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仮想戦記(仮 作者:ロックウッド
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1942エル・アラメイン砲撃戦6

 鍋の中で煮こまれていたのは、薩摩汁のようだった。程よく煮こまれた肉の匂いが食欲を刺激していた。だが、池部中尉は、いち早く鍋に取り付こうとしていた由良軍曹を抑えこむと周囲を見渡した。
 目的の人物は、すぐに見つかった。日本陸軍の防暑衣と基本的なデザインは似たようなものだが、やはり英国陸軍の軍服は一目瞭然だった。
 たしかに、由良軍曹の言うとおり、中隊員らに混じっている英国軍人達のなかに、一人だけ士官がいた。だが、彼らの軍装は微妙に英国陸軍とは異なるような気がした。
 もしかすると英国本国軍ではなくて、植民地軍なのかもしれない。一瞬そう考えたのだが、すぐに否定していた。その士官の部下らしき男達も、全員が明らかに白人種だったからだ。
 あるいは、彼らの所属はオーストラリア軍かニュージランド軍なのかもしれなかった。両軍ともに、日本帝国に先んじて、師団級の部隊を北アフリカ戦線に投入していた。

 違和感を感じながらも、池部中尉は、素早くその士官に近づいた。どちらが先任かは分からなかったが、とりあえず先んじて素早く敬礼していた。相手はやけに立派な髭を生やした白人士官だった。
 もし相手のほうが後任だったとしても、この偉そうな白人が相手ならば笑いものにはならないだろう。そう考えていた。
「日本帝国陸軍、第7師団、第71戦車連隊、池部中尉です」
 早くも椀を手にしていた髭の白人士官は、椀の汁をこぼしながら慌てて立ち上がると敬礼した。同時に脇に控えていた下士官も跳ね上がるように立つと、素早く敬礼した。
 士官の方は、どうにも締まらない敬礼だったが、ベテランらしい下士官の敬礼姿は様になっていた。
「これはどうも、第一カナダ軍、カルガリー連隊C中隊、オータム中尉。いや、お先に馳走になっていますよ。こっちは小隊軍曹のガスケ軍曹」
 オータム中尉はどこか馴れ馴れしい笑みを浮かべた。敬礼が雑なせいばかりではないだろうが、どうにも様にならない男だった。
 近くで見ると、伸ばした髭も手入れが案外と雑で、みすぼらしささえ感じさせた。それに対して、白人の年齢は見た目からはよくわからないが、おそらく30代には達しているであろうガスケ軍曹は、絵に描いたように精悍な下士官だった。
 実際には隊をまとめているのが、若いオータム中尉ではなく、ガスケ軍曹なのかもしれない。

 池部中尉は、英国人達の様子に戸惑いながらも、兵から薩摩汁がはいった飯盒と、握り飯と数切れの沢庵がよそわれた飯盒の蓋を受け取るとオータム中尉の隣に座った。
 それを合図にしたように、他の兵たちにも飯盒に入れられた昼食が次々と渡されていった。

 池部中尉は、関西風の白い味噌で味付けされた握り飯にかぶりついていた。炎天下の作業で不足していた塩分を補うためか、白味噌の量は少なくなかった。
 他の多くの日本陸軍の師団とは違って、陸軍初の機甲師団編成がとられた第7師団は、近衛師団などと同様に、徴兵や在郷軍人の管理を行う特定の師管区を持たずに、日本全国からの志願兵や、選抜された現役兵で構成されていた。
 だから、第7師団の駐屯地は、北海道中央部の千歳市周辺に点在していたが、日本全国から将兵が集まっていることもあって、食事の味付けは調理する兵によってまちまちだった。
 中には、古参の下士官であるにもかかわらず、食事の味付けが気に入らないのか、暇を見つけては自分で調理しだすものもいるほどだった。元々東京市で生まれ育った池部中尉には、地方出身者の味のこだわりはよく分からなかったが、幹部候補生教育時代の戦車学校などで食べていた、どこか隊内で画一化された味付けと比べると、幅の広い第7師団各隊の食事は嫌いではなかった。

 飯盒に入れられた汁物は、やはり薩摩汁だった。元々はその名の通り鹿児島あたりの郷土料理で、さつまいもと鶏肉を使うらしいが、今日調理されていたのは、さつまいもの代わりに里芋が入れられていた。それに程よくごぼうと共に柔らかく煮こまれた肉は豚肉のようだった。
 池部中尉が、握り飯に続いて勢い良く薩摩汁をかきこむと、オータム中尉が器用にフォークで掴みあげた中身をしげしげと眺めながら、つぶやくようにいった。
「これは……豚肉なのかな」
 しばらく誰も答えようとはしなかった。というよりもオータム中尉が何を言ったのか理解できたものの方が少なかったかもしれない。
 遣欧派遣前に、第7師団の将兵は全員が一応は速成英会話教育を受けていたが、それでも流暢に英語をしゃべることの出来る兵は限られていた。由良軍曹など最初からあきらめているようなものだった。
 しょうがなしと言った風に、池部中尉の小隊長車で無線手を務める三保木一等兵が口を開いた。三保木一等兵は、本来ならば徴兵猶予の対象となるところを志願してきた変わり者だった。元々は高等学校の学生だったが、古参の由良軍曹などからは大学、大学とからかい半分に呼ばれていた。
 しかし、先任小隊長車の無線手を任されるだけのことはあって、無線の扱いよりも、語学能力は高かった。池部中尉も、おそらく多言語が入り乱れることになるだろう欧州戦線では、三保木一等兵を頼りにすることもあるだろうと考えていた。
 だが、その語学能力を活かす最初の場が飯時とは思ってもいなかった。

「この料理は、元々は鶏肉を使うらしいですが、ウチの隊では豚を使うことが多いですね。場合によっては魚肉も使います。日本ではそう言う料理を作る地方もあるので……ちなみに中尉殿が掴んでいるのはゴボウ……ある種の植物の根子です」
 オータム中尉は、ぎょっとしてゴボウを見つめると、そっと飯盒に戻していた。
「このニギリメシとかいうライスは美味かったが、日本人が木の根を食べるとは知らなかったな……だが、ムスリムの中で豚肉を堂々と食うとは君らは勇敢だな」
 由良軍曹は、かろうじて豚という意味がわかったのか、何故か満面の笑みを浮かべてポーク、ポークとオータム中尉とガスケ軍曹に言った。
 オータム中尉の言わんとすることを察したのか、三保木一等兵は慌てて由良軍曹を遮っていた。
「やめてくださいよ軍曹殿。彼らに聞こえたらどうするんですか……あの、小隊長殿、自分は止めようとしたんですが、在庫を抱えているよりもはいいかと思って……」
 そう言うと、三保木一等兵は伺うような目を池部中尉に向けた。池部中尉は、苦笑しながら、怪訝そうな顔になっていた由良軍曹にいった。
「あのな、由良さんよ。イスラム教徒は豚肉は食えないんだよ。俺もよくは知らんが、敬虔な信者になると他人が食ってるのも許せんらしいぞ」
 半ば脅すように池部中尉がおどろおどろしく言うと、三保木一等兵が手早く話の流れをオータム中尉たちに通訳してから、由良軍曹に向き直っていった。
「実際には、豚肉だけじゃなくて、イスラムの法律に則ったやり方で屠殺しないと肉そのものを口にしてはいけないのだそうです。中尉殿もおっしゃっていますが、敬虔なイスラム教徒にはタブーが多いんです。だから、あんまりうかつなことを喋って、日本軍の品位を落とさないでくださいよ軍曹殿」

 由良軍曹は、池部中尉と三保木一等兵の小言をほとんど聞き流していた。
「さすが大学さんは物知りだねぇ。だけどよ、イスラム教徒ってのも可哀想だね。こんなに旨いものが喰えないんだから」
 そう言うと、由良軍曹は、何故か他の兵よりも肉が多めに入っているような気がするさつま汁を美味そうに咀嚼していた。しばらくは黙って食っていたが、ふと何かに気がついたように由良軍曹が口を開いた。
「周りに見られるのも拙いというし、どうせ尽きたんだ。イスラム教徒が食わないなら、しばらく豚肉はお預けだな……じゃ次は牛缶にしますか。おい大学さんよ、イスラム教徒は、俺達が牛を喰っても変な顔するかね」
 どこか近親感でも抱いたのか、由良軍曹に興味を示して、しつこく通訳を要求するオータム中尉に辟易している三保木一等兵の代わりに池部中尉が、呆れたような顔でいった。
「軍曹、派遣前の特別教育を聞いてなかったのか。牛肉はイスラム教徒にとっては禁忌ではなくなるが、代わりにイギリス軍に所属するインド人達ヒンドゥー教徒が食わなくなるんだ。こっちは牛を崇め奉るらしいから、もし目の前に美味そうな牛がいても、周りにインド人がいたら間違えても捕まえたり、撃ったりするなよ。インドは師団単位で部隊を送ってよこしているんだから、一万人からのインド人に追いかけられたくはないだろう?」
 由良軍曹は、しばらく考えこんでから笑顔でいった。
「豚も駄目、牛も駄目というなら……今度は鯨はどうですかね。まさか海の中の奴まで喰うなという宗教はないでしょう」
 池部中尉が何かを言う前に、三保木一等兵から内容を聞いたオータム中尉が驚いた声でいった。
「日本人は木の根だけじゃなくて鯨も喰うのか。日本帝国と言うのは戦車や戦艦をたくさん持っている金持ちだと本国人から聞いていたが、ひょっとして食い物はあんまりないのか」
 オータム中尉は、世紀の大発見でもしたかのような顔だった。何か誤解をし始めたオータム中尉に何をいっていいものか三保木一等兵は戸惑った顔で助けを求めて池部中尉を見つめていた。
 我関せずとそれまで押し黙っていたガスケ軍曹が、重々しく口を開いた。
「中尉殿、我々カナダ人もあまり他人のことは言えないでしょう。食い物の恨み辛みは長引きます。自分たちが食えないもの以外は黙って食いましょう。このゴボウもなかなかいけますよ」
「そういうもんかねぇ軍曹……うん、まぁいけないことはないかな」

 何とかゴボウを口にし始めたオータム中尉に、あらかた食事を終えた池部中尉が尋ねた。
「貴官らの所属は第一カナダ軍でしたか、失礼だが北アフリカ戦線にカナダ軍が投入されているとは初耳ですね。確か北アフリカはインドとアンザック軍団の担当と聞いていましたが」
 オータム中尉は、もごもごと噛み砕くのに必至だった。オータム中尉は咀嚼を続けたまま視線をガスケ軍曹に向けると、軍曹がかわりにため息をつきそうな顔でいった。
「我々は第一カナダ軍の先遣隊です。我が第14カルガリー連隊は軍直轄部隊ですから。第一軍の他隊は、英国本土で待機中です」
「なに、とても昨日今日で欧州大陸への反攻作戦が出来る状況ではないし、かと言ってドイツ軍が英国本土に進攻してくる気配もまるでない。英国本土に送られながら、我がカナダ軍は今のところ無聊をかこっていてね。それに欧州まで軍団を派遣しながら戦局に何の貢献もないままだと政治的に困る連中もいるらしくてね。それで急遽北アフリカに我々が送られたというわけさ」
 食べ終えたのか、オータム中尉が皮肉げな口調でガスケ軍曹に続けていった。軍曹は僅かに眉をしかめたが、何も口にはしなかった。どうやら嘘ではないらしい。
「最初は第2歩兵師団と一緒にディエップに上陸するという話もあったんだがね、いつの間にか沙汰止みになっていたなぁ……」
 池部中尉は首を傾げていた。北アフリカにそんな地名があったのだろうか。
「失礼だがディエップというのはどこだったかな。北アフリカにそんな都市があったかな」
 オータム中尉は不思議そうな顔になっていた。
「アフリカではない、フランスだよ。ドーバー海峡の」
 呆気にとられて、池部中尉は三保木一等兵を顔を見合わせていた。

 現在、フランス本土は二分されていた。従来のフランス政権を継続すると主張しているヴィシー政権が主権を保っている中南部と、ドイツとイタリアが占領を続けるパリなどの残りの地域だった。
 ドイツ軍の占領地は、いまだ多くの兵力が駐留し、さらに対ソ戦で損耗した部隊の再編成も行われているらしい。ヴィシー政権は、兵力を大幅に削減されて、当初は中立的な政策をとっていたが、国際連盟軍による強引なフランス植民地の解放に反発する世論を反映して、ドイツ側にたって参戦していた。

 つまり、現在のフランス本国は枢軸国の戦力策源地に他ならなかった。大戦勃発前の強大なフランス軍も一度は武装解除されていたが、ヴィシーフランス軍として急速に再編成を行ってかつての大兵力を取り戻しつつあった。これに駐留ドイツ軍が加わるのだから、フランス本土に展開する枢軸軍勢力はかなりのものだった。
 そのような状態のフランス本国に、増強一個師団程度の兵力で上陸作戦をかけようなどとは正気の沙汰とは思えなかった。常識的に考えれば、駐留ドイツ軍によって水際で殲滅されてしまうのではないのか。
 あるいはこれはオータム中尉の勘違いか冗談なのだろうか。なんとも判断がつかずに、池部中尉は戸惑いながら愛想笑いを浮かべた。


 大出力エンジンの爆音が空から聞こえてきたのは、その時だった。池部中尉を含め、何人かの将兵は慌てて退避しかけたが、国際連盟軍が航空基地を展開しているアレクサンドリア東方から聞こえてきたのに気が付くと、怪訝そうな顔で空を見上げていた。
 国際連盟軍が少なくない航空部隊をアレクサンドリア郊外に展開しているのは事実だが、反英的なエジプトの市民感情を考慮して、市街地上空をここまで大きな音が聞こえるほど威嚇するように低空飛行することは殆どなかった。
 実際に、礼拝を終えた港湾労働者達が迷惑そうな顔になっているのが見えていた。
 しかも、航空機の爆音は途切れること無く続いていた。少なくとも飛行中隊か、もっと大規模な飛行戦隊単位による出撃が行われているのではないのか。

「一式戦だけじゃない……珍しいな、二式複戦もいますな」
 いち早く出撃機を見つけた由良軍曹が、空の一点を指さした。池部中尉たちもその方向を見ると、確かに単発単座の主力戦闘機である一式戦闘機の他に、左右翼にエンジンを備えた特徴的な形状を持つ二式複座戦闘機も姿を見せていた。
 二式複座戦闘機は、戦闘機とは呼ばれていても、双発複座形式であるから単発機との戦闘は極めて不利であり、実際には襲撃機や夜間戦闘などの任務につくことが多かった。
 だが、機体が爆装している様子はないし、低空を高速で駆け抜ける姿は、迎撃の為に緊急出撃しているように見えた。

 出撃していく機体は、それだけではなかった。現在の陸軍の主力戦闘機は、一式戦闘機と二式複座戦闘機だったが、それに加えて迎撃専用機として少数が配備された二式単座戦闘機や見慣れない水冷エンジン機も少数だが出撃していくのが見えていた。もちろん英国空軍らしき機影も見えていた。これは師団単位の全力出撃と言っても良いのではないのか。
 姿を見せた戦闘機部隊は、揃って慌てたようにアレクサンドリアの西へと向かっていった。
「何かあったかな……」
 言わずもがなのことを誰かがつぶやいたが、当然無視されていた。全員が不吉な思いを抱いて空をみあげていたが、由良軍曹の一言に慌てて威儀を正した。
「こりゃ拙い、中助だ」
 池部中尉も、堂々と士官の前で、中隊長を中助などとつぶやいた由良軍曹をじろりと睨みつけてから、向き直った。戦車第三中隊を率いる根津大尉は、珍しく慌てた様子で中隊員達を探していたのか、駆けて来るところだった。

 慌てて敬礼をする池部中尉達に答礼するのももどかしそうに、根津大尉は慌ただしくいった。
「第三中隊は直ちに移動する。集合地点は移動中に説明……いや連隊から連絡が入るはずだ。とにかくアレクサンドリアを出て西に向かう。機動歩兵連隊と合流して支隊を形成する予定だが、場合によっては不期遭遇戦もありうる。各車警戒を厳に」
 池部中尉は、今にも飛び出して行きそうな根津大尉におずおずといった。
「直ちに移動とおっしゃいますが、まだ中隊全車の荷役は終わっていません……小隊ごとに移動しますか」
 根津大尉は、生真面目そうな顔を悩ましげに歪ませてから、首を振った。
「駄目だ。敵ドイツ軍が一斉に動き出したそうだ。一部は前線を突破したらしいが、詳細は連隊も掴んでおらん。奴らは神出鬼没だそうだから、少数で動くわけにはいかん。ともかく中隊全員で残りの戦車を下ろすぞ」
「あのう、中隊長殿。現地民の港湾労働者はどうしますかね。こいつらこっちが慌てても急いでくれなさそうですが」
 由良軍曹がおそるおそる言うと、根津大尉はじろりと周囲にとどまってこちらを伺っている様子の港湾労働者達を見てから、吐き捨てるように言った。
「役に立たんようなら放っておけ。その場合は船員と俺達だけで残りを下ろすぞ。飯時をすまんが、急げ」
 根津大尉は、それだけを言うと、早くも残りの一式中戦車を詰め込んだままの貨物船に向かっていた。おそらく船員からも作業員を手配するつもりなのだろう。
 池部中尉はくるりと中隊員たちに向き直るといった。
「全員聞いたな。残りを下ろすぞ。各車操縦手は戦車に戻って移動の準備をしろ。車長は移動の指揮……小隊長者は砲手が指揮しろ。他は俺に続け。とにかく荷役作業だ」

 池部中尉も、根津大尉を追いかけようとしたが、由良軍曹の恨めしそうな声に足を止めていた。
「鍋の中身がまだ残ってるんですが……片付ける時間も無いですよねぇ。どうしますかね、これ」
 恐る恐る振り返ると、まだ残り火に暖められた薩摩汁が鍋の底で香ばしい匂いをさせていた。これを片付けて戦車に格納するのはやはり時間がかかりそうだった。中身の残った飯盒位なら袋にでも詰めて後から始末すればいいが、さすがに中隊員で用意した鍋は無理だろう。

 焦る池部中尉の耳に、状況に似つかわしくないのんびりとした声が聞こえた。
「何だか騒がしそうだね。時間が無いだろうから、鍋の中身の始末と掃除はこっちでやっておこうじゃないか。我々もおそらく移動命令が来るだろうな。お先にどうぞ」
 オータム中尉は、にこにこと笑みを浮かべて、池部中尉を見つめていた。池部中尉は息を呑むと、困ったような顔でいった。
「分かりました……申し訳ないがここの始末は貴隊にお願いします」
「了解した。鍋は洗って返すことにするよ。おそらく次に会うのは前線だな」
 そう言うと、オータム中尉は、笑みを浮かべたまま、右手を差し出した。敬礼をしかけていた池部中尉は、しばらく戸惑ってその手を見つめていたが、ゆっくりと自分も右手を差し出していた。
「それもお互いが無事であればこそ、ですな。御武運を」
「貴官も」

 池部中尉は、由良軍曹に向き直っていった。
「鍋はこれで片がついた。後は捨て置け。中隊急げ」
 それだけを言うと池部中尉は駆け出していた。その脳裏からは、早くも鍋のことも、奇妙なカナダ人のことも綺麗に消え去りかけていた。
一式中戦車の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/01tkm.html
一式戦闘機の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/1lf1.html
二式複座戦闘機の設定は下記アドレスで公開中です
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二式戦闘機の設定は下記アドレスで公開中です
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