル歩兵戦車にもたらしているのだろう。
 ――戦車の機動力とは、決して最高速度やエンジン出力だけで決まるわけではない、ということか。
 池部中尉は、鈍重な動きのチャーチル歩兵戦車を侮っていた自分に思わず苦笑しながらそう考えていた。


 陣地の後方から接近するチャーチル歩兵戦車隊に、有力な戦力を拘束された敵陣地が、正面からの日本軍の攻勢に耐えきられずに陥落したのは、それからすぐの事だった。
一式中戦車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/01tkm.html
一式砲戦車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/01td.html
一式半装軌装甲兵車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/01ht.html
九七式力作車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/97avr.html
二式力作車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/02arv.html
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ