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仮想戦記(仮 作者:ロックウッド
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1942プロエスティ爆撃作戦3

 荘口中佐は、思わず目の前の男、中島飛行機の佐々木から目線をそらしながら言った。
「今は…満州支店に移っていたのか」
「キ19の件で責任をとることになりましてね」
 分厚い眼鏡の奥に隠された瞳からは感情は窺えなかったが、佐々木が荘口中佐に良い感情を抱いているとは思えなかった。

 中島飛行機が開発したキ19と、三菱のキ21との間で陸軍重爆撃機の競合試作が行われたのは、つい最近のことだった。
 結果的に陸軍新重爆撃機には、三菱が設計開発を行なったキ21に改良を加えた増加試作機を原型とした機体が九七式重爆撃機として採用された。佐々木はその時に中島飛行機の営業担当者だった。
 そして、キ19の不採用を佐々木に告げたのは、当時航空本部付きだった荘口中佐だった。
 だから佐々木が日本陸軍や、不採用を告げた荘口中佐個人に悪意を抱いていても不自然ではなかった。
 九七式重爆撃機の競合試作には、それだけ不自然な経緯があったのだ。

 中島のキ19と三菱のキ21の性能には大した差はなく、甲乙つけがたいところがあった。実際のところ、中島飛行機社長の座を弟に譲り渡して、政界入りしていた中島知久平の政治力もあって、一時はキ19の制式採用の可能性はかなり高かった。
 だが、制式採用されたのは三菱のキ21の方だった。
 それだけならば佐々木や他の中島飛行機の面々も自社の機体が不採用に終わった悔しさを抱いただけで済んだはずだ。
 しかし、制式採用されたキ21の増加試作機は、あまりにもキ19に似すぎていた。正確に言えば、当初設計開発されたキ21にキ19が優れていた要素を入れ込んだような形状に変化していたのだ。
 これで中島川の関係者が抱いていた陸軍への不満は決定的なものになったのだろう。

 この競合試作の判定には、純粋な機体性能差だけではなく、陸軍航空行政上の判断も影響していた。陸軍としては各社の航空機開発能力を効率よく発揮させるために、分担を決めて専門性を高めようとしていた。そのため、小型・中型の戦闘機や襲撃機には中島、川崎を優先し、大型機には三菱を優先しようとしていた。
 だから、よほど三菱のキ21が駄作機でも無い限りは実のところ採用が決定していたのではないのか。しかも、陸軍としてはできるだけ性能の優れた機体がほしいのだから、中島のキ19の長所を増加試作機の改修点に取り入れさせたのだろう。
 この競合試作で、日本陸軍は優秀な重爆撃機を手に入れることができたが、中島飛行機の関係者には言いようのない不満が残ったはずだ。競合試作と言いつつも、この不公平な措置は、悪い言い方をすれば三菱に技術を無償提供させられたようなものだからだ。
 中島飛行機本社の営業で出世コースに乗っていたらしい佐々木が、責任を取らされて子会社の中島商事、それも満州支店へと移籍したのも当然のことかもしれなかった。


 荘口中佐は、当時の経緯を思い出してため息をついていた。中島飛行機の担当者に不採用を告げたのは事実だが、中佐自身がその決定を下したわけではないし、どちらかと言えばキ19の方を支持していたほうなのだ。恨みを抱かれる覚えは本来なら全くないのだ。
 そう自分に言い聞かせると荘口中佐は奥の機体に向き直っていった。
「将軍はああ言っておられたが、本当に陸軍省にはもう話はしているのか。俺ももう航空本部付きではないのだから、急に機体の売却交渉といっても出来る話ではないぞ」
 なんとか理由をつけて断ろうと荘口中佐は考えていた。こんな機体を陸軍が買い付けるとは思えなかった。
 だが、予め予想していたかのように佐々木は間髪入れずに答えた。
「本当ですよ。将軍は大袈裟なことはいっても嘘はつかれませんよ。今は陸軍省整備局の課員だそうですが、岩畔中佐はご存知ではありませんか。岩畔中佐は満州共和国成立前後の軍事顧問団に関わっておられましたので、馬占山将軍とも旧知の仲なのだそうです。もちろん、将軍のご紹介で私も岩畔中佐殿と面識頂いております」
「整備局の岩畔中佐…か」
 荘口中佐は、陸軍省内で何度がすれ違った岩畔中佐の顔を思い出していた。陸軍士官学校の卒業年次は近いはずだが、歩兵連隊の隊付の後陸大に進学して中央の省部を渡り歩いている岩畔中佐と、航空学校に進んだ後、飛行戦隊や航空本部付きに任じられていた荘口中佐には、さほど接点はなかった。
 しかし、その畑違いの荘口中佐の耳にも、文才にあふれる切れ者との噂は入ってきていた。陸大卒業後に関東州駐留軍の参謀として赴任していたはずだから、その頃から馬占山将軍ら奉天派軍閥と関わりを持っていたのかもしれない。
 いずれにせよ陸軍中央部に近い岩畔中佐が承知しているということは、この機体の購入計画はすでに具体化していると言っても良いのかもしれなかった。

 荘口中佐は、自分があずかり知らぬ所で動いていた購入計画に疑問を抱きながら尋ねた。
「それで、この機体は中島飛行機で製造したものなのか。どうも各部の艤装が中島製とは違うようなのだが…それとも英国か、まさかロシア帝国製なのか?」
 英国ならば四発機の製造経験も持っているし、ロシア帝国の航空産業は、日本よりもまだ貧弱なものだが、それでも日英に加えドイツなどからも貪欲に技術を吸収して急反転を遂げているセーヴェルスキイ航空工業ならば四発機でも製造できるかもしれない。
 だが、問われた佐々木は、珍しく口ごもってから、言葉を選びながら言った。
「その前に、中佐殿は九七式重爆と同時期に米国陸軍でも新型重爆撃機の競合試作が行われていたのを御存知ですか」

 急な話に首を傾げながらも荘口中佐は、航空雑誌の記事を思い出しながら言った。
「通り一遍の報道された程度なら知っているが…たしかダグラスのB-18が制式作用されたのではなかったかな。今年から量産が開始されて部隊配備も始まったらしいが…性能的には我が九七式重爆と概ね拮抗していると聞いている」
 佐々木はそれを聞くと頷きながらも苦笑いを返した。昔から航空機の話をするときだけは、やけに子供っぽく、熱くなる男だった。確か30は超えているはずの佐々木の様子を見ながら荘口中佐はそう考えていた。
「中島商事の方でも独自にB-18の情報を収集してみましたが、実際には三菱さんの九七式重爆に匹敵するとはお世辞にも言えないようです。ただ民間機のDC-2の設計を一部流用した事もあってか製造コストはかなり抑えられているようです。それが米陸軍に制式採用された理由なのでしょう。新型機とはいっても基本となる設計思想そのものが古いのだから、その名の通り新しくともボロということですよ。
 ところで、そのB-18に敗北して不採用となった機体の方は御存知ですか」
 思わず荘口中佐は身構えていた。中島飛行機の不採用に終わったキ19のことを蒸し返そうとしているのかもしれないと思ったからだ。
 それに、航空雑誌で競合試作のニュースを見た時に機種名くらいは見たかもしれなかったが、不採用になった機体のことまでは覚えていなかった。
 用心した顔で荘口中佐が首を横にふるのを見ると、佐々木はまた苦笑しながらいった。今度は苦いものが入っていた。
「やはり不採用に終わった機体のことなどすぐに忘れ去られてしまうのですかね…競合試作にはダグラスB-18の他にマーチンとボーイング社が応じていたそうです。この機体はそのボーイング社が競合試作に提出した試作機モデル299、正確には爆撃機試作機改造の民間仕様機ですよ」

 荘口中佐は、ぽかんとして佐々木の顔を見つめてから、ゆっくりと格納庫に鎮座する大型機、モデル299の姿に目を向けた。その名を聞かされてから見ると、今までとは受ける印象も変わったような気がした。何故か獰猛な猟犬が鎖に繋がれているような気がした。
 ボーイング社は旅客機の開発競争で、ダグラス社の傑作機DC-2に圧倒されて、確か今年の頭に経営が立ち行かずに倒産していたはずだ。そんな会社が最後に開発したであろう機体が何故こんなところにあるのか。米国企業が製造した航空機、しかも実質上は爆撃機がそう簡単に満州に輸出できるとは思えなかった。
 そんな荘口中佐の戸惑いなど気にした様子もなく、佐々木は淡々と説明を続けた。ただしどことなくその顔には笑みが浮かんではいた。
「この機体を入手するには苦労しましたよ。ダグラス機の購入の際に設立しておいた弊社のアメリカ支店が、最初にボーイング社が経営がうまく行かずに解散する前に、従業員の給与や借金の返済などの資金調達のため最後の機体を売却するという情報をまず入手したのですが、当然日本帝国の企業が直接買い付けることは出来そうにありませんでしたから、英国やオーストラリアを経由して幾つものペーパーカンパニーを設立して、違法行為スレスレでなんとか買い付けたのです。
 おそらく米国政府がこのことを知れば売却阻止に動いたことでしょう。書類上は民間用の輸送機ですが、実情は最低限の艤装を取り除いただけの純然たる爆撃機なのですから。ですが、どこの国でも正式採用されなかった爆撃機などの興味はないのか、特に税関で制止されることもなかったようです。もちろん弊社のアメリカ支店は表向き一切この売買に関わっておりません。
 まぁこれらの工作には随分と資金がかかってしまいましたが、会長も最優先で進めるように言ってくださいましたので大分助かりましたよ。ここしばらくはこの機体にかかりきりでしたがね」

 だんだんと頭痛が激しくなってきたような気がして、荘口中佐は眉をしかめていた。それから唐突に思い出して言った。
「ちょっと待ってくれ。これが米陸軍で不採用に終わった元爆撃機だということは分かった。だが、何故そんな失敗作を陸軍が購入しなければならないのだ」
 荘口中佐は鋭い視線を佐々木に向けた。満州共和国や中島飛行機がどんな機体を金に糸目をつけずに密輸入しようが勝手だが、それを陸軍に押し付けようとするのはどう考えても間違っているはずだ。
 この大型四発機のモデル299が不採用になった理由はよくわからないが、双発機と比べて鈍重であったか、機体構造に致命的な欠陥でもあったのではないのか。
 だが心の底では疑問が無いでもなかった。切れ者で知られる岩畔中佐が凡百な機体の購入計画を無理をして進めるとは思えなかったのだ。

 佐々木は、剣呑な態度を見せた荘口中佐に、不思議そうな顔を向けた。
「それは前提条件が間違っていますな。競合試作においては必ずしも機体の性能が優っている側が制式採用されるとは限りません」
 荘口中佐は怪訝そうな目で佐々木を見つめた。やはりキ19のことをまだ根に持っているのか。
「モデル299は大変優れた機体です。少なくとも我が社が入手したB-18の性能はもちろん、九七式重爆よりも速力以外の各諸元は優れているといえるでしょう。しかも試作段階の非力なエンジンを搭載した段階でです」
 佐々木は何故か自慢気に言ったが、荘口中佐は胡散臭そうな顔になっていた。
 いくらなんでもそんな話は信用できなかった。佐々木の話が本当ならば、米陸軍は圧倒的に優れるボーイング社のモデル299を退けて、性能に劣るダグラス社のB-18ボロを採用したということになる。そのようなことがありえるのだろうか。
 だが、荘口中佐そのことを尋ねると、佐々木はなんでもないようにいった。
「単純な話ですよ。モデル299は高性能な四発機ですから、それと比例して高コストな機体となってしまったからです。米陸軍もその性能には注目していたと聞きますが、現在の抑制された軍事予算では、モデル299のみで実用的な数だけの部隊を編成することは到底不可能です。だからより安価なB-18を制式採用することで爆撃機部隊の数を確保することにしたのでしょう」
 それを聞いても荘口中佐の疑問は消えなかった。確かに四発機のほうが高価にはなるが、米陸軍がそれを理由に制式化を断念するとは思えなかった。
 数年前にルーズベルト政権が誕生して以来、米国は大規模な軍拡に転じていたからだ。


 ルーズベルト大統領が就任してからの米国の軍事予算は、それまでのフーバー政権とは大幅に増大していると荘口中佐は聞いていた。
 事実、それまで海軍軍縮条約の規定を下回る戦力しか保持していなかった米海軍は、ここ数年で続々と新鋭艦艇を就役させつつあるらしい。
 そのうちの幾らかは、すでにフィリピン駐留のアジア艦隊にも配備されていたから、航空本部付きだった荘口中佐の元にも情報は入ってきていた。
 だから、確かに四発爆撃機は高価なはずだが、それよりもはるかに高価な艦艇を大量に建造しつつある米国の軍事予算ならば、ある程度まとまった数を発注することは難しくないはずだ。
 荘口中佐は怪訝そうに佐々木にそういった。
「米国の軍事予算が大幅に拡大されているのは確かな事実のようです。ですが、その内訳を見ると必ずしもバランスはとれていないようです。実は満州鉄道調査部が米国の各資材に関する価格の動向を調査しているのですが、それによると鋼材価格、それも一般船舶ではまず使用しないような特殊鋼の価格がここ数年で上昇しているのは間違いないようです。米国からの輸入鋼材価格もゆっくりとですが跳ね上がっているようです。
 しかし、鋼材価格に対して、アルミニウム及び原材料となるボーキサイトの価格はほとんど上昇していません。それにアルミニウム精錬所への大規模な投資も確認されていません。それが何を意味するのかはお分かりですね?」
 首を傾げたまま荘口中佐は自信無さげに答えた。
「艦艇建造に必要な鋼材価格は上昇しているが、航空機の生産数は伸びていないからアルミニウム関連の価格は上昇していないということか…だが、そのようなことがありえるのか、米国の陸海、海兵隊の戦力内訳を見る限り、これまでも陸軍や海兵隊の陸上部隊や航空隊は、海軍に比べて予算を抑えられていたはずだ。だからこれ以上海軍予算を増大してもバランスの悪い軍事力になってしまうのではないのか。
 確かに米国にとって一番の脅威は日英の海軍艦艇だろうが、カナダ国境や南米への備えに陸上戦力も必要なのではないのか」

 佐々木は、一瞬戸惑ってから、言葉を選びながら言った。
「正確に言えば、増大しているのは海軍予算ではなく艦艇建造予算だということです。空母の建造は予算計上されているそうですが、艦載機や陸上機の予算が増えた形跡はありません。ボーイング社の倒産も、民間機販売の不振に加えて軍用機の生産が頭打ちになったからのようです。
 あのニューヨーク大暴落以後久々に造船関係の企業への投資が増大しているようですが、航空産業には増資の確認どころか、ボーイング社のように倒産するか、他社に吸収合併されるところも出ているようです。不況の影響で民間機の売れ行きもいまいちの上に、軍用機の発注も頭打ちだから、さすがの米国でもあれだけの規模に膨れ上がってしまった航空産業を支えるだけの需要が無いのでしょう」
 荘口中佐は困惑していた。それでは米海軍、いや米国は航空機の威力を認めていないということなのだろうか、確かに米国は第一次欧州大戦に最後まで参戦しなかったが、それでも陸戦において主導権を握るためには制空権が必要だという戦訓ぐらいは把握しているはずだ。
 だが、それ対する佐々木の答えは荘口中佐には予想もしていないことだった。
「航空産業では造船業ほど雇用を確保できないからでしょう。造船は労働集約型産業ですから、昨日まで失業者だったような未熟練労働者でも何とか短期間の訓練で作業につけるでしょうからね。もちろん、そのような労働者に高度な技量は期待出来ません。米海軍が主力艦の建造よりも巡洋艦や駆逐艦のような補助艦の建造を優先しているのはそのためかもしれませんね。単に主力艦の建造が民間造船所では実施できないだけかもしれませんが」
 佐々木の言葉を聞いている内に、また頭が痛くなってきた荘口中佐は、ゆっくりといった。
「つまり、この米国の軍拡は、不況にあえぐ国民を救済するための公共事業に過ぎないというのか…米国では軍はそこまで低く見られているということか」

 曖昧な笑みを浮かべながら頷いて肯定を示した佐々木に、大きなため息をつくと荘口中佐はいった。
「米国の軍拡の絡繰りとこのボーイングモデル299が不採用に終わった理由は分かった。だが、貴様は肝心の事に答えていない。米軍でさえ不採用に終わった高価な機体を何故帝国陸軍が買い上げなければならないのだ。
 ただ一機のみの試作機では技術参考機にしかならないだろう。だが、高価な大型四発爆撃機を例え制式化した所で数を揃えられないのは帝国陸軍でも事情は同じなのではないのか」
「必ずしもそうではないでしょう。確かに四発爆撃機は高価でしょうが、生産数が増大すればその分一機あたりの価格は抑えることができます。それに、高価でも防護力、打撃力に優れる四発爆撃機は、米国よりも日本の方が必要性は高いのではないですか。
 米国はカナダを除けば大陸内部に有力な敵性勢力を抱えていませんし、そのカナダも英国の方針で、北米大陸内の緊張緩和のために比較的軽武装の防衛力整備を行なっています。つまり大威力の重爆撃機を抱えていても使い道がないのです。
 唯一台湾を間近に臨むフィリピン駐留軍のみが緊張状態にあると言えますし、その証拠にB-18も本国以外ではグアムやマニラに集中して配備されているようです。しかし、現在の情勢では米国側が積極的に戦端を開くとは考えづらいでしょう」
 そこで佐々木は一旦口を閉じると、荘口中佐に向き直って奇妙なほどぎらついた目をしながら言った。
「ですが、帝国の事情は彼の国とは異なります。帝国の仮想敵は、中国共産党を除けば、年々軍事力を増強し、近代化を推し進めるソ連になります。それにそのソ連と友好関係を結ぶ米国です。この両国と戦端が開かれることになれば、帝国陸軍の重爆撃機部隊は航空殲滅戦を遂行するために敵中深く進攻しなければなりません。
 これに対して、ソ連赤軍は言うまでもなくシベリアーロシア帝国との国境線に大戦力を展開しています。もちろんその中には最新鋭の戦闘機隊や防空部隊も含まれますから、我が重爆部隊はその重厚な防衛陣を突破して敵飛行場までたどり着かねばならないわけです。
 対米戦を考えても、第一撃は近年ますます各設備を充実させつつあるらしいマニラ要塞に向けられますから、やはり防空部隊の抵抗は激しいものが予想されるでしょう。
 既存の重爆撃機では、この防衛陣を突破し敵陣に有効打を与えるのは難しいのではないでしょうか。少なくとも海軍さん爆撃機のような搭載量や航続距離を稼ぐために軽装甲な機体では早晩無力化してしまうのではないでしょうか」

 荘口中佐は何も言えずに押し黙っていた。確かに海軍の陸上攻撃機は防護力は弱いかもしれないが、佐々木の言いようは、三菱製の陸上攻撃機をけなしているだけなのではないのか、そう考えてしまったからだ。
「四発の重爆撃機ならば、双発機と比べて格段に大きい搭載量を確保出来ます。つまり十分な爆弾搭載量を備えた上で、防御機銃や装甲板といった防護装置を装備することも出来るのです。これからの帝国が必要とするのは、そのような敵の堅陣を無理やりにでも突破することの出来る、強固な重爆撃機ではないでしょうか」
 荘口中佐は、熱っぽく語る佐々木を、否定も肯定もしない何処か呆けたような顔で見ていた。
 本当にこのような大型重爆撃機を日本軍が装備する可能性はあるのだろうか。それは疑問だったが、この売却計画さえ進めてしまえば、あとは満州国軍顧問となった自分とは関わり合いのない話だ。少なくとも暫くの間は。

 そう考えていた荘口中佐が、満州国軍顧問の任を解かれ、一式重爆撃機二型で編制された始めての部隊である飛行第35戦隊の戦隊長に任じられたのはそれから五年後の事だった。
一式重爆撃機の設定は下記アドレスで公開中です
http://rockwood.web.fc2.com/kasou/settei/1hb.html
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