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仮想戦記(仮 作者:ロックウッド
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1942プロエスティ爆撃作戦10

 いつの間にか補充機の爆弾倉に兵たちが群がっていた。作業班が主計長によって編成されるまえに、自主的に集まった兵たちが、特別食や酒の入った容器を大事そうに抱えながら本部建屋へと移送しようとしていた。

 にわかに起こった喧騒のなかで、珍しく佐々木は言葉を選ぶように考え込みながらいった。
「先程のお話なのですが…彼らは工員では無く、本機の図面を引いた技師なのです」
 そういうと佐々木は点検箇所に群がる軍属たちに顔を向けた。
 荘口大佐は要領を得ない顔で佐々木の視線を追った。そう言われても技師と工員の区別など大佐につくはずがなかった。
 若手が多く、主任クラスの重鎮はいないようだが、一式重爆撃機の開発に携わったというのだから一線級の技師なのだろう。しかし開戦前後から新機種の開発が相次いでいる状況で、これだけの人数を引き抜くにはそれなりの理由があるはずだ。

 胡散臭そうな目で荘口大佐が佐々木を見つめると、彼は頭を掻きながらやけに下手に出た態度でいった。
「それで、大佐殿にお願いしたいことがあるのですが、北アフリカ駐留の一式陸攻を装備した海軍航空隊で彼らを調査に当たらせたいのですが、何とか大佐殿に口利きをお願いしたいのです」

「断る」
 佐々木が言い終わる前に、間髪をいれずに荘口大佐は勢い良く断った。
 先ほどの酒や特別食の移送程度の貸しでなんとかしてやれる程の問題ではなかった。
 海軍と陸軍では根本的に指揮系統が異なるのだし、プロエスティ油田地帯で大きな損害を受けた一式陸攻隊が外部の人間に対して良い顔をするとは思えない。第一、三菱が製造した海軍機を、陸軍機を設計した中島飛行機の人間が調査するなど不可能だろう。
 仮に戦隊長である荘口大佐が、海軍航空隊司令に口を利いたとしても、航空隊付きの海軍警務隊が軍事機密の漏洩防止のために阻止するのではないのか。


 だがそれくらいの常識は、中島飛行機に入社以来ずっと軍関係の営業活動をしてきたらしい佐々木ならば熟知しているはずだ。
 佐々木もその程度のことは承知のうえで言っているのではないのか。
「大佐殿は…いえ飛行第35戦隊は、その海軍航空隊からの推薦で海軍の航空艦隊から部隊感状を頂いたと聞いておりますが。先のプロエスティ油田地帯でのことで海軍航空隊の幹部の方とも懇意にされていらっしゃるのではありませんか」

 荘口大佐は渋い顔をしながら頷いた。たしかに飛行第35戦隊には海軍航空隊から部隊感状が届けられていた。先のプロエスティ油田地帯への爆撃作戦で初期の作戦計画にはなかった一式陸攻隊への援護を行なっていたからだ。
 プロエスティ油田地帯で行なった対空部隊への制圧射撃と帰路の一部区間での一式陸攻隊への同行がそれだった。
 特に多数が撃墜され、防御力を発揮する緻密な編隊を組めなくなっていた一式陸攻隊にとって、編隊を再編成する間、飛行第35,36戦隊の援護が得られたのは大きな助けとなっていたはずだ。
 巡航速度の違いから結局ルーマニア国境付近に辿り着く頃には、一式陸攻隊と飛行第35,36戦隊との間隔が開いて、また一式陸攻隊に損害が出ていたのだが、最も危険な空域で援護を行なったのは間違いようのない事実だった。


 ただし、あの戦闘からすでに数ヶ月が過ぎている。荘口大佐が作戦前後に知り合った航空隊の幹部も、大半は他隊へ異動しているはずだった。大きな損害を被った一式陸攻隊は、本格的な再編成を行なっていたからだ。
 現に航空機材が失われて余剰となっていた1個航空隊分の後方要員は、日本本土へと帰還していたはずだ。しかも、その後方要員は再編成された陸攻隊に配属されるとは限らないらしい。噂に過ぎないが、海軍内部では陸攻隊を縮小して、戦闘機隊や攻撃機隊にその分の要員を割り振るつもりであるらしい。
 作戦終了後に挨拶に来た飛行隊長が、悔しそうにそのようなことを言っていたのを覚えていた。
 あの時は荘口大佐も何を言っていいのか分からずに、飛行隊長をしどろもどろに激励して終わっていた。

 確かあの時の飛行隊長は、航空隊司令と先任飛行隊長が揃って戦死していたものだから、航空隊司令代理を務めていたはずだ。今では正規の航空隊司令が新たに着任しているはずだ。
 その後任の航空隊司令と荘口大佐は面識はないから、そもそも口を利くこと自体ができないのだ。


 しかし、荘口大佐がそのような事情を話すと、佐々木は何でもないかのようにいった。
「ああ、新任の航空隊司令ならば話は通してあります」
 呆気にとられて荘口大佐は、佐々木の顔を見つめた。逆に佐々木は不思議そうな表情で続けた
「岩畔大佐から統合参謀部所属の海軍参謀をとおして、航空隊司令には正式に話を通しているのです。もちろん海軍警務隊にも、です」
 我に返った荘口大佐は、じろりと佐々木の顔を睨んだ。つまり軍中央ですでに陸海軍間の話はついているのだろう。
 だが、それならば別に荘口大佐の口利きなどいらないのではないのか。話がついているのならば勝手に航空隊に行けばいい。荘口大佐はそう言いかけたが、その前に佐々木が続けた。

「航空隊司令やその上層部は統合参謀部を通じて話はついているんですが、実際に部隊を動かす方々は中々そうも行かないようでして、そこで共に戦闘に参加した荘口大佐からご紹介いただけないかと…まぁそういうことです」
 そういうと佐々木は深々と頭を下げた。荘口大佐は大きなため息をついでいた。もうこの礼の品物はもらってしまっているのだから断ることはできなさそうだった。
 中央同士で話はついて命令書は出ていたとしても、前線で戦う将兵の感情はまた別だった。特に、大きな損害を受けた部隊に急に民間人が押しかけても、ろくな調査はできない。そう考えて佐々木はこのようなことを言い出したのではないのか。


 だが、これだけは言っておかなければならなかった。
「とりあえず話の趣旨は理解できた。物資輸送の礼もあるから貴様を紹介してやるくらいのことはしてもいい。だが…先方がこちらを知っているとは限らんぞ。航空隊の幹部クラスは異動していてもおかしくはないのではないかな」
 佐々木は予めこのような質問が飛んでくることも想定していたのだろう。淀み無く答えた。
「そちらは問題ありません。先ごろのプロエスティへの爆撃以降は、航空隊へ補充のための転入者はあっても、転出者は負傷などで後送されたものを除けば極少ないそうですから。佐官級に限れば一人もおりませんから、大佐殿のお知り合いも間違いなく今も在籍しておられるはずです」

 荘口大佐はそれを聞くなり怪訝そうな顔になっていた。
「転出者はいない…だと。海軍は損害を受けた部隊の将兵を隔離するつもりなのか」
 佐々木は慌てたように答えた。
「いえ、岩畔大佐からお聞きした話ですと、必ずしもそういった意図というわけではないそうです。単に、最近になって陸上攻撃機関連部隊の再編成が手控えられているのが原因のようです。それで1個航空隊しかない北アフリカ駐留の陸攻隊から将兵を動かすことが少なくなっているようです」

 荘口大佐はそれを聞いても疑問が深まっただけだった。
「陸上攻撃機の再編成か…海軍は大規模な機種改編でも予定しているのか」
 さすがに軍機に該当しそうな話題だけに荘口大佐の声は小声になっていた。佐々木も僅かに眉をひそめて、周囲を見渡してからこたえた。
「一式陸攻の後継には、海軍空技廠が試作し、現在審査中の陸上爆撃機銀河が内定しているようです。ただ、空技廠には生産ラインはありませんから、量産には弊社がすでに指定されております。
 しかし審査中の銀河の量産が開始されるまでにはまだ間がありますから、その中継ぎの意味もあって、海軍でも一式重爆撃機を導入する計画が今持ち上がっているのです」


 荘口大佐は、佐々木の言葉を聞きながら、何か違和感を感じていた。
 確か海軍では単に一定の高度、針路を保ったまま爆弾を投下するのではなく、目標に向かって急角度で降下しながら投弾を行う急降下爆撃を行う機体を爆撃機と呼称していたはずだ。

 だから、陸上攻撃機ではなく、陸上爆撃機に分類されるらしい銀河とか言う新型機は、急降下爆撃を行うために、一式陸攻よりも頑丈な機体構造を持っているのだろう。
 これまで陸上爆撃機と呼称された機体は聞いていないが、高速で海上を疾駆する戦闘艦に対して急降下爆撃を実施するということは、艦上爆撃機並に俊敏な機体なのではないのか。
 詳細は分からないが、大出力エンジンを搭載した単発機か、陸軍の二式複戦屠龍のように双発で機動性を高めた機体なのだろう。


 それはいいのだが、そのような高速で俊敏な機体が、現状の一式陸攻の後続機で、その中継ぎに四発の大型機である一式重襲撃機を採用するというのはちぐはぐな気がした。
 元々、陸上攻撃機という機種は、陸上基地から長駆進出して敵主力艦に対して雷撃を敢行するために開発された機体だった。仮想敵である米海軍に対して劣勢な日本海軍の主力艦隊を補うのが目的であった。
 プロエスティ油田地帯への爆撃作戦のように、爆装して長距離爆撃任務を行うことも可能だが、大きな航続距離を持たされているのは、あくまでも太平洋にまばらに存在する島嶼部から出撃しても、主力艦隊同士の予想戦闘海域まで進出して雷撃を行うためであった。
 つまり海軍の主力長距離攻撃機である陸上攻撃機は、本質的には雷撃を敢行するための機体なのだ。

 しかし、銀河という陸上爆撃機が雷撃能力を持っているのかは分からないが、一式重爆撃機には雷撃能力は無かった。というよりも爆弾倉の構造上から、長さのある航空魚雷を搭載することが出来ないのだ。
 一式重襲撃機の爆弾倉は、二五〇キロ通常爆弾を前提として設計されていた。二五〇キロ爆弾であれば機体前後方向をつなぐ中央の交通路を挟んで左右二列づつ、計四列に爆弾を搭載することが出来た。これが大型の五〇〇キロ爆弾であれば左右各一列に搭載することになる。
 この爆弾倉は前後が切り詰められていたが、それでも陸軍が装備する爆弾の中で最大の八〇〇キロ爆弾を搭載するだけの寸法は確保されていた。
 一式重襲撃機は現状で制式採用されている爆弾であればすべて機体に格納することが出来たのだ。

 だが、実際にはもっと小型の爆弾を多数搭載するケースのほうが多かった。日本陸軍重爆撃機隊の主任務である飛行場襲撃には、少数の大威力爆弾を投下するよりも、より広範囲を火網で包みこむ方が効果があったからだ。
 滑走路の破壊を除けば、飛行場への爆撃に大威力爆弾はさして効果的ではなかったのだ。
 最近では、二五〇キロ爆弾と同一寸法ながら、小型の焼夷弾を散布させる集束爆弾も多用されるようになっていた。

 これが飛行場襲撃ではなく、地上の敵部隊を攻撃する際も大して事情は変わらなかった。目標が装甲に包まれていたとしても、陸上部隊相手に大威力で大型の爆弾を重爆撃機から投下して直撃させるのは事実上不可能だった。
 それくらいならば、より小型の爆弾で広い範囲を爆撃したほうが効果的だった。
 だから、永久要塞陣地の重トーチカでもない限り、大型爆弾を運用する必要性は薄かったのだ。

 一応は、一式重爆撃機の爆弾倉内に収まらないより大型の爆弾や魚雷であっても、主翼下面に投下式のラックを装備することで搭載することは可能だったが、機外に大型兵器を露出させることになるから、大きな空気抵抗となって航続距離も速度も低下することになる。
 だから、一式重爆撃機がそのような大型兵器を使用する例は今までなかった。


 これに対して、海軍の一式陸上攻撃機などは、重量の割には長大な航空魚雷を搭載するために、細長い爆弾倉を設けている。だから爆弾搭載量は一式重爆撃機よりも少ないが、雷装時でも速度を落とすこと無く進攻することが可能であったのだ。
 それに大威力の徹甲爆弾であれば敵戦艦に有効打を与えることも可能であるはずだが、実際には高速で機動する戦闘艦に対して、水平爆撃を命中させるのは難しかった。
 徹甲爆弾で戦艦クラスの水平装甲を貫通させようとすれば、重力加速度で爆弾に十分な速度エネルギーを与えるために、かなりの高々度から投弾しなければならないのだが、その場合は投弾から海面への落着まで時間を要するから、敵艦の艦長が操舵に長けていれば容易に回避されてしまうのだ。
 それでいて一定の高度を飛行する鈍重な重爆撃機は、艦隊援護の戦闘機にしてみれば組みやすい相手だった。
 爆弾が一人でに針路を変えでもしない限りは、徹甲爆弾による水平爆撃は効率の悪い攻撃方法と言わざるをえなかった。


 ―――もしかして海軍は雷撃を、あるいは航空機による敵戦艦への攻撃を放棄したのだろうか
 陸軍へ入隊以来ずっと航空畑を歩いてきた荘口大佐にとって、畑違いの海軍の対艦攻撃法とはいえ、軍上層部がそのように判断しているとすれば、航空機の価値を左右される一大事であるから、無視はできなかった。
 だが、海軍の詳しい事情を目の前の佐々木に聞いても答えが帰ってくるとは思えなかった。佐々木が海軍の内情に詳しいとは限らないし、知っていたとしても陸軍軍人にそのようなことをしゃべるとは思えなかった。
 やはりそのあたりのことは海軍の現役軍人に直に確かめてみるべきか。そう考えてから荘口大佐は顔をしかめていた。
 結局、佐々木の思惑通りに、海軍航空隊を訪問しなければならなくなっていたからだ。あるいは荘口大佐をその気にさせるために、佐々木は思わせぶりにこのような話をしてきたのかもしれなかった。


 だが、佐々木は込み入った話題を避けるためか、白々しい態度で話題を変えようとした。
「ところで、大佐殿はこの度満州国の対独宣戦布告に伴い、満州国軍飛行隊が北アフリカに派遣されてくるのは御存知ですか」
 唐突に変わった話題に戸惑いながらも、荘口大佐は頷いていた。

 国際連盟加盟国として満州共和国が対独参戦を表明したのはつい最近の事だった。もっともそれを受け止めたなかで、満州共和国軍が本格的な戦闘部隊を派遣すると思っていたものは敵味方ともにさほど多くはなかったはずだ。


 枢軸国に宣戦布告を行なった国際連盟加盟国は数多くあったが、その戦意や戦力の派遣規模には大きな差があった。部隊を全く派遣せずに政治的な立場を表明しただけであったり、ほとんど観戦武官と変わらないような少数の司令部要員を送り込んだだけの国も少なくなかった。

 実質的には、対独戦の主力となっているのは、英国本国と英連邦、日本帝国に自由フランスなどに限られていた。他にも亡命政府などは数多かったのだが、旧植民地軍を加えて急速に兵力を増大させていた自由フランスほど大規模な戦力を保持していたものはなかった。
 だから、国境地帯に巣食う共産主義勢力などにも備えなければならない満州共和国軍も、極少数の派遣にとどまるだろうとの予想が大多数であったのだ。


 しかし、大多数の予想に反して、満州共和国軍は基幹戦力である陸軍師団の動員こそ行わなかったが、編制されたばかりの飛行隊から1個飛行戦隊とそれを支援する各種後方部隊からなる大兵力を北アフリカへ派遣することが公表されていた。
 陸軍兵力こそ無いが、実働状態の1個戦隊という兵力規模は、亡命ポーランド軍などにつぐ大規模なものだった。支援部隊や使用機材を自前で揃えていることを換算すれば、殆ど身一つで参加し、日本や英国から貸与された兵器を装備する亡命政府などよりも戦力価値は高いとも言えた。


 だが、有力な友軍が参加するというのに、荘口大佐がその報を聞いて最初に感じたのは安堵ではなく危惧感だった。
 荘口大佐は、飛行第35戦隊の戦隊長に着任する前は、満州国軍軍政部付の軍事顧問として満州国軍飛行隊の設立に携わっていた。軍事顧問職を辞した後のことは一般的な報道程度のことしかわからないが、大佐が着任していた当時の満州国軍飛行隊であれば、1個飛行戦隊の派遣は満州国軍にとって大きな冒険となるような気がしていた。

 満州国軍飛行隊の主力となっているのは、日本製の単発単座の戦闘機だった。
 一応海軍機も審査の対象とはなったのだが、飛行隊の前身である小規模な航空部隊では日本陸軍から旧式化して譲渡された観測機などを使用していたから、使い慣れた日本陸軍と同規格の機体を採用していた。
 荘口大佐が顧問を務めていた頃は、主力機は九七式戦闘機であったが、今では後継機である一式戦闘機隼も装備数は増えているはずだ。

 だが、満州共和国軍の機体は、日本陸軍制式機とは一部の仕様が異なっていた。日本陸軍では、制空権を奪取するための純粋な格闘戦闘機として使用された両機だが、満州国軍では汎用性を高めるために、ある程度の機動性を犠牲としても対地攻撃力を強化するために、翼面構造に補強が入れられて、爆装能力を持たされていた。

 満州国軍も対地攻撃専門の機体は保有していた。特に九九式襲撃機は使い勝手の良い万能機として、派生形である九九式軍偵察機と共に採用されていたのだが、その数は1個戦隊分程度でしか無かったはずだ。
 それに現在の満州国軍の状況では制空戦闘機の重要性はさほどないから、主力戦闘機も場合によっては対地攻撃機としても使用できる戦闘爆撃機として運用されていたのだ。


 おそらく派遣されてくる部隊も、最新鋭の一式単戦を装備しているはずだ。多少艤装に違いがあるとはいえ、日本陸軍の派遣部隊でも一式単戦は使用されているから消耗品や弾薬の入手も容易であるはずだった。

 しかし、北アフリカ戦線では未だに激戦が続いていた。特に連日のように前線飛行場から出撃する戦闘機部隊の消耗は激しかった。
 そのような消耗戦に規模の小さな満州国軍飛行隊が耐えられるとは、荘口大佐には思えなかった。
 日本軍や英国軍は豊富な補充物資や要員を後方から送り込むことで、多少の消耗にも耐え切っていたが、補給能力に乏しい満州国軍では、一度損害を被っても中々回復するのは難しいはずだ。
 最悪の場合、戦力をすり減らせたまま戦闘を継続せざるを得なくなって、1個戦隊の正面戦力が丸々消滅することも考えられた。

 それにたとえ戦闘が行われなくとも、過酷な砂漠の自然は補給整備態勢を確立しなければ即座に稼働率を低下させる原因となった。派遣部隊の後方支援部隊がどの程度かは分からないが、日本軍や英国軍に匹敵するとは思えない。
 だから、荘口大佐は、中途半端な戦力の派遣は、ただ稼働機をすりつぶすだけに終わるような気がしていたのだ。


 しかし、そのような危惧を口にすると、佐々木は意外そうな顔でいった。
「どうも大佐殿は誤解されておられるようです。今度派遣されてくる部隊は、戦闘機だけではありません。多数を占めるのが2個飛行中隊の一式単座戦闘機であることは事実ですが、これは主力護衛のためのものです」
 荘口大佐は、一瞬眉をひそめた。
「主力の護衛…だと、では主力というのは…」
「弊社で開発した一式重襲撃機です。九七式重襲撃機の後継として開発された機体で、戊式75ミリ砲を側面に配置された対地攻撃機です。派遣部隊は、一式重襲撃機1個中隊を中核として、その護衛部隊を含めた1個戦隊で運用されるのを前提として編成された特別部隊となると聞いております」

「重襲撃機、戊式75ミリ砲…」
 荘口大佐はオウム返しのようにいった。
 もしかすると航空機の攻撃方法に変化が訪れているのは海軍ばかりではなく、陸軍も同じのようであった。良くは分からないが、これから先の航空機は、自分には思いもつかない方法で戦闘を行うことになるのかもしれない。
 荘口大佐はぼんやりとそう考えていた。
九七式重襲撃機の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/97hba.html
一式重爆撃機三型(一式重襲撃機)の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/1hbba.html
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