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仮想戦記(仮 作者:ロックウッド
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1943北大西洋海戦17特設巡洋艦護国丸

 特設巡洋艦護国丸に3基装備されていた主砲が射撃を開始したのは、前方を航行するレゾリューションから自艦の発砲不能を伝える発光信号があってからすぐの事だった。
 大型貨客船に搭載するにはあまりに不釣り合いともいえる巨大な連装20.3センチ砲塔は、中央楼の前方に2基、後方に1基が配置されていた。連装20.3センチ砲塔が据え付けられている箇所は、いずれも護国丸が定期航路の貨客船として就役すれば広大な船倉として使用されるはずだった区画だった。

 広大な空間に備え付けられた連装20.3センチ砲塔は、外観こそ日本海軍の正規の軍艦である他の重巡洋艦に搭載されているE型砲塔と同形状に見えたが、船倉区画に置かれた砲塔下部は改良が施されたものだった。
 電探を担当する岩渕三等兵曹は詳細は知らなかったが、護国丸の連装20.3センチ砲塔は通常のE型砲塔の発射速度を高めるために給弾機構に改良が施されているらしい。
 大幅な機械化の図られたのは給弾機構だけではなく、砲架周りの装填機構も省人化が図られているから従来よりも高速かつ安定した速度で連続発砲を行うことが可能だという話だった。

 そのような給弾、装填機構の改良もあってか、護国丸の発砲間隔は本当に着弾観測による射撃修正が行えるのか不安に思うほど短いものだった。次々と重量百キロを優に超える20.3センチ砲弾が敵戦艦に向けて放たれていった。
 今のところ護国丸は敵艦からの砲撃対象になっていないから、射撃は一方的なものだった。

 ただし、護国丸の乗員でこのような一方的な射撃がずっと可能だと考えているものはいなかった。現在のような状況はいずれ破綻する。それもそう遠くないうちに状況の変化が訪れるはずだった。
 護国丸からの射撃が連続しているにもかかわらず、戦況が優位だとは全く考えられなかった。今できるのは、強力な砲撃が護国丸に向けられていない間にできるだけ多くの砲弾を敵艦に送り込むことだけだった。


 有力な38センチ砲を装備していると思われる敵艦からの射撃は、今のところ護国丸ではなく、前方をゆく英国海軍に所属する戦艦であるレゾリューションに向けられていた。
 だが、砲撃の目標になっているにもかかわらず、レゾリューションが反撃に出る様子はなかった。電探表示面を見ているしか無い岩渕兵曹にはその光景は想像するしか無いが、文字通りに一方的な砲撃を浴びているレゾリューションの甲板では火を吹かないまま敵艦に向けられた4基の連装38センチ砲塔が虚しく宙を睨んでいるはずだ。
 あるいは、すでにレゾリューションの無骨な砲塔も敵弾の炸裂によって瓦礫と化しているのかもしれなかった。レゾリューションに敵弾が命中し損害がでているのはわかっているのだが、艦橋などに配置する見張り員からの報告は指揮所には伝わってこなかった。

 だが、同格と思われる38センチ砲戦艦に一方的に打ち据えられているにも関わらず、電探表示面に映る限りではレゾリューションの様子に変化はなかった。
 電気系統の問題で射撃が不可能になっているという話だったが、射撃や通信系統以外の機能には支障をきたしてはいないようだ。問題は発砲回路にあるのかも知れなかった。
 主機関には砲撃を浴びている今も問題はないのか、護国丸を引き連れて前進を継続していた。

 レゾリューションを含むリヴェンジ級戦艦は旧式ではあるが、38センチ砲艦として主砲戦距離で自艦の射撃に十分耐えうる装甲を有していた。ただし、舷側装甲で300ミリを超える装甲を有してはいるはずだが、この距離では対敵姿勢にもよるが敵弾に対抗できるとは断言できなかった。
 実際には敵艦の砲撃能力が低く命中弾が少ないのか、あるいは偶然にも砲撃戦能力に支障をきたすような致命的な箇所への命中弾が発生していないだけなのかも知れなかった。
 少なくとも、これだけ一方的に射撃を受けたレゾリューションにまともな戦闘能力が残っているかはわからなかった。
 今この瞬間に電気系統の支障が解決して射撃が可能にあったとしても、レゾリューションからの反撃で敵戦艦が行動不能になるほどの損害を与えられると考えることは出来なかった。


 そして、その瞬間は意外なほど速く訪れていた。ただしそれは岩渕兵曹の主観的な感覚だった。すでに電探表示面に釘付けになっている岩渕兵曹からは正確な時間間隔が失せていた。
 実際には何時間も砲撃戦を継続していたのかもしれないし、わずか数分の出来事だったのかもしれない。

 だが、その瞬間だけは岩渕兵曹にも感じられた。一体何度目かになるのかもわからない敵艦の発砲を告げる艦橋伝令の声を聞くまでもなく、岩渕兵曹は電探表示面を睨みつけていた。
 砲撃戦が開始されてから電探表示面の変化はレゾリューション周辺に敵砲弾の着弾によって発生する水柱以外無くなっていた。護国丸からの射撃が開始されてからは、敵戦艦の周囲にも水柱が生じるようになっていたが、変化はそれだけのはずだった。

 しかし、岩渕兵曹は電探表示面を見ながら違和感を感じていた。それは予感ではなく確信だった。研ぎ澄まされた神経が、わずかな電波雑音としか見えなかった飛来する敵砲弾の軌跡を感じ取ったのかもしれない。
 ―――この砲弾はレゾリューションに命中する……
 そして破局が生じるはずだった。


 敵弾がレゾリューションに命中したのはそれから数秒後の事だった。ただし電探に生じた反応は少なかった。これまでのように水柱からの反射波が観測されなかったということは、敵砲弾の多くが海面ではなくレゾリューションに命中したということではないのか。
 もしかすると1トン弱はあるだろう巨大な砲弾が命中したレゾリューションでは破片が飛び散ったかも知れないが、岩渕兵曹が担当する電探の分解能では高速で飛散するそのような小さな目標を捉えることはできないだろう。
 だから、電探で見る限り一見レゾリューションには変化がないように映っていたのだ。
 もちろんそれはあくまでも電探表示面に映しだされた映像の中のことだけだった。実際のレゾリューション艦内では大規模な損害が生じているはずだった。

 そして、ようやく電探表示面の中でも変化が起きようとしていた。
 最初に生じたのはレゾリューションの急減速だった。つんのめる様に唐突に速力が落ち込んでいった。それにやや遅れて転舵を開始していた。だが速力の落ち込みと比べると回頭速度は遅かった。
 おそらく高速航行中に機関に大損害を受けたか、それとも艦体が大きな水中抵抗となるほどの変形を起こしたかだった。岩渕兵曹はなんとなく後者であるような気がしていた。
 これまでの戦闘で無傷だった機関部が急に破損するよりも、艦首の脱落などが生じたと考えたほうが自然だった。原因が何にせよ急減速を生じたレゾリューションは後続する護国丸の進路を塞がないように回頭を開始したのだろう。
 だが、損害は操舵機能にも及んでいた。もしかすると損害は抵抗源となる艦首だけではなく、舵取り機などが配置された艦尾にも達しているのかもしれない。あるいは実際に舵板を動作させる舵取り機のほうではなく、舵輪などが配置された艦橋のほうに損害が生じているのかもしれない。


 どちらにせよ速度を減じたレゾリューションがもはや戦力にならないのは確実だった。艦橋伝令が見張り員が観測したレゾリューションの様子を報告する声をどこか遠い世界で生じた出来事かのように感じて聞き流しながら、岩渕兵曹は電探表示面に再び生じた変化を見守っていた。
 急減速したレゾリューションと護国丸との間隔は急速に縮まっていた。レゾリューションの回頭によって接触はなんとか避けられるだろうが、再接近時の距離は危険なほど近いはずだ。
 次の変化は急減速する前のレゾリューションが航行したであろう海域に生じた幾つもの水柱の反応だった。おそらく敵艦がレゾリューションに生じた変化を修正しきれずに行った射撃によるものだろう。

 だが、黎明の薄明かりの中でも敵艦からレゾリューションが無力化されたことは観測されたはずだ。敵艦が次に無傷の護国丸を目標とするのは間違いなかった。
 それにもかかわらず、護国丸に退避するという選択肢はありえなかった。レゾリューションが一方的に砲撃を受け続けていた間も護送船団は退避していたが、いまだ安全な距離まで逃げ延びてはいないはずだった。
 だからここで誰かが敵戦艦を食い止めなければならないし、そもそも鈍足の護国丸が退避針路をとったとしても高速の敵艦に易易と捕捉されるだけだろう。

 ここからさきは、護国丸が被弾するまでに敵戦艦にどれだけ損害を与えられるかどうかだった。レゾリューションが戦力を喪失した以上、護国丸が勝利する可能性は殆どなかったが、相手が戦艦でも20.3センチ砲弾で相手の速力を低下させるような損害を与えることはできるはずだ。
 それさえできれば低速の護送船団でも逃げ延びられる可能性が出てくるはずだった。


 ふと気が付くと岩渕兵曹は硝煙の匂いを感じていた。護国丸単独での交戦に入ってから時間が経っていた。すでに両艦はすでに何斉射も行っている。護国丸はその主砲弾を何発か敵艦に命中させているが、目立った被害は生じさせていないようだった。
 また、敵艦もすでに護国丸を夾叉しているから、いずれ命中弾があるだろう。護国丸の重巡洋艦級の主砲である20.3センチ砲弾では戦艦に致命打を与えるのは難しいが、相手の38センチ砲弾ならば護国丸のどこに命中しても致命傷になりかねないだろう。

 自艦の発砲によるものか敵艦の着弾によるものなのか、双方が混じり合っていたのかもしれなかった。その時なって唐突に岩渕兵曹は自分が戦場の只中にいることを感じ取った気がしていた。
 妙なことに同時に岩渕兵曹がしがみついていた電探表示面にも動きがあった。最初は岩渕兵曹はその動きに気がつくことは無かった。実際に表示面のブラウン管には映しだされていたのだが、その反応が魚雷を撃ち尽くして実質上は無力化している駆逐艦楓のものであったからだ。
 岩渕兵曹がその駆逐艦楓の反応の意味に気がつく前に、護国丸の指揮所をすさまじい衝撃が襲っていた。


 轟音が聞こえると同時に、咄嗟に岩渕兵曹は目の前の電探表示面を掴んでいた。機材を守ろうとしたのか、自分を守ろうとしたのかは自分でもよくわからなかった。
 鼓膜に異常をきたしたのか、しばらくは何も聞こえなかった。あるいは聞こえていても脳が把握していなかったのかもしれなかった。
 しばらくしてから指揮所に詰めていた副長の声が聞こえた。副長は応急指揮官を兼務するから、指揮所に集中する電話回線と損害を書き込む表示盤に取り付くと応急班などとやりとりを始めていた。

 どうやら着弾は中央楼の後部付近であったらしい。発生した火災を応急班が消し止めようとしている様子が、副長の指示の声からも伺えた。第3主砲塔の後部に命中したらしく、着弾点付近にあった魚雷発射管は消滅しているらしい。
 魚雷発射管には未発射の魚雷が残されていたはずだが、誘爆の危険性は無いという。

 傍で聞いていた岩渕兵曹は怪訝そうな顔をしたが、疑問はすぐに解決した。消火活動を開始した応急員からの報告によれば、魚雷発射管は両舷ともその姿が見えなくなっているようだった。
 おそらく、十分な存速を持ったまま命中した戦艦主砲弾によって、周囲の構造材や操作する兵員ごともぎ取られて海中に吹き飛んでいってしまったのだろう。
 炸裂がなかったとしても、着弾時に15インチ砲弾が残していた純粋な運動エネルギーだけでその程度の破壊力はあるはずだった。


 だが、大口径の戦艦主砲弾が命中した割には損害は小さい気がした。脆弱な護国丸の中央楼内部で戦艦主砲弾が炸裂したのであれば、今頃岩渕兵曹達が配置される中央楼前部の指揮所が壊滅していてもおかしくはないはずだった。
 もしかすると装甲など全く存在しない護国丸の船体を敵艦の徹甲弾は貫通してしまったのではないか。通常は戦艦の徹甲弾は敵艦の装甲を貫いてから内部で爆発するように作られている。
 敵艦の装甲内部に配置された射撃指揮装置や機関部といった重要部を破壊するために、徹甲弾の炸薬は着弾による衝撃で発動する遅延信管によって炸裂するはずなのだが、相手となる護国丸が無装甲なものだから遅延信管が発動するよりも早く主砲弾が脆弱な船体を突き抜けて反対側の海面に突入してから炸裂してしまったのではないのか。


 こちらの無装甲が功を奏したと考えると複雑な気分になるが、安心するのは早かったようだった。
 すぐに指揮所の副長のもとに追加の報告が次々と入り始めた。命中弾によって生じた衝撃と破片による損害で、着弾箇所の直前にあった第3砲塔が破損しているらしい。
 第3砲塔は砲塔下部の旋回装置と船倉区画内に増設された揚弾機構が破壊されてしまったらしい。実質上第3砲塔の射撃は不可能になったということだった。
 すでに砲台長の独断で弾薬庫には暴発を防ぐために冷却水の注水も始まっているようだったから誘爆の危険性は少なくなったが、これで護国丸の火力は三分の二に低下したことになる。

 それよりも応急班からではなく機関科から上がってきた報告のほうがより深刻かもしれなかった。機関室から軸室内を船尾に伸びる主軸から異音が生じるているらしい。
 それと同時に軸回転数が落ち始めているようだから、水中で生じた主砲弾の炸裂による爆圧の衝撃で主軸が曲げられたか、軸室内の主軸受がずれたのかもしれない。
 機関科は軸室に人をやって調べさせているようだが、何が原因であったにせよ戦闘中に修理を行うことは不可能だろう。下手をすれば推進力を失って護国丸は戦力価値を失ってしまう。


 しかし岩渕兵曹はそんな周囲の状況とはかかわりなく、衝撃が収まると同時に電探表示面に注目していた。やはり電探表示面の中に現れた反応は松型駆逐艦楓のものであるらしい。しかし護国丸が敵艦に対して砲撃を開始した頃から、楓は敵艦から退避するように機動していたはずだ。

 それどころか今は楓は敵艦に向かってまっすぐに突っ込むように航行していた。電探の反応を見る限りかなりの速力を出しているようだ。特設巡洋艦である護国丸どころか高速の敵艦と比べてもその航行速度は早かった。
 どうやら楓は機関には損害がないらしい。機関一杯まで出しているらしい楓は、敵艦と護国丸との間に割り込むように進出しつつあった。
 もはや疑う理由はなかった。楓の機動は明らかに水雷襲撃を意図したものだった。それもかなりの肉薄雷撃を行うつもりのようだ。このままの針路を保つのであれば距離一千程度での発射になるのではないのか。


 しかし岩渕兵曹は緊迫した状況であるにもかかわらず不思議そうに首をかしげていた。事前の情報によれば楓はすべての魚雷を使い果たしたはずだったからだ。
 松型駆逐艦はそれまでの艦隊型駆逐艦が装備している次発装填装置を有していない。魚雷発射管も四連装が一基あるのみだから、初撃の四射線を使い果たしてしまえばもう魚雷戦能力は喪失するはずだった。
 もしかすると初撃で発射されずに故障していた魚雷でもあって、それを修理でもしたのだろうか。ぼんやりとそう考えてからすぐに打ち消した。魚雷の信頼性はそれほど高くはないと聞いているが、発射管の中に収められた魚雷をこんな短時間で修理できるはずもない。

 その時岩渕兵曹は唐突に気がついた。
 ―――楓に次発装填装置がないということが何故分かるのだ……
 これまでの日本海軍が保有するほとんどの艦隊型駆逐艦は次発装填装置を備えている。次発装填装置は巨大な構造だからすでに独伊海軍も詳細は掴んでいるだろう。

 地中海での幾度日の戦闘では同一の艦艇から二度雷撃されたこともあったはずだ。だからこれまでの戦訓から日本海軍の駆逐艦が短時間で魚雷の再装填を行うことも知っているのではないのか。
 そうであれば、楓が一時的に退避し、その後に雷撃態勢に入れば再襲撃を行うものと判断してもおかしくはなかった。実際には松型駆逐艦には次発装填装置も予備魚雷も備えられてはいないのだが、夜間の短時間の戦闘からそこまで見抜くのは困難なのではないのか。

 護国丸の砲撃同様に、楓の襲撃機動も囮、あるいは博徒のようにはったりだとすれば納得出来る。本命の雷撃は二隻の特設巡洋艦、第22戦隊というわけだった。第22戦隊も敵艦の針路変更による減速などの時間稼ぎのおかげで気が付かない間に次第に雷撃距離へと近付いていた。
 第22戦隊の特設巡洋艦が装備する魚雷は護国丸と同様の艦隊型駆逐艦などと比べると小口径の53センチ魚雷だったが、これでも他国海軍の駆逐艦などが装備する魚雷と同程度の威力はあるはずだ。
 戦艦が相手であっても撃沈は難しいだろうが、水線下への攻撃によって損害を与えることはできるのではないのか。少なくとも戦艦の対応防御の範疇に収まっているであろう20.3センチ砲よりもは有効打となるのではないのか。

 このまま行けば護国丸による砲撃と、楓による雷撃、そして第22戦隊による雷撃によって敵艦を挟撃するような体制になるはずだった。
 ハッタリがうまく効いていれば、敵艦から見れば主力は護国丸と楓によるものに見えるはずだ。情報不足の状態で見れば、レゾリューションに続行していた護国丸は戦艦か正規の重巡洋艦に、楓は雷撃能力を保持した艦隊型駆逐艦にみえてしまうはずだからだ。
 しかしこの二隻はともに囮に過ぎない。雷撃能力を喪失した楓は勿論、護国丸の20.3センチ砲弾であっても敵戦艦に致命傷を与えることは難しいだろう。


 今のところ駆逐艦楓のはったりはうまく敵艦に効いているようだった。電探表示面で見る限り敵艦から護国丸に向けられる砲火が散発的なものになっている気がしていた。
 敵艦は護国丸と接近しつつある楓に砲撃力を分散しつつあった。主砲は相変わらず護国丸を指向していたが、副砲以下は楓に向けられているようだ。しかし距離があるせいなのかそれとも楓の速度に眩惑されているのか命中弾はともに少なかった。

 そして、そのすきに第22戦隊の二隻が雷撃姿勢に入っていた。敵艦はこの体制に気がついているのかいないのか、結局は急角度の変針で照準をやり直すのを嫌ったのか中途半端な針路のまま直進していた。
 このままいけば第22戦隊の雷撃は成功するのではないのか。電探表示面を見てそれを確信した岩渕兵曹は唐突に衝撃に襲われた。

 また敵戦艦からの砲弾が着弾したらしい。しかも今度の衝撃は先程の比ではなかった。電探表示面を握りしめていたはずの手をもぎ取られた岩渕兵曹は衝撃で吹き飛ばされて指揮所の壁面へとたたきつけられた。どこか骨でも折れたのかもしれない。全身を襲う鈍痛の他に体の何処かから鋭い痛みが襲ってきた。
 次第に遠ざかりつつある意識を無理に覚醒させようとする岩渕兵曹は異様な光景を見ていた。

 指揮所の右舷側から、曙光と発砲炎に浮かび上がる敵戦艦が見えていた。護国丸の指揮所には側面に窓などなかったはずだ。被弾による損害で側壁の一部が吹き飛ばされてしまったらしい。
 優美にさえ見えるその敵戦艦の前では、朝日によってその正体を露わにした護国丸も、二隻の特設巡洋艦も、ただ一隻必至に囮となる楓もまるで獅子の尾にたかるハエにとしか思えなかった。

 だが、その敵戦艦の護国丸から見て反対側の舷側に水柱が上がったような気がした。
 ―――第22戦隊による水雷襲撃が成功したのか。
 それを見届けたことで安堵したのか岩渕兵曹の意識は失われた。
 そして、兵曹が目を覚ましたとき、すでに戦闘は終結していた。
特設巡洋艦護国丸の設定は下記アドレスで公開中です
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松型駆逐艦の設定は下記アドレスで公開中です
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